無限ダンジョンエンチャ掘りゲーム世界に転生した ※なお、現地住民はエンチャント?何それ?な模様   作:一宮 千歳

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第4話

奴隷は悪役令嬢でした。なんでよ。

 

自己紹介と奴隷落ちした事情を聴くと「わたくし子爵令嬢サーラ・サラミスと申します、まあ子爵令嬢ではなくなっているので気軽にサーラと呼んでくださいませ。婚約者に言い寄る元平民の男爵令嬢にそりゃもう思いつく限りの悪戯と嫌がらせを繰り返していたら何故か証拠が全部残っておりとある伯爵令嬢の夜会で罪を断罪されて婚約解消かつ家を追放、文無しなのでいっそと思って奴隷になりましたわ」

だそうで。

 

こまったな、こいつ連れてると目立つ。

奴隷落ちしたにも関わらず綺麗なドリルツインテを維持し、高そうなフリルフリフリのドレスを着ている。お前これ奴隷って言われて信じるか? 俺は信じねえぞ?

 

奴隷屋の店主を睨みつけると目を逸らした。明らかな厄介ごとを俺に押し付けましたって顔だ。はー、やんなるね。

 

「その男爵令嬢と元婚約者は真実の愛に目覚めてラブラブなんだろう」

「ええ、その通りですわ。こうなったら奴隷落ちしてからの物分かりのいい旦那様に保護されて躍進し、華麗なる社交界復帰で見返してやろうかと」

「社交界に出る気はないぞ、俺」

「さっそく目論見が崩れましたわ!」

 

よよよ、と崩れ落ちるサーラ。荷物持ち(ポーター)が面白キャラである必要はないんだがなあ。

 

「まあいいや。基本ポーターを任せるが、単独で行動してもいい」

「おっと信頼されていますわね。お股パカパカして男を垂らしこむぐらいならやってみせますわよ」

「やめろやめろ」

 

本当にやめろ。こいつどこを目指しているんだ。

 

「とりあえずその派手なドリルをやめろ、ドレスも着替えろ」

「ええ……わたくしの令嬢要素を外して何をする気……エッチなことするつもりでしょう! 薄い本みたいに!」

「頼まれてもしたくなくなってるとこだから安心しろ」

「おかしいですわー!?」

 

いやまあちょっとはそういう気持ちがあるが、だいぶ萎えたのもそう。そういうことよりもエンチャ掘りに向けた準備についてのほうが頭の容量使ってんだよな。

 

「それで、結局わたくしは何をすればよろしいんですの?」

「地味になって」

「無理をおっしゃらないで、私は生き方が派手な女! 地味になるなど不可能ですわ!」

 

無理かー。

 

「じゃあ【鑑定】のマジックスクロールを高く売りたいんだけど」

「それならわたくしが過去に使っていた宝石屋に売ればよろしいでしょう。おそらく百ほどで買ってくれますわ」

「あんたと同じ値段だな」

「わたくしそんな安値で売られましたの!?」

「まあ正確には同額の情報なんだが」

「ショックですわ……」

「ていうか、ツテ、残ってるか?」

「……無いですわ!」

「威張るな」

 

それと本来の荷物持ち役な。

 

「あと、これ」

「まあ、こんなにたくさんの指輪……そんなにわたくしと結婚したいのね」

「ちゃうわ」

「式は盛大に王都であげましょう!」

「聞けや人の話」

「聞いておりますわ。これが『鉄の指輪』の由来になった《鉄の指輪》の数々ですのね」

「社交界にまで噂届いてんの?」

「いえ全然。この街に来てから知りました。あなた、この街ではとても有名ですのね」

「さいで……」

 

有名になる気は全然なかったんだが。

 

「でもこれ、持ち歩くんですの? 重いの嫌ですわ」

「お前は! 荷物持ち(ポーター)! なの!」

「夜の相手なら喜んで致しますのに! 徹底的に仕込まれてますわよ!」

「頼まねえよ!」

「おかしいですわー!?」

 

こいつ面白性格のせいで親に捨てられたとかないよな?

 

----

 

さておき、パーティを組んでダンジョンに入ってウルフ狩りである。

目的はもちろんサーラのレベリングだ。

 

「はい、この《鉄の指輪》付けて」

「手につけていた指輪を外してわたくしに渡す……これは実質プロポーズでは!」

 

ねえよ。

 

「いいから、それ付けて壁に向かって【爆発ファイアボール】って唱えて」

「なんだか恥ずかしいですわね……【爆発ファイアボール】!」

 

ひゅん、どかん。

 

「ばばばばばば爆発しましたわ!?」

「そりゃ【爆発ファイアボール】だからな」

「ここここここれが【呪文】付きの《鉄の指輪》ですの?おっそろしいもの使わせないでくださいまし!」

「まあダンジョンの中でしか意味ないから」

「外で使われたら反乱が起きてましたわ……」

 

まあその辺のきな臭いことが起きないようにする設定として、ゲーム「ジ・ダンジョン」は『ダンジョンの外で【鑑定】以外の【呪文】が発動しない』設定があるんだろうな。

どこに配慮してんだか。

 

「ともかくこれを思い通りに操れるようになったらウルフ狩りするぞ」

「ぴええ……ご主人様がとんだ鬼畜でしたわ……」

「世の中の探索者(シーカー)は剣一つでダンジョンに潜ってるんだから恵まれてる方なんだよお前は」

「ガーンですわ」

 

お、木の兜みっけ。

 

「ほら、被っとけ」

「そんな無骨な木の兜、被ったら私の完璧なヘアーが崩れますわ!?」

「崩れたからどうした!」

「ひゃー! 傷物にされますわ〜! お嫁に行けませんわ〜!」

「奴隷落ちしてるのに嫁に行く気満々かよ……」

 

無理やりサーラに木の兜を被せる。ドリルツインテは潰れて崩れるだろうが、知ったことではない。

 

「わぷ。責任とってくださいますの!?」

「ダンジョン内でまともな装備なしで立ち回ろうってのが都合良すぎるんだよ。死んでも死なないが、死んだら一からやり直しなんだぞ。もうちょっと危機感を持て」

「キュン……」

「待て今のどこにキュンとくる要素があった!?」

「プロフェッショナルっぽいところ、ですわ!」

「ぽいじゃなくてプロな(これで飯食ってる)んだが……

まあいいか」

 

なんかサーラを連れて歩くことに一抹の不安があるが、まあいいか。

 

----

 

何も良くなかった。動くものを見つけたら【爆発ファイアボール】を唱えるキリングマシーンになってしまった。

 

「次はウサギですのね!【爆発ファイアボール】!」

「襲ったりはしてこないからそんなにぽこぽこ【呪文】を使う必要はないんだっつの!」

「一方的な殺戮は気持ちいいですわ〜!」

 

こいつなんなんだよ一体。

 

「お前よく暗殺とかされてないな」

「この程度の趣味の悪さは人間誰しも持っているものですわ!」

「そうかな……?」

「暴力! 権力! 金の力! 持つものはそれを振るう権利がありますの! なのでわたくしが今暴力を振るうことに問題などなく! 力に酔いしれていても構いませんのよ! おーっほっほ!」

「すごい、全く賛同できない」

「……ツッコミはありませんの?」

「漫才コンビじゃねえんだからツッコまないことがあってもいいだろ」

「わたくししょんぼりですわ。適度なボケとツッコミは人生を豊かにしますのに」

「お前今の所10割ボケてね?」

「つまり10割ボケることで人は幸せに生きられるのですわ」

「本気で言ってそうで怖いな……」

「流石に冗談ですわ!? わたくしをなんだと思ってるんですの!?」

 

どっからどう見ても面白令嬢なんだよな。

 

「まあどうでもよくて、ウルフの群れ倒せそうか?」

「【爆発ファイアボール】で一撃なのでしょう? 余裕ですわ!」

「ほんとかなー」

 

で。

 

「怖いですわぁ〜〜〜!!!!!」

「あーあ」

 

全力疾走するサーラとそれを追うウルフたち。コントかな?

 

「ウルフの方を向いて【爆発ファイアボール】で一発で終わるぞー?

「怖いものは怖いですわ〜〜! できませんわ〜〜!」

「まったく……」

 

走り寄ってウルフを掃除してやると、サーラがぶっ倒れた。

 

「つ、つかれましたわ」

「最初に【爆発ファイアボール】ぶっ放せば疲れる必要なんかないんだが……」

「怖いものはこわい! ですわ! 本能的に逃げちゃいますの! あんなのと真正面から戦うなんて正気じゃありませんわ!」

「それはお前が《革の戦靴》とか《レザーアーマー》を嫌がるからだろ」

「でもそれらはダサいですわ! あと何より殿方の目の前で着替えなんて……責任とってくださいますの!?」

「奴隷に人権はない」

「くっ! 奴隷になったのは誤りでしたわ〜!」

 

面白アホ令嬢すぎる。いや、こいつどう扱おう。かなり使い勝手が悪い奴隷を手に入れてしまった……。

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