ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福―   作:煌人

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第百四話:王都の門番と愚者の末路、そして刻まれる神話

 

 

朝の清冽な光が、王都近郊の森を黄金色に染め上げていた。

昨夜の賑やかな宴の片付けを終え、俺たちは拠点としていたパレスをアイテムボックスへと収納した。

そして森の開けた街道沿いに現出させたのは、俺が地球の知識とアルティメットスキルを注ぎ込んで創り出した、全長12メートルを超える漆黒の『魔導キャンピングバス』だ。

流線型の美しい車体には金縁の桜模様が雅やかに輝き、2階部分は風圧を一切遮断する透明な魔導シールドで覆われている。

 

「さあ、全員乗り込んでくれ。王都の正門前までこれで移動するぞ」

 

「うわぁ、いつ見ても格好いい乗り物たい! アタシ、2階の展望席に行くばい!」

 

カグヤが嬉しそうに九つの尻尾を揺らしてタラップを駆け上がり、イシュタルもからからと笑いながら続く。

 

「ウチも2階がええわ! 眺め最高やし、風圧もないから寛げるもんな!」

 

「ふふ、私も2階で景色を楽しもうかしら。エレナ、シン、リルフィナ、一緒に行きましょう」

 

アルシェラが3人を誘うと、エレナは巨大な鉄の獣のようなバスを見上げ、目を丸くしていた。

 

「……信じられないわ。馬も魔獣も繋がれていないのに、この巨大な鉄の塊が走るだなんて……」

 

「ええ……本当に不思議な乗り物です。揺れも全く感じませんし、静かですね」

 

シンが静かに車内の壁に触れ、リルフィナも優雅に微笑みながらシートに腰を下ろした。

 

「ふふ、ヨシテルの創り出すものは、何から何まで常識の枠を超えていますわね」

 

男性陣とフェンリル親子も乗り込み、全員が席に着いたのを確認して、俺は運転席の魔導ステアリングを握り魔力を流し込んだ。

 

ドロロロロ……と、魔力合成によって忠実に再現されたV8気筒エンジンの重厚な重低音が、心地よく車内に響き渡る。

タイヤの摩擦音は魔法で完全に消音されており、ジュークボックスから流れる軽快なジャズの旋律がカーステレオから優雅に漂っていた。

時速60キロの安定した巡航速度で、漆黒のキャンピングバスは滑るように街道を滑走していった。

やがて前方、地平線の向こうに王都の巨大な白亜の城壁と、威容を誇る大正門が見えてきた。

 

「キャンピングバスで街中に入るわけにはいかないからな。手前で降りて歩くぞ」

 

俺は城壁から少し離れた街道の退避スペースにバスを停め、全員を降ろしてから車体をアイテムボックスへと格納した。カエルム、ルーナ、テラ、アウラの4頭も、俺たちの足元に侍るように誇らしく歩調を合わせる。

そのまま歩いて正門の検問所へと近づくと――そこに立っていた門兵たちの表情が一変した。

 

「な……ッ!? お、おい、見ろ! あれは……!」

 

「黒と金の和装……それに、あの巨大な神獣の群れ……! 【ヴィンクルム】の皆さんだッ!!」

 

門兵の一人が泡を食って直立不動になり、もう一人の若い門兵は腰を抜かしかけて槍を取り落としそうになっていた。

彼らはすでに、俺たち【ヴィンクルム】の顔と圧倒的な存在感を完全に把握しているのだ。

 

「ご、ご苦労様です、ヨシテルさん! 【ヴィンクルム】の皆様、王都へのお帰り、心より歓迎いたしますッ!」

 

門兵の隊長格の男が、額から滝のような汗を流しながら最敬礼で出迎えてきた。

俺は苦笑いを浮かべつつ、首から提げている最高位のオリハルコンプレート――Sランクの証を軽く提示しながら挨拶した。

 

「おはようございます。いつも警備お疲れ様です」

 

「も、勿体なきお言葉! プレートの確認、恐れ入ります! ……あ、あの、ヨシテルさん? そちらの後ろにいらっしゃる4名の方々は……?」

 

隊長は、バアル、エレナ、シン、リルフィナの姿を見て、おずおずと尋ねてきた。

彼らの身に纏う美しい和装と、隠しきれない強者の気配に圧倒されているようだ。

 

「俺たちの新しい仲間ですよ。これからギルド本部で冒険者登録をする予定なんです」

 

「さ、左様でございますか! 冒険者プレートをお持ちでない方に関しましては、王都の規定により入市税としてお一人様銀貨1枚を頂戴することになっておりますが……」

 

「分かりました。銀貨4枚ですね。どうぞ」

 

俺はアイテムボックスから銀貨4枚を取り出し、隊長の手の平へと手渡した。

 

「は、ははぁっ! 確かに受領いたしました! 【ヴィンクルム】の皆様、どうぞ王都へお入りくださいッ!」

 

門兵たちは深々と頭を下げ、他の旅人や商人たちを脇へ押し退けて、俺たちのために中央の専用通路を即座に開け放った。

 

「がはは! 門番の連中、相変わらず俺たちを見るたびに縮み上がってやがるぜ!」

 

バルトが豪快に笑いながら大股で通り抜ける。

 

「仕方ないよバルト。僕たちだけでも目立つのに、こんなに立派なフェンリル親子まで連れているんだからね」

 

アレスが苦笑交じりに応じ、俺たちはそのまま王都の目抜き通りを抜けて、冒険者ギルド本部へと向かった。

白亜の大理石で造られた壮麗なギルド本部の扉を押し開けると、朝から依頼を探す冒険者たちや商人たちの喧騒が、館内いっぱいに渦巻いていた。

だが、俺たち10人と4頭のフェンリルが足を踏み入れた瞬間、その喧騒は潮が引くようにピタリと止まった。

 

「……おい、嘘だろ……?」

 

「【ヴィンクルム】だ……! Sランクのバケモノ共が戻ってきたぞ……!」

 

「ひそひそ話すな、聞こえたら消されるぞ……! 昨日のワータイガーの討伐依頼、もう終わらせてきたのかよ……」

 

フロアにいる冒険者たちが青白い顔をして身を竦ませ、蜘蛛の子を散らすようにサッと左右へ道を譲っていく。

俺たちが首から提げているオリハルコンのプレートが、朝の光を浴びて鈍く輝いていた。

俺たちはそのまま、受付カウンターへと静かに歩みを進めた。

――だが。平和な歩みは、信じがたい無知と傲慢によって遮られることとなった。

 

「おいおいおい! 何だぁ、このチャラチャラしたガキ共はよぉ!」

 

突如、酒と汗の悪臭を漂わせた下品な怒声が、静まり返ったギルド内に響き渡った。

見れば、カウンターの脇のテーブル席から、派手な毛皮やトゲ付きの鎧を纏った大柄な男5人組が、下卑た笑みを浮かべて立ち上がってきたところだった。

手には大剣や戦斧を雑にぶら下げている。

 

「おい、新入りども、どこの田舎から出てきたか知らねえが、道を開けな! 王都のギルドに来たばかりの俺たち『紅蓮の牙』様に、挨拶一つねえとはいい度胸じゃねえか!」

 

周りの冒険者たちが、息を呑んでさらに青ざめた。

 

「ま、マジか、こいつら……」

 

「今日地方から王都に来たばかりのBランク冒険者だ……何も知らねえのか……!?」

 

「死ぬぞ……あいつら、確実に死ぬぞ……!」

 

周囲から絶望的なひそひそ声が漏れる中、5人組のリーダーらしき禿頭の巨漢が、ニヤニヤと下品な視線を俺たちの背後にいる女性陣へと向けた。

 

「へへっ、よく見たら上玉の女ばっかり揃えてんじゃねえか。おいエルフ、それにそこの狐耳の姉ちゃん! こんな頼りねえ細身のガキといるより、俺たち本物の男と一晩遊んだ方が――」

 

男が、アルシェラとカグヤに向かって汚れた手を伸ばそうとした。

 

「グルルルルッ……!」

 

カエルムとルーナが低く唸り声を上げ、その毛並みを逆立てる。

 

 

だが、神獣たちが動くよりも早く――。

 

 

カチリ、と。

 

 

俺の頭の中で、冷徹な何かが音を立てて外れた。

 

「……あ?」

 

俺の黒い瞳が、一瞬にして底知れぬ鮮血の赤へと染まり上がった。

瞬間、ギルド本部全体の空間が、絶対零度の冷気と、物理的な質量を伴う超高密度の神威によって完全に圧迫された。

 

 

ドゴォォォォンッ!!!

 

 

「――ぎ、ひッ!?」

 

男5人は、触れることすら叶わなかった。

俺から放たれた、ただの『覇気』――精神的重圧の奔流が、不可視の巨鎚となって5人の頭上から叩きつけられたのだ。

床の大理石が悲鳴を上げて蜘蛛の巣状に砕け散る。

 

「あ、が……ッ!? ひ、息が……な、何だ、これ……!?」

「た、助け……ぎゃあぁぁぁッ!!」

 

男たちは膝の骨を粉砕されんばかりの勢いで床に叩きつけられ、その場でジョボジョボと情けない音を立てて股間を濡らした。

小便のアンモニア臭が立ち込める中、男たちは白目を剥き、全身を痙攣させながら泡を吹いて完全に失神した。

周囲の冒険者たちは、呼吸すら忘れて恐怖に震え上がり、床にへたり込んでいる。

 

「うわぁ……バッチィな、おい。汚ねえもん見せんじゃねえよ」

 

バルトが鼻を摘みながら心底嫌そうに顔をしかめた。

 

「そうだね、ギルドの床を汚すなんて最低だよ」

 

アレスも呆れたように首を振る。

 

「フン、痴れ者が。この程度の重圧で意識を保てぬとは、塵芥にも劣る」

 

バアルが冷酷な瞳で倒れた男たちを見下ろした。

バルト、アレス、バアルの3人は、汚物を見るような仕草で失神した男たちの襟首を乱暴に引っ掴むと、そのままギルドの大扉に向かって無造作に放り投げた。

 

 

ドサドサッ! グシャッ!

 

 

男たちの巨体がゴミ袋のように外の石畳へと叩き出され、静寂の中に鈍い音が響いた。

他の冒険者たちから、引きつったような呆れ笑いが漏れ聞こえる。

 

「あ、あいつら、本当に放り出されたぞ……」

 

「自業自得だ……命があっただけでも奇跡だろ……」

 

だが、俺の怒りはまだ収まっていなかった。

 

俺が一歩、外へ向かって足を踏み出そうとすると――。

 

 

ピキピキピキッ!

 

 

俺の足元から、超高密度の絶対零度の氷が床を侵食し、ギルドの壁や天井を凄まじい勢いで白く凍りつかせ始めた。

さらに、パレスの外の空気が急激に歪み、王都の青空が一瞬で鉛色に染まり、季節外れの猛烈な吹雪が吹き荒れ始めたのだ。

 

「おい、クソ虫共が……。誰に手前ぇの汚ねぇ手ぇ伸ばそうとしたか、脳味噌に叩き込んでやるよ……。二度と呼吸できねぇ身体にしてやるから、そこに転がってろ」

 

低く、氷よりも冷徹な俺の声がギルド内に響き渡る。

その瞬間、背後からアルシェラ、イシュタル、カグヤの3人が慌てて駆け寄ってきた。

 

「ヨシテル、待って! もういいから、落ち着いて!」

 

アルシェラが俺の腕を両手で優しく掴んで引き止める。

 

「そうやでヨシテル! あんな雑魚相手に本気出したら、王都が半分消し飛んでまうわ! ウチらも何ともないんやから、堪忍したって!」

 

イシュタルが慌てて俺の肩をポンポンと叩き、カグヤも涙目になりながら俺の腰に抱きついてきた。

 

「旦那様、怒らんでぇ! アタシたち、指一本触れられてもおらんけん! 旦那様が怖い顔すると、アタシ悲しかばい!」

 

愛しい仲間たちの温もりと必死の制止の声に、俺は深く息を吐き出した。

 

「……ふぅ」

 

ふっと意識を沈めると、瞳の赤みが引き、元の黒い瞳へと戻っていった。

足元の凍結も一瞬で霧散し、外の季節外れの吹雪もピタリと止んで、再び穏やかな日差しが差し込んできた。

 

「……ったく。どうして絡んでくる奴は何時も同じ言動何だ?」

 

俺は心底うんざりしたように肩をすくめ、深いため息を漏らした。

そして、周囲で恐怖のあまりガタガタと震えている冒険者たちや、受付の奥で青ざめている職員たちを見渡すと、頭を掻きながら声を張り上げた。

 

「おい、皆! 朝っぱらから騒がせて悪かったな! 迷惑をかけたお詫びに、この場にいる冒険者全員、今日の飲食代は全て俺の奢りだ! 好きなだけ飲み食いしてくれ!」

 

 

一瞬の静寂の後――。

 

 

「「「「うおおおおおおおおッ!? マジかよおおおおッ!?」」」」

 

 

ギルド内が、割れんばかりの歓声と怒号のような喜びに包まれた。

 

「Sランクのヨシテルさんの奢りだあああッ!」

 

「おい、朝から一番高い酒樽を開けろッ!」

 

「ヨシテルさん、一生ついていきますッ!」

 

男女問わず、冒険者たちが狂喜乱舞し、先刻までの凍りつくような緊張感は完全にどこかへと消し飛んでしまった。

 

「がはは! さすがヨシテル、切り替えが早くて助かるぜ!」

 

バルトが豪快に笑い、エレナとシン、リルフィナもほっと胸を撫で下ろしていた。

そんな大騒ぎの中、ギルド本部の2階へと続く階段から、パタパタと慌ただしい足音が響いてきた。

 

「な、何事ですか一体!? 表で季節外れの吹雪が起きたかと思えば、冒険者たちが外へ吹っ飛んでいくのが見えましたが……!」

 

「まったく、朝から騒々しいと思えば……やはりお前たちか、ヨシテル」

 

階段から駆け下りてきたのは、この王都ギルド本部の専属受付嬢であるリーファと、その背後から威厳を漂わせながら歩いてくる総ギルドマスターだった。

 

「リーファさん、ギルマス。騒がせてすみません」

 

俺が軽く手を挙げて挨拶すると、総ギルドマスターはギルド内の床に残る微かな氷の気配と、大喜びで酒を煽る冒険者たちを見渡し、深いため息をついた。

 

「はぁ……。お前がギルドに来るたび、私の胃に穴が空きそうになるぞ、ヨシテル。……で、表のゴミ共はお前の逆鱗に触れたというわけか」

 

「まあ、そんなところです。害虫駆除は終わりましたので。それよりギルマス、昨日のワータイガーの群れの討伐報告と、新しく入った仲間の冒険者登録をお願いしたくて来ました」

 

「ワータイガーの群れか。すでに王都周辺の警備部隊から、群れが綺麗さっぱり消滅したとの報告は上がっておる。相変わらず仕事が早すぎるわ。……よし、リーファ、奥の特別室で手続きを進めよ」

 

「は、はい! ヨシテルさん、皆様、どうぞこちらへ!」

 

リーファの案内に従い、俺たち10人とフェンリル親子は、一般の冒険者から隔離された豪華な特別応接室へと移動した。

部屋の中央には、魔力測定用の特大水晶板が鎮座している。国家最高峰の術式が組み込まれた、国宝級の魔道具だ。

 

「それでは、ワータイガー討伐の報酬手続きは後ほど行うとして……まずは新しく加入される4名様の冒険者登録から行いますね!」

 

リーファが緊張した面持ちで書類と水晶板を準備し、バアル、エレナ、シン、リルフィナの4人に向き直った。

 

「まずは、こちらの魔力測定水晶に手をかざしていただき、基礎能力値の測定と、適性職業の確認を行います。どなたから行われますか?」

 

「俺からいこう」

 

バアルが一歩前に出た。

 

昨夜、クオーレによって施された【ステータス偽装・魔力流入リミッター】が機能しているはずだ。数値はSランク相当の体力8000、魔力6000前後に抑えられているが、職業名は偽装していない。

バアルが漆黒の籠手を外すことなく、水晶板の上に掌を乗せた。

 

 

ブゥゥゥン……!

 

 

水晶板が眩い紫色に発光し、表面に滑らかな文字が浮かび上がる。

 

『氏名:バアル』

『レベル:310』

『体力 (HP):8200』

『魔力 (MP):6100』

『攻撃力 (STR):7500』

『防御力 (VIT):4200』

『職業:魔帝』

 

「…………え?」

 

リーファの動きが、完全にフリーズした。

眼鏡を押し上げ、何度も何度も水晶板の文字を凝視する。

 

「れ、レベル……310……!? た、体力が8200……!? こ、これだけでも国家最高戦力レベルの数値です……! そ、それ以上に……しょ、職業が……『魔帝』……!?」

 

リーファの声が裏返り、顔から血の気が引いていく。

 

「ま、魔帝……!? 魔の、帝王……!? そ、そんな職業、ギルドの歴史始まって以来、一度も記録されたことがありません……!」

 

「ふむ。問題なく測定できたようだな」

 

バアルは満足そうに腕を組み、不敵に微笑んだ。

 

「つ、次の方……お願いします……!」

 

震える手で羊皮紙に書き留めるリーファ。続いてエレナが水晶板に手をかざす。

 

キィィィン!

 

『氏名:エレナ』

『レベル:310』

『体力 (HP):8900』

『防御力 (VIT):8800』

『職業:龍帝』

 

「ひっ……! 龍帝……!? レベル310……!」

 

さらにシンが手をかざす。

 

シュゥゥゥン……!

 

『氏名:シン』

『レベル:330』

『俊敏性 (AGI):8500』

『職業:幽帝』

 

「幽帝……! レベル330……!」

 

最後にリルフィナが優雅に手をかざす。

 

フワァァァッ!

 

『氏名:リルフィナ』

『レベル:310』

『魔力 (INT):8100』

『職業:妖帝』

 

「よ、妖帝……!? 全員がレベル300超え……全員が『帝』を冠する未知の上級職……!?」

 

リーファはついに足をもつれさせ、ソファーへとへたり込んだ。

その結果を背後から腕を組んで眺めていた総ギルドマスターは、天を仰ぎ、深すぎるため息と共に頭を抱え込んだ。

 

「……おい、ヨシテル」

 

「何でしょう、ギルマス」

 

「お前たちのパーティーはどうなっとるんだ……? 貴様が『瞬神』で、アルシェラが『雷帝』、バルトロスが『玄帝』、イシュタルが『炎帝』、アレスが『影帝』、カグヤが『賢帝』……神が付き、帝が付き……今度は『魔帝』に『龍帝』に『幽帝』に『妖帝』だと……? 神話の神々や帝王を集めて国でも滅ぼす気か、貴様らは……!」

 

総ギルドマスターの呆れ果てた突っ込みに、バルトが「がはは!」と豪快に笑い飛ばした。

 

「いいじゃねえかギルマス! 分かりやすくて最高に格好いいぜ!」

 

「笑い事か馬鹿者が! この4人、文句なしに即日Sランク登録だ! また王都の評議会や国王陛下への報告書をどう書けばいいのか……私の胃が悲鳴を上げておるわ!」

 

総ギルドマスターがボヤきながらも、リーファに指示を出し、純度の高いオリハルコンで造られた首掛けプレートを4枚用意させた。

 

バアル、エレナ、シン、リルフィナの首に、誇らしげにSランクのプレートが提げられる。

 

「これで晴れて、私たちも正式な冒険者ね」

 

エレナがプレートを手に取り、嬉しそうに微笑む。

 

「ええ。ヨシテルやアレスと共に歩む証……大切にします」

 

シンも静かに頷き、リルフィナも優雅に目を細めた。

 

「ふふ、Sランクの冒険者……悪くありませんわね」

 

一件落着したところで、俺はふと思い出し、総ギルドマスターに向かって尋ねた。

 

「そう言えばギルマス。この大陸全体で、Sランク冒険者って今どれくらい居るんですか?」

 

総ギルドマスターは顎に手を当て、少し考える素振りを見せてから口を開いた。

 

「うむ。Sランク冒険者は、国家を揺るがす戦略級の戦力だ。お前たち【ヴィンクルム】の10人を抜けば、アトランティア大陸全土を探しても、現役で稼働している者は『20人』しかおらん」

 

「へぇ、大陸全体で20人だけか。やっぱり狭き門なんだな」

 

俺が呟くと、総ギルドマスターはジロリと俺を睨みつけた。

 

「当たり前だ! 一人で軍隊に匹敵する化け物共の集まりなのだからな! ……まあ、その20人の中には、以前お前たちもこの王都で顔を合わせた男もおるがな」

 

「ガルシアか」

 

俺が名を口にすると、アルシェラたちも「ああ、あのドラゴンスレイヤーの」と頷いた。

 

「そうだ。『放浪の屠龍者(ドラゴンスレイヤー)』ガルシアだ。あ奴も大陸に名だたるSランク冒険者の一人だ。単独で上位竜を狩り尽くす規格外の男だが……それでも、お前たちのように集団全員がSランクなどという常識外れなパーティーは、歴史上どこを探しても存在せんよ」

 

総ギルドマスターがやれやれと首を横に振る。

 

「まあ、何はともあれ、これで4人の登録も無事に終わった。ヨシテル、お前たちの次の目的地は、あの数百年誰も踏破できていないSランクダンジョン『巨軀の獄塔』だったな?」

 

「ああ。準備は全て整った。10人の【ヴィンクルム】で、最深部まで一気に駆け抜けてみせるよ」

 

俺が不敵な笑みを浮かべて答えると、バアルも、エレナも、仲間たち全員が力強い闘志をその瞳に宿らせた。

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