ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福―   作:煌人

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13話め


第十三話: S Sランクの相棒と古井戸再調査

 

 

前夜、SSランク級の風の妖精リフィを創造し、完璧なリラックス空間を得たヨシテルは、翌朝、驚くほどの爽快感と共に目覚めた。

全身の疲労は完全に消え、頭脳はクリアで、魔力回路が滑らかに流れているのが感じられた。

 

(これが、SSランク精霊の環境最適化魔法の効果か。体感で疲労回復速度が20倍というのは伊達じゃない。やはり、風呂の精神的なリセット効果は、この世界で生きていく上で不可欠だったな)

 

彼は、生活魔法〈クリーン〉で身だしなみを整え、黒い特質級装束〈瞬影の装束〉をまとい、二振りの特質級魔剣〈姫鶴一文字〉と〈にっかり青江〉を腰に差した。

 

ヨシテルは、リフィと宿の食堂へと向かい、簡単な朝食を注文した。

 

パンとシチュー、そして冷たい水。

 

テーブルにつき、周囲に他の冒険者がいないことを確認すると、思考でリフィに話しかけた。

 

(リフィ、おはよう。昨日はありがとう。最高の気分だ)

 

彼の目の前の空間、正確には彼のグラスの縁に、極小の風の渦が生まれた。

それは、リフィが彼の視覚にのみ認識させるための擬似的なホログラムのようなものだ。

小さな妖精の姿は、周囲からは決して見えないよう、徹底的に魔力遮断と視覚欺瞞の魔法がかけられている。

 

『マスター、おはようございます。リフィの能力がお役に立てて光栄です。本日の行動指針について、クオーレと連携して分析を完了しています』

 

リフィの声が、静かにヨシテルの思考に響く。

 

(ああ、クオーレにも感謝する。まず確認したいんだが、クオーレとリフィの役割分担について改めて教えてくれるか?)

 

『クオーレ(ナビゲーター)は、マスターの脳内情報処理能力を最大限に引き出し、情報分析、戦略立案、リスク評価を担当します。私は、エクストラスキル〈精霊召喚:環境最適化〉の核として、魔力制御、環境操作、そして実戦での戦闘支援を担当します』

 

(戦闘支援か。SSランク級の精霊を、戦闘に使わない手はないが、その能力をどう偽装するかが問題だ)

 

ヨシテルは、シチューを一口運びながら、思考を集中させた。

リフィの戦闘能力は、Dランクどころか、Aランク冒険者すら凌駕する。

彼女の純粋な風魔法は、街一つを吹き飛ばせるほどのポテンシャルを秘めている。

しかし、それをそのまま使えば、たちまち「Cランク上位」という偽装設定が崩壊してしまう。

 

(リフィ。俺の戦闘スタイルは、二刀流による超高速近接戦闘と、光・火の属性複合魔法だ。お前は風属性。お前のSSランク級の戦闘能力を、俺の戦闘の「補助」として、いかに自然に見せるか、戦略を立てたい)

 

『了解いたしました。リフィの提案です。戦闘において、私は以下の三点を実行します。これにより、私のSSランク級の戦闘能力は、マスターの「ユニーク級魔道具」または「特殊な属性複合魔法」によるものと偽装されます。』

 

 

超高精度な風の魔力エンチャント(補助):マスターの魔剣二振りに、一瞬で最高効率の風属性エンチャントを付与します。

これにより、マスターの剣速と斬撃の威力が、ユニーク級の魔剣にエンチャントされたと認識されます。

エンチャント魔力は、マスターの魔力と偽装します。

 

広範囲・低威力の行動阻害(目眩まし):戦闘空間全体に、目に見えない極微細な風の結界を張り巡らせます。

これにより、敵の動きはわずかに遅れ、思考は乱されます。これは、周囲からは「マスターの経験と技術による空間把握能力」の結果に見えるでしょう。

 

複合魔法の隠蔽(カモフラージュ):マスターが複合魔法(例:光+火)を使う際、私は風魔法を意図的に組み込みます。

これにより、風魔法の効果(速度増加、射程延長など)は、「マスターが高度な属性三複合魔法を使った」と誤認されます。私のSSランク級の風の魔力を、マスターの魔力のごく一部として完全に溶け込ませます。

 

 

ヨシテルは、リフィの提案に深く感心した。

SSランクの精霊が、自らの強大な力を意図的に抑え、最高の「補助輪」として機能するという、極めて知的な戦略だ。

 

(完璧だ。特に三点目、複合魔法の隠蔽は素晴らしい。俺の魔力消費を抑えつつ、戦闘力を飛躍的に向上させられる。これで、俺はDランクの依頼をこなしながら、Bランク級の魔物とも渡り合える)

 

『戦闘を重ねることで、マスターの「複合魔法」の評価はさらに高まり、「Cランク上位」から「Bランク級」の実力へと認識が引き上げられるでしょう』

 

(頼むぞ、リフィ、クオーレ。早速だが、今日の依頼を決める)

 

 

ヨシテルは、朝食を終えると、すぐさまギルドへと足を向けた。

ギルドのDランク掲示板は、以前のFランク掲示板とは異なり、張り詰めた緊張感のある依頼が並んでいる。

 

 

依頼A: 『黒竜の森入口周辺の魔物討伐』—危険度:中。推奨パーティ:3名以上。

 

依頼B: 『古都の旧市街・西の古井戸周辺の再調査と討伐』—危険度:低〜中。推奨パーティ:2名以上。

 

依頼C: 『近隣の集落への定期巡回・護衛』—危険度:低。推奨:経験者。

 

 

ヨシテルは、依頼Bの「西の古井戸」に目を留めた。

クオーレが、地下遺跡への侵入ルートとして最適だと分析した場所だ。

コボルトキング討伐後、まだギルドが警戒を続けているようだ。

 

(依頼Bは、まさに一石二鳥だ。ギルドからの依頼として古井戸周辺を探索できるし、今後の地下遺跡への侵入の足がかりにもなる)

 

ヨシテルは、掲示板から依頼書を剥がし、カウンターのリーファへと持って行った。

 

「リーファさん、この『西の古井戸周辺の再調査と討伐』を受注したい」

 

リーファは、驚いた顔でヨシテルを見た。

 

「ヨシテルさん!Dランク昇格、本当におめでとうございます!でも、昇格後初めての依頼で、古井戸ですか?あそこは、前回のコボルトキング討伐で、Dランク下位の魔物も数多く残っていると報告がありますよ」

 

「問題ないですよ。模擬戦闘で、俺の実力は評価されているはずです。それに、危なかったら撤退しますよ。」

 

リーファは、彼の自信に満ちた眼差しを見て、納得したようだ。彼女は、書類を処理しながら説明した。

 

「この依頼は、古井戸周辺の森に巣食っているアイアンウルフ(Dランク)や巨大ゴブリン(Eランク)の討伐が主な目的です。周辺の治安維持のため、確実に掃討をお願いします」

 

「承知した」

 

ヨシテルは、依頼書を受け取り、ギルドを後にした。

 

ヨシテルは、西の古井戸周辺の森へと足を踏み入れた。周囲は鬱蒼とした木々で覆われ、昼間でも薄暗い。

 

『マスター、周囲の状況を分析します。半径200メートル以内に、アイアンウルフの群れ(5体)、巨大ゴブリンの群れ(8体)を確認。両集団とも、マスターの接近に気づき、警戒態勢に入っています』

 

クオーレが、瞬時に情報を提示する。

 

(アイアンウルフはDランク、巨大ゴブリンはEランクか。以前のコボルトの群れよりは手強い。リフィ、早速だが、戦闘支援を頼む)

 

『承知いたしました、マスター。最高の環境を創造します』

 

ヨシテルがアイアンウルフの群れに遭遇する直前、リフィの魔力制御が開始された。

周囲の空気の流れが、ヨシテルの動きに合わせてわずかに変化した。

ヨシテルには、まるで自分が風になったかのように、周囲の魔物たちの動きがスローモーションに見える。

 

 

「グルルルル!」

 

 

アイアンウルフが、低いうなり声を上げながら、同時に五方からヨシテルに向かって飛びかかってきた。

 

ヨシテルは、冷静に〈姫鶴一文字〉を抜き、一歩踏み込んだ。

 

(速い!この速度は、俺自身のAGIだけじゃない。リフィの風のエンチャントだ)

 

一閃。風に乗った斬撃は、アイアンウルフの一体の腹部を切り裂いた。

さらに、二刀目の〈にっかり青江〉を水平に薙ぎ払う。

この斬撃も、風の魔力でわずかに軌道が補正され、一瞬早く、別のウルフの首筋を捉えた。

 

 

「グガッ!」

 

 

わずか一秒で二体のウルフが絶命。

残りの三体は、目の前で仲間が瞬殺されたことに恐怖し、動きが鈍る。

 

(このエンチャント、完全に俺の魔剣の能力として溶け込んでいる。魔力の流れも不自然ではない)

 

しかし、アイアンウルフのリーダー格の一体が、ヨシテルの背後に回り込もうと、森の木々を利用して高速で駆け抜けた。

 

(リフィの低威力支援が必要な状況だ。そして、俺の複合魔法で一掃する)

 

「光と火の複合魔法、〈フラッシュ・イグニッション〉!」

 

ヨシテルは、光属性魔力で周囲を閃光で覆い、一瞬、魔物の目を眩ませる。

その直後、火属性魔力を凝縮した炎の刃を、回転させながらアイアンウルフに向けて放った。

 

この瞬間、リフィが動いた。

 

ヨシテルの放った火の魔力の周囲に、リフィは極めて微細な風の魔力を組み込んだ。

炎の刃は、リフィの風の魔力によって、射程が2倍に延長され、速度が跳ね上がり、さらにその熱量が凝縮された。

 

結果、炎の刃は、目眩ましから回復する間も与えず、残りの三体のアイアンウルフを同時に焼き尽くした。

 

「鑑定の結果、戦闘は極めて優位に進捗。戦闘終了まで、魔力消費は概算で10%未満に抑えられています」

 

クオーレが、戦闘効率を報告する。

 

(完璧だ。三属性複合魔法に見える効果で、俺の魔力はほとんど消耗していない。リフィの魔力制御が、俺の魔力を「触媒」として利用しているからだ)

 

 

アイアンウルフの群れを掃討した後、ヨシテルは、依頼のもう一つの目的である「再調査」のため、巨大ゴブリンの群れを一掃し、西の古井戸へと向かった。

古井戸は、以前コボルトキングを倒したときと同じ、ひっそりとした佇まいだ。

ヨシテルは、周囲に誰もいないことを確認し、井戸の底へと静かに降りて行った。

 

『マスター。井戸の底の隠された空間に、新たな魔力反応を検知。これは、古代文明の魔力炉の残留魔力であり、井戸の壁の奥にある隠し扉の存在を確信します』

 

クオーレが、図書館の情報と現地をリンクさせ、確実な解析結果を出した。

 

(やはり、ここが地下遺跡への入り口の一つか。前回の討伐では、コボルトキングの魔石が必要で、扉を開けるところまでは確認できなかったが…)

 

ヨシテルは、井戸の壁に触れ、『鑑定』を発動させた。壁の奥に、高度な魔法で封印された石造りの扉があるのが分かった。

 

(扉の封印を解くための鍵は、コボルトキングの魔石…すでに手に入れている。だが、この場で封印を解けば、ギルドに報告する前に危険な魔物と遭遇するリスクがある)

 

彼は、焦らずに準備を進めることを決めた。

 

(今日のところは、依頼の報告を優先し、ギルドの目を逸らしておくべきだ。地下遺跡の探索は、Cランク昇格の目処が立って、より自由な行動が許されてからが本番だ)

 

ヨシテルは、討伐の証拠(魔石とアイアンウルフの毛皮)を回収し、古井戸を後にした。

 

(よし、完璧だ。これで、俺の異世界生活の最大の不満が解消されたがいずれこの世界を冒険する為の拠点も欲しいな。まぁ、どの国になるか分からないがそのうち考えるか。)

 

リフィとクオーレという二人の優秀な相棒と共に、ヨシテルのDランク冒険者としての活動は、順調に次のステージへと進んでいくのだった。

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