ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福― 作:煌人
オークジェネラル(Aランク)とハイオーク三体を瞬殺した後、ヨシテルはギルドへ戻らず、オークが出現した森の奥へと足を進めた。
彼の目的は、Aランク魔物の出現原因の調査ではなく、自身の能力調整と、装備のアップデートだ。
『マスター、この森のさらに奥には、黒竜の森との境界領域があります。このまま進むと、Bランク以上の魔物との遭遇率が飛躍的に上昇します』
クオーレが警告する。
(問題ない、クオーレ。むしろ好都合だ。俺は今、新たなステータスと、リフィの支援体制を整えた。しかし、このままでは意識して力を抑えないと日常に支障が出る)
ヨシテルが直面していた問題。
それは、彼の新しいステータス【瞬神】が持つ、圧倒的な存在感と力だ。
(AGI 75000の状態で、普通に歩けるか? 無意識に力を込めれば、足元の大地が砕けるだろう。VIT 60000の防御力は、普通の体術で受けた衝撃を周囲に拡散してしまう)
さらに重要なのは、威圧感だ。
レベル350、攻撃力65000という数値は、人間や通常の生物にとっては、自然災害レベルの圧力となる。
これを日常で完全に抑え込むには、意識的な魔力操作が必要となり、常に疲労する。
そして、戦闘時にも問題がある。
素材集めや模擬戦で、全力の瞬神の力を使えば、対象は跡形もなく消滅してしまう。
(俺のユニークスキルには『手加減』があるが、これでは意識して制御する必要がある。無意識下でも、日常と素材集めを両立できる、絶対的な制御スキルが必要だ)
ヨシテルは、森の奥深く、魔物の気配がない静かな空間を選び、腰を下ろした。
「アルティメットスキル:魔術(スキル創造)。ユニークスキル:絶対手加減(アブソリュート・ディミヌート)を創造する」
彼は、自身のギフトの力を用い、既存の『手加減』スキルを基礎に、自身の『瞬神』ステータスを完全に内包し、日常に最適化する新たなユニークスキルを創造した。
ユニークスキル:絶対手加減(アブソリュート・ディミヌート)
分類: 制御/特性
効果:無意識制御: 職業『瞬神』の持つ圧倒的な能力値(AGI 75000, STR 65000など)を、無意識下でも日常生活(歩行、会話、食事、物品の保持、他諸々)に影響が出ないレベルに自動調整・抑制する。威圧感や圧迫感も完全に無効化される。
対弱者抑制: 自身よりステータスが下の対象(人間、冒険者、低級魔物)に対し、自動的に致命傷を避ける手加減を発動する。
模擬戦や決闘において、相手を殺傷せず、無力化に留める。但し、ステータスが下の対象を殺せ無い訳では無い。
素材保持: 魔物を討伐する際、その命を刈り取る瞬間、攻撃が魔物の体組織の素材価値のある部位を絶対に傷つけず、最高の状態で保持する。
備考: ステータスが上昇したことでこれからの日常における弊害を完全に解消するためのパッシブスキル。
スキルが創造された瞬間、ヨシテルの全身を覆っていた、気づかないうちに解放されていた「威圧感」が、まるで空気のように消え去った。
(おお...すごい。これだ!)
彼は試しに、地面を強く踏みしめてみたが、地面は少しも凹まない。
意識しなければ、彼は普通の人間と同じように重力を感じ、歩くことができる。
(これで、ギルドに戻っても、リーファさんを威圧することもないし、食堂のテーブルをうっかり壊す心配もない。そして、魔物と戦っても、素材を完璧な状態で回収できる)
新しいステータスを得た今、俺の持つ特質級(ユニーク)の魔剣〈姫鶴一文字〉と〈にっかり青江〉の能力では、全く足りない。
AGI 75000の速度で振るうには、その威力を受け止め、さらに増幅させる、創世級(ジェネシス)の武器が必要だ。
(この魔剣自体が俺の魂と深くリンクしている。このまま素材を加えて、ジェネシス級に再生成する)
ヨシテルは、アイテムボックスから、以前『全知全能』で創造しておいた、この世界に存在しない究極の素材を取り出した。
SSランクの魔石: 既存の魔石の100倍の魔力を保持する。
魔晄玉鋼(まこうたまはがね): 魔力の流れを極限まで高める、伝説の金属。
ヒヒイロカネ: 絶大な耐久性と、属性付与能力を持つ神話の金属。
そして、それらの素材を、今手にしている〈姫鶴一文字〉と〈にっかり青江〉に重ね合わせた。
「アルティメットスキル:武器防具作成。素材:SSランク魔石、魔晄玉鋼、ヒヒイロカネ。ランク:ジェネシス」
『全知全能』の力を経由した『アルティメットスキル:武器防具作成』は、世界の法則を無視して、瞬時に武器を再構築する。
ヨシテルの双剣が、眩い光に包まれた。
光が収まると、二振りの魔剣は、その姿はそのままに、白く深い輝きを放ち始めた。
刀身が桜色の様な色になり更には、姫鶴一文字は雷と氷と水がにっかり青江は風と火と土、そして光と闇の魔力が常に微細に渦巻いているのが見える。
『ジェネシス級魔剣〈姫鶴一文字〉、〈にっかり青江〉への再生成完了。武器のステータスが、マスターの能力値に同期されました』
ジェネシス級双極魔剣
ランク: 創世級(ジェネシス)
特性:能力同期: 振るい手の攻撃力、俊敏性、魔力の最大値に合わせて、武器の基礎能力が無限に成長。
属性増幅: 光、火、雷、氷、風、水、土、闇、万能属性すべての魔術の威力を極限まで増幅。
無効化: ヨシテル以外が悪意を持って触れると、耐え難い苦痛を与え、鑑定も完全に不可。
封印鞘: 新しく創造したジェネシス級の木材でできた鞘に入れられている間は、武器の能力をノーマル級以下に抑える。能力を抑えるための札が乱雑に何枚か貼られた状態に見えるように偽装されている。
ヨシテルは、新しい鞘に収められた魔剣を見た。
美しい見た目に札が乱雑に貼られた二本の鞘。
しかし、その中には世界の法則を書き換えたジェネシス級の力が眠っている。
(これで、俺の装備は、このステータスに見合ったものになった。後は、この力が、本当に『絶対手加減』の制御下にあるかを試すだけだ)
ヨシテルは、古井戸周辺の普通の森から、さらに黒竜の森に近い、魔物の密度が高いエリアへと足を踏み入れた。
『マスター、前方より、岩肌を持つ上級オーク、ロックオーク(Cランク)5体の群れを検知しました』
(ちょうどいい。ロックオークの硬い皮膚は、『絶対手加減』とジェネシス級の威力を試すには最適だ。リフィ、支援は頼むが、あくまで試し斬りが最優先だ)
『承知いたしました、マスター。』
ロックオークたちは、人間の侵入者に気づくと、棍棒を振り上げ、地響きを立てながら突進してきた。
ヨシテルは、鞘から双剣を抜き放った。
その瞬間、ジェネシス級の力が解放された。
「縮地!」
AGI 75000の速度は、もはや瞬間移動だ。
彼は、ロックオークの群れの中央に、一瞬で出現した。
彼は、あえて剣術スキルではなく、ただの横薙ぎの斬撃を放った。
〈姫鶴一文字〉が、ロックオークのリーダーの首筋を通過する。
速度は超音速だが、ヨシテルには全ての動きがスローモーションに見える。
『絶対手加減』が発動した。
通常、この速度とSTR 65000の力で斬れば、ロックオークの頭は蒸発する。
しかし、斬撃が皮膚に触れた瞬間、『絶対手加減』が威力を制御し、魔力の衝撃のみを生命維持に必要な器官にピンポイントで集中させた。
キュオンという、空気を切り裂くような微かな音だけが響き、ロックオークの巨体は、その場でピタリと静止した。
ズドンッ!
ロックオークは、力尽きて地面に崩れ落ちたが、その岩のような頭部は、完璧な形で残っている。
首筋の傷口は、まるで外科手術のように鋭く、深いが、周囲の肉や皮膚は少しも損傷していない。
(すげぇ。これがジェネシス級の切れ味と、『絶対手加減』の制御力か。この威力で、素材が一切傷んでいない!)
残りの四体のロックオークは、リーダーの死に恐怖を感じる間もなく、ヨシテルの瞬影による連続斬撃の餌食となった。
一瞬の間に、四体のロックオークは完璧な素材を残して倒れ伏した。
『回収可能素材:ロックオークの魔石(Cランク)、ロックオークの岩皮(最高品質)100%。回収効率:完璧です』
クオーレが、素材の品質を保証する。
(よし。これで、俺の異世界での活動に、何の制限もなくなった。俺が望むすべてのことを、最高の効率と最高の自由度で実行できる)
ヨシテルは、ジェネシス級の魔剣の性能、そして『絶対手加減』の制御力を心ゆくまで堪能した。
(さて、次は防具も変えるか。あっ、そう言えばパーティーの件もどうにかなるか。)