ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福― 作:煌人
ジェネシス級魔剣の試し斬りを終え、ヨシテルは森の中で静かに佇んでいた。
手には、完璧な状態で回収されたロックオークの魔石と岩皮。
(『絶対手加減』は完璧だ。無意識下で俺の力を日常レベルに抑え込み、戦闘では必要な威力だけを対象に集中させる。これで、素材集めの効率が格段に上がったな)
リフィが、ヨシテルの肩の近くに、目に見えない風の微粒子として漂っている。
『マスター、戦闘効率の検証結果を報告します。ジェネシス級魔剣とマスターのステータス同期により、ロックオーク討伐に必要な魔力は、以前の模擬戦の100分の1にまで減少しました。魔剣の属性増幅能力が極めて優秀です』
(そうか、良かった。魔力の心配は皆無になったな。だが、クオーレ。次の課題だ。俺の防御装備が、このステータスに見合っていない)
現在、ヨシテルが身に纏っているのは、以前創造した特質級の黒い装束〈瞬影の装束〉だ。
これは、AGIの向上と、闇属性の隠蔽能力に優れているが、VIT 60000という防御力を活かしきるには、耐久性と魔力防御の面で明らかに不足している。
(STR 65000、AGI 75000の俺が、Aランク以上の魔物の攻撃を防ぐには、この装束では心もとない。ジェネシス級の防具を創造する必要がある。そして、装束の特性である俊敏性と隠蔽を、さらに高めなければならない)
ヨシテルは、アイテムボックスから、魔剣の創造時に使用した究極の素材群の残りと、防具に特化した素材を取り出した。
聖獣の剛皮(ジェネシス級): 最強の物理防御と魔力耐性を誇る。
世界樹の繊維(ジェネシス級): 重量を感知させず、俊敏性を極限まで高める特性を持つ。
魔晄の糸(ジェネシス級): 魔力伝導を極限まで高める特性を持ち切れることは無くシルクの様な肌触りにする。
「アルティメットスキル:武器防具作成。素材:聖獣の剛皮、世界樹の繊維、魔晄の糸。ランク:ジェネシス」
彼は、現在の〈瞬影の装束〉にそれらの素材を重ね合わせ、『全知全能』の力で、世界の法則を書き換えるように再生成を命じた。
黒い装束が、今度は深い青と黒のグラデーションを放ち始めた。
光を吸収し、その輪郭すら曖昧にする、まさに影のような輝きだ。装束の素材は、見た目には薄い布地のようだが、その触感は、鋼鉄よりも硬く、それでいて絹のように滑らかだった。
『ジェネシス級防具:〈瞬神の装束(シェイド・クロノス)〉への再生成完了。全能力値がマスターのステータスに同期されました』
ジェネシス級防具:瞬神の装束(シェイド・クロノス)
ランク: 創世級(ジェネシス)
特性:能力同期: 振るい手のステータス(VIT、AGI、MP)の最大値に合わせて、防御力と魔力耐久力が無限に成長。
空間遮断: あらゆる物理・魔法攻撃に対し、防御力VIT 60000と連動した空間結界を自動展開。攻撃を空間ごとずらし、無効化する。
無効化: ヨシテル以外による鑑定は完全に不可。更にヨシテル以外に着ることが出来ない。
俊敏増幅: AGIの能力値をさらに底上げし、『縮地』の発動効率を10倍に向上させる。
環境偽装: 常に周囲の魔力環境に合わせて、自身をレジェンド級の装束と誤認させ、装備の真のランクを隠蔽する。
(完璧だ。これならば、VIT 60000の防御力と相まって、SSランクの魔物の攻撃ですら耐えられるだろう。そして、AGIの増幅は、俺の戦闘の自由度をさらに高める)
ヨシテルは、新しくなった〈瞬神の装束〉をまとい、その軽さと、全身を巡る微細な魔力の流れを感じた。
これで、戦闘準備は万全だ。
防具の強化を終え、ヨシテルはリフィへと意識を向けた。
(リフィ。お前には、これまで俺の魔力制御を担わせるために、目に見えない形で活動してもらっていたが、もうその必要はないよ)
『マスター? リフィは、マスターの指示に従い、外部には一切存在を知覚させないよう、魔力反応を隠し続けておりますが……』
(ああ。だが、俺がステータスを解放し、『絶対手加減』を創造したことで、状況が変わったんだ。俺はもう、誰かに干渉されることを恐れて、自分の行動を制限する必要はないからね)
ヨシテルは続けた。
(それに、俺のステータスが瞬神(レベル350)となった今、リフィのSSランク級の能力も、「俺が使役する精霊」として、堂々と公開して問題ないかな。むしろ、SSランクの精霊を使役する事実が、俺の規格外の力の説得力を増す。リフィは、もう俺の指示で隠れる必要はないよ)
『マスター、ありがとうございます!これで、リフィはマスターの傍で、この力を全力で振るうことができます!』
リフィは、喜びの感情を思考で伝えてきた。
(リフィ。お前の真の能力を開放する。そして、俺のSSランク精霊として、そのステータスをこの世界で通用する形に再構築する)
ヨシテルは、再び『全知全能』と『アルティメットスキル:精霊召喚』を起動した。
SSランク精霊リフィ(再構築後)
リフィの魔力体が、ヨシテルの前に姿を現した。人間の子供ほどのサイズ(約1メートル)だ。
リフィの魔力体から溢れる風の魔力は、も緩やかに溢れている。
名称: リフィ
種類: 風のシルフ(精霊)
ランク: SS
レベル: 230
体力 (HP): 30000
魔力 (MP): 50000
攻撃力 (STR): 25000
防御力 (VIT): 40000
魔力 (INT): 55000
俊敏性 (AGI): 20000
スキル: 風魔法、算術、高速、手加減
エクストラスキル: 鑑定、身体強化、魔力操作
ユニークスキル: 絶対手加減、環境魔力制御、属性複合支援、情報伝達、身体サイズ変化、透明化
備考: SSランクの強大な力はヨシテルによって付けられた、『絶対手加減』により、その威圧感は制御されている。
このステータスは、鑑定されてもスキルは見ることが出来ない。
リフィの全身から放出される魔力は、ヨシテルが付けた『絶対手加減』が発動しているため、リフィの周囲は、穏やかな微風に包まれている。
(クオーレ、リフィのステータスは問題ないか? Dランクの街で、レベル230の精霊の存在は目立たないか?)
『分析結果:問題ありません。マスターのレベルが350、職業が『瞬神』であるため、レベル230のSSランク精霊を使役することは、マスターの規格外の能力に見合ったものと認識されます。逆に、精霊の存在が、マスターのステータスの説得力を高めます』
(よし。これからは、二人で堂々と行動しよう)
リフィの再構築を終えたヨシテルは、ふと、自身のアルティメットスキル一覧に目をやった。
アルティメットスキル:精霊召喚、召喚魔術、武器防具作成、アイテム作成、魔術(魔法創造、スキル創造)
(そういえば、俺には『召喚魔術』もあったな)
今まで、ヨシテルはリフィという精霊を創造し、その制御を『精霊召喚』で担わせていたため、『召喚魔術』というスキルがあることを意識の外に置いていた。
『召喚魔術』
それは、単なる精霊召喚に留まらない、より高次元の召喚の概念を示す。
(『精霊召喚』でリフィを創造したが、『召喚魔術』がアルティメットスキルとして存在するということは……)
クオーレが、ヨシテルの思考に反応する。
『クオーレ、召喚魔術について、俺の知識と照合してくれ』
『照合開始。召喚魔術は、『精霊召喚』を基盤としつつ、精霊以外の生命体、あるいは別次元の存在を召喚・使役する領域に踏み込んでいます。複数の精霊、あるいはより複雑な使役契約を結ぶことも可能です』
ヨシテルの脳裏に、古代文明アトランティアの図書館で得た知識が蘇る。
そこには、『神獣』や『魔王』といった、精霊とは全く異なる、伝説の存在を使役した古代の魔術師の記述があった。
(なるほど。リフィは、あくまで『精霊召喚』の成果だ。この『召喚魔術』を使えば、俺のパーティは、俺とリフィだけでは終わらない)
ヨシテルの瞳に、強い光が宿った。そして彼は、また思考しはじめた。
(次は、仲間の召喚だな。俺を裏切らない最高の仲間を。この『召喚魔術』を使い、リフィに続く、新たな最強の相棒を探し出す。最高のパーティを編成し、この地を巡ろう。色々な国や街を見てみたい)
ヨシテルは、SSランク精霊リフィを伴い、召喚魔術で召喚する人物を考え始めた。