ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福― 作:煌人
ギルドを出た俺たち六人は、街のメインストリートを歩きながら、先ほどのトラブルについて話していた。
ギルドの注目度が一気に高まったのは間違いない。
「まさか、あんな奴らに絡まれるとはね。威圧しただけで吐くなんて、情けないわ」アルシェが呆れたように言った。
「ホンマや。ワザワザ自分から喧嘩売って、あんな目に遭うなんてアホやな。まぁ、ヨシテルがキレたらああなるわな」イシュタルが肩をすくめる。
俺は歩きながら、皆に問いかけた。
「皆。パーティー名、【ヴィンクルム】に決めてしまったが、皆にとって不満はなかったか?」
ヴィンクルム(Vinculum)はラテン語で『絆』や『鎖』を意味する言葉だ。俺が一方的に決めた。
バルトが豪快に笑った。
「不満なんてあるわけないだろ、ヨシテル。俺たちは元々、お前との『絆』で動いているんだ。最高の名前だぜ!」
「うん、アタシも気に入っとるばい。旦那様がつけてくれた名なら、何でも最高ばい!」カグヤも笑顔だ。
アレスは静かに答える。
「俺は異論ない。絆は、俺たちが絶対に失ってはならないものだ」
「フフ、文句あるわけないでしょ。ヨシテルの選んだ名だもの。私たち、これからこの名で世界を駆け巡るのよ」アルシェも満足そうだ。それにイシュタルも頷いている。
「ま、名前は決まったんやし、次は腹ごしらえやな!昼飯、何にするん?」イシュタルが空腹を訴える。
「そうだな。とりあえず、人が多くなくて落ち着いて話せる飯屋を探そう。依頼のことも話さないといけない」
俺たちは路地裏に入ったところで見つけた、清潔で小洒落た酒場兼飯屋に入った。
幸い、昼時を少し過ぎていたため、客は少なく、奥の広いテーブル席に案内された。
各自が食事と飲み物を注文し、テーブルに料理が並び始める。
「じゃあ、食いながら依頼の話をしよう」俺は言った。
「Bランク依頼は、どれも難易度は高い。だが、俺たちの最終的な目標はSランク。Aランク依頼に慣れるためにも、比較的簡単なものから始めたい」
「アレスが言っていた盗賊討伐ってのがあったやろ?あれはどうや?」イシュタルが焼き魚を頬張りながら聞く。
「ああ。Bランクの討伐依頼で、『近郊山脈に潜伏する大規模盗賊団の討伐と殲滅』だ。ギルドからの情報では、盗賊団の構成は百五十人規模。頭領はCランク冒険者と同程度だろうとのことだ」
バルトが興味を示す。
「百五十人か。数だけは多いな。普通のBランクパーティーなら、数の暴力で押し負けるだろう」
「人数が多いだけで、個々の戦闘力は低いかも。でも、皆の連携を試すにはちょうど良か依頼かもしれんね」カグヤが同意する。
「その通りだ。それに、討伐対象が盗賊なら、容赦なく全力が出せる。俺たちの力を隠さずに、迅速に終わらせる」俺は全員の顔を見回した。
「アルシェ、バルト、カグヤ、イシュタル、アレス。この盗賊討伐、受けるつもりだが、皆はどう思う?」
アルシェがすぐに頷いた。
「異論はないわ。人数の多さにビビる必要もないし、殲滅すればAランクへの昇格要件も満たせる。一石二鳥よ」
「ヨシテルの判断に任せる。最高の戦果を持ち帰るぜ」バルトが戦鎚を握る仕草をする。
「殲滅対象、了解。俺は情報収集と暗殺、奇襲を担当するさ。集団戦は得意だ」アレスが冷酷な笑みを浮かべる。
「よっしゃ!アタシの炎帝の銃(イグニス・ガン)が火を噴くで!ド派手に燃やしたるわ!」イシュタルは陽気に言ってはいるが、瞳には冷徹な光が宿っている。
「アタシは全力で皆を支援するばい!一瞬たりとも、誰も傷つかせん!」カグヤが力強く宣言した。
「よし、決まりだ。この盗賊団討伐依頼を受ける」
「アレス、情報収集を頼む。盗賊団の正確な拠点、警備、構成員の配置、全てだ。できれば、頭領の強さの再確認も」
「了解した。眷属召喚」
アレスはすぐにユニークスキルを発動させ、五匹の漆黒の小さな狼の影を床に解き放った。
眷属は瞬時に壁を通り抜け、街の外へと飛び去っていく。他の客は誰もその光景を見ていない。
「これで半日もあれば、全ての情報が手に入る」アレスが言った。
昼食後、俺たちは宿屋に戻ってリラックスし、夕方には再び街の賑やかな飯屋兼酒場へ繰り出した。
「今日は最高の宿と最高の飯ばい!ギルドの登録もBランクスタートで、ホントに良かったばい!」カグヤがご機嫌だ。
「俺たちがEランクとかDランクだったら、かえって目立ちすぎて面倒だっただろうな」バルトがエールジョッキを傾けながら言う。
「ガゼルも、流石はギルドマスターやな。私たちの力を見抜いて、面倒を未然に防いだんや」イシュタルが辛口の酒を飲む。
「ま、あいつの苦労はこれからだろうけどな」俺はワインを一口飲んだ。
リフィは俺の肩で眠っているふりをしながら、楽しそうに笑っている。
「そういえば、ヨシテル。俺たちがこれからBランク依頼を受けるとして、皆の装備を少しは目立たなくしなくていいのか?」バルトが心配そうに聞いた。
彼の闇の鎧(ロリカ・テネブリス)はレジェンド級の中鎧に偽装されているとはいえ、その素材の輝きは尋常ではない。
「問題ない。別段、隠してる訳でもないしな。鑑定では何のデータも出ないし、もし誰かが装備のランクを尋ねてきても、適当なレア級かユニーク級かレジェンド級だとでも答えればいいさ。誰もジェネシス級なんて、想像すらできないからな」
「なるほど、一番安全な方法だわ」アルシェが納得した。
その時、アレスの眷属が一匹、窓から影のように滑り込んできた。
「情報が来たぞ」
アレスはテーブルの上で、情報統合(インテグレート)スキルを発動させる。集まった情報が彼の頭の中で瞬時に整理された。
「盗賊団の本拠地は、街から北東へ約15kmの山中の廃墟。リーダーは元Aランク冒険者で、現在は追放された『血斧のガーロム』。戦闘力はCランク相当だが、仲間に強力な魔術師が二人いる。総勢は百五十七名。装備はやはり大したことはないが、廃墟の防衛は手堅い」
「元Aランクか。追放されてもCランク程度の力は残ってるんやな」イシュタルが少しだけ戦闘意欲を高める。
「魔術師が厄介だな。広範囲攻撃はカグヤとアルシェラに任せる」
「お任せばい。地形もバフも全て完璧にやるけん」カグヤが自信を持って言う。
「作戦はシンプルだ。夜襲。アレスの誘導で敵の防衛線を潜り抜け、カグヤの結界で外部の増援を遮断。バルトが正面のヘイトを一気に引きつけ、俺とアルシェラ、イシュタルでリーダーと魔術師を速攻で潰す」
「皆、盗賊だ。容赦はするな。」俺は冷徹に言い放った。
「もちろんだ、ヨシテル」バルトが応える。
「翌日、ギルドに盗賊討伐依頼を受ける事を申請する。今日はゆっくり過ごして、明日に備えるぞ」
俺たちは酒を飲み、笑い、明日始まるBランクの初依頼、盗賊団討伐に思いを馳せた。