ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福―   作:煌人

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31話め


第三十一話: 初陣の『氷の花』、殲滅の夜が始まる

 

 

翌日の昼過ぎ、俺たちは再び冒険者ギルドを訪れた。受付のリーファに声をかける。

 

「リーファさん、昨日話したBランクの討伐依頼、『近郊山脈に潜伏する大規模盗賊団の討伐と殲滅』を受注します」

 

リーファは、俺たちのパーティーの顔ぶれを見て、一瞬ためらった。

 

「え、あ、はい!承知いたしました。この依頼はBランクの中でも難易度が高くギルドとしては複数パーティーでの受注を推奨してますし失敗したパーティーも多いのですが、本当に…」

 

「大丈夫だ。殲滅してくる」俺は簡潔に答えた。

 

「で、では、確認いたしますね。この依頼は、討伐対象が百五十人を超える規模のため、ギルドからの『行者(ぎょうじゃ)』と呼ばれる職員による道案内と、成果物(証拠品の頭部)を運搬するための幌付き馬車の手配が義務付けられています」

 

「問題ない。頼む」

 

しばらくすると、ギルドの裏口から、ややくたびれた中年の行者と幌付き馬車が用意された。

行者は痩せ型で、見るからに戦闘とは縁遠そうだ。

 

「私はテオドールと申します。今回はヴィンクルムの案内を務めます。ですが、あくまで案内人ですので、戦闘には参加できません」テオドールは緊張した面持ちで挨拶した。

 

「ああ、承知している。よろしく頼む、テオドールさん。馬車の運転も頼む」

 

俺たち六人は馬車に乗り込み、街の北門から山脈へと向かう道を進んだ。

ジェネシス級の装備は、全てローブやマントの下に隠してある。

馬車はゴトゴトと揺れながら、人の気配が途絶えた山道へと入っていく。

 

エルドラの街を出て数時間が経過し、夕日が山々に沈みかけていた。

空が紫色に染まり、周囲の木々が影を濃くし始める。

盗賊団のアジトまでは、アレスの計算ではあと三十分ほどの距離だ。

その時、馬車の幌の中でくつろいでいたアレスが、鋭い視線を馬車の外に向けた。

 

「ヨシテル、来るぞ。盗賊だ。約二十名。馬車の動きを見て、獲物だと判断したようだ」

 

俺は静かに指示を出した。

 

「皆、準備を。バルト、お前は馬車の前に。アルシェ、カグヤ、イシュタルもそのまま馬車の周囲を警戒、アレスは馬車の後ろを警戒してくれ」

 

テオドールは怯えた声を上げた。

 

「ひぃっ!盗賊!わ、私はどうすれば!?」

 

「テオドールさんは馬車から降りずに、そのまま運転席にいてください。カグヤが後で結界を張る。絶対に動かないように頼む」俺は冷静にテオドールに告げた。

 

山道のカーブを曲がった瞬間、草むらや木々の影から、粗末な革鎧を纏った盗賊たちが得物を振りかざして飛び出してきた。

その数は、アレスの報告通り約二十名。

盗賊の一人が、馬車の幌を見て下品に笑った。

 

「ヒャッハー!運がいいぜ!馬車だ、金目のものと、女が居るじゃねぇか!しかも珍しい生き物まで居るとわな!特に後ろの馬車はデカいからな金目の物もあるだろ。女ども、大人しくこっちにこい!俺たちの新しい玩具にしてやる!」

 

彼らは無知ゆえに、俺たちの存在を理解できていない。

特に女性陣を『玩具』だと、リフィ達を侮辱した瞬間、俺の冷静な思考の蓋が外れた。

 

「テメェら…」

 

俺は怒りのあまり、一瞬で瞳を紅く染めた。

SSランク『瞬神』の殺気が、周囲の空気を捻じ曲げる。

盗賊たちの顔が恐怖に歪む。

彼らが理解したのは、目の前の男が自分たちの想像を遥かに超えた存在だということだけだ。

俺はジェネシス級の日本刀には触れず、右手を前に突き出し、指を鳴らした。

 

「グラキエス・フロース(氷の花)」

 

俺が好んで使う氷属性魔術と、アルティメットスキル『魔術創造』を複合させて創造した、俺のオリジナル氷結魔術だ。

刹那、俺の手から放たれた極低温の冷気が、花弁のように渦を巻きながら盗賊たちを包み込んだ。

盗賊たちは声すら上げる間もなく、その場で動きを止めた。彼らの身体は、一瞬で青白い氷の華の中に閉じ込められる。

盗賊団の二十名は、そのまま直立不動の氷の彫像へと変貌した。

その氷は、絶対零度に近い極限の温度で生成されており、通常の炎や魔術では溶けることはない。

何年もこの状態で残るだろう。

 

「ふぅ。手を汚さずに済んだな」

 

俺は右手を下ろし、吐き捨てるように言った。

馬車の周囲を警戒していたアルシェが、その光景を見て溜息をついた。

 

「相変わらず容赦ないわね、ヨシテル。一瞬で氷漬けとはね」

 

「旦那様がキレると、本当に怖かね」カグヤが小さく呟いた。

 

「これなら最高に効率的やな。後で燃やす手間も省けるわ」イシュタルは冷徹だ。

 

テオドールは、氷漬けになった二十体の盗賊を見て、口を開けたまま震えている。

 

「い、一瞬で…ま、魔法…これが…B級なのか?」

 

俺はテオドールに顔を向けた。

 

「テオドールさん。この二十体の死体は、ギルドに討伐報告をするまで、このまま残しておく。この氷は、俺以外の者には溶かすことができない。盗賊団を討伐次第、戻ってから溶かして証拠品として回収します。それまで、ここで馬車と共に待っていてくれ」

 

「は、はい!わかりました!絶対に動きません!」テオドールは顔面蒼白で、完全に腰が抜けていた。

 

「カグヤ、頼む」

 

「了解!」

 

カグヤは手に持ったジェネシス級魔杖『永遠の杖(ウィルガ・アエテルナ)』を掲げ、優しく輝く光を馬車とテオドールに放った。

 

「ヴェールム・ルーチス(光のヴェール)」

 

馬車とテオドールを覆うように、美しい光の結界が張られる。

 

「この結界は、外部からの攻撃や、馬車からの移動を物理的に制限する光の防御壁ばい。アタシたちが戻るまで、安心して待っとってね」

 

「あ、ありがとうございます…」テオドールは安心しきった表情で頷いた。

 

「よし、皆、行くぞ。アレス、アジトまで最短ルートで案内してくれ」

 

「了解。夜襲開始だ」

 

俺たち【ヴィンクルム】は、静かに闇夜の中へと姿を消した。殲滅戦の火蓋が切って落とされた。

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