ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福―   作:煌人

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32話め


第三十二話: 蹂躙の宴、ヴィンクルムの真価

 

 

夜の帳が完全に下り、月明かりが山肌を青白く照らしている。

アレスの案内で、俺たちは盗賊団『血斧のガーロム』の本拠地である廃墟の城門前に到着した。

城壁の上には数人の見張りが立っているが、彼らは自分たちの死が目前に迫っていることなど、露ほども疑っていない。

 

「アレス、状況は?」

 

俺の問いに、闇に溶け込んでいたアレスが音もなく隣に現れる。

 

「俺の眷属が情報を持って帰ってきた。賊は全部で百三十七名。リーダーと魔術師二人は奥の広間で酒盛り中だ。それと……地下に地下牢がある。そこに、攫われたと思われる村人の人質が十二名確認できた」

 

「人質か……」俺は少しだけ目を細めた。

 

「作戦変更だ。地下に衝撃がいかない程度に、地上と広場を叩く。各個撃破、自由行動を許可する。ただし、地下の安全だけは最優先で確保しよう」

 

「了解!」

 

「わかったわ、ヨシテル」

 

皆の瞳に、冷徹な光が宿る。

 

「カグヤ、バルト、アルシェラ、イシュタル、アレス。リフィたち精霊にも攻撃と補助の全権を許可するから好きに暴れよう。さて……始めようか。バルト!」

 

「おう!任せとけ!」

 

バルトが巨大なジェネシス級戦鎚『永遠の戦争の戦鎚』を肩に担ぎ、一気に城門へと突き進む。

 

「どけえええい! 『城門破壊(ゲート・ブレイカー)』!!」

 

 

ドォォォォン!!

 

 

轟音と共に、厚い木製の城門が粉々に砕け散り、破片がアジトの内側へと弾け飛んだ。

あまりの衝撃に、近くにいた盗賊たちが肉片となって吹き飛ぶ。

 

「な、なんだ!? 敵襲だ!!」

 

慌てふためく盗賊たちが武器を手に広場へ集まってくる。

だが、そこはすでに地獄の入り口だった。

 

「遅いばい。『ヴェールム・ルーチス(光のヴェール)』! 皆の力を底上げするけんね!」

 

カグヤの放つ光が俺たちの身体を包み、ステータスがさらに跳ね上がる。

それと同時に、手のひらサイズのリフィたちが空中を舞い、無数の魔法弾を雨あられと降らせ始めた。

 

「さあ、お掃除の時間よ。『イラ・デオルム(神々の怒り)』!」

 

アルシェラが直剣を天に掲げると、雲一つなかった夜空から漆黒の雷雲が渦を巻き、無数の巨大な雷柱がアジトに降り注いだ。

落雷の一撃ごとに、数十人の盗賊が炭化し、絶命していく。

 

「あはは! 景気良く燃えてもらうで! イグニス・ドラコ・ファング(火竜の 牙)」

 

イシュタルが魔銃と魔弓を交互に操りながら、自身の周囲に巨大な火竜の顎を顕現させた。

襲いかかる盗賊たちは、近づくことすら叶わず、その猛火の中に飲み込まれて消えていく。

アレスは影から影へと飛び移り、音もなく賊の喉元を切り裂いていく。その動きはまさに死神だ。

広場は瞬く間に、血と悲鳴、そして超常的な魔術の光に支配された。

俺はゆっくりと歩を進める。

目の前には、恐怖で腰が抜け、逃げようとする十数人の盗賊たちがいた。

 

「逃がすかよ」

 

俺は右手を静かに突き出し、さらに魔力を収束させる。

 

 

「『グラキエス・フロース・フネブリス(氷の華の葬送)』」

 

 

先ほどの氷の花よりもさらに巨大で、禍々しいまでの美しさを湛えた氷の結晶が、盗賊たちの足元から一気に咲き誇った。

 

結晶が触れた瞬間、賊たちの身体は細胞レベルで凍結し、その美しき花弁の中へと取り込まれていく。

結晶はさらに周囲の建物を侵食し、広場の一部を永久に溶けない氷の墓標へと変えてしまった。

 

「ひ、ひぃ……化け物……」

 

生き残った数少ない盗賊が、絶望に顔を歪めて崩れ落ちる。

 

「化け物? ああ、そうかもな。だが、お前らみたいなゴミ共を掃除するには、これくらいで丁度いいんだよ」

 

俺の背後では、バルトの戦鎚が大地を揺らし、アルシェラの雷鳴が夜空を裂き続けている。

百三十七名いた盗賊は、突入からわずか数分で、その八割が物言わぬ屍と化していた。

 

「よし、次は奥の広間だ。リーダーの面を拝みに行こうか」

 

俺は隣を並走するアレスに指示を出す。

 

「アレス、地下の人質の保護を頼む」

 

「了解した。人質に指一本触れさせないさ」

 

アレスは影の中へと溶け込み、地下牢へと向かった。

俺は冷たい笑みを浮かべ、氷の華が咲き乱れる地獄の中を、悠然と歩き出した。

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