ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福―   作:煌人

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34話め


第三十四話: 終焉の後の静寂、そして次なる一手

 

 

盗賊団のアジトであった廃墟の城は、今や死の静寂と、冷たく澄んだ魔力の残滓に包まれている。

俺たちが踏み込んだ時、そこにあったのは下卑た笑い声と暴力の気配だったが、現在は俺の氷属性魔術によって生み出された氷の華が、月光を浴びて幻想的に輝いているだけだ。

地下牢の重い鉄格子をアレスが『絶影の糸』で音もなく切断し、中から怯えていた十二名の人質たちが広場へと誘導されてきた。

 

「あ……ありがとうございます……! 助かった、本当に助かったんだ……!」

 

「もうダメだと思っていました。ありがとうございます、冒険者様!」

 

人質たちは老若男女、皆一様にボロボロの衣服を纏い、極限の恐怖の中にいたのだろう。

俺たちを神か仏かというような目で見上げ、涙を流して感謝を述べてくる。

そんな彼らの震えを察して、カグヤが柔らかな笑みを浮かべて歩み寄った。

ジェネシス級装束『生命の光の智慧衣』から溢れる温かな魔力が、広場の冷気を優しく和らげていく。

 

「もう大丈夫ばい。怖い奴らは全員、ヨシテルが片付けたけん。安心してよかとよ。あんたたちの村まで、ちゃんと送り届けるけんね」

 

カグヤの温かみのある博多弁と、慈愛に満ちた光属性の魔力によって、人質たちの顔にようやく生気が戻り始めた。

 

「アレス、周囲に潜伏している残党や、近づいてくる魔物の気配は?」

 

俺が問いかけると、アレスは『広範囲索敵(サーチ)』を展開しながら短剣を回した。

 

「問題ない。半径一キロ以内に動く敵対反応はゼロだ。完全に掃除は終わってる。安心していいよ」

 

「そうか。……なら、少し落ち着かせる必要があるな。これだけ衰弱していると、今すぐ街へ歩かせるのは酷だ。イシュタル、バルト。少し炊き出しの準備をしてやってくれ」

 

「了解や! うちの特製スープで元気にしたるからな!」

 

「おう、任せとけ! 火起こしと台の準備は一瞬で終わらせてやるわ!」

 

イシュタルが陽気に笑い、アイテムボックスから調理道具を取り出す。

バルトも豪快に笑いながら、周囲の瓦礫を魔法で整えて即席の食事場を作り上げた。

衰弱した人質たちに、カグヤの回復魔法で整えられた水と、イシュタルの温かい食事が振る舞われる。

 

その間、俺はアルシェラとイシュタル(料理の合間)に指示を出し、アジト内の倉庫を確認させた。

 

「ヨシテル、見て。想像以上の量だわ」

 

アルシェラが戻ってきて、少し呆れたように報告する。

 

「金貨や宝石もそうだけど、近隣の村から奪ったと思われる穀物や家畜の毛皮、それに武器防具……かなりの量よ。これ、馬車一台じゃとても載り切らないわ」

 

俺は腕を組んで考え込んだ。

始末した盗賊の数は百三十七名。

何十人かは確認出来ないのもいるがその一人一人の討伐証明を回収するだけでも手間だが、俺の氷属性魔術で「彫像」にしてしまった連中もいる。

さらに、魔法師やガーロムがこれまで奪い溜めてきた盗品もある。

これらを一度に運ぶのは物理的に不可能だ。

 

「……ギルドから増援と運搬用の馬車を出してもらうのが一番早いが……」

 

問題は連絡手段だ。ここから街までは馬車で数時間の距離がある。

誰か一人が使いに走るのも手だが、人質の護衛を疎かにしたくない。

 

「行者のテオドールさんをここまで連れてくるか。ギルドの職員なら、緊急連絡用の魔道具くらい持っているかもしれないしな。それに、この惨状……いや、戦果を記録してもらう必要もある」

 

俺は、数キロ手前の道中で結界の中に置いてきたテオドールと馬車を思い出した。

 

「よし、俺が一度テオドールのところまで戻って、彼をここに連れてくる。その間、ここの守りは皆に任せる。アルシェラ、頼めるか?」

 

「ええ、任せて。何があっても人質は守り抜くわ」

 

アルシェラが力強く頷く。

俺は『縮地』を発動させ、夜の闇を切り裂いてテオドールの待つ場所へと一瞬で姿を消した。

これだけの戦果だ。

街に戻れば、また騒がしくなるだろう。

だが、今は目の前の一歩を片付けるだけだ。

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