ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福―   作:煌人

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36話め


第三十六話: 凱旋のヴィンクルムと、震天動地のギルド

 

 

盗賊団のアジトでの掃討を終えた俺たちは、救出した十二名の人質を連れ、彼らの故郷である近隣の村へと向かった。

村に辿り着くと、愛する家族との再会に涙する村人たちの姿があった。

だが、俺が気になったのは、その村のあまりにも脆弱な守りだった。

 

「これじゃあ、また別の盗賊や魔物に狙われたらひとたまりもないな」

 

俺が呟くと、バルトが豪快に笑って前に出た。

 

「安心しろヨシテル! 俺の土魔法で、ちょっとやそっとじゃ壊れない壁を作ってやるぜ!」

 

バルトはジェネシス級の戦鎚『永遠の戦争の戦鎚』を地面に叩きつけた。

 

「土魔法:ウォルム・ペレンネ!」

 

地響きと共に、村を囲む頑丈な石造りの外壁が瞬く間にせり上がる。

村人たちは腰を抜かさんばかりに驚いていたが、これで当面の安全は保障された。

人質たちと奪還した物資の一部を村に残し、俺たちはエルドラの街へと引き返した。

 

俺たちが村に立ち寄っている間に、現場へ急行した回収班の先遣隊が既にギルドへ戻り、暫定的な報告を行っていた。

ギルドマスターのガゼルは、執務室で報告を聞き、椅子から転げ落ちそうになっていた。

 

「おい……今、何と言った? 賊百五十七名が全滅……? ガーロムと魔術師二人が、氷の結晶と氷の蔦に絡まった氷像になっていた、だと……?」

 

「は、はい! テオドールも腰を抜かしておりました。現場はもはや戦闘跡ではなく、一方的な蹂躙の痕跡ばかり。さらに……あのアジトにあった盗品の山、金貨袋だけで十数袋。ギルドの馬車総動員で運搬中です!」

 

報告をする職員の手は、未だに震えていた。ガゼルはこめかみを押さえ、深くため息をついた。

 

「あいつら……Bランクに上げたばかりだぞ……。やってることが可笑しすぎるだろ」

 

そこへ、ギルドの扉が開き、俺たち【ヴィンクルム】の六人が悠然と入ってきた。

 

ギルド内は静まり返っていた。

ヨシテルの威圧を目の当たりにした冒険者たちはもちろん、職員たちも畏怖の眼差しを向けている。

 

「ガゼルさん、戻りました。依頼の達成報告です」

 

俺がカウンター越しに告げると、ガゼルが顔を引きつらせながら奥の会議室を指差した。

 

「ヨシテル、奥へ来い。……リーファ、お前もだ。ここで話せる内容じゃない」

 

会議室には、ガゼル、リーファ、そして俺たち六人が集まった。

アレスが、淡々と現場の最終確認データを提示する。

 

「討伐数は百三十七名。先遣隊を含めれば百五十七名だ。人質十二名は全員無傷で村へ送り届けた。盗品はギルド回収班に引き継いである。リーダーのガーロムの首は、ヨシテルの氷を溶かして回収班が持ってきたはずだ」

 

リーファが震える手で書類を整理する。

 

「……報酬ですが、Bランクの基本依頼料に加え、賊の頭数による歩合、さらにはAランク指名手配犯ガーロムの賞金、そして盗品回収の功労金……。合計で、白金貨五枚、金貨五十枚になります」

 

「へぇ、結構いい額になるんやな。これなら今夜の酒は最高やわ!」イシュタルが上機嫌で笑う。

 

「ガゼルさん。俺たちはさっさとBランクの依頼を数十終わらせて、Aランクに上がりたい。この程度の依頼なら、明日からでも毎日受けられるが?」

 

俺の言葉に、ガゼルは頭を抱えた。

 

「頼むから少しは自重しろ! お前らが一日一件そんな規模の依頼をこなしてみろ、エルドラの治安は良くなるが、俺の胃に穴が空く! 昇格には盗賊討伐以外の実績も必要だ。明日からは少し頭を使う依頼も回してやる」

 

「フフ、楽しみだわ。次はどんな場所へ連れて行ってくれるのかしら、ヨシテル」

 

アルシェが優しく、しかしどこか好戦的な笑みを浮かべた。

 

その夜、俺たちはエルドラで一番賑やかな酒場を貸し切りに近い状態で占拠し、祝宴を上げた。

 

「「「「「かんぱーい!!」」」」」

 

「ぷはぁー! やっぱり戦った後の酒は格別やね!」イシュタルが豪快にエールを煽る。

 

「旦那様の作る飯も美味かけど、たまには外の酒場の賑わいも良かね」カグヤが楽しそうに笑いながら、俺の皿に料理を取り分けてくれる。

 

リフィは俺の肩で、小さなコップに入った果実水を飲みながら、精霊たちと同期して嬉しそうに羽を揺らしていた。

 

「ヨシテル、次はもっと手応えのある敵がいる場所に行きたいぜ。今回の賊は、俺の盾にぶつかる前に砕け散っちまったからな」バルトが不満げに肉を食らう。

 

「……周囲の視線が痛いな」

 

アレスがぼそりと呟いた。

酒場の隅で他の冒険者たちが、こちらを腫れ物に触るような、しかし憧憬の混じった目で見ている。

俺は静かにワインを口にし、明日からの活動に思いを馳せた。

 

「明日からはBランク依頼を効率よく消化する。クオーレ、最短ルートの選定を頼むぞ」

 

(了解しました、マスター。既にギルドの依頼板にある推奨案件をリストアップしています)

 

俺たち【ヴィンクルム】の伝説は、まだ始まったばかりだ。

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