ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福―   作:煌人

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4話め


第四話: 偽装魔法剣士、初陣へ

翌朝。

ヨシテルは、早朝の光が差し込む『銀の剣亭』の部屋で目を覚ました。

昨夜の計画通り、彼はすぐに身支度を整える。

アイテムボックスから取り出したのは、黒を基調としたレザーアーマーと、二振りの直剣。

彼の体術、剣術のスキルは既に無限大であり、どんな体勢からでも完璧に動けるが、偽装レベル15の魔法剣士として、動きやすさと防御力を両立させた装備を選んでいる。

宿の食堂で簡単な食事を済ませたヨシテルは、冒険者が最も多く集まる時間帯を見計らって、冒険者ギルドへと向かった。

冒険者ギルドは、朝から熱気に包まれていた。

昨日よりも多くの冒険者でごった返しており、壁に貼り出された依頼掲示板の前には人だかりができている。

ヨシテルは、まず掲示板へと向かい、Fランク向けの依頼を確認した。

 

 

依頼名: ゴブリンの討伐(エルドラの森・外周)

ランク: F

報酬: 銅貨500枚(一体につき)

依頼内容: 街の北東外周部で活動中のゴブリンの群れを最低5体討伐せよ。

依頼名: コボルトの巣の破壊

ランク: F

報酬: 銅貨800枚

依頼内容: 街の西側にある古井戸に潜むコボルトの巣を破壊せよ。

依頼名: 薬草『フレアグラス』の採取

ランク: F

報酬: 銅貨30枚(一本につき)

依頼内容: 薬草指定採取地にてフレアグラスを20本採取せよ。

 

 

(ゴブリン討伐が、実力のアピールと経験値を稼ぐのに最適だな。討伐数も最低5体と設定されている。偽装ステータスをオーバーすることなく、派手に動くにはちょうど良い)

 

ヨシテルは、掲示板からゴブリン討伐の依頼票を剥がし取り、昨日、ギルドカードを発行してくれた受付へと向かった。

カウンターには、昨日と同じ、黒髪で知的な雰囲気を持つ受付嬢が座っていた。

彼女の名前は、昨日のやり取りでリーファということが分かっている。

リーファは、ヨシテルが目の前に立つと、すぐに彼の顔を認識したようだ。

 

「おはようございます、ヨシテルさん。Fランク冒険者のヨシテルさんですね。何かご用件でしょうか?」

 

リーファは、ヨシテルが持つ依頼票を見て、すぐに内容を把握した。

 

「ゴブリン討伐のご依頼ですね。ヨシテルさん、単独で受注されますか?」

 

「ああ。まずは、一人でこの辺りの魔物の強さを試してみたい」

 

ヨシテルは、あくまで新人として、この世界の常識に触れようとしている姿勢を見せた。

リーファは、少し意外そうな顔をした。

 

「ヨシテルさんは火属性と光属性の二属性持ちで、しかも魔法剣士。ステータスもFランクにしては非常に優秀です。できれば、すぐにでもパーティーを組むことをお勧めしたいのですが……」

 

ヨシテルは、優しく微笑み、首を振った。

 

「気持ちは嬉しいが、俺のやり方で慣れてから、信頼できる仲間を探したい。それに、ゴブリン程度なら問題ない」

 

「そうですか……。では、このご依頼は、討伐対象が最低5体とありますが、最大で20体まで討伐可能です。討伐体数に応じて報酬が上がります。くれぐれも無理はなさらないでくださいね。ゴブリンでも、集団で襲われると危険です」

 

「分かっている。討伐したら、剥ぎ取った素材と魔石を合わせて売却したい」

 

「承知いたしました。では、ギルドカードをこちらにお預けください。受付完了のスタンプを押します」

 

ヨシテルがギルドカードを渡すと、リーファは手際よく手続きを済ませ、カードを返却した。

 

「成功を祈っています、ヨシテルさん。もし、何か問題があった場合は、すぐに街へ戻ってきてくださいね」

 

リーファの言葉には、事務的なもの以上の、新人への気遣いが感じられた。

ヨシテルは、礼を言ってギルドを出た。

エルドラの森は、街の北東に広がる広大な森林地帯だ。

ヨシテルは、街から森の外周部へ続く、整備された道を歩いた。

道の両側には、兵士が定期的に巡回している痕跡がある。

Fランクの活動域は、比較的安全が確保されている場所だ。

森の入り口に差し掛かったところで、彼は周囲に誰もいないことを確認し、ユニークスキル『鑑定』を発動させた。

 

(ゴブリンの群れの正確な位置と、周辺の環境情報を入手する)

 

彼の脳裏に、周辺の地形図と、魔物の反応が展開された。

場所: 北東約500mの低木林。

 

 

魔物: ゴブリン(雄)9体、ゴブリン(雌)3体、ゴブリン・リーダー1体。

備考: 弱い群れだが、ゴブリン・リーダーは毒を塗った槍を持っている可能性がある。

 

 

(よし、合計13体か。最低討伐数の5体を大きく超えている。これを偽装ステータスで一掃すれば、かなりの実力アピールになるだろう。そして、ゴブリン・リーダーを倒せば、魔石の大きさも期待できる)

 

ヨシテルは、まず装備の調整を行った。

双剣を少し鞘から抜き、いつでも抜ける状態にする。

そして、彼は、この世界で「魔法剣士」として振る舞うための、戦闘シミュレーションを脳内で瞬時に行った。

彼の無限の魔術を使えば、一瞬で殲滅できるが、それではいけない。

あくまで、レベル15の魔法剣士が、魔力と体力を消耗しながら、ギリギリの戦いを演じなければならない。

彼は、自分の持つ火属性と光属性の魔法(魔術)を、いかに効果的に使うかを計画した。

火属性魔法(ファイヤーボール)で、まず数体をまとめて攻撃し、敵の数を減らす。

双剣術と体術を組み合わせて、接近戦を演じる。

深手を負う前に、光属性魔法(ハイヒーリング)で自身の回復力をアピールし、同時に魔力を適度に消耗させる。

ヨシテルは、低木林の奥、ゴブリンの群れがいる場所に音もなく近づいた。

ユニークスキル『忍術』のおかげで、彼の足音は、風の音にすら掻き消される。

ゴブリンの群れは、薄汚い布切れを纏い、粗末な木製の武器を手に、たき火の周りで騒いでいた。

 

(開始する)

 

ヨシテルは、隠密行動を解除し、低木林の影から姿を現した。

ゴブリンたちは、突然現れた人間に気づき、甲高い奇声を上げて一斉に武器を構えた。

 

「ギ、ギャギャアア!」

 

ゴブリン・リーダーが、毒々しい色の液体が塗られた槍を振り上げて、ヨシテルに向かって突進してきた。

ヨシテルは、まず、最も厄介なゴブリン・リーダーに狙いを定めた。

 

「火属性魔法、〈ファイヤーボール〉」

 

彼が詠唱すると、彼の掌から、直径50cmほどの炎の塊が飛び出した。

偽装ステータスに合わせて出力を調整した炎だが、Fランクの魔物には十分すぎる威力だ。

炎は、ゴブリン・リーダーを直撃した。

 

「グギャアアアア!」

 

ゴブリン・リーダーは、激しい炎に包まれ、そのまま地面を転がりながら沈黙した。

その隙に、残りのゴブリンたちが、ヨシテルを取り囲むように迫ってきた。

 

「チッ、数が多いな!」

 

ヨシテルは、焦りを滲ませたふりをして、腰の双剣を抜いた。

ユニークスキル『双剣術』。無限のスキルレベルを持つこの技は、本来なら全ての敵を一瞬で両断するが、ヨシテルはあえて動きを鈍らせ、一対一の剣戟を演じた。

一振りの剣で、正面から来たゴブリンの攻撃を防御し、もう一振りの剣で、横から来た別のゴブリンの肩を打ち払う。

彼の剣術は、剣の腹を使って相手を叩き潰すような、荒々しくも効率的なものだった。

 

「シャアア!」

 

一体のゴブリンが、ヨシテルの防御の隙を突き、腹部に短剣を突き立てようとした。

ヨシテルは、あえてこの攻撃を受けるフリをし、寸前で体幹をずらして、短剣がレザーアーマーの硬い部分に当たるようにした。

短剣はアーマーを僅かに傷つけたが、深手には至らない。

 

「くっ!」

 

ヨシテルは、短剣の攻撃を受けた直後、反撃に出た。

双剣を交差させ、相手のゴブリンの首筋を的確に斬り裂いた。

戦闘は、彼の偽装計画通りに進んだ。

彼は、残りのゴブリンたちに対し、剣術と体術、そして火属性魔法を巧みに織り交ぜて戦った。

時には、魔力を大量に消費するフリをして、自身の魔力残量を偽装する。

戦闘中、ゴブリン(雌)の一体が、隠れていた茂みから飛び出して、ヨシテルの背後に回り込もうとした。

 

「させない!」

 

ヨシテルは、光属性の魔力を身体に集中させた。

 

「光属性魔法、〈ライト・シールド〉!」

 

彼は、自身を覆う半透明の光の結界(バリアフィールド)を瞬時に展開させた。

ゴブリン(雌)の攻撃は、結界に当たって弾き返され、ゴブリン自身が地面に吹き飛ばされる。

光属性は、回復だけでなく、防御魔法にも優れているという彼の偽装設定を、ここで証明したのだ。

そして、彼はそのまま光の障壁を纏った状態で、最後のゴブリンたちへと突進した。

もはや、防御の必要はない。

残りのゴブリンは、ヨシテルの圧倒的な剣の技術と、火と光の複合攻撃の前に、次々と倒されていった。

 

 

数分後。

 

 

ゴブリンの群れは、全て地面に横たわっていた。

討伐数、合計13体。ヨシテルのレザーアーマーは、かすかに傷ついているものの、彼は無傷だった。

 

「ふう……」

 

ヨシテルは、一仕事終えたかのように、荒い息をつくフリをした。

実際の彼は、無限のスタミナと魔力を持つため、疲労など微塵も感じていない。

彼は、まずゴブリン・リーダーの死体へと向かった。

 

(さて、鑑定で魔石の品質を確認するか)

 

ヨシテルは、死骸に視線を向け、『鑑定』を発動する。

 

 

鑑定結果(ゴブリン・リーダー)

素材: ゴブリンの硬化皮、ゴブリンの鋭い牙、毒液

ドロップ: 銅貨10枚、魔力回復薬(小)1

魔石: 大(色:濃緑)

備考: 通常のゴブリンより魔力が濃縮されており、高い金額で売却可能。毒液は麻痺効果有り。

 

 

「予想通りだな」

 

ヨシテルは、毒液に注意しながら、全てのゴブリンから素材(皮と牙)と討伐証明の耳を剥ぎ取った。

魔石は、ゴブリンの死骸の中にある魔力中枢から取り出す。彼の剣術スキルは、素材を傷つけず、魔石を完璧に取り出すことも可能だ。

彼は、13体全ての魔石を取り出した。

ゴブリン・リーダーの魔石だけが、他のゴブリンの魔石よりも明らかに大きく、濃い緑色をしている。

これらの素材と魔石は、全てユニークスキル『アイテムボックス』へと収納した。

アイテムボックスの中は、時間や環境の影響を受けないため、素材の鮮度を完璧に保つことができる。

討伐完了から数時間後、ヨシテルはギルドへと戻った。

カウンターには、依然としてリーファが座っていた。

ヨシテルが戻ってきたのを見ると、安堵の表情を見せた。

 

「ヨシテルさん、お帰りなさい。無事で良かったです」

 

「ただいま。無事、討伐完了だ」

 

ヨシテルは、討伐を証明するために、ゴブリンの耳を13組分、カウンターに提出した。

リーファは、その数を見て、目を丸くした。

 

「13体も!? Fランク初日で、単独でここまで…!流石は二属性持ちの魔法剣士ですね」

 

ヨシテルは、謙遜するように言った。

 

「運が良かっただけだ。魔石と素材も持ち帰っているんだが、ここで売却できるか?」

 

「もちろんです。ギルドは討伐依頼の報酬支払いと、素材の買い取りも行っています。素材と魔石を全て出してください」

 

ヨシテルは、アイテムボックスから、ゴブリンの皮と牙、そして13個の魔石をカウンターに出した。

リーファは、すぐに素材の鑑定と魔石の査定を始めた。

特に、ゴブリン・リーダーの濃緑色の魔石を見たとき、リーファはわずかに息を飲んだ。

 

「これは……ゴブリン・リーダーの魔石ですね。色も濃く、品質が非常に高いです。これは通常のゴブリン魔石の三倍の値段で買い取らせていただきます」

 

彼女は、迅速に全ての素材と魔石の合計金額を算出した。

 

【今回の売却・報酬合計】

ゴブリン討伐報酬(13体分): 銅貨6500枚

素材(皮、牙)売却額: 銅貨2800枚

魔石売却額: 銅貨7200枚(ゴブリン・リーダー分含む)

合計金額: 銅貨16500枚 (金貨1枚と銀貨65枚、銅貨0枚に相当)

 

「合計、銅貨16500枚です。金貨1枚と銀貨65枚でお渡しします。いかがでしょうか?」

 

ヨシテルは、その金額がFランクの初日の収入としては破格であることを理解した。

これは、偽装ステータスと、彼が「派手に動いた」結果だ。

 

「それで構わない。ありがとう」

 

ヨシテルは、受け取った貨幣をアイテムボックスに収納した。

リーファは、ギルドカードを受け取り、本日の依頼の完了手続きを行った。

 

「これで本日のご依頼は完了です。ヨシテルさん、これだけの成果があれば、一気にEランクへ昇格できるかもしれません。ポイントはしっかり加算されていますよ」

 

ヨシテルは、次の目標を確認できたことに満足し、ギルドを後にした。

 

(これで、この街での活動資金と、実力者としての地位を確保できた。次は、他のギルドや上級冒険者から、さらに情報を集めるとしよう)

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