ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福―   作:煌人

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42話め


第四十ニ話:断罪の跡地と、授けられし神域の武具

公爵邸での会談を終え、エルドラの地下に眠る古代遺構アトランティアの調査という壮大な目標を掲げた翌日。

俺たち【ヴィンクルム】は、早朝の冒険者ギルドを訪れていた。

 

「……本当に行くんだな? 止めはしねえが、黒竜の森の深部は文字通り『魔境』だ。命を大事にしろよ」

 

ギルドマスターのガゼルは、昨日授与したばかりのAランク昇格証を胸に付けた俺たちを見て、呆れたような、それでいて期待を込めたような複雑な表情で言った。

俺は「分かっている」と短く返し、Aランクの討伐依頼と正式な遺跡踏査の許可証を受け取った。

 

俺たちは街を出て、まずは黒竜の森……ではなく、正反対の方向に位置する『西の森』へと足を向けた。

 

西の森の奥深く。

そこには、俺がこの世界に来て初めて受けた依頼の地――コボルトの集落があった場所がある。

かつて俺が、加減を誤った魔法『アース・バーニング』で一帯を焼き尽くし、更地にしてしまった場所だ。

 

「……これは、ひどい有様ね。地形そのものが変わっているわ」

 

アルシェラが、未だに焼け焦げた痕跡が残るクレーターのような窪地を見て、溜息をついた。

 

俺は無言でその中心部へ歩み寄る。

そこには、かつて「古井戸」と呼ばれていた一万年前の遺構への入り口があったはずだ。

しかし、俺の魔法はコボルトたちだけでなく、地脈に干渉していた遺跡の接続回路ごと、物理的に粉砕してしまっていた。

 

クオーレによる脳内解析が視界に投影される。

《解析完了:魔導都市エルドラ第13接続ゲートは完全に崩落。復旧には大規模な時空干渉が必要。代替案として、黒竜の森に存在する『第1ゲート』の使用を推奨します》

 

「やっぱりここからは無理か……。俺が壊したんだから自業自得だがな」

 

俺は肩をすくめた。だが、無駄足ではない。

これから向かう黒竜の森は、ここよりも遥かに危険な場所だ。

今のままの皆でも十分強いが、一万年前の「源素魔法」を操る防衛機構を相手にするには、さらなる手札が必要だと判断した。

 

「皆、少し集まってくれ。これから地獄の底へ行く前に、お前らに新しい『力』を渡しておく」

 

 

俺の言葉に、五人が真剣な面持ちで整列する。

俺はアルティメットスキル『スキル創造』と『武器防具作成』を並行起動し、一万年前の術式にも対抗し得る神域の武具を顕現させた。

まず、俺はアルシェの前に立った。彼女の額にそっと手を当てる。

 

「アルシェ、お前には神速の刺突を。光の速さで雷を撃ち抜け」

 

俺の指先から、まばゆい光と共に新たな記憶と回路が流れ込む。

「『ジェネシス級槍:フルメン・スピクルム(雷竜の槍)』。それと、これを使いこなすための『槍術』、さらには『光属性』だ」

彼女の手に、黄金の雷光を纏った白銀の長槍が現れる。

アルシェは驚きに目を見開いた後、慈しむように槍を握りしめた。

 

次に、バルトの前へ。

 

「バルト、お前には破壊の王たる力を。盾で守るだけじゃなく、全てを叩き伏せろ」

 

「『ジェネシス級戦斧:セクリウス・レクス(王の斧)』だ。お前は既に『斧術』を持っている。これでお前のSTRを最大限に発揮しろ」

バルトの手に現れたのは、凶悪なまでの重厚さを放つ漆黒の巨大斧だ。バルトは「重ぇな、最高だぜ!」と豪快に笑った。

 

続いて、カグヤの前へ。

 

「カグヤ、お前は後方から戦場を支配しろ。九尾の智慧を矢に乗せてな」

 

「『ジェネシス級弓:アストラ・アルクス(星の弓)』と、『弓術』、『杖術』だ」

カグヤは、クリスタルのように透き通った美しき弓を手にし、「旦那様、アタシにこれを持たせるなんて、罪な人ばい……一生離さんけんね」と頬を染めた。

 

イシュタルの前へ。

 

「イシュタル、お前の火力をさらに広範囲、かつ冷徹に。闇と火の二重奏だ」

 

「『ジェネシス級双銃:ストロペトゥム・ノクティス(闇の双銃)』。それに『双銃術』と『闇属性』だ」

既存の『炎帝の銃』に加え、さらなる二丁の銃を手にしたイシュタルは、「あはは! これでウチ、最強の殺し屋になれるんちゃう?」と不敵な笑みを浮かべた。

 

最後に、アレスの前へ。

 

「アレス、友として。お前には見えざる死を。風を操り、影を断て」

 

「『ジェネシス級鎌:ファルクス・ウェンティ(風の鎌)』。それと『鎌術』、エクストラスキルとしての『風属性』だ」

アレスの手に、巨大な三日月型の死神の鎌が収まる。アレスは静かにその刃を指でなぞり、「……重畳。期待に応えよう」と、親友のバルトに負けないほどの静かな闘志を見せた。

 

「使い所は、お前らそれぞれの判断に任せる。今持っている武器と、新しく渡した武器。状況に合わせて使い分けてくれ。使わない方は各自のアイテムボックスに入れて置いてくれ」

 

俺の言葉に、五人は一斉に頷いた。

新しい武具をその場で何度か振るい、感覚を馴染ませている。

西の森の断罪の跡地に、雷鳴が轟き、爆炎が上がり、風が吹き荒れる。

 

「……よし、準備は整ったな」

 

俺は黒竜の森がある北の空を見上げた。

一万年の時を超えて眠る魔導都市。そこに潜む源素魔法の謎。

 

「【ヴィンクルム】。行くぞ。一万年の封印を、俺たちの手でこじ開ける」

 

「「「「「「応!!」」」」」」

 

俺たちは、もはや誰にも止められない最強の軍勢として、聖域への歩みを再開した。

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