ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福― 作:煌人
西の森で新たな武具とスキルを授与した俺たち【ヴィンクルム】は、北方に位置する魔境「黒竜の森」を目指し、街道なき路を突き進んでいた。
エルドラの街から離れるにつれ、現れる魔物の質は目に見えて凶悪なものへと変わっていく。
だが、今の俺たちにとって、それらは「脅威」ですらなく、新調した力の「試金石」に過ぎなかった。
移動を開始して二日目の午後。
湿地帯に近い草原を横切ろうとした俺たちの前に、数百体はあろうかというゴブリンとコボルトの混成集団、そしてそれらを統率する数体のオーク・キングとオーガ・ロードが立ちはだかった。
「数だけは一丁前やな。ヨシテル、ウチの新しい武器、試してもええか?」
イシュタルが、腰のホルスターから新しく授けられた『ジェネシス級双銃:ストロペトゥム・ノクティス(闇の双銃)』
を引き抜いた。
「ああ、好きにやれ。皆、連携の確認だ」
俺の合図と共に、ヴィンクルムの連撃が開始された。
まず動いたのはアレスだ。背中の『ジェネシス級鎌:ファルクス・ウェンティ(風の鎌)』を抜き放つと、影移動で敵陣のど真ん中へと躍り出る。
「風よ、死を運べ」
アレスが鎌を横一文字に振るう。
付与された風属性が真空の刃となり、前方のゴブリン数十体を一瞬で微塵切りにした。
そこへイシュタルの双銃が火を噴く。
「火と闇のダンスや! 逃がさへんで!」
放たれる魔弾は、着弾と同時に闇の爆炎を巻き起こし、オーク・キングの巨体を内側から焼き尽くす。
「次は俺だ! どけぇい!」
バルトが重厚な『ジェネシス級戦斧:セクリウス・レクス(王の斧)』を振り上げ、オーガ・ロードの頭上に叩きつけた。大地が鳴動し、防戦一方だったオーガは地面ごと粉砕された。
盾で防ぐ必要すらない、圧倒的な破壊の王の力だ。
後方からは、カグヤが『ジェネシス級弓:アストラ・アルクス(星の弓)』を静かに引き絞る。
「星の導き、受けてみるばい!」
放たれた光の矢は空中で無数に分裂し、逃げ惑う魔物たちの急所を正確に射抜いていく。
「貫け、クスピス・トニトルス!」
アルシェが『ジェネシス級槍:フルメン・スピクルム(雷竜の槍)』を投擲する。槍は光の尾を引きながら雷鳴を轟かせ、残った魔物の集団を一列に貫通した。
仕上げは俺だ。右手を軽く地面にかざす。
「『氷魔術:グラキエス・セプルクラ(氷華の墓標)』」
刹那、戦場全体が巨大な氷の花に覆われた。
生き残っていた全ての魔物は、その美しき花弁の中に閉じ込められ、絶命と共に永遠に溶けることのない氷の墓標へと変わった。
その夜。俺たちは森の入り口に近い高台で夜営を行っていた。
焚き火を囲み、カグヤとイシュタルが手際よくオークの肉を調理する。
「新しい武器、馴染むわね。ヨシテル、本当に最高のプレゼントだわ」
アルシェが槍の穂先を丁寧に拭きながら微笑む。
「おうよ。あの斧、俺のSTRに完全に同期してやがる。振るたびに力が漲るのが分かるぜ」
バルトが満足げに頷くと、隣のアレスも鎌を眺めながら口を開く。
「風属性の加護は大きい。俺の隠密性と鎌のリーチが完璧に噛み合っている。……感謝する、ヨシテル」
「気にするな。これから行く場所は、これ以上の力が嫌でも必要になる場所だ」
俺の肩では、リフィたちが今日の戦果を自慢し合うように、小さな光を点滅させて飛び回っている。
六人の精霊たちもまた、主人たちの成長を喜んでいるようだった。
「旦那様、あしたはいよいよ『黒竜の森』の入り口ばいね。Aランクの依頼だけじゃなくて、Sランクへの推薦もかかっとるし、気合が入るばい!」
カグヤが博多弁で愛らしく、しかし瞳の奥に冷酷なまでの闘志を秘めて言った。
数日間の強行軍を経て、ついに俺たちの目の前に、太陽の光を拒絶するかのような漆黒の樹海——「黒竜の森」が姿を現した。
空気の重さがこれまでの場所とは違う。クオーレが警報を鳴らす。
《解析:周辺の魔素濃度、通常の十倍。古代アトランティアの防衛術式の一部が漏れ出している可能性が高い。警戒を推奨します》
俺は全員の顔を見回した。
「いいか。ここから先はAランク冒険者の生還率五割と言われる魔境だ。だが、俺たちの目標はさらにその先にあるSランク、そして魔導都市の謎だ」
俺は一歩、森の境界線へと踏み出した。
「ここからは手加減なしだ。目に付く魔物は全て討伐し、実績を積み上げる。公爵に文句を言わせないほどの『証拠』を持って帰るぞ」
「「「「「応!!」」」」」
【ヴィンクルム】の六人と六柱の精霊。
最強の絆を携えた俺たちは、一万年の静寂が眠る深淵へと足を踏み入れた。