ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福―   作:煌人

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44話め


第四十四話:氷獄の幕開けと至高の休息

 

 

漆黒の樹海――黒竜の森。

太陽の光を拒絶するかのように厚い雲と巨大な樹木に覆われたその境界線に、俺たち【ヴィンクルム】は立っていた。

 

「さて、まずは景気付けといこうか」

 

俺は軽く右手を地面にかざした。

内側から溢れ出す膨大な魔力を一点に集中させ、一気に解放する。

 

「『極大氷魔術:エテルナ・グラキエス(永劫の氷獄)』」

 

刹那、視界の全てが白銀に染まった。

俺たちが立っている地点を中心に、半径数百メートルにわたって猛烈な冷気が走り、巨大な樹木も、地面に這う蔦も、すべてが一瞬で透き通るような氷の彫像へと変わった。

森の入り口付近にあった淀んだ空気は完全に浄化され、キーンと冷えた静寂が辺りを支配する。

 

「……ちょっとヨシテル、景気付けにしてはやりすぎじゃない?」

アルシェラが呆れたように溜息をついた。

 

「旦那様、加減ば忘れたらいかんよ。これじゃあ、魔物どころか道まで凍っとるばい」

カグヤが苦笑いしながら俺の背中を叩く。

 

「ま、ヨシテルらしいわな。おかげで風通しはようなったで!」

イシュタルが双銃を回しながら陽気に笑い、俺たちは氷の絨毯を踏みしめて森の内部へと進んだ。

 

森の林間に入ると、氷の洗礼を免れた魔物たちが次々と襲いかかってきた。

Bランクの『フォレスト・ウルフ』の群れ、Aランクに相当する巨躯の『ブラック・オーガ』、さらには体色が斑に変異し、通常の数倍の魔力を持つ『変異種キメラ』までが現れる。

しかし、今の俺たちの敵ではない。

 

「貫け、『イクトゥス・フルミニス』!」

アルシェラの放つ黄金の雷光がキメラの心臓を一突きにする。

 

「どけええい! 『王の斧』の錆にしてやるぜ!」

バルトの振るう漆黒の戦斧が、オーガを地面ごと一刀両断した。

 

乱戦の中、俺は倒した魔物の魔石や素材がその場に転がっているのを見て、ふと思いついた。

 

「……いちいち拾い集めるのは非効率だな。クオーレ、アイテムボックスに干渉できるか?」

 

《了解しました。マスターおよびパーティーメンバーの『アイテムボックス』に拡張パッチを適用。半径五十メートル以内の討伐証明部位および魔石の『自動収集機能(オート・コレクト)』を付装します》

 

俺は指を鳴らし、全員の額に軽く触れて機能を共有した。

 

「皆、これで倒した傍から素材が勝手に収納される。拾う手間はもういらないぞ」

 

「うわ、これ便利やなぁ! ヨシテル、あんたホンマに何でもありやな」

イシュタルが感心したように声を上げる。

 

効率の上がった俺たちは、そのまま日没まで森を蹂躙し続けた。

 

夕闇が迫る中、適当な開けた場所を見つけ、俺たちは夜営の準備に入った。

 

「そういえば、すっかり忘れていたな。……アイテム作成、および強化」

 

俺はアイテムボックスから、どこにでもある古ぼけた大きなテントを取り出した。

それにアルティメットスキル『武器防具作成』の派生技術を適用する。

 

「『空間拡張・構造強化:ミスティック・パレス』」

 

外見はただの布製テントだが、その内部は一変した。

 

「……え、ちょっと待って。中が広すぎない?」

アルシェラが恐る恐る中を覗き込む。

 

テントの内部には、清潔な廊下が走り、六人それぞれの個室が完備されていた。

さらには温かい湯が溢れる大浴場、最新の魔導調理器具が並ぶキッチン、水洗式のトイレまで備わっている。

 

「これなら安心して休めるだろう。それと、寝ずの番は必要ない」

 

俺は小さなランタンを取り出し、そこにアルティメットスキル『魔法創造』で究極の防御術式を組み込んだ。

 

「『極大結界:ドムス・インウィオラビリス(不可侵の聖域)』」

 

結界を宿したランタンをテントの支柱に吊るす。

これはSランクの魔物どころか、神性を持つ存在ですら破壊不可能な、文字通りの『絶対安全圏』を作り出す魔道具だ。

 

「旦那様、これ……もう冒険者のキャンプじゃないばい。貴族の別荘より豪華ばいね」

カグヤが目を輝かせながら風呂場へ走っていく。

 

その夜、俺たちはイシュタルとカグヤが作った豪華な食事を楽しみ、ふかふかのベッドで一日の疲れを癒やした。

アレスとバルトも「これなら明日も全開で行けるな」と満足げに眠りについた。

 

翌朝。

俺が一番に起き出し、テントの外へ出ると、ランタンの放つ微かな光の壁の外側に、数十体の魔物が群がっていた。

結界に阻まれ、中に入れない魔物たちが、血走った目でこちらを睨みながら彷徨いている。

 

「……おはよう。そして、さよならだ」

 

俺はあくびを一つ。指先から極小の氷弾を弾いた。

 

「『氷魔術:グラキエス・アクース』」

 

無数の氷の針が結界を透過して射出され、群がっていた魔物たちの眉間を寸分違わず撃ち抜いた。

一瞬の騒がしさの後、テントの周囲には魔石と素材の山だけが残り、それも即座にアイテムボックスの自動収集機能で消えていった。

 

「ヨシテル、朝から派手ね」

 

髪を拭きながら出てきたアルシェラが、爽やかな笑顔を向ける。

 

朝食を済ませた俺たちは、テントとランタン型結界をアイテムボックスにしまい込み、再び森の深淵へと足を踏み出した。

 

「さあ、行くぞ。この森の魔物を根こそぎ狩り尽くして、さっさとSランクの推薦状を毟り取ってやろう」

 

「「「「「「応!!」」」」」」

 

【ヴィンクルム】の進軍は、もはや災害にも等しい勢いで、古代の扉を目指し加速していく。

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