ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福― 作:煌人
直径三キロメートルに及ぶ漆黒の石畳。
その中央にそびえ立つ白銀の六角柱が、侵入者を排除すべく禍々しい光を放つ。
地面の石材がスライドし、そこから這い出してきたのは、緻密な魔導回路を全身に巡らせた数百体の「金属兵士(古代ゴーレム)」であった。
「……数で押すつもりか。面白い」
俺は腰に差した二振りの日本刀、『姫鶴一文字』と『にっかり青江』の鯉口を静かに切った。
「皆、派手に行くぞ。足を止めるなよ!」
俺の合図と同時に、『縮地』を発動させる。
視界が引き伸ばされ、瞬きする間に俺の体は金属兵士の軍団の最前列へと食い込んでいた。
「まずは小手調べだ。『双剣術:氷華・一閃(ひょうか・いっせん)』!」
交差させた二刃から、極低温の斬撃波が放射状に放たれる。触れた瞬間に金属のボディを脆い氷へと変え、そのまま粉々に打ち砕く。
俺の背後では、仲間たちがそれぞれの新調された武器を手に、蹂躙を開始していた。
「逃がさないわ。『雷槍術:デスティニィ・ボルト』!」
アルシェラが新調した『雷竜の槍:フルメン・スピクルム』を頭上で旋回させ、地面へと突き立てた。
黄金の雷電が地を這う蛇のように広がり、金属兵士たちの足元を次々と爆破していく。
さらに槍の穂先から放たれた光属性のレーザーが、残党の核を正確に貫いた。
「ハッ、硬てぇだけの人形が! 俺の斧で塵になれ! 『戦斧術:カタストロフィ・クエイク』!」
バルトが『王の斧:セクリウス・レクス』を豪快に振り下ろす。
衝撃波が黒い石畳を文字通り「波」のように隆起させ、前方の金属兵士たちをまとめて圧壊させた。
「ウチの闇と火に焼かれて、綺麗な灰になりぃな! 『双銃乱射:イグニス・エ・ノクス』!」
イシュタルは『闇の双銃:ストロペトゥム・ノクティス』を両手に、舞うようなステップで弾丸をばら撒く。
赤と黒、二色の魔弾が交差し、着弾のたびに巨大な爆発を引き起こして金属の破片を空中に撒き散らす。
「……影に死ね。『鎌術:ヴォルテックス・リーパー』」
アレスが『風の鎌:ファルクス・ウェンティ』を水平に薙ぐ。
真空の刃が巨大な竜巻となり、金属兵士たちを中空へと巻き上げ、無数の風の刃で切り刻んだ。
「旦那様、アタシが道ば作るけん! 『星弓術:アストラ・レイン』!」
後方からカグヤが『星の弓:アストラ・アルクス』を引き絞り、空へと放つ。
光の矢は雲を突き抜けた直後、流星群のように降り注ぎ、戦場全域にいた敵をピンポイントで殲滅した。
だが、敵の数は一向に減らない。
六角柱のタワーが「キィィィィン」という高い共鳴音を発するたび、石畳の下から新たな金属兵士が補充される。
さらに、タワーから発せられた特殊な超音波が、森の周囲にいた魔物たちを呼び寄せてしまった。
「グルルル……っ!」
「ギィィヤァァァァ!」
金属兵士の軍団に加え、正気を失い強化されたブラック・オーガやヴェノム・ストーカーの群れが、石畳の境界を越えて雪崩れ込んでくる。
「キリがないわね!」
アルシェラが槍を払いながら叫ぶ。
「リフィ、皆! 遠慮はいらないぞ。お前たちの力を見せてやれ!」
俺の声に、六人の肩に乗っていた精霊たちが一斉に飛び出した。
「任せて、マスター!」
リフィが先陣を切り、小さな手から超高密度の風魔術を放つ。
他の五柱の精霊もこれに続き、雷、土、光、火、闇の極大魔術が戦場を埋め尽くした。
精霊たちの加勢により、戦場はもはや個人の戦闘ではなく、天災が重なり合った混沌の極致へと変貌した。
「……クオーレ、タワーの制御中枢の位置は?」
《解析完了:タワー最上部のコア。外部からの攻撃は物理・魔法共に90%カットされます。内部への直接干渉が必要です》
「分かった。なら、道を作るまでだ」
俺は二本の刀を鞘に収め、一呼吸。
周囲の時間が止まったかのような静寂が訪れる。
「『極大氷魔術:グラキエス・エンド・ネクロポリス』」
俺を中心に、半径一キロメートルの空間そのものが凍りついた。
現れた魔物も、湧き出し続ける金属兵士も、すべてが漆黒の石畳ごと巨大な氷の棺に封じ込められる。
凍りついた敵の森を抜けるように、俺は再び刀を抜き放ち、一閃。
氷像となった敵軍を粉々に粉砕しながら、俺たちは白銀のタワーの直下へと辿り着いた。
「さあ、一万年の眠りを叩き起こしてやる。……覚悟はいいか?」
俺の問いに、息一つ乱していない最強の仲間たちが、それぞれの武器を構えて不敵に微笑んだ。
タワーが激しく明滅し、その上部からこれまでとは比較にならないほど巨大な、「四腕の魔導守護機兵」が姿を現そうとしていた。