ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福―   作:煌人

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48話め


第四十八話:一万年の番人と、凍てつく守護の終焉

 

 

直径三キロメートルの黒い石畳が、戦いの熱気と魔力の奔流で震えていた。

白銀のタワーが放つ不気味な超音波に呼応し、増殖を続ける金属兵士(ゴーレム)と、正気を失い強化された魔物の群れ。

だが、その混沌を切り裂き、タワーの最上部から「真の絶望」が降り立った。

それは、四本の巨大な腕を持ち、全身を未知の蒼い合金で包んだ魔導機兵。

一万年前、魔導都市エルドラの心臓部を守るために造られた最終防衛システム――古代エルドラ・ガーディアンである。

 

「……ようやく真打ちのお出ましだな。クオーレ、解析を」

 

《解析完了:古代エルドラ・ガーディアン。動力源は疑似太陽核。全属性耐性を有し、物理演算による超高速機動が可能です。マスター、一対一での撃破を推奨します》

 

「ああ、分かっている。ここは俺がやる。……皆、周囲のゴミ掃除を頼むぞ!」

 

俺の叫びに、仲間たちが即座に反応した。

 

「任せて! ヨシテル、そいつに集中して!」

 

アルシェラが槍を閃かせ、俺に近づこうとした金属兵士を黄金の雷で焼き払う。

バルトとアレス、カグヤ、イシュタル、そして精霊たちも、俺を中心に巨大な防衛円陣を組み、押し寄せる増援を文字通り「蹂躙」し始めた。

 

ガーディアンの四本の腕が、それぞれ異なる魔導兵装を顕現させる。

一本目は巨大な高周波ブレード、二本目は超重力砲、三本目は魔法反射シールド、そして四本目は物理反射大盾だ。

 

「ギィィィィィン!!」

 

機械的な咆哮と共に、ガーディアンが『縮地』に匹敵する速度で突進してくる。

俺は二振りの刀を抜き放ち、その一撃を紙一重でかわした。

 

「一万年前の技術だろうが、今の俺には届かない。まずは右腕からだ」

 

俺は地面を蹴り、空中で体を捻りながら『にっかり青江』を振り下ろした。

闇属性を纏った黒き斬撃が、高周波ブレードを構えた一本目の腕を、その付け根から断つ。

蒼い火花が散り、一本目の腕が石畳に転がる。

だが、ガーディアンは怯むことなく二本目の腕――超重力砲を俺へ向けた。

 

「無駄だ。『瞬影』」

 

重力波が俺の残像を握りつぶす。

本隊の俺は既に背後へ回り、『姫鶴一文字』を光り輝かせた。

 

「次はそれだ。二本目!」

 

光属性を付与した鋭い刺突が、重力砲の砲身を内部から爆発させ、二本目の腕を粉砕した。

 

腕を二本失いながらも、ガーディアンは残る魔法反射シールドと物理反射大盾で猛烈な反撃を仕掛けてくる。

空を埋め尽くすレーザーの網。

俺は『全知全能』で全ての軌道を先読みし、刃の腹で弾き飛ばしながら距離を詰めた。

 

「シールドごと、三本目と四本目……まとめて持って行くぞ!」

 

俺は二本の刀を交差させ、極限まで魔力を凝縮した。

 

 

「『双剣術・奥義:極光闇月の十字(きょっこうあんげつのじゅうじ)』」

 

 

十字に放たれた光と闇の斬撃が、ガーディアンのシールドを紙細工のように切り裂き、残る二本の腕を同時に切断した。四肢を失い、ダルマ状態となったガーディアンが、その場に膝をつく。

だが、中枢のコアは未だに疑似太陽の輝きを放ち、自爆を試みようと膨大な熱量を溜め込んでいた。

 

「自爆など、させるか。お前の役割はここで終わりだ。……眠れ」

 

俺は刀を鞘に納め、右手をガーディアンの頭部へとかざした。

 

 

「『超極大氷魔術:クリスタロス・レクイエム(神氷の鎮魂歌)』」

 

 

俺の指先から、これまでに放ったどの氷魔術よりも濃密な、絶対零度を超えた「静寂」が溢れ出した。

ガーディアンの巨躯は、一瞬で芯まで凍結した。

内部の疑似太陽核すら、その活動を強制的に停止させられ、美しく、そして残酷な氷の彫像へと変貌した。

 

ガーディアンが完全に機能を停止した瞬間、戦場に異変が起きた。

それまでタワーから湧き出し続けていた金属兵士たちが、まるで糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ち、沈黙した。また、タワーの波動によって狂わされていた魔物たちも、支配から解かれたように怯えた声を上げ、蜘蛛の子を散らすように森の奥へと逃げ去っていった。

直径三キロメートルの石畳に、完全な静寂が戻る。

 

「……終わったわね。ヨシテル、お疲れ様」

 

アルシェラが槍を収め、俺の元へ歩み寄ってくる。

仲間たちも皆、傷一つ負わずに集まってきた。

 

「流石はヨシテルや! あのデカブツを一人で片付けるなんて、最高の見世物やったで!」

 

イシュタルが上機嫌で笑い、カグヤも「旦那様、本当にかっこよかったばい」と目を細める。

 

バルトとアレスも、機能を停止したゴーレムを見下ろしながら頷いた。

 

「古代の技術ってのも大したもんだが、俺たちには敵わなかったな」

 

俺は凍りついたガーディアンと、その背後にそびえ立つ白銀のタワーを見上げた。

ガーディアンを倒したことで、タワーのシステムは一時的に「中立」の状態になっているようだが、遺跡の本格的な門を開くには、まだ準備が必要だった。

 

「……ここからが本当の探索だが、一週間以上も森の中にいたからな。一旦街に戻って、公爵とギルドに報告しよう。ここの制圧を証明すれば、Sランクへの昇格の近道になるだろう」

 

俺の言葉に、全員が賛成の意を示した。

 

「よし。周りを片付けて、さっさと帰るぞ。エルドラの美味い酒と飯が待ってる」

 

俺たちは勝利の余韻を噛み締めながら、一万年の封印が解かれようとしているその場所を後にし、懐かしき街への帰路に就いた。

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