ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福―   作:煌人

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50話め


第五十話:聖域の拡張と、過ぎ去りし神域の加護

 

 

黒竜の森の中間地点、古代アトランティアの監視塔を制圧した俺たち【ヴィンクルム】は、帰路の途中で劇的な出会いを果たした。

絶滅したはずの神獣フェンリルの親子。

死の淵から俺の蘇生魔術とカグヤの浄化魔法によって救い出された彼らは、恩義を感じたのか、あるいは俺たちの規格外の力を本能で察したのか、群れごと俺たちに付き従うことを決めたようだった。

 

「さて……名前を決めるのも一苦労だが、まずは落ち着ける場所を作るとするか。こんな森の真ん中で立ち話もなんだしな」

 

俺は周囲を見渡し、少し開けた場所を見つけると、アイテムボックスから愛用のテントを取り出した。

 

俺はアルティメットスキル『アイテム作成』と『魔法創造』を並行起動し、テントにさらなる拡張パッチを当てる。

 

「『空間拡張・構造再定義:ミスティック・パレス・グランド』」

 

外見は相変わらずの布製テントだが、その内部はもはや邸宅どころか、一つの神殿に近い広さへと変貌した。

廊下を広げ、天井を高くし、フェンリルたちが巨体を揺らして歩き回っても余裕がある「獣魔専用リビング」を増設する。

さらに、外に吊るしたランタン型結界『ドムス・インウィオラビリス(不可侵の聖域)』の術式を書き換え、有効半径を五百メートルまで拡大した。

これで、周囲の魔物がどれだけ騒ごうと、結界の端にすら触れられない。

 

「ヨシテル、また中が広くなってるわね……。もう驚かないわよ」

 

アルシェラが苦笑しながら、新設されたソファに身を沈める。

 

「ホンマや、これもう移動するお城やんか」

イシュタルが感心したように壁を撫でている。

 

「……あ、そういえば。肉ばかりで飽きるって言ってたよな。これを使え」

 

俺はキッチンの横に、白銀の金属でできた箱を設置した。

 

「それは何だい、ヨシテル?」

バルトが不思議そうに覗き込む。

 

「『永久魔法冷蔵庫:アエテルナ・パントリー』だ。中に手を入れるだけで、望んだキンキンに冷えた酒、新鮮な野菜、最高級の肉が魔力によって自動生成・補充される。

賞味期限も概念ごと固定してあるから腐ることもない」

 

 

「「「…………」」」

 

 

全員が絶句した。

 

「旦那様……それはもう、冒険の醍醐味ば粉砕しとるばい……」

 

カグヤに呆れ顔で言われたが、便利なんだからいいだろう。

 

豪華な夕食を終え、ようやくフェンリルたちの名前が決まった。

 

 

銀色の父個体:カエルム(天空)

金色の母個体:ルーナ(月)

兄の子個体:テラ(大地)

妹の子個体:アウラ(微風)

 

 

「いい名前ね。よろしく、カエルム、ルーナ」

 

アルシェラが彼らの美しい毛並みを撫でる。フェンリルたちは満足げに喉を鳴らした。

 

だが、俺はふと思った。

 

「一応テイムはしたが、もし俺たちの留守中に他の魔物や不届きな人間に攫われたり、傷つけられたりしたら寝覚めが悪いな……。よし、底上げしておくか」

 

俺は四匹を呼び寄せ、その額に順に手を当てた。

 

『ギフト:全知全能』によるステータス改変の強制執行。

「『存在昇華・能力同期(シンクロナイズド・エボリューション)』」

 

四匹の全身がまばゆい光に包まれる。

フェンリルという種族が持つ本来の限界値を突破し、俺たちの魔力の一部を恒常的に供給する回路を直結させた。

 

《警告:対象四個体のランクがSSへと上昇。物理攻撃力・魔力耐久力がこの世界の既存生態系から逸脱しました》

 

光が収まった後、そこにいたのは、以前よりも一回り大きく、瞳に神々しい知性を宿した超・神獣だった。

 

「……ヨシテル。今、何をしたの?」

アルシェラが引きつった笑顔で聞いてくる。

 

「いや、少しステータスを上げただけだ。俺たちよりはだいぶ下だが、まあこの世界でこいつらに敵う奴はもういないだろう。SSランク相当だな」

 

 

「「「やりすぎばい(やわ/だぜ)!!」」」

 

 

全員から一斉に小言を食らった。

 

「あ、あと暴走しないように『絶対手加減』も付与しておいたから安心しろ」

 

「そういう問題じゃなかよ!」とカグヤに怒られた。

 

騒ぎが一段落したところで、俺は自分の肩に乗る風の精霊女王リフィを見た。

 

リフィの他にも、仲間たちにはライラ、グラディ、フレイヤ、ルーメン、ノックスといった強力な精霊が付いている。

だが、俺にはリフィ一人だ(女王なので一人で十分すぎるのだが)。

 

「……水の精霊(ウンディーネ)と氷の精霊(ティンカーベル)がいなかったな。何かあってからでは遅い。今ここで召喚しておく」

 

俺は虚空に指で魔法陣を描き、源素魔法の深淵に干渉した。

 

「来い。『水の精霊:アクア』。『氷の精霊:リザーナ』」

 

澄み渡る水球と、極低温の結晶が弾け、二柱の精霊が顕現した。

 

ついでに、仲間の精霊たちも含め、全員のランクを再確認し、不足分を補う。

 

「リフィ、お前がリーダーだ。他の皆も……ライラ、グラディ、フレイヤ、ルーメン、ノックス、そして新入りのアクアとリザーナ。全員の位階をSSランクに固定する。『絶対手加減』も忘れるなよ」

 

精霊たちは互いに顔を見合わせ、その身に宿る神々しい魔力に歓喜の声を上げた。

これで俺の補佐には、リフィ、アクア、リザーナの三人が付き、リフィが全体を統括する陣容が整った。

 

「……ふぅ。これでようやく準備万端だな」

 

俺がそう言うと、既にパジャマ姿でくつろいでいたバルトが呆れたように言った。

 

「準備万端も何も、ここ黒竜の森の中間地点だぜ? これから一週間かけて戻るんだろ?」

 

「ああ。だが、このメンバーなら道中の魔物はただの動く的だ」

 

俺たちは、魔導都市の謎を秘めた監視塔のコアと、新たに加わったSSランクのフェンリル親子、そして最強へと至った精霊たちと共に、エルドラの街への帰還を開始した。

 

中間地点から一日目。

 

一万年の静寂を破った【ヴィンクルム】の進軍は、もはやこの世界の理すらも書き換えようとしていた。

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