ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福―   作:煌人

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52話め


第五十二話:至高の証と、深淵への委任状

 

 

エルドラの城壁外、俺が設営した『ミスティック・パレス・グランド』の周囲には、遠巻きに様子を伺う市民たちの好奇の視線が絶えなかった。

それもそのはずだ。結界の境界線で、伝説の神獣フェンリル親子が泰然と日向ぼっこをしているのだから。

 

「あ、ヨシテル。ギルドの職員さんが来たみたいよ」

 

アルシェラが指差す先、一人の若い職員が、カエルムたちの放つ圧倒的な神威にガタガタと膝を震わせながらこちらへ歩いてきていた。

 

「よ、ヨシテル様……総ギルドマスター、および幹部の方々による審議が終了いたしました。至急、ギルドまでお越しください……ひっ、失礼します!」

 

職員は俺が返事をする間もなく、逃げるように走り去っていった。

 

「さて、ようやく決まったか。カエルム、ルーナ、お前たちはテラとアウラを連れてここで待っていてくれ。バルト、カグヤ、イシュタル、アレス、留守を頼むぞ」

 

「おう、任せろ。この子たちに指一本触れさせやしねえよ」

 

バルトが『王の斧』を肩に担いで笑う。

俺はアルシェラを伴い、喧騒の引かない大通りを抜けてギルドへと向かった。

 

ギルドの最奥、重厚な扉の向こうでは、大陸全土を束ねる総ギルドマスターと本部幹部たちが、張り詰めた空気の中で俺たちを待っていた。

 

「……よく来たな、ヨシテル殿」

 

白髪の老人が、鋭い眼光を和らげて口を開いた。

 

「審議の結果を伝える。貴殿ら【ヴィンクルム】が黒竜の森で成し遂げた偉業、および持ち帰った魔導核の価値は、もはや既存のランクでは計り知れぬ。よって……全会一致で貴殿らを『Sランクパーティー』に認定する。これは冒険者ギルド史上、最短期間かつ最年少での到達だ」

 

総ギルドマスターは、それまでの銀色や金色とは一線を画す、透き通るような白金(プラチナ)のプレートを六枚、机に並べた。

 

「このプレートは、大陸全土における超法規的な権限を意味する。どの国家も貴殿らを拘束することはできず、逆にいかなる軍事施設への立ち入りも拒めない。……責任は重いが、貴殿らならば使いこなせるだろう」

 

俺は無言でプレートを手に取った。

冷たく、しかし重厚な魔力が宿っている。

 

「ありがとうございます。ですが、俺たちの目的はあくまで『アトランティアの謎』を解くことです」

 

翌朝、エルドラの街は建国以来最大の熱狂に包まれた。

中央広場には、街中の市民だけでなく、近隣の村や他国から噂を聞きつけた冒険者たちが押し寄せていた。

 

「これより、Sランク昇格式を執り行う!」

 

ガゼルの野太い声が魔道具で街全体に響き渡る。

壇上に上がった俺たち六人の姿に、地響きのような歓声が上がった。

昨日までは「何だあの化け物連れは」と怯えていた冒険者たちも、正式なSランク認定の報を聞き、手のひらを返したように熱狂している。

 

「そして、エルドラ公爵閣下より恩賞の授与がある!」

 

公爵が前に出ると、周囲は一転して静まり返った。公爵は俺の手を取り、高く掲げた。

 

「ヨシテル殿、および【ヴィンクルム】の諸君。君たちの功績により、一万年の封印が解かれようとしている。私から贈るのは金貨ではない。……ここに、『古代遺跡エルドラ探索の全権委任状』を授与する!」

 

広場にどよめきが走った。

 

「全権委任だと!? つまり、遺跡から見つかる魔導技術も遺物も、すべて彼らの自由にできるってことか……!?」

 

「左様。さらにギルド本部より、特級重要依頼が通達される。依頼内容は『魔導都市エルドラ地下深淵の完全踏査』だ。この依頼が継続している限り、君たちの活動に必要な物資はすべてギルドが負担し、エルドラ公爵家が全力でバックアップすることを誓おう!」

 

それは、冒険者としてこれ以上ない最高の栄誉であり、同時に「世界の鍵」を託された瞬間でもあった。

 

式典が終わり、俺たちは再び『ミスティック・パレス』に戻った。

周囲の警備は公爵直属の騎士団が固め、市民の立ち入りを制限している。

 

「ふぅ……。やっと落ち着けるわね。お疲れ様、ヨシテル」

アルシェラがプラチナのプレートを眺めながら、ほっと溜息をつく。

「旦那様、本当におめでとう。これでようやく、あのタワーの先に進めるばいね」

カグヤが俺の腕に抱きつく。

 

「おう! 全権委任だろ? どんなお宝が眠ってるか楽しみだぜ!」

 

バルトが意気揚々と語り、イシュタルも「ウチ、もう新しい銃の調整始めたで!」と楽しそうだ。

 

俺は精霊たちを呼び寄せた。リフィ、ライラ、グラディ、フレイヤ、ルーメン、ノックス、そして新入りのアクアとリザーナ。SSランクまで引き上げられた彼女たちの魔力は、今やこの世界の法則を書き換えかねないほどに高まっている。

 

「クオーレ、次なる目標までの最適解を出せ」

 

《了解。古代エルドラ第1ゲートから地下層へのアクセスパスを生成中。深度1000メートル以上、高濃度の源素魔力が残留していると推測されます。現在の装備およびメンバーのステータスならば突破可能ですが、念のための『魔導防壁パッチ』の作成を推奨します》

 

「分かった。出発までの数日間で、皆の防具に源素魔法耐性を付与する。カエルムたちの装備も新調してやるからな」

 

カエルムたちは、俺の言葉を理解したのか「ガウッ!」と力強く吠えた。

一万年の時を超え、眠れる魔導都市が目覚めようとしている。

俺たち【ヴィンクルム】は、もはや冒険者の域を超え、世界の真実を暴く先駆者として、更なる深淵へと足を踏み出す準備を始めた。

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