ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福― 作:煌人
黒竜の森、二日目の朝。
漆黒の木々が重なり合い、太陽の光を完全に遮断したこの魔境において、朝という概念は俺たちが灯す魔導ランタンの明かりによってのみ定義される。
「さて、今日も始めるか。昨日より少し魔物のランクが上がっているようだぞ」
俺の言葉に、フェンリル親子の背に跨った仲間たちが力強く頷いた。
二日目と三日目は、まさにヴィンクルムによる一方的な「掃討」の連続だった。
森の深部へと進むにつれ、現れるのはSランクに片足を突っ込んだ変異種ばかり。
だが、今の俺たちにはそれすらも格好の訓練相手でしかない。
「逃がさへんで! 『影火の葬列(シャドウ・パイア)』!」
イシュタルが双銃『ストロペトゥム・ノクティス』から闇属性を混ぜた火炎弾を乱射する。
着弾と同時に影が爆発し、逃げ場を失った大型魔物『デスクラウド』を灰に変えていく。
「貫け、『雷光の一刺(ライトニング・ピアス)』!」
アルシェが槍を閃かせると、一筋の雷光が空間を裂き、数十体もの魔物を一列に串刺しにした。
夜になれば、いつものように空間拡張テント『ミスティック・パレス・グランド』を展開する。
「あぁ~、やっぱりお風呂は最高ばい……」
カグヤが幸せそうに湯船に浸かり、カグヤの声が脱衣所に響く。
リビングでは、冷蔵庫から取り出したキンキンに冷えたエールを片手に、バルトとアレスが談笑していた。
「なぁアレス、お前の鎌と俺の斧、どっちが先に首を落とせるか賭けねえか?」
「……お前、酒が回ってるだろ。だが、乗ってやろう」
そんな平和な会話ができるのも、俺が張った絶対結界『ドムス・インウィオラビリス』が、外で狂ったように暴れる魔物たちの存在を完全に遮断しているからだ。
四日目の朝、俺はふと思いついた。
「今日は俺たちは見学だ。リフィ、それにカエルムたち、お前らだけでやってみてくれ」
精霊女王リフィを筆頭に、ライラ、グラディ、フレイヤ、ルーメン、ノックス、アクア、リザーナの八柱。そしてカエルム、ルーナ、テラ、アウラの四匹の神獣。
「任せて、マスター! 私たちの本気、見せるのです!」
リフィが小さな胸を張り、号令をかける。
前方に現れたのは、黒竜の森が俺たちを排除するために生み出した、樹木のような皮膚を持つ巨神兵『フォレスト・タイタン』
「ガウッ!!」
カエルムとルーナが左右から跳躍。
氷風の吐息と光火の熱線が交差し、タイタンの巨大な脚を凍らせ、焼き切る。
続いてテラが重力を操作し、アウラが雷水を叩きつける。
「皆、合わせるよ! 『八元精霊極大連鎖魔法:終焉の園(エデン・エンド)』!」
精霊たちが輪になり、中央で巨大な魔力の渦を形成した。火、水、風、土、光、闇、雷、氷。全ての属性が超高密度で融合し、前方数キロメートルの森を一瞬で原子レベルまで分解、消失させた。
「……あ、やりすぎちゃった」
リフィや精霊たちがてへ、と笑いながら戻ってくる。
目の前には、扇状に広がる巨大な更地が広がっていた。
宴と遊戯の夜
その夜、更地になった場所にテントを張り、特大のバーベキューグリルが火を噴いた。
魔法の冷蔵庫から取り出した霜降り肉が焼ける香ばしい匂いが漂う中、俺たちは酒を酌み交わした。
「それにしても、やることもなくなってきたな……」
バルトが肉を頬張りながら呟く。
魔物は近寄ってこないし、やるべき特訓も順調だ。
「よし、少し遊びを増やすか」
俺はアイテム作成を起動した。
「何ば作っとると、旦那様?」
「カードゲームと、ボードゲームだ。こっちの世界にはない遊びを教えてやるよ」
俺が作り出したのは、トランプ、チェス、そして花札だ。
「チェスはこう動かすんだ。イシュタル、対戦するか?」
「お、ええな! ウチ、こういう頭使うのは得意やで!」
数分後、イシュタルが「あー! 詰んだー!」と叫ぶ声が響く。
隣ではカグヤとアルシェが花札に興じていた。
「こいこい! さあ、カグヤ、どうする?」
「引かんばい! アタシの勝ちたい!」
アレスとバルトは、精霊たちも混ぜてトランプの『大富豪』で盛り上がっている。
「リフィ、お前また革命かよ!」
「ふふん、風の女王は勝負事でも最強なのです!」
フェンリルたちは、俺が作った巨大なクッションの上で、テラとアウラがじゃれ合い、カエルムとルーナがそれを見守っている。
魔境のど真ん中で、酒と美食、そしてカードゲームに興じるSランクパーティー。
世間が知れば腰を抜かすような光景だが、これがヴィンクルムの日常だ。
「……3日後には、中間地点のタワーに到着するはずだ」
俺は夜空を眺め、酒を一口。
「一万年の扉を開く前に、今夜はこの賑やかさを楽しむとしようか」
最強の仲間と、最強の家族。
俺たちの絆は、この遊びの喧騒の中で、より一層強く、深く結びついていくのだった。