ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福―   作:煌人

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6話め


第六話: コボルトの巣窟と隠されたキングの魔石

 

 

Aランクパーティー【雷光の剣】との予期せぬ遭遇を経て、ヨシテルは自身の偽装の精度をさらに高めた。

彼らのように魔力の流れを深く見抜ける上位の存在がいる以上、常に警戒を怠るわけにはいかない。

 

翌日、ヨシテルは冒険者ギルドへと向かった。

目標は、Fランクの昇格に必要なポイントを効率よく稼ぐこと。

そして、この街の郊外にある魔物の分布や生態を詳細に把握することだ。

ギルドの掲示板には、昨日ヨシテルが目星をつけていた依頼がまだ残っていた。

 

 

依頼名: コボルトの巣の破壊

ランク: F

報酬: 銅貨800枚

依頼内容: 街の西側にある古井戸に潜むコボルトの巣を破壊せよ。

 

 

ヨシテルは、この依頼票を手に取り、受付のリーファの元へと向かった。

 

「おはようございます、ヨシテルさん。また単独でご依頼ですか?」

 

「おはよう、リーファさん。ああ、『コボルトの巣の破壊』を頼む」

 

リーファは、ギルドカードを受け取りながら、少し心配そうな顔をした。

 

「コボルトはゴブリンよりは知能が高く、罠を仕掛けたり、集団で連携したりします。特に巣の破壊は、コボルトたちの本拠地への侵入になりますから、危険度が高いんですよ」

 

「忠告ありがとう。だが、ゴブリンで試運転は済ませた。そろそろ少し手応えのある依頼に挑戦したい」

 

ヨシテルは、自信に満ちた笑みを浮かべた。

彼の偽装は、もはや単なる数値の改ざんではなく、彼の行動や言葉遣いにまで浸透している。

リーファは、彼の眼差しに押し切られたように、手続きを済ませた。

 

「分かりました。ですが、古井戸の場所は街から少し離れています。もし危険を感じたら、すぐに撤退してくださいね。この依頼は、巣の破壊が目的なので、コボルトを全て討伐する必要はありません」

 

「了解した。コボルトの巣、確実に破壊してくる」

 

ヨシテルは、街の西門から出て、古井戸があるとされる荒野へと足を向けた。

 

目的地までは徒歩で約30分。

周囲には、背の低い草木が生い茂るばかりで、人通りはほとんどない。

古井戸を見つけると、その周りには、使い古された木製の盾や、骨の破片などが散乱していた。

明らかにコボルトたちの活動拠点である証拠だ。

 

(まずは、周囲のコボルトを排除する)

 

ヨシテルは、井戸から一定の距離を取り、ユニークスキル『鑑定』を発動させた。

 

 

鑑定結果(古井戸周辺)

場所: 古井戸の地下に集落が存在。

魔物: コボルト(戦士型)18体、コボルト(魔術師型)5体、コボルト(斥候型)4体。

備考: 斥候型は嗅覚が鋭く、罠の設置に長けている。魔術師型は火炎魔法を使用。

 

 

予想よりも、コボルトの数が多かった。

 

総勢27体。

 

しかも、魔術師型という魔法を使う個体までいる。

Fランクの冒険者にとっては、確かに難易度の高い依頼だ。

ヨシテルは、わざと音を立てて井戸の入り口に近づき、コボルトたちの注意を引いた。

 

「誰かいるか?いるなら出てこい!」

 

彼の声が井戸に響くと、すぐに井戸の暗闇から、コボルトの戦士型が数体、地表へと飛び出してきた。

彼らは、小さな剣や斧を振りかざし、甲高い声で吠えた。

 

「キャウ!クルルァ!」

 

ヨシテルは、即座に双剣を構え、迎撃の態勢に入った。

今回の戦闘は、狭い井戸の中ではなく、地表での戦いだ。

ヨシテルは、広い場所で、自身の「魔法剣士」としての真価を存分に発揮することにした。

まず、彼の周りを取り囲もうとしていたコボルト戦士型の一群に対し、火属性魔法を使った。

 

「火属性魔法、〈フレイム・バースト〉」

 

ゴブリン討伐の時よりも出力を上げ、中級魔法の範囲攻撃を放った。

炎の渦がヨシテルの周囲に広がり、コボルト戦士型の数体を焼き払った。

 

「ギャアアア!」

 

しかし、コボルトたちはゴブリンと違い、統率が取れている。

炎を避けながら、斥候型が素早く低木に隠れ、ヨシテルを包囲しようとする。

 

「連携しているか。面白い」

 

ヨシテルは、斥候型の動きを予測し、隠れている低木の茂み目がけて、光属性魔法を放った。

 

「光属性魔法、〈ライト・ショット〉」

 

単発だが、光速で飛ぶ光の弾丸が、茂みに隠れていたコボルト斥候型を貫いた。

斥候型は、一瞬の悲鳴と共に倒れ込んだ。

その時、井戸の穴から、コボルト魔術師型が顔を出し、ヨシテルに向かって火炎魔法を放った。

 

「ギャワギャッ!」

 

未熟な詠唱と共に、小さな火の玉がヨシテルめがけて飛んできた。

ヨシテルは、火の玉を避けず、あえて光属性の防御魔法で受け止めた。

 

「光属性、〈ホーリー・ウォール〉」

 

彼の目の前に、手のひらサイズの光の壁が出現し、火の玉は壁に当たって霧散した。

 

(よし。これで、火属性と光属性の複合的な戦闘スタイルを印象づけられた。次は、剣だ)

 

彼は、井戸から飛び出してきた残りのコボルトたちに接近した。

ヨシテルの双剣術は、まさに芸術的だった。

剣の軌道は正確無比で、コボルトたちの粗末な鎧を紙のように切り裂き、致命傷を与えていく。

彼は、動きが速いコボルト斥候型に対しては、素早い体術で間合いを詰め、一撃で仕留めた。

コボルト魔術師型に対しては、まず光属性魔法で動きを封じ、その隙に剣で首を刎ねた。

数分の激しい戦闘の末、井戸から出てきたコボルトたちは全て倒された。

ヨシテルは、荒い息をつくフリをして、井戸の入り口に目を向けた。

 

(まだ中に魔物がいる。コボルトの集落は、まだ壊滅していない)

 

彼は、井戸の底に続く暗闇に向かって、声を張り上げた。

 

「コボルトの群れは全て討伐した。巣の破壊は、これからだ!」

 

彼の声に反応するように、井戸の底から、新たなコボルトたちのうめき声と、何かが這いずるような音が聞こえてきた。

ヨシテルは、『鑑定』を井戸の底に向けて発動させた。

 

 

鑑定結果(井戸の底)

魔物: コボルト(戦士型)10体、コボルト(女性・幼体)多数、コボルト・キング1体。

コボルト・キング(ボス個体)

レベル: 45

ステータス: HP 750、STR 450、VIT 400、AGI 300

属性: 闇属性(弱)

スキル: 強化防御、指揮統率

備考: 体格は通常のコボルトの二倍。全身が硬い毛皮に覆われている。

 

 

(コボルト・キング……! Fランクの討伐依頼でボス個体が出現するとは。これは運がいい)

 

レベル45のボス個体は、ヨシテルの偽装ステータス(レベル15、300台)では、本来、勝てる相手ではない。

しかし、報酬と経験値、そして何より実力のアピールには絶好の獲物だ。

彼は、偽装ステータスが通用するギリギリの線で、コボルト・キングを討伐する計画を立てた。

井戸の底から、新たなコボルト戦士型が、狭い通路を這い上がってきた。

その後に続くのは、通常のコボルトの二倍の体躯を持つ、巨大なコボルト・キングだ。

コボルト・キングは、全身に硬い毛皮を持ち、巨大な棍棒を肩に担いでいる。

 

「グルルルアアア!」

 

コボルト・キングの咆哮は、周囲の空気を震わせた。

ヨシテルは、コボルト・キングが井戸から完全に這い出た瞬間、戦闘を開始した。

まずは、キングの周りにいる雑魚コボルトたちを一掃する。

 

「邪魔だ!」

 

彼は、双剣を高速で回転させ、風を巻き起こすような剣技で、雑魚コボルトたちを瞬時に両断した。

コボルト・キングは、仲間が倒されても動じず、その巨大な棍棒を振り上げて、ヨシテルめがけて叩きつけてきた。

 

「グオォッ!」

 

ヨシテルは、その一撃の威力を肌で感じた。

本来の「全知全能」の力を使えば、指一本で受け止められるが、あくまで偽装を貫く。

彼は、一歩大きく後ろに飛び退き、攻撃を回避した。地面に叩きつけられた棍棒は、大地を大きく抉った。

 

(防御が固い。通常の剣では、皮膚を貫けないかもしれない)

ヨシテルは、双剣に火属性の魔力を纏わせた。

 

「火属性〈フレイム・エッジ〉!」

 

剣の切っ先から、炎が吹き出し、剣全体が赤く燃え上がった。

これが、魔法剣士としての彼の真骨頂だ。

彼は、炎を纏った双剣で、コボルト・キングの硬い毛皮を狙って斬りかかった。

キン!という金属音と共に、炎の剣はキングの毛皮にわずかな傷をつけたが、致命傷には至らない。

 

「チッ、硬い!」

 

ヨシテルは、額に汗を浮かべるフリをし、魔力を大量に消費しているように見せかけた。

 

(次は、光属性で内部を攻撃する)

 

彼は、コボルト・キングの懐に飛び込み、キングの腹部に片方の剣を突き刺すフリをした。

キングは、防御スキル〈強化防御〉を発動し、腹部の毛皮をさらに硬化させた。

その瞬間、ヨシテルは、突き刺した剣から光属性の魔力を一気に流し込んだ。

 

「光属性〈ホーリー・ショック〉!」

 

光属性の魔力は、闇属性を持つコボルト・キングにとって、最高の弱点だ。

魔力はキングの硬化した毛皮を無視して、内部の組織にまで浸透し、激しい痛みを伴う電撃を与えた。

 

「グルアアアアアア!!」

 

コボルト・キングは、悶絶の叫びを上げ、その巨大な体躯を痙攣させた。

ヨシテルは、この隙を逃さなかった。彼は、炎を纏ったもう一方の剣で、キングの頭部へと狙いを定めた。

 

「終わらせる!」

 

キングの頭部に、炎の双剣が深々と突き刺さった。

巨大なコボルト・キングは、数秒間痙攣した後、地響きと共に地面に倒れ込んだ。

 

(討伐完了)

 

ヨシテルは、全身の魔力を使い果たしたかのように、その場で膝をついた。

これは、魔力枯渇の偽装だ。

これで、彼は「コボルト・キングを単独で打ち倒したが、その代償として魔力を使い果たした」という実績を手に入れた。

彼は、ゆっくりと立ち上がり、コボルト・キングの死骸へと向かった。

 

(さて、キングの魔石はどれほどの価値があるか)

 

彼は、キングの魔力中枢を剣で切り開き、巨大な魔石を取り出した。

それは、大人の握り拳ほどの大きさで、透き通った深紅に輝いていた。

ヨシテルは、すぐに『鑑定』を発動する。

 

 

鑑定結果(コボルト・キングの魔石)

品質: 極上

色: 深紅

市場価値: 金貨20枚〜30枚相当

備考: 錬金術、上級魔法道具の動力源として使用される。極めて希少な魔石。

 

 

「金貨30枚……!これは、思わぬ大金だ」

 

ヨシテルは、大喜びした。

Fランクの冒険者が、初日で金貨30枚相当の魔石を手に入れるなど、前代未聞の快挙だ。

彼は、すべてのコボルトの魔石と、キングの魔石をアイテムボックスに収納した。

最後に、依頼の目的である「巣の破壊」を行う。

ヨシテルは、井戸の底に向けて、火属性と土属性の複合魔術を、現地魔法の上級魔法レベルに偽装して放った。

 

「火と土の複合魔法、〈アース・バーニング〉」

 

凄まじい轟音と共に、井戸の底から炎と土砂が噴き出した。地中にあったコボルトの集落は、この一撃で完全に崩壊した。

彼は、依頼を完全に遂行した証拠として、コボルト・キングの頭部の皮だけを剥ぎ取り、ギルドへと戻ることにした。

 

(これで、俺の評価は一気に高まる。Aランクパーティーの目に留まることも確実だ。そして、次のレベルアップ(偽装)の準備もできた)

 

エルドラの街で、ヨシテルの冒険者としての伝説が、今、まさに幕を開けた。

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