ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福―   作:煌人

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73話め


第七十三話:神速の桜花と、ダンジョン探索の加速

 

 

『ミスティック・パレス・グランド』の中で迎えたダンジョン内の朝。

俺は昨日新調したジェネシス級装束『瞬神の桜花文様和装』に袖を通し、鏡の前で最終的な着心地を確認していた。

 

「……うん、悪くない。打掛の重みも魔力操作で相殺されているし、何より関節の可動域が広すぎるくらいだ」

 

漆黒の袴の裾を引き締め、二本の刀を腰に差し、濃い青色の打掛をさらりと羽織る。

金色に輝く桜の刺繍が、テント内の魔導灯に反射して妖艶な光を放っていた。

 

「ヨシテル、準備はいい? ……その格好、やっぱり凄く格好良く見えるわね」

 

アルシェラが、自身の白銀の雷帝聖鎧を整えながら声をかけてくる。

 

「まぁ、見た目は俺の趣味だからな。これの真価は戦ってみないと分からないさ。……よし、皆行こうか。40階層のボスを拝みに行こう」

 

俺たちはテントをアイテムボックスへ収納し、40階層の最奥、巨大な黒石の扉の前に立った。

 

扉が轟音と共に開き、冷気に満ちた円形の闘技場のような広場が姿を現した。

中央に鎮座していたのは、全身を禍々しい漆黒のフルプレートで包んだ、首のない巨躯。

 

 

――Aランク上位個体『サウザント・デュラハン』。

 

 

その手には、怨念を帯びた紫色の炎を揺らめかせる魔剣が握られていた。

 

 

「グルアァァァ……ッ!!」

 

 

首がないはずのその体から、地響きのような咆哮が放たれる。

バルトが『アイギス・アエテルナ』を構えて前に出ようとしたが、俺はそれを手で制した。

 

「バルト、ここは俺にやらせてくれ。装束の慣らし運転だ」

「おう、わかったぜヨシテル! 派手に決めてくれ!」

 

 

俺は一歩、前へ踏み出す。

 

 

デュラハンがその巨体に似合わぬ速度で魔剣を振り下ろす――。

 

「……遅いな」

 

刹那。装束の特性『俊敏増幅』が発動した。

通常でもAGI 99000という異常数値を誇る俺の『縮地』が、発動効率2倍の補正を受けて神速を超えた。

バルトたちの目には、俺の体が掻き消えたように見えたはずだ。

俺の視界では、デュラハンの動きが静止画のように止まっている。

俺は『姫鶴一文字』を抜き放ち、一瞬の間に八度の閃光を刻んだ。

 

 

「――『瞬影:八重桜(やえざくら)』」

 

 

俺が刀を鞘に収めた瞬間、遅れて凄まじい衝撃波が広場を吹き抜ける。

デュラハンの漆黒の鎧は、紙細工のように無数の破片となって霧散し、魔剣ごとバラバラに斬り刻まれた。

 

 

「ガ、ア……ッ……」

 

 

崩れ落ちるデュラハンの残骸が光の塵へと変わり、その場に「ボンッ!」という景気のいい音と共に、特大の戦利品が出現した。

 

「うわぁ、凄かばい! 鎧ん魔核に、巨大な魔剣、それに白光しとう魔石まで……! 旦那様、圧勝ったいね!」

 

カグヤが駆け寄り、嬉しそうにドロップ品を指差す。

 

「ああ、着心地は最高だ。縮地の瞬発力が桁違いに上がっている。……よし、この調子で50階層まで一気に抜けるぞ」

 

40階層を突破した俺たちは、マッピングの手を緩めることなく下層へ突き進んだ。

道中の魔物はAランク中位から上位へと徐々に強さを増していたが、今の俺たちの敵ではない。

 

「アレス、左から来るぞ!」

 

「了解」

 

アレスが影から飛び出し、疾風の鎌で魔物の首を刈る。

倒された魔物が光に消えた瞬間、アイテムボックスのスキルが自動で作動し、「素材:毒蜘蛛の糸」「魔石:大」「肉:極上」といった文字が脳内のログに高速で流れていく。

 

「ほんま、この自動回収便利やわぁ。いちいち拾わんでええから、走りながら戦えるやん」

 

イシュタルが双銃を連射し、群がる魔物を一掃しながら笑う。

 

50階層のエリアボス――巨大な石造りの巨人『エルダー・ゴーレム』も、俺の神速の一撃とバルトの戦鎚による粉砕、そしてアルシェラの『ケラウノス・ジャッジメント』によって、戦闘開始から1分足らずでただの礫(つぶて)へと変えられた。

 

「よし、50階層も踏破。……クオーレ、60階層までの最短ルートをマッピングしながら進むから表示してくれ」

 

《了解、マスター。最短経路を算出。これより深層域――『沈黙の回廊』へと入ります。魔力濃度の上昇を確認》

 

50階層から60階層までの道のりは、これまでの草原や密林とは一変し、青白い発光石が埋め込まれた石造りの回廊が続いていた。

マッピングのログが埋まっていく中、俺たちはついに60階層の最深部――次のエリアボスの部屋へと続く、これまでで最も巨大で重厚な、銀色の金属扉の前に辿り着いた。

 

「……ここが、60階層のボス部屋か。流石にプレッシャーが今までとは違うな」

アレスが珍しく表情を引き締める。

 

「ガハハ! 上等じゃねえか。だが、流石に今日は結構歩いたぜ。ヨシテル、この扉の前で一晩休もうぜ」

 

「そうだな。バルトの言う通りだ。……リフィ、周囲の警戒を頼む。ドムス・インウィオラビリス、最大展開」

 

俺が指示を出すと、テントの棒に吊るしたランタンから淡い光が広がり、半径500メートルを不可侵の領域へと変える。

俺たちは扉の真正面に『ミスティック・パレス・グランド』を設営した。

 

「よし、今夜もパントリーの食材で豪華に行こう。明日は60階層を抜けて、ついに前人未到の七十階層……最深部を目指すことになるからな」

 

「なのです! マスター、美味しいものたっぷりなのです!」

リフィが元気に飛び跳ねる。

 

俺たちは重厚な銀の扉を見上げながら、束の間の休息を得るために豪華なリビングへと足を踏み入れ。

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