ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福―   作:煌人

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74話め


第七十四話:桜舞う戦場と、新たなる装いへの閃き

 

 

六十階層の最深部。静寂が支配する「沈黙の回廊」の突き当たりに、その銀色の重厚な扉は立ちはだかっていた。

これまでの石造りや黒石の扉とは一線を画す、魔導金属の冷ややかな質感が、この先に待つ試練の格の違いを物語っている。

 

「……さて、気合入れていくぞ。開けるぞ」

 

俺は両手を扉にかけ、ゆっくりと力を込めた。

 

 

ズズズ……と地響きのような音を立てて開かれた先。

 

 

そこは、これまでの「部屋」という概念を覆す、広大な円形闘技場だった。

そして、その中央に陣取る軍勢の威圧感に、バルトが不敵な笑みを漏らした。

 

「がはは! こいつはたまげた。Aランクの雑魚が群れてやがる……どころじゃねえな!」

 

闘技場の中央には、巨躯を誇る三頭の魔物が並び立っていた。

 

中心に鎮座するのは、漆黒の角と黄金の刺青を持つSランク『エンペラーオーガ』

 

その左右を、魔力を帯びた杖を持つAランク『マジックオーガ』と、精緻な鎧を纏ったAランク『オーガジェネラル』が固めている。

 

さらに背後には、数十体ものオーガの精鋭部隊が、一糸乱れぬ隊列で武器を構えていた。

 

「へぇ、なかなかの布陣やんか。Aランクの軍団をSランクが率いてる。……まぁまぁ、歯応えありそうやね」

 

イシュタルが双銃の撃鉄を起こし、獰猛な笑みを浮かべる。

 

「なのです! マスター、やっつけるのです!」

 

リフィが俺の肩から飛び立ち、風の魔力を練り上げる。

 

「よし、総力戦だ。カエルムたちも遠慮はいらん。蹴散らせ!」

 

 

「グルアァァァッ!!」

 

 

エンペラーオーガの咆哮を合図に、オーガの軍団が地を揺らして突撃してくる。

俺は一歩、踏み出した。その瞬間、新調した『瞬神の桜花文様和装』が魔力に反応する。

 

「……速い」

 

自分でも驚くほどの加速。二倍の効率となった『縮地』は、もはや瞬間移動と遜色ない。

俺が移動した軌跡には、魔力の残滓が「桜の花びら」となって宙を舞い、幻想的な光景を作り出す。

俺は『姫鶴一文字』を一閃させ、最前線のオーガジェネラル三体を一瞬で沈めた。

 

 

「――『瞬影:残桜(ざんおう)』」

 

 

俺が通り過ぎた後には、光り輝く桜の花びらが舞い散り、それが消えると同時にオーガたちが崩れ落ちる。

 

「ヨシテル、その姿……本当に綺麗ね。でも、威力はえげつないわ! 『雷帝化』!」

 

アルシェラが雷光を纏い、マジックオーガたちの放つ魔法を全て弾き飛ばしながら、槍『フルメン・スピクルム』で中心部を貫いていく。

 

「テラ、アウラ! お父さんたちに負けられんとよ! 『極大光魔法:セレスティアル・ノヴァ』!」

 

カグヤが放つ極大の光が闘技場を真っ白に染め上げ、オーガの軍勢を消滅させていく。

カエルム、ルーナ親子も、テラが重力で敵を押し潰し、アウラが雷水で追撃する見事な連携を見せていた。

 

最後は、エンペラーオーガの首を俺とバルトが同時に両断し、戦闘は幕を閉じた。

 

戦闘が終わった広場には、これまでにないほどの豪華な素材がドロップしていた。

レジェンド級『皇帝鬼の金角』『魔導鬼の賢者杖』『将軍鬼の重装殻』、そして巨大な魔石の数々。

 

「ふぅー……。素材がボコボコ勝手にアイテムボックス入っていきよる。ログ眺めてるだけで、もう笑いが止らへんわ!」

イシュタルが汗を拭いながら笑う。

 

「ヨシテル、やっぱりその和装、いいわね」

 

アルシェラが俺のそばに歩み寄り、濃い青の打掛に触れた。

 

「動くたびに魔力の残滓が桜の花びらが舞っているようで、見てるこっちまで背筋が伸びるというか……機能性もそうだけど、見た目が本当に素敵だわ」

 

「そやんね! 旦那様、バリ似合っとうやん! うちもそげん良か服、着てみたくてたまらんちゃんね!」

カグヤが羨ましそうに俺の衣装を見つめる。

 

その言葉を聞いて、俺の脳内で何かが繋がった。

 

「……そうか。皆の分も作ればいいんだな」

 

「えっ? ウチらの分も?」

イシュタルが驚いて目を見開く。

 

「ああ。この『瞬神の桜花文様和装』の基本理論はクオーレが既に解析済みだ。皆の職業や属性に合わせて、ジェネシス級の和装を創造できるはずだ」

 

俺は一度、広場を見渡した。

 

「幸い、ここは1時間でボスがリポップする。……1度ボス部屋の前に戻ろう。『ミスティック・パレス・グランド』を設営して、今から全員分の和装を仕立てる。出来上がったら、次に出てくるエンペラーオーガたちで性能試験をする。どうだ?」

 

「がはは! 最高じゃねえか! 俺も龍人族に似合う粋な格好ってやつに興味があるぜ!」

 

バルトが拳を叩き、アレスも「影に紛れる黒い和装か……悪くないな」と口角を上げた。

 

「決まりだ。よし、戻るぞ!」

 

俺たちは再び銀の扉の外へと戻り、広い回廊に移動要塞テントを設営した。

 

「クオーレ、各メンバーのステータスと同調し、それぞれの特性を極限まで引き出す和装のデザイン・構成案を。……素材はアイテムボックスにある最高級品を惜しみなく使うぞ」

 

《了解しました、マスター。ヴィンクルム専用・ジェネシス級和装『絆の系譜シリーズ』の創造プロセスを開始します。……想定時間は3時間。夕食までには完成いたします》

 

テントの中では、女性陣が「どんな色がいいかしら」「ウチは派手なのがええな!」と、まるでお祭り前の少女たちのように盛り上がっている。

 

俺は自室に籠もり、アルシェら仲間の顔を思い浮かべながら、アルティメットスキル『武器防具作成』と『スキル創造』をフル回転させ始めた。

1万年の孤独を背負ったこの街の深部で、俺たちは新たなる「絆の系譜」を身に纏おうとしていた。

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