ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福―   作:煌人

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75話め


第七十五話:雷花の和装と、新生せし雷帝の演武

 

 

六十階層のボス部屋、銀の扉の前に展開されたミスティック・パレス・グランド。

激戦……というには一方的すぎたが、エンペラーオーガ軍団を蹴散らした俺たちは、今、リビングで芳醇な肉の香りに包まれていた。

 

「よっしゃあ! 今日は焼肉パーティやで! 見てやこのパントリーから出てきた霜降り肉、えげつないわ、ほんまもんの宝石やんけ!」

 

イシュタルがトングを片手に、最高級の肉を次々と鉄板へ並べていく。

 

「のです! マスター、このお肉、口の中でとろけるのです!」

 

リフィが小さな口いっぱいに肉を頬張り、精霊女王としての威厳をどこかへ置き忘れている。

カエルムたちフェンリル親子も、各自の専用スペースで山盛りの肉を黙々と、しかし幸せそうに食らっていた。

 

「がはは! 旨い肉と旨い酒! これ以上の贅沢はねえな!」

 

バルトがジョッキを煽り、アレスも「……確かに、この肉の質は異常だな」と珍しく食を勧めている。

 

和気藹々とした食後のひと時。皆がソファでまったりと寛ぎ始める中、俺は一人、精神を集中させた。

 

「……さて、約束通り、皆の装備を新調する。まずはアルシェ、お前からだ」

 

「えっ、私から? 楽しみだけど……少し緊張するわね」

 

アルシェが期待に胸を膨らませ、居住まいを正す。

俺は自室に籠もり、アルティメットスキル『武器防具作成』と『魔術創造』を並列起動させた。

三時間で完成するとはいえ、これは仲間たちの命を守る「絆の系譜」だ。一切の妥協は許されない。

 

俺はアイテムボックスから、古代エルドラの深部で回収した最高品質の魔導繊維と、雷龍の極薄鱗を取り出した。

アルシェラのイメージは、気高く、かつ苛烈な雷だ。

 

「クオーレ、構成案の最終確認を」

 

《了解、マスター。サンクトゥス・ゼウスの特性を完全継承しつつ、和装としての柔軟性と機動性を極限まで高めます》

 

まず、黒い絹地に抑えめの金色でサンダーベル(雷鐘花)の刺繍を施した小袖を織り上げる。

その上に、白銀の輝きを放つ軽装の胸当てと腰鎧を錬成。

これには金色の豪華な装飾が彫り込まれ、物理的な防御力を担保しつつ、魔力の伝導率を最大化させている。

 

そして、その上に羽織る打掛。

漆黒をベースに、眩いばかりの黄色と金色のサンダーベルが舞い踊る。

それはまるで、嵐の夜に咲き誇る一輪の花のようだった。

仕上げに、通気性を極限まで高めた黒のハイロングブーツを。これにも抑えめの花の模様を刻み込んだ。

 

3時間が経過し、俺は完成した一式を手にリビングへ戻った。

 

「アルシェ、着替えてみてくれ」

 

数分後。寝室から現れたアルシェラの姿に、リビングにいた全員が息を呑んだ。

 

「……どうかしら? 鎧よりもずっと軽くて、身体の一部になったみたいだわ」

 

黒と銀、そして金が織りなすその姿は、まさに『雷帝』の二つ名に相応しい神々しさだった。

 

「ちかっぱ綺麗か!アルシェラ、まるでお月様から降りてきた戦女神様やん!」

カグヤが尻尾を激しく振って絶賛する。

 

「わ、めっちゃシュッとしてるし、エロカッコええやん!ヨシテル、やるなぁ。ナイス仕事!」

イシュタルも感心しきりだ。

 

「性能も説明しておく。ジェネシス級『雷花文様和装一式』だ」

 

俺は特性を読み上げた。

特性1: VIT / MPに完全同期。

特性2: 雷属性と光属性に対する絶対防御。

特性3: 『雷帝化』スキル使用時の身体への反動を完全に無効化。

特性4: 新機能。『雷帝化』使用時、AGIをさらに1.5倍に底上げする。

特性5: 物理魔法ダメージ半減。

特性6: 鑑定不可・アルシェラ専用。

 

「……AGIが1.5倍!? それ、私の俊敏値だととんでもないことになるわよ……?」

 

「ああ。それを今から試してほしい。……丁度いい、ボスがリポップしているはずだ」

 

俺たちは再び、銀の扉を開いて六十階層のボス部屋へと足を踏み入れた。

 

 

「グルアァァァッ!!」

 

 

再出現したエンペラーオーガが咆哮を上げる。

だが、アルシェラの動きはそれよりも速かった。

 

「――『雷帝化』!!」

 

アルシェラの身体から、黄金の雷光が爆発的に溢れ出す。次の瞬間、彼女の姿が消失した。

 

 

ドォォォォォン!!

 

 

轟音と共に、マジックオーガとオーガジェネラルの首が同時に宙を舞う。

アルシェラは一瞬で敵の懐へ潜り込み、槍『フルメン・スピクルム』でエンペラーオーガの胸を深々と貫いていた。

 

「……速い。追いつけないな」

アレスが目を見開く。

 

アルシェラは流れるような動作で槍を引き抜き、舞い散る火花の如き雷の中で、静かに着地の姿勢をとった。

 

「ヨシテル、これ……凄い! 全然身体が重くないし、思うがままに雷と一つになれるわ!」

 

「合格みたいだな。反動もなさそうだし、何よりその打掛が雷光に映えて格好いいぞ」

 

「ふふ、ありがとう」

 

アルシェラは嬉しそうに微笑み、俺たちは再びボス部屋の入り口へと戻った。

ドロップしたレジェンド級素材を自動回収しながら、俺は次なる仲間の顔を見た。

 

「よし、次はカグヤ。お前の番だ。準備はいいか?」

 

「はい!旦那様、うちもバリ楽しみにしとーけんね!」

 

俺たちの冒険は、新たなる「絆の系譜」を纏い、さらなる深淵へと加速していく。

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