ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福―   作:煌人

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76話め


第七十六話:椿彩の和装と、賢帝の御業

 

 

アルシェラの『雷花文様和装一式』の劇的な初陣を終え、俺たちは再び60階層の銀の扉前へと戻ってきた。

 

『ミスティック・パレス・グランド』のリビングには、先ほどの戦闘の余韻と、これから新調される装備への期待感が心地よく混ざり合っている。

 

「ふふ、まだ体が軽い気がするわ。ヨシテル、本当に素晴らしい贈り物をありがとう」

 

アルシェラが、打掛の裾を揺らしながら満足げに微笑む。

 

「気に入ってくれたなら何よりだ。さて……次はカグヤ、お前の番だ」

 

「はいっ! 旦那様、アタシの心臓はさっきからばっくばくしとるっちゃん! どんな服になるとか、ちかっぱ楽しみばい!」

 

カグヤが九つの尻尾をパタパタと振り、上目遣いで俺を見つめる。

俺は頷き、精神を集中させるために自室へと向かった。

カグヤのイメージは、慈愛に満ちた光。

そして、天狐族としての高潔さと、どこか温かみのある美しさだ。

 

俺はアイテムボックスから、古代エルドラの聖堂深部で守られていた『聖霊の繭糸』と、光の精霊王の加護を受けた『極光の魔布』を取り出した。

 

「クオーレ、構築シークエンスを開始。カグヤの特性『九尾の智慧』を核に、魔法回路の最適化を行ってくれるか?」

 

《了解、マスター。ジェネシス級装束:椿彩文様和装一式(つばきいろもんようわそう)。設計案、確定しました》

 

 

まず、ベースとなるのは清廉な白色の小袖(巫女服)だ。

襟元や袖口には、抑え気味ながらも気品漂う金の椿が刺繍されている。

これに合わせるのは、鮮やかな赤色の巫女袴。

ここにも歩くたびに光を反射する金の椿が散らされている。

足元には、動きやすさを重視した白色のハーフブーツ。

素材は最高級の龍革を白く染め抜いたもので、やはり金の椿の刺繍が施されている。

そして、仕上げに羽織る打掛。

全体を濃い桃色で染め上げ、その上には赤、白、ピンク、そして金を贅沢に使い、大輪の椿が咲き乱れる様子を豪華な刺繍で表現した。

長さは足首まで。カグヤが歩くたびに、九つの尾がその豪華な布地の間から美しく広がるよう、背面のカッティングには細心の注意を払った。

 

 

「よし……完成だ」

 

俺の手には、光の魔力が物質化したかのような、神々しい和装が握られていた。

 

3時間が経過し、俺はリビングへと戻った。

 

「カグヤ、これを。着替えてきてくれ」

 

「わぁ……! ちかっぱ綺麗かぁ! 旦那様、すぐ着てくるけん待っとってね!」

 

 

カグヤが衣装を抱えて部屋に駆け込み、数分後。

 

 

扉が開くと同時に、リビングが柔らかな光に包まれた。

 

「どげん? 旦那様に似合うて思われたいっちゃんね……」

 

そこにいたのは、まさに「光の女神」だった。

濃い桃色の打掛に描かれた椿の花々が、彼女の白く美しい肌と九つの尾に映え、言葉を失うほどの美しさを放っている。

 

「……絶句だわ。カグヤ、あなた本当にお姫様みたい」

 

アルシェラが感嘆の声を漏らし、バルトも「おお……! これは……なんというか、拝みたくなるな」と圧倒されている。

 

「めっちゃ似合ってるやんか! カグヤちゃん、これマジで惚れ直すわぁ」

イシュタルが口笛を吹く。

 

「性能も説明しておくぞ。ジェネシス級『椿彩文様和装一式』だ」

 

俺は特性を読み上げた。

特性1: MP/INTに完全同期。防御力と魔法抵抗が無限に上昇する。

特性2: 魔法詠唱を不要とし、魔力消費を概念レベルで極限まで抑える。

特性3: 常に身体を最適な状態に保ち、状態異常を無効化。

特性4: 治療魔法の効果を無限に増幅。

特性5: 物理魔法ダメージを常時半減。

特性6: 鑑定不可・カグヤ専用。

 

「詠唱が要らんっちゃと? ……それに、魔力が勝手に溢れてくるごたっ感覚ばい。旦那様、アタシ、なんか凄か事ができそう!」

 

「ああ。……じゃあ、その『凄いこと』を試しにいこうか」

 

再び、60階層のボス部屋。銀の扉が開かれ、リポップしたエンペラーオーガたちが咆哮を上げる。

だが、その咆哮が響き渡る前に、カグヤが一歩前へ出た。

 

「みんな、下がりんしゃい。ウチが浄化してあげるけんね」

 

カグヤがジェネシス級魔杖『ウィルガ・アエテルナ』を掲げる。

 

通常、この規模の軍団を消滅させるには膨大な詠唱と魔力が必要だが、今の彼女には不要だった。ヨシテルは例外中の例外

 

「――『神聖魔法:エターナル・ジャッジメント』」

 

カグヤの言葉と同時に、闘技場全体が眩いばかりの純白の光に飲み込まれた。

それは単なる攻撃ではない。

悪しき魔力を分解し、魂を慈悲で包み込むような、圧倒的な「光」の奔流だ。

 

「グル……ッ!?」

 

エンペラーオーガは断末魔すら上げられなかった。

光が収まったとき、そこには焦げ跡一つなく、ただ魔物たちが光の塵となって消え去った後の静寂だけが残っていた。

 

「……すごいな。一瞬で、消えたよ……」

アレスが呆然と呟く。

 

「旦那様! 体が全然疲れん! 魔力が勝手に回復しようとばい!」

 

カグヤが打掛を翻して駆け寄ってくる。その笑顔は、椿の花よりも鮮やかだった。

 

「完璧だな。詠唱破棄に魔力自動回復の効率化……これでカグヤは文字通りの『移動要塞』だ」

 

俺たちは再び、景気良くドロップしたレジェンド級素材を自動回収し、ボス部屋の入り口へと戻った。

 

「よし、二人とも成功だ。次はバルト。お前の番だな」

 

「おう! 待ってたぜ! 俺にはどんなゴツくて粋な格好を用意してくれるんだ?」

 

バルトが巨大な拳を鳴らし、リビングに笑い声が響く。

俺たちの深淵探索は、美しくも苛烈な「和」の彩りを加えて、更なる加速を見せていた。

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