ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福―   作:煌人

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77話め


第七十七話:蓮華の楯無と、玄帝の剛断

 

 

カグヤの放った神聖魔法の余韻が、60階層の広大な闘技場からゆっくりと消えていく。

エンペラーオーガ軍団を塵へと変えた圧倒的な浄化の光。

その中心にいたカグヤは、新調された桃色の打掛を揺らしながら、満足げに駆け寄ってきた。

 

「旦那様ぁ、見てくれたやろ? アタシ、全然息上がっとーとよ!」

 

「ああ、完璧だった。あの規模の魔法を無詠唱で放って、魔力消費も最小限。まさに賢帝の名に相応しい」

 

俺たちはドロップしたレジェンド級素材をアイテムボックスへ回収し、再び銀の扉の前に設営した『ミスティック・パレス・グランド』へと帰還した。

 

「ふふ、これでヨシテル、アルシェラ、カグヤの三人が和装ね。……次は、バルトの番かしら?」

 

アルシェラが、自身の雷花をあしらった和装の袖を整えながら、期待の眼差しをバルトに向ける。

 

「がはは! 待ちかねたぜ、ヨシテル! 俺に似合う『粋』な鎧、期待してるからな!」

バルトが大きな拳を打ち鳴らす。

 

「わかってる。……バルト、お前にはドロップしたデュラハンの魔剣も使って、最高の一振りを用意してやるから」

 

俺は仲間の笑い声に送られながら、制作室へと籠もった。

 

バルトロスのイメージは、揺るがぬ大地、そして全てを撥ね退ける圧倒的な剛健さだ。

俺はアイテムボックスから、デュラハンが遺した紫炎の魔剣、そして古代エルドラで回収した最高純度の魔導鋼『アダマンタイト』を取り出した。

まず取り掛かったのは、武器の再構築だ。

魔剣の核を抽出し、俺のアルティメットスキルで構造を書き換える。

 

「クオーレ、長さを最大化しつつ、重量をバルトの筋力に最適化してくれるか」

 

《了解、マスター。銘:『長船光法(おさふねみつのり)』。九尺三寸(約2.8メートル)の野太刀として定義します》

 

漆黒の刃紋が走るその野太刀は、ただそこにあるだけで周囲の空間を威圧するような重厚さを放っていた。

次に、防具の錬成だ。ベースにするのは、日本の歴史上「楯を必要としない」と言わしめた伝説の鎧、楯無(たてなし)の大鎧。

全体を漆黒で塗り上げ、そこには抑え気味ながらも力強い金色の龍と蓮の模様を彫り込んだ。

そして、その上に羽織る打掛。

深みのある濃い緑色を基調とし、背中から裾にかけて、白、ピンク、金を使った大輪の蓮の花が咲き誇る豪華な刺繍を施した。

バルトの巨躯に合わせて、打掛の肩から腕の部分は、大鎧の重厚な肩当て(袖)を干渉させないために大胆にカット。

長さは足首まで、彼の踏み込みを邪魔しない絶妙な調整を行った。

 

「……よし。完成だ」

 

三時間が経過し、俺は完成した一式を携えてリビングに戻った。

 

「バルト、これを着てみてくれ」

 

 

「おおおっ! なんて風格だ……! すぐ着てくるぜ!」

 

 

数分後。リビングの扉をくぐり抜けてきたのは、一柱の武神の如き姿となったバルトだった。

 

「どうだ、皆! 俺に似合ってるか!?」

 

漆黒の大鎧が龍人族の強靭な肉体を包み、深緑の打掛に描かれた蓮の花が、彼の豪快さの中に不思議な静謐さを与えている。

背負った九尺三寸の野太刀『長船光法』が、その威容を完成させていた。

 

「すごい……! バルト、山が歩いているみたいだわ」

アルシェラが圧倒されたように呟く。

 

「ちかっぱかっこよか! 龍の模様と蓮の花が、バルトにめっちゃ似合うと!」

 

カグヤが尻尾を振って喜び、イシュタルもニヤリと笑う。

 

「うわ、何そのデカい刀! ヨシテル、またムチャクチャなん作ったな。バルト、そんなんちゃんと振れんのか?」

 

「がはは! 当たり前よ! むしろ、今の俺なら何だって斬れそうな気がするぜ!」

 

「性能を説明する。ジェネシス級『蓮華文様楯無和装一式』(れんげもんようたてなしわそう)だ」

 

俺は特性を読み上げた。

特性1: VIT/HPに完全同期。

特性2: 物理・魔法属性への耐性を最大化。貫通属性以外のあらゆる攻撃を無効化する。

特性3: 状態異常を完全に無効化。

特性4: 『龍人化』時の身体への負荷をゼロにする。

特性5: 新機能。『龍人化』使用時、STRとVITをさらに1.2倍に底上げする。

特性6: 鑑定不可・バルトロス専用。

 

「……貫通以外無効!? それにSTRとVITが底上げされるって、俺、もう誰にも負ける気がしねえぞ!」

 

「ああ。じゃあ、その『無敵』を証明しに行こうか」

 

3度、60階層のボス部屋。銀の扉が開き、リポップしたエンペラーオーガたちが俺たちを迎え撃つ。だが、今回は俺たちが攻めるのではない。バルトが悠然と一歩前へ出た。

 

「おい、デカブツ共。全力でかかってこい。俺は一歩も動かねえぞ」

 

バルトが『アイギス・アエテルナ』を構えず、ただ野太刀を肩に担いで立ちふさがる。怒ったエンペラーオーガとジェネラルたちが、巨大な棍棒や魔剣をバルトの脳天に叩きつけた。

 

 

ガギィィィィィン!!

 

 

凄まじい衝撃音が響くが、バルトの体は微動だにしない。それどころか、攻撃した魔物たちの武器が粉々に砕け散った。

 

「……痛くも痒くもねえな。じゃあ、こっちの番だ。――『龍人化』!!」

 

バルトの咆哮と共に、彼の肌が硬質な龍鱗に覆われ、魔力が膨張する。

彼は肩に担いでいた『長船光法』を、重さを感じさせない速度で一閃させた。

 

 

「――『剛断:蓮華往生(れんげおうじょう)』!!」

 

 

横一文字に放たれた一撃。

それはエンペラーオーガを含めた軍団全てを、一瞬で「一刀両断」にした。

斬撃の風圧だけで闘技場の石壁が削り取られ、魔物たちは断末魔すら上げられずに消滅した。

 

「……はは、バケモノね。あんな大剣を片手で……」

アルシェラが呆れ顔で笑う。

 

「ふぅ……。ヨシテル、最高の気分だぜ! この鎧も刀も、俺の魂と繋がってるみたいだ!」

 

バルトが打掛を翻して戻ってくる。

その足取りは、巨大な鎧を纏っているとは思えないほど軽やかだった。

 

「満足したようで何よりだ。……さて、これで四人。残るはイシュタルとアレスだな」

 

俺たちは再び、自動回収された素材のログを眺めながら、パレスへと戻った。

一行の装備が「和」の彩りで完成に近づくにつれ、俺たちの絆はより強固な、そして神話的な輝きを帯び始めていた。

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