ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福― 作:煌人
ギルドマスター・ガゼルからDランクへの特別昇格試験を言い渡されたヨシテルは、ギルド内で一躍注目の的となった。
FランクからDランクへの飛び級は前代未聞であり、彼の存在はエルドラの街の冒険者コミュニティに大きな波紋を広げた。
ヨシテルは、宿に戻った。
(Dランク昇格試験…ガゼルは私の真の実力を見極めようとしている。彼の鑑定スキルは高レベルだ。今の偽装レベル28のステータスでは、彼を納得させるには不十分だろう)
ヨシテルは、試験に備え、自身の偽装をさらに強化する必要があると判断した。
(装備のアップグレードをどうするか)
ヨシテルが現在使用している双剣とレザーアーマーは、アイテムボックスから創造したものであり、性能は「一般級(ノーマル)」に設定してある。
これは、Fランクの冒険者として不自然でないようにするための偽装だった。
しかし、明日Dランク昇格試験に臨み、ガゼルの鑑定の目を欺くには、装備のレベルも相応に引き上げる必要がある。
彼は、アイテムボックスの奥に隠された、ギフト『全知全能』の力を解放した。
この力を使えば、この世界の物質の最高位である創世級(ジェネシス)の装備すら一瞬で創造できる。
だが、創世級や神話級の装備は、この世界では「存在するかどうかもわからない」であり、使用すれば正体が露見するリスクがある。
ヨシテルが選んだのは、この世界で「稀少」とされる特質級(ユニーク)の装備だ。
特質級は、高い技術と希少な素材によって作られ、伝説級(レジェンド)の一歩手前に位置する。
これならば、彼の急成長した実力に合わせた装備として、ぎりぎり納得される範囲だ。
彼は、日本の刀剣文化への強い愛着から、双剣ではなく、打刀と脇差の二振りを創造することにした。
1. 特質級打刀:『姫鶴一文字』
ヨシテルは、アイテムボックスから、一振りの美しい打刀を取り出した。
創造結果(ユニーク:打刀)
名称: 姫鶴一文字(ヒメツルイチモンジ)
ランク: 特質級(ユニーク)
種類: 魔剣
素材: 夢幻鋼(ムゲンコウ)+光属性魔石(極上)
能力: 切れ味、耐久性、剛性が伝説級に匹敵。使用者の光属性魔力を増幅し、攻撃力に転化する。
漆黒の鞘から抜き放たれた刀身は、月光を宿したかのように妖しく輝いていた。
刀身には、細かく美しい波紋が刻まれている。
ヨシテルの「全知全能」が、彼の記憶にある最上の日本の刀剣の美しさを再現した逸品だ。
2. 特質級脇差:『にっかり青江』
次に、彼は打刀よりも短い、一振りの脇差を創造した。
創造結果(ユニーク:脇差)
名称: にっかり青江(ニッカリアオエ)
ランク: 特質級(ユニーク)
種類: 魔剣
素材: 夢幻鋼(ムゲンコウ)+火属性魔石(極上)
能力: AGIとLUKを微増。使用者の火属性魔力を刀身に常時纏わせ、敵の防御力を無視してダメージを与える。
脇差は、打刀よりも実戦的なデザインだが、その刀身は青みがかった光を帯びており、不気味な美しさを放っている。
これは、ヨシテルがメインとする火属性との親和性を高めるための設計だ。
3. 特質級防具:『瞬影の装束』
そして、彼は、現在のレザーアーマーを、軽量かつ強靭な特質級の布製防具へと変えた。
創造結果(ユニーク:防具)
名称: 瞬影の装束(シュンエイノソウゾク)
ランク: 特質級(ユニーク)
種類: 防具(布・軽装)
素材: 龍の鱗糸(リューノウロコイト)+風属性魔石
能力: 非常に高い防御力を持ちながら、重量はほぼゼロ。使用者のAGIを大幅にブーストし、魔法抵抗力を高める。
これらの装備は、見た目は上質な特質級だが、その真の性能は「全知全能」によって制御されており、ガゼルやAランク冒険者の鑑定スキルに引っかからないよう、完璧に偽装が施されている。
昇格試験前夜の特訓(偽装の調整)
ヨシテルは、特質級の装備を身に着け、宿屋の自室でイメージトレーニングを開始した。
彼は、Dランク昇格試験の内容が、おそらく「実戦形式の模擬戦闘」か「高レベル魔物の討伐」のどちらかであると予測した。ガゼルが自ら見極めると言っている以上、前者である可能性が高い。
(ガゼルはレベル120の剣神。その彼に私の強さを納得させるには、今の偽装ステータスでは弱い。だが、一気にステータスを上げすぎると、疑われる)
ヨシテルは、『偽装魔術』を使い、自身のステータスをさらに微調整した。
レベル: 28 → 35 (装備の力と、コボルト討伐で得た経験値が時間差で反映された、という設定を追加)
攻撃力 (STR): 520 →650
防御力 (VIT): 490 →600
俊敏性 (AGI): 580 →720 (特質級防具によるAGIブーストを反映)
これで、彼の偽装ステータスは、Dランク上位〜Cランク下位の実力にまで引き上げられた。
この強さなら、ガゼルを納得させつつも、「特質級装備による大幅な底上げ」という形で、特異性を説明できる。
さらに、彼は、二振りの魔剣の力を最大限に引き出すための、新たな戦闘スタイルを脳内でシミュレートした。
打刀『姫鶴一文字』(光属性増幅)と脇差『にっかり青江』(火属性常時付与)の二刀流。
脇差の火属性で相手の防御を削り、打刀の光属性で決定打を与えるという、属性複合の剣術。
特質級防具によるAGIのブーストを利用し、「高速移動」を戦闘の軸にする。
試験当日:ギルドの特別闘技場
ヨシテルは、ギルドの裏手に併設された特別闘技場へと案内された。
闘技場は、周囲を高い壁に囲まれた円形の広場で、その中央には、ガゼルと、Aランクパーティー【雷光の剣】の面々が立っていた。彼らが、今回の特別昇格試験の立会人兼審判となるようだ。
ヨシテルの姿を見たAランクパーティーの面々は、その一新された装備に目を見張った。
聖騎士のベルナールが、目利きのできるリーヴに尋ねた。
「リーヴ、あの装備はなんだ?昨日までのものとは違う」
賢者リーヴは、目を細めてヨシテルの装備を鑑定した。
彼女の顔に、驚愕の表情が浮かんだ。
「間違いないわ。あれは…… 特質級(ユニーク)だわ!特に、あの二振りの刀剣。刀身から放たれる魔力の波動が、尋常ではない。あれは、魔剣よ!」
「特質級の魔剣を二振りも!?」
Aランクパーティーの面々が、どよめいた。
特質級の装備は、Aランク冒険者でも全員が所持しているわけではない。
それを新人のヨシテルが装備していることに、驚きを隠せない。
ギルドマスターのガゼルは、ヨシテルに向かって歩み寄った。
「ほう。新調したか。しかも、特質級の魔剣と防具まで。その刀剣からは、光と火の魔力を感じる。お前の強さの理由の一つが、その装備にあるわけだ」
ガゼルは、鋭い視線をヨシテルの装備に向けたが、その鑑定スキルをもってしても、装備の真の能力(創世級の力と偽装された特質級)は見抜けなかった。
「お前がこの装備をどこで手に入れたかは問わない。だが、特質級の魔剣を二振り同時に扱うとは、常人には不可能だ。その魔力、そしてその技量、試させてもらうぞ」
ガゼルは、特別昇格試験の内容を告げた。
「Dランク昇格試験の内容は、シンプルだ。私と、模擬戦闘を行ってもらう」
その言葉に、Aランクパーティーを含め、立会人全員が息を飲んだ。
ギルドマスターのガゼルと直接戦闘をするなど、Aランク冒険者でもほとんど経験がないことだ。
「模擬戦闘……承知しました」
ヨシテルは、静かに頷き、鞘に収められた『姫鶴一文字』と『にっかり青江』に手を添えた。
ガゼルは、闘技場の中央に立ち、彼の愛剣である巨大な両手剣を地面に突き立てた。
「勝敗は、お前が私に一本取った場合、あるいは、お前の体力が尽きた場合とする。私は、お前に致命傷は与えない。全力でかかってこい」
ヨシテルの全身から、レベル35、ステータスAGI 720という、Dランク上位の魔力が噴き出した。
(全力で模擬戦を演じ、ガゼルにDランクの実力を認めさせる。そして、彼の鑑定スキルを欺き通す)
ヨシテルとガゼルの、異例のDランク昇格試験が、今、幕を開ける。