ギフト『全知全能』 絆の系譜 ―神獣と精霊の祝福―   作:煌人

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84話め


第八十四話:虚空を穿つ蒸気爆発

 

 

三体のスケルトンドラゴンのうち、一体は俺の放った魔術――『合成極大魔術:フロース・ケラスィ・ウォリタンス』によって、その骨格を文字通り凍結粉砕され、塵へと還った。

だが、残る二体は絶叫に近い咆哮を上げ、その巨大な尾を振り回し、腐敗した魔力のブレスを吐き散らす。

 

「チッ、しぶといな……。バルト、カグヤ! 全員を収容しろ。全力の結界だ!!」

 

俺の声が響くと同時に、打掛を翻して神速で立ち回る。

飛来する骨の礫を刀で弾き、死の霧を切り裂きながら仲間たちの位置を把握する。

 

「おうよ! 任せろ! アイギス・アエテルナ、真名解放! 『絶対防御:玄帝の揺籃』!!」

 

バルトが漆黒の大鎧を軋ませ、黄金の盾を地面に叩きつける。

 

「アタシも全力でいくばい! ルーメン、力を貸して! 『智慧の聖域(セレスティアル・サンクチュアリ)』!」

 

カグヤの椿彩の装束が光り輝き、バルトの盾が作り出す物理障壁を、カグヤの神聖な魔法障壁が二重三重に包み込んでいく。

 

「アルシェ、アレス! カエルムたちも! 結界の中に入れ!」

 

俺の指示に従い、雷光を纏ったアルシェラ、影に潜むアレス、そして神獣の気高き四頭のフェンリルたちがバルトとカグヤの元へと集結する。

そこへ、八人の精霊たちも集まった。

 

「ウチらも手伝うで! フレイヤ、火の加護を!」

 

「ライラもいくわよ! 雷壁展開!」

 

「なのです! リフィも風の層を重ねるのです!」

 

リフィ、ライラ、グラディ、フレイヤ、ルーメン、ノックス、アクア、リザーナ。

 

八人の精霊たちが、バルトとカグヤの結界にそれぞれの属性魔力を注ぎ込む。

結界はもはや目で見えるほどに濃密な、七色の多重層へと進化していた。

 

俺は『クオーレ』に意識を飛ばす。

 

(クオーレ、このダンジョン内、及び上層に生存反応はあるか?)

 

《……スキャン完了。マスター、現在この階層及び踏破済みの全階層において、ヴィンクルム以外の知的生命体、及び生存個体は存在しません。全域がアンデッド、または魔導機兵のみです》

 

(……よし。なら、遠慮はいらねえな)

 

俺はイシュタルへと視線を走らせた。

 

「イシュタル! こっちに来い。俺の結界内で、最大の一撃を合わせるぞ!」

 

「ヨシテル! ……はは、なんやえげつないこと考えてる顔やね! ええよ、ウチの全魔力、あんたに預けるわ!」

 

イシュタルが加速ブーストで俺の隣に飛び込んでくる。

俺は自分とイシュタルを囲むように、ジェネシス級の魔力操作を用いた極薄だが最強の結界を張った。

前方の二体のスケルトンドラゴンが、最大出力のブレスを溜め込み、骨の顎(あぎと)を開く。

 

「くたばれ、骨クズが」

 

俺は右手を突き出し、魔力の深淵からその術を汲み上げる。

 

「――超極大水魔術:『アビス・カタラクト』!!」

 

闘技場全体を飲み込むほどの、圧倒的な質量の水流が俺の手の先から噴出した。

それと同時に、イシュタルが両腕を連前に出し、紅蓮の魔力を爆発させる。

 

「ウチの最大火力、味わいな! ――超極大火魔法:『プロメテウス・カタストロフ』!!」

 

放たれたのは、鉄をも一瞬で蒸発させる超高温の巨大な炎の玉。

俺の水流と、イシュタルの火炎。二つの超極大魔術は、スケルトンドラゴンの眼前、闘技場の中央地点で激突――いや、「融合」した。

 

瞬間、世界が白に染まった。

 

 

 

ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!

 

 

 

水蒸気爆発。

それも、神話級の魔力が込められた水と火が混ざり合った、物理法則を凌駕する熱膨張。

凄まじい衝撃波が円形闘技場を蹂躙した。

壁という壁が融解し、圧力の逃げ場を失った爆発エネルギーは、一点へと集中する。

 

「う、おおおおおおおっ!!!」

 

結界を支えるバルトが咆哮を上げる。

多重結界がギチギチと悲鳴のような音を立て、精霊たちが必死に魔力を供給して踏ん張っている。

ジェネシス級の防具を纏い、精霊たちの補佐を受けた彼らでさえ、膝を折りそうになるほどの凄まじい圧力。

爆心地にいた二体のスケルトンドラゴンは、悲鳴を上げることすら許されなかった。

骨の一片、魔力の残滓すらも、超高圧の蒸気と熱線によって一瞬で分子レベルまで分解され、この世から消滅した。

さらに、その膨大なエネルギーは上へと向かった。

 

 

ズドォォォォォン!!

 

 

地響きと共に、天井が、64階層、63階層……。

 

何階層も、何百メートルもの岩盤と魔法障壁を紙細工のようにぶち抜き、はるか上空の地上まで続く「垂直の大穴」を空けてしまった。

 

静寂が訪れる。

 

霧散していく蒸気の中で、俺は結界を解いた。

 

「……やりすぎたか?」

 

俺が周囲を見渡すと、そこには元の闘技場の面影はなかった。

壁は溶けてガラス状になり、天井には先が見えないほどの深い大穴がぽっかりと空いている。

 

「……ヨシテル。あなた、加減って言葉知ってる?」

 

アルシェラが、腰を抜かしたように座り込みながら呆然と呟く。

 

「旦那様……。天井の先、空が見えとーとよ。ダンジョンん中に、お星様が見えるなんて思っとらんやったけん……」

 

カグヤが穴の先に見える夜空の星を見上げて、力なく笑った。

 

「がはは……。生きてる心地がしねえ……。だが、最高だぜ。俺の盾が、この爆発に耐えきったんだからな!」

 

バルトが震える足で立ち上がり、誇らしげに盾を掲げた。

スケルトンドラゴンがいた場所には、それほどの爆発の中でも損なわれなかった、ジェネシス級の輝きを放つ素材――『神龍の不滅骨』と、虹色に輝く三つの巨大な魔石が、静かに落ちていた。

 

「……さて。邪魔者はいなくなったな」

 

俺はアイテムボックスを起動し、自動回収されたログを確認しながら、穴の空いた天井と、その先に続く70階層への道を見据えた。

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