僕のヒーローアカデミア 空拳ヒーロー エアーマン   作:ダレ狐

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決着

体育祭 決勝戦 砕条視点

 

「残り40秒で、ケリを付ける」

 

俺の蹴りで鳩尾を強打された爆豪は怯んでいた。

その隙に間合いを詰めようとしていたが――

 

「クソが!」

 

爆豪は腹への強打の痛みを抱えながらも、両手の爆破で加速し、俺との距離を一気に詰めてきた。

 

「あの強打を喰らって、即突っ込むのかよ!」

 

爆豪は加速した勢いで、左手をアッパーのように突き上げる。

爆炎を纏った攻撃だ。

俺は左脚を踏み込み、その場で回転して攻撃をかわした。

その勢いで、今度はこちらが左手で爆豪のボディへ強打を狙う。

 

「そう何度も喰らうかよ!」

 

俺の拳は右手で払われ、防がれた。

爆破の個性を使いながらの攻撃は、俺の技を尽く防いでくる。

 

【衝突・陸式 空衣武叢】

1分間、全身に空気圧を纏うことで攻防一体となるが、欠点はその間、弐式〜伍式までの技を作り出せないことだ。

 

その代わり、壱式と壱足は瞬時に出せる。

つまり、今の俺は身体能力が大きく強化された状態になる。

 

使用時間1分を使い切ると、インターバルとして1分間の溜めが必要になる。

 

「くそ……打開策なしに挑むのは無謀だ……ここで止める!」

 

俺は体感時間30秒で陸式を解除した。

インターバルは30秒必要だが、疲労した状態で1分も溜めていては爆豪には勝てない。

 

「あぁ? てめぇの個性はどうやら時間制限か上限付きみたいだな……」

 

「ちっ」

 

爆豪……今までの奴らより攻撃に対する反応速度が凄い。

俺も含め、個性を使った戦いで身体がついてきていない奴が多いのに――。

 

「さっきの蹴り分、キッチリてめぇに返してやるぜ!」

 

両手を爆破させた勢いで右の膝蹴り。

俺は左腕でガードした。

 

「甘ぇんだよ、バーカ!!」

 

「がっ……サマーソルトキック!?」

 

爆豪は膝蹴りから反対の足で逆上がりの要領で空中回転し、俺の顎を蹴り上げた。

 

「俺に勝とうなんて百年早ぇ!」

 

トドメの爆破で、俺は吹き飛ばされた――。

 

一方 A組 観客席 緑谷視点

「爆豪の奴、何だよ、あの反応速度!」

 

皆、かっちゃんが砕条君の攻撃を受けた後、追い込まれると思っていたのに、そこから巻き返し、今は砕条君がピンチになっていた。

 

「なぁ、緑谷。砕条の個性って」

 

「うん、轟君の予想通り……多分、制限時間があると思う」

 

「ケロ、どういう事かしら、緑谷ちゃん?」

 

「これまでの砕条君は、轟君やかっちゃんみたいに速攻で個性を使ってないんだ。開始して数秒後に使ってる」

 

「確かにそうね。遠距離攻撃の空気砲も、速攻で有効そうなのに」

 

「それに、技に壱式・弐式って番号を振ってるけど、見た感じ技の派生順で並んでない……それに、今のところ連発してないから」

 

「多分、技を使った後のインターバルの時間で区切ってるかもな」

 

「そうか、だから壱式と壱足があるんやね。その二つのインターバルが同じなら」

 

麗日さんの言う通り、あの分け方は多分、インターバルの時間ごとにしてるなら――

 

「そうだと思う。さっきの全身に空気圧を纏うのも、かなりのエネルギーがいると思うから……」

 

「なら、砕条ちゃんは今、インターバルがいるのね」

 

試合を見ると、かっちゃんはインファイトで爆破を当てるように攻撃を繰り出している。

砕条君は内側から腕で弾いて直撃は避けているが、ジャージの袖がボロボロになり始めていた。

さっきまで使っていた全身の空気圧なら、気にせず攻撃できたのに……

 

「どうした、接近戦はてめぇのテリトリーだろうが!」

 

「うるせぇな、てめぇも攻撃当ててから文句言え!」

 

何とか凌いではいるが、傍から見ても追い詰められているのは砕条君だ。

 

でも、彼の目は追い込まれてはいるけど、諦めずに勝機を探している。

 

「なら、望み通りにしてやる! スタングレネード!」

 

かっちゃんはゼロ距離でスタングレネードを放ち、砕条君が怯んだ隙に、右の大振りの爆破を当てようとした。

 

ドカッ!

 

攻撃を当てるよりも早く、砕条君の頭突きが、かっちゃんの顔面に強打した。

 

「てめぇ!」

 

「短気なお前なら、どこかで俺の動きを止めるために爆破を使うと思ってた……この密集地帯で強烈な爆破は出来ない。目くらまし程度にすると踏んだ。なら、そこに攻撃すればお前の顔面があるから、確実に当てられる」

 

頭突きを受けてフラついたところを、砕条君はさらにタックルし、かっちゃんを吹き飛ばした。

 

「衝突・」

 

「舐めるな!」

 

バランスを崩されても、かっちゃんは爆破を先に攻撃として繰り出した。

モロに受けた砕条君は――

 

「壱式!!」

 

「てめぇ!?」

 

爆破を直撃しながらも、個性の空気圧を溜め、かっちゃんの鳩尾に強打を当てた。

かっちゃんは後方に飛ばされ、場外に出そうになったが、爆破で勢いを殺し、フィールドの白線手前で踏ん張った。

 

「おいおい、クレイジーだな、砕条! 爆破をモロに受けたのに」

 

「あれは、個性の空気圧をギリギリまで溜めるために、攻撃を受ける覚悟で耐えた。恐らく、さっきまでのインファイトで爆破を連打していた爆豪が、どこかで威力を抑えるのを待っていたんだろう」

 

「どういう事だ、イレイザーヘッド?」

 

「個性も筋肉繊維と同じだ。使用し続ければ疲労が溜まる。疲労が重なれば動きは鈍る。いくら汗をかくことで爆破の威力を上げられても、掌の強度まで上がる訳じゃない。どこかで威力を弱めないと、痛みで使えなくなる」

 

「砕条は、その隙を突いたと?」

 

「多分な。奴も個性を使うとインターバルを要求されるタイプだろ。だから、こんな無茶に出たんだろうな」

 

「凄い……これが個性の戦い」

 

相手と自分の個性をいかに理解し、それを補うための体術が、二人にはある。

 

「こう見ると、私に足りないものが何かわかる気がする」

 

「俺もだ。砕条の奴、あのゼロ距離で爆豪の猛攻を対処できてる」

 

「武術をしてる俺から見ても、彼は相当に鍛錬を積んでる。でも、それと同じくらい爆豪のセンスにも驚きを隠せない」

 

麗日さん、切島君、尾白君の意見に、僕も納得していた。

 

「凄いよ……本当に」

 

「クソがァァァァ!」

 

「オォォォォ!」

 

会場の二人が雄叫びを上げながら、フィールド中央へ駆け付けた!

 

この光景は、入学間もない頃にした演習試験の、僕とかっちゃんに重なった。

 

「デク君?」

 

「何か……あの時、僕が出来なかった事を……今、二人がやってるみたいだ!」

 

ドカッ!!!!!

 

爆破と空気圧の衝撃が両者を襲い、フラつきながら後方へ下がる。

だが……砕条君の方がダメージが大きいのか、片足をついて膝を付いていた。

 

同時刻 砕条視点

 

「はぁ…はぁ…チッ」

 

 

くそ…俺の攻撃も効いてるのに…コイツの爆破…思ってたよりも後で身体に来るな…

 

「てめぇーの個性はスタミナが肝みてぇーだな」

 

「そう言うお前も、手が痙攣してるぜ…威力は上がるが身体に負荷掛かるんじゃねぇーのかよ?」

 

「関係ねぇー、てめぇー倒すのに何の問題もねぇーからよ…」

 

「あぁ?」

 

「くたばれーー!」

 

「くそ…」

 

立ち上がるが…どうする、このまま消耗戦では負ける…

ここまでなのか? 俺はやっぱりヒーローになる資格は

 

「砕条君! 君もヒーローに慣れるよ! だから負けるな!!」

 

 

「緑谷…」

 

観客席に居る緑谷を見掛けて俺は昨日のやり取りを思い出した。

 

 

 

昨日、放課後 砕条視点

 

「緑谷は、何でヒーローを目指したんだ?」

 

「どうしたの、急に?」

 

「明日は、俺にとっても皆にとっても大事なイベントだ。だからこそ、気持ちがぶれない為に、決意と言うか……覚悟? ダメだ、上手く纏まらないな〜」

 

俺は放課後の練習で、緑谷と一緒にトレーニングをしていた。

今日は軽めで引き上げようとしたら、緑谷が何でヒーローを目指そうとしたのか、知りたくなった。

 

「僕は、小さい頃に見たオールマイトの、どんな困難でも笑顔で助けるヒーローに憧れたんだ」

 

「良いな。今やオールマイトに指導を受けてるもんな」

 

「いや、それは……でも、そのオールマイトに

“君はヒーローになれる”

って言われたのが嬉しかった……ヒーローと言われる人は、学生時代に逸話がある。気がついたら、身体が動いていた。

だから、あの時、僕達を助けようとしてくれた砕条君もヒーローだよ!」

 

俺にとってのヒーロー…………

 

【拳志、強さとはチカラではない。心の中に灯火を絶やさない人だ。その灯火は、他者にとっての光にもなる。お前は、そんな強さを持つ人になってくれ……】

 

「父さん……俺は――」

 

 

---

 

現在 砕条視点

 

「くたばれーー!」

 

「オラァ!」

 

俺は爆豪の腕を掴み、爆破を頭上に向けた。

そして、立ち上がりながら……肺の中の空気を全て吐き出した。

 

「このまま負けられるかよ……全部出し切る……俺はヒーローになるんだ」

 

そして、最大限に空気を肺に取り込んだ。

 

「衝突・陸式 空衣武叢……行くぞ、俺の全てをお前にぶつける!」

 

さっきの何倍もの空気を取り込んだ陸式が、俺の身体を包んでいた。

 

「来いよ。この俺が、その上を超えて勝つ!!」

 

爆豪は掴まれていた俺の手を振りほどき、距離を取った。

 

そして爆豪は、轟戦で見せた技の構えを取っていた。

 

「真正面から撃ち砕く!」

 

「コイツでぶっ殺す!」

 

お互いが上空に飛び出し、爆豪が回転しながら俺の所に突っ込んで来た。

 

「ハウザー・インパクト!!」

 

俺は空中に足場を作り、空気圧で一気に駆け抜けた。

そして右手に最大限の空気圧を溜め、爆豪の攻撃を真正面から殴り出した。

 

“更に向こうへ Plus Ultra!”

 

「スマッシュ!!!」

 

あの時のオールマイトの気持ちを……俺の全てをぶつけた!

 

俺と爆豪の攻撃は、激しい轟音と閃光となって試合会場を包んだ。

 

 

---

 

同時刻 解説席 相澤先生視点

 

「何なの? 今の?」

 

「爆豪の爆破と、砕条の圧縮された空気圧が正面衝突しての爆発だ」

 

「イレイザーヘッドのクラス、怖すぎだろ? というか、二人とも大丈夫かよ? おい、ミッドナイト? どうなってるんだ?」

 

爆豪と砕条の攻撃は、緑谷と轟の戦いと同等の破壊力があった。

だから、ぶつかる瞬間にセメントスが周囲にセメントの壁を作り、爆風を上空のみに逃がす形を取った。

 

「おっ、見えてきたぞ!」

 

会場を見ると、フィールド中央には一人の姿が立っていた。

 

「爆豪選手を確認。砕条選手は!?」

 

ミッドナイトが爆豪を確認した後、周囲を探すと、白線ギリギリの場所で、砕条が震えながら立ち上がろうとしていた。

 

「おいおい、マジでまだ戦う気かよ?」

 

プレゼント・マイクが驚くのも無理はない。

先の攻防で、爆豪は服の一部がボロボロになりながらも立っているが、砕条はジャージの上着が爆炎で燃え尽き、インナーの黒いTシャツ姿で、腕や頭から血を流していた。

これを見れば、先程の攻防は爆豪の爆破が押し勝っていた。

 

ダメージから見て、立ち上がれる訳がない。

それなのに、立ち上がった。

 

「まだ立てるのかよ……上等だ。コレで留めだ!」

 

爆豪はフラつく足で爆破を見せつけながら砕条に駆け寄ろうとしたが、セメントが爆豪を包み込み、動きを止めた。

 

「離せ! まだ試合の途中だ!!!」

 

「ダメです! 彼をよく見なさい! ミッドナイト、確認を!!」

 

セメントスが爆豪を止め、主審のミッドナイトが砕条の元へ駆け寄り、様子を見ていた。

 

「!? 気絶してる……砕条選手、気絶により試合続行不可能のため、勝者・爆豪選手!」

 

どうやら、とっくに限界だったようだ。

 

「試合終了! 優勝者は、爆豪勝己だ!!!」

 

今回の一年の体育祭は、俺が雄英の教員になってからの中でも、特に派手な一年生だった。

どいつもこいつも危なっかしいが、惹かれるものがある。

 

とにかく――お疲れだ。

 

 

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