僕のヒーローアカデミア 空拳ヒーロー エアーマン   作:ダレ狐

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今後6名のオリキャラを追加予定にします


表彰式

医務室 砕条視点

 

「……え? ここは……」

 

「医務室だよ。まったく、気絶するまで頑張るなんてね」

 

聞き慣れた声に目を開けると、天井の白とリカバリーガールの姿が視界に入った。

 

「リカバリーガール……ってことは……俺は……負けたのか」

 

最後の攻防が脳裏に蘇る。

真正面からぶつかった一撃――俺の攻撃は、爆豪の爆破に押し切られた。

 

「最後に使った、全身を覆う空気圧のおかげでね。外傷自体はそこまで深刻じゃないよ」

 

「……じゃあ、なんで……」

 

身体を動かそうとして、思った以上の脱力感に気づく。

 

「問題はそっちさ。あんた、自分の個性の使い方、分かってるだろう?」

 

リカバリーガールは、俺の胸元を軽く指で叩いた。

 

「空気圧を生み出すために、体内に取り込んだ空気――つまり肺活量を無理やり使い切った。

 最後なんて、ほとんど全部吐き出してから、さらに吸い込んでいたね」

 

「……酸欠、ですか」

 

「その通り。体内の酸素量が減り過ぎて、完全な酸欠状態。

 意識を失ったのは、そのせいさ」

 

やっぱり、そこか……。

 

「陸式で身体を覆っていたから、衝撃そのものは耐えられた。

 でもね、“守れても動かせない身体”じゃ、戦闘は続けられない」

 

リカバリーガールの言葉は、優しいけど容赦がない。

 

「インターバルを設けてるのは、正しい判断だよ。

 あれがなければ、とっくに倒れていたはずだ」

 

「……それでも、無理をした」

 

「そう。あんたは“勝つため”に、安全策を踏み越えた」

 

俺は、何も言い返せなかった。

 

「覚えておきな。

 個性は強さだけじゃない。続けられるかどうかが、ヒーローには一番大事なんだよ」

 

その言葉が、胸に静かに沈んでいった。

 

コン、というノック音。

 

「起きてるか」

 

その声に、思わず背筋が伸びる。

 

「……相澤先生」

 

「無理に起きなくていい」

 

相澤先生は、いつもの眠そうな目のまま、ベッド脇に立っていた。

 

「負けたな」

 

「……はい」

 

誤魔化す気は無い。

勝負は明確だった。

 

「だが、評価は下がってない」

 

その一言に、思わず顔を上げた。

 

「お前の個性は制限が多い。

 インターバル、酸欠、スタミナ管理……全部、致命傷になり得る」

 

俺は、黙って聞くしかなかった。

 

「それでも、最後まで状況を見て、相手の限界を読んで、勝ち筋を探した。

 無茶だが、考え無しじゃない」

 

「……」

 

「爆豪相手に、あそこまでやれる一年は多くない」

 

相澤先生は、少し間を置いてから続けた。

 

「だから言っておく」

 

俺の目を、真っ直ぐ見て。

 

「今はまだ、ヒーロー科に上げない」

 

……やっぱり、か。

 

「だが――」

 

その一言で、胸が強く脈打つ。

 

「“候補”には入れた」

 

「……!」

 

「お前は、自分の個性の危険性を理解している。

 それを承知で踏み込んだ。

 その覚悟は、評価に値する」

 

相澤先生は、いつもの無表情のまま言った。

 

「次は、“倒れずに勝つ方法”を見せろ」

 

「……はい」

 

「職場体験のオファーは来てる。

 参加は許可する。無理はするな、倒れたら意味がない」

 

それだけ言って、踵を返す。

 

「相澤先生」

 

呼び止めると、少しだけ振り返った。

 

「俺……ヒーローに、なれますか」

 

一瞬、沈黙。

 

「なれるかどうかは知らない」

 

相澤先生は、淡々と答えた。

 

「だが、なろうとしてるのは確かだ」

 

その言葉だけを残して、医務室を出て行った。

 

扉が閉まった後、俺は天井を見上げた。

 

負けた。

限界も、弱点も、全部突きつけられた。

 

それでも――

 

「……次は、倒れない」

 

小さく呟いた言葉は、誰にも聞こえなかったけど。

 

胸の奥で、確かに何かが燃えていた。

 

 

 

 

数分後 表彰式 砕条視点

 

 

「只今より、1年生部門の体育祭の表彰式を始めます。上位3名の登場です」

 

ミッドナイト先生のアナウンスと共に、爆豪、俺、轟が上昇する台座に乗り、会場に姿を現した。

観客席からは大きな歓声が響いている。

 

俺も、とりあえず立てる程度まで治癒してもらったが、終わり次第、もう一度治療を受ける予定だ。

 

「さて、今年度のメダル授与を行うのは――“この御方”です!!」

 

「HAHAHAHA!」

 

会場の屋根の上から飛び降り、大きな笑い声と共に俺たちの前に現れたのは――

No.1ヒーロー、オールマイトだった。

 

「私が来た!」

 

USJの時もそうだが、この人の存在感は半端じゃない。

 

「それではメダル授与をしよう。まずは3位、轟少年」

 

「はい」

 

「準決勝で左側の炎を収めてしまったのは、訳があるのかな?」

 

「緑谷戦で、きっかけをもらって分からなくなってしまいました。

あなたが気にかけるのも……少し分かった気がします。

あなたのようなヒーローになりたかった。

ただ、俺だけが吹っ切れて、それで終わりじゃダメだと思った。

清算しなきゃならないものが、まだある」

 

「うん、顔が以前とは全然違う。深くは聞くまいよ。

今の君なら、きっと清算できる」

 

轟はオールマイトから銅メダルを受け取り、ハグをされた。

 

「2位、砕条少年。おめでとう!」

 

「ありがとうございます」

 

「普通科でこれだけの成績を残したのは、私が在学していた頃を見ても、君が初めてかもしれない!

個性の弱点との向き合い方次第で、君はさらに強くなれる。

今後の君に、期待している」

 

「っ……頑張ります」

 

No.1ヒーローの言葉は、やはり重みが違った。

 

「1位、爆豪少年。おめでとう! 選手宣誓通りになったな」

 

「……」

 

「おや、決勝戦前よりも穏やかになったね」

 

確かに試合前は猛獣のようだったが、今は不機嫌な顔こそしているものの、暴れる様子はなかった。

 

「俺が目指す1位じゃねぇが……決勝戦だけは悪くはなかった」

 

「爆豪……」

 

「ほう、それは彼のお陰か?」

 

「あぁ? そんなじゃねぇ……完膚なきまでの優勝じゃねぇから、納得はしてねぇ」

 

理想、高すぎだろ。

 

「だが、この決勝だけは及第点だっただけだ」

 

「うん。相対評価に晒され続けるこの世界で、不変の絶対評価を持ち続けられる人間は、そう多くはない」

 

「……」

 

(顔、怖いな)

 

「だからこそ“傷”として、今の自分の立ち位置として、このメダルは受け取れ」

 

「あぁ」

 

爆豪は嫌そうに金メダルを受け取った。

こんな顔で金メダルを受け取る奴、初めて見た。

 

「今回の勝者は彼らだった!

だが皆さん、この場にいる誰にでも、ここに立つ可能性はあった!

競い、高め合い、さらに先へ進む――次代のヒーローは、確実に芽を伸ばしている!」

 

そうだ。

俺たちのスタートは、ここからだ。

 

「それでは最後に、皆さんご唱和ください! せーの!」

 

『Plus ultra!』

 

「お疲れ様でした!……あれ?」

 

「そこはPlus ultra!でしょう」

 

少し噛み合わないまま、体育祭は幕を閉じた。

 

俺と心操はこの大会で、ヒーロー科編入への評価を受け――

そしてこの大会をきっかけに、数名の生徒がヒーロー科編入を目指すことになるとは、

この時の俺は、まだ知らなかった。

 

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