僕のヒーローアカデミア 空拳ヒーロー エアーマン   作:ダレ狐

16 / 38
職場体験編
帰郷


体育祭終了の翌日の土曜日、俺は久しぶりに故郷へ帰った。

駅前は、記憶より少しだけ賑やかになっていたが、

一本路地に入れば、変わらない匂いと空気が残っている。

 

「……変わってねぇな」

 

根津校長先生が雄英高校への編入で色々と手続きをしてくれて、その際に墓の件や、中学は不登校扱いでの卒業だった事も含めて、中学側へ連絡してくれた。

もっとも、中学時代の担任だった坂田先生には

「このバカちんがぁ〜」と、1時間ほど怒られたのは別の話だ。

 

育ての親――親父の墓は、町外れの小さな丘の上にある。

花を供え、線香に火をつけて、しばらく黙って手を合わせた。

「体育祭、準優勝だった」

誰に聞かせるでもなく、ぽつりと呟く。

「ヒーロー科にも……編入、決まりそうだ」

風が吹いて、線香の煙が揺れた。

――それでいい、と言われた気がした。

墓参りを終え、丘を下りて町へ戻る途中、

懐かしい声が背後から聞こえた。

 

「……拳志?」

一瞬、身体が止まる。

この声は――

 

「やっぱりな。背中見た瞬間、そうじゃねぇかと思った」

振り返ると、そこにいたのは、

少し背が伸びて、髪を短く整えた、見慣れた顔。

「……雷導?」

雷導 迅(らいどう じん)

幼なじみで、俺の育ての親の道場の門下生。5歳からの友人だ。

共に稽古したり、個性の特訓をした仲……だが、俺は修学旅行以来、連絡を取らなかった。

 

「久しぶりだな」

 

「……修学旅行以来だな」

 

雷導は、口角を上げて笑った。

だが、その目は昔より鋭く、どこか大人びている。

「雄英の体育祭、見たぞ」

「……全国放送だからな」

「あの爆豪と殴り合ってたな。正直、笑った」

「笑うな」

肩をすくめる雷導。

「悪かった……何にも連絡しなくて」

「相変わらず無茶するな、お前は。事情は坂田先生から聞いた」

雷導は俺に軽い腹パンをしてきた。

「うっ!」

「とりあえず、これで連絡しなかった事はチャラにしてやる。次やったら縁を切るからな」

「おう……」

相変わらず、俺のバカやる事に慣れているのか、

こんな腹パンで許す辺り、雷導の人徳には頭が上がらない。

俺の視線に気づいたのか、雷導は少し照れたように頭をかいた。

「俺さ、西の士傑高校に入った」

「……士傑?」

全国トップクラスのヒーロー校。

雄英と並び称される、実力主義の学校だ。

 

「俺の電気系の個性でな。まだ荒削りだけど、評価は悪くない」

 

「そうか……」

自然と、拳が握られた。

 

「雄英か?」

雷導が、真っ直ぐに聞いてくる。

 

「ああ。正確には、これからヒーロー科に編入だ」

 

「そう言えば、テレビの紹介で言ってたな……普通科から、か」

一瞬の沈黙。

だが、雷導はすぐに笑った。

「らしいな」

 

「何がだ」

 

「回り道して、デカい所に辿り着くとこ」

少しムカつくが、否定できない。

 

「お前も、随分遠く行ったな」

 

「西と東で、正反対だな」

雷導は、夕焼け空を見上げて言った。

 

「でもさ」

その声が、少し低くなる。

 

「仮免試験、同じ場所になるらしいぞ」

「……!」

 

「士傑も、雄英も、合同になる可能性が高い。

 これは先輩から聞いた話だけどな。まぁ俺も、期末で結果を残さないと、夏に行われる試験を受けさせてもらえないけどな」

雷導は、俺を見てニヤリと笑った。

俺達編入組の事は知らないだろうけど……多分、察してくれたんだろうな。

 

「次は、全国区だな」

胸の奥が、熱くなる。

 

「……負けねぇぞ」

 

「こっちの台詞だ」

雷導は、拳を差し出してきた。

 

「今度は、同じ土俵でやろうぜ」

俺は迷わず、その拳を打ち返した。

 

「約束だ」

夕焼けの中、俺たちは、もう一度同じ方向を見ていた。

雄英と士傑。

東と西。

次に会うのは――

ヒーローとしてだ。

 

 

そして、月曜日 1-A教室 緑谷視点

「ねぇねぇ、テレビ見た?」

「俺なんか、電車で声かけられたぜ」

「俺なんか、小学生に“どんまい”って言われたぜ」

週明け、僕らは体育祭の活躍のおかげで、通りゆく人たちから声を掛けられていた。

改めて、雄英高校の凄さに驚かされる。

「……」

「飯田君……」

クラスが明るくなる一方で、飯田君のお兄さん――

プロヒーロー・インゲニウムの襲撃事件は、体育祭を終えた後のニュースで報じられ、僕たちを驚かせた。

襲撃した犯人は、“ヒーロー殺し”の異名で知られるステイン。

学校で会った時も、

「心配して済まない。大丈夫だ」

そう言っていたけれど……。

「おはよう」

『おはようございます』

予鈴が鳴り、相澤先生が教室に入ってきた。

「ケロ、先生の腕の怪我、包帯取れたのね。良かったわ」

「ばぁさんの処置が大袈裟なんだよ。

 ……んなことより、今日のヒーロー情報学はちょっと特別だぞ」

【特別? 小テストか? やめてくれよ〜】

【ヒーロー関連の法律とか、ただでさえ苦手なのに……】

「コードネーム――ヒーロー名の考案だ」

『胸膨らむやつ、来たーーー!!』

「黙って聞け!」

『シーン……』

「というのも、先日話したプロヒーローからのドラフト指名に関係してくる。

 指名が本格化するのは、経験を積んで即戦力として判断される2〜3年からだ。

 つまり、今回1年のお前らに来た指名は、将来性への興味に近い」

確かに、僕たちは先輩たちに比べて経験が浅い。

本格的な指名が少ないのも納得だった。

「卒業までに、その興味が削がれたら、一方的にキャンセルなんてこともよくある」

「大人は勝手だな」

「いただいた指名が、そのまま自分へのハードルになるんですね」

「そうだ。

 ……で、その集計結果はこうだ」

 

先生が黒板に集計結果を表示した。

A組 指名件数

轟 4123

(?)3600

爆豪 3425

常闇 360

飯田 301

上鳴 272

八百万 88

切島 68

麗日 20

瀬呂 14

 

「例年はもっとばらけるんだが、今年は2人に注目が偏った」

「ケロ、相澤先生。2人?3600の人は誰かしら?」

そう、僕もこの数字で一番気になっていた部分を、蛙吹さんが代表して聞いてくれた。

 

「この後説明するつもりだったが……まぁ、今話すか」

相澤先生がリモコンを操作すると、表示が切り替わった。

 

A組 指名件数

轟 4123

(仮)砕条 3600

爆豪 3425

常闇 360

飯田 301

上鳴 272

八百万 88

切島 68

麗日 20

瀬呂 14

 

(?)だった部分が、砕条君の名前に変わっていた。

「1位が轟、2位が砕条、3位が爆豪って……」

「体育祭と順位、逆転してんじゃん」

「そりゃ、決勝前に猛獣みたいな檻に入ってたやつとか、ビビって呼べねぇって」

「ビビってんじゃねぇよ、プロが!!」

「あの、相澤先生。

 砕条君は体育祭で結果を残したから、もしかしてA組に……?」

「緑谷、落ち着け。その話も含めて、今からする」

「体育祭前にも話したが、砕条は普通科編入で、ヒーロー科編入を目指して体育祭に挑んだ。

 それは、当事者のお前らが見て分かる通りだ」

「確かにな。爆豪に直接ダメージ与えたの、砕条だけだよな」

「格闘戦なら、砕条の方が上だった気もする」

「あぁ? 俺がアイツに負けるか!」

「人間性では、かなり差があるぞ。指名数にも出てるし」

「んだと、醤油顔!!」

「お前ら、黙ってろ」

『シーン……』

「話を戻す。

 砕条は体育祭で2位という結果を残したことで、二学期からA組に編入がほぼ決定している」

『すげぇーー!!』

「緑谷、アイツすげぇな!」

「そうだね、峰田君!」

「ケロ、それなら、どうして“仮”って表記なのかしら?」

 

「それは、1学期の間は砕条が普通科だからだ。

 とはいえ、体育祭の成績を考慮して、職場体験には参加してもらう予定だ。 その他の内容次第では、ヒーロー科編入は白紙になる。今のアイツは、そういう状態だ」

――そうか。

だから、あの時ファミレスで編入の話をしなかったんだ。

 

「体育祭の評価は、あくまでリザルト検討の材料だ。編入試験というわけじゃない」

 

「厳しいな……正直、試合見てても、ウチらより凄そうだったけど」

 

「それな〜。俺、まだ砕条と話したことないんだよな」

そうか。耳郎さんと上鳴君は、まだ面識がなかったんだ。

 

「芦戸は、少し話したんだよな?」

 

「うん。最初は爆豪と同じくらい目つき悪くて怖いのかと思ったけど、思いのほか気さくな奴だったよ。切島もUSJで会ってたんだよね」

 

「あぁ、確かにUSJでも、周囲を気に掛ける感じだったな」

切島君と芦戸さんは、USJと試合で面識があったんだ。

 

「おい、酸オンナ! 誰が目つき悪いだ!」

 

「お前ら、何度も話の腰を折るな」

 

『シーン……』

 

「砕条の件は、この2週間で検討を進める。お前らも、不用意にアイツの邪魔はするなよ」

砕条君……頑張れ。

 

この後、僕たちはコードネームを考えることになる。

けれど――

僕も砕条君も、この職場体験が、

大きな波乱を呼ぶことになるとは、まだ知らなかった。




オリキャラの雷導は砕条にとってはチャラいけど信用出来る相棒です。
見た目はアニメ スクライドの君島です。
私がスクライドと言う作品が好きなので
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。