僕のヒーローアカデミア 空拳ヒーロー エアーマン 作:ダレ狐
放課後 USJ――災害想定訓練施設。 相澤視点
広大な敷地に、コンクリートの瓦礫、倒壊した建物、煙の演出が立ちこめている。
その一角に、8人の生徒が並ばされていた。
前列には、すでに体育祭で名が知れ渡っている2人。
砕条は腕を組み、周囲を軽く見回している。
心操は一歩引いた位置で、無表情のまま視線を落としていた。
「……うわ、本物だ」
「砕条と心操じゃん……」
他の生徒たちが、ひそひそと声を落とす。
埒が明かない。俺が前へ出た。
「俺はヒーロー科1年A組担任の相澤だ。
お前ら、今日から数日間、職場体験に向けた合同訓練を行う。
その前段階として、USJを使った体力テストと救助訓練だ」
そう言って、8人を一瞥する。
「まずは自己紹介しろ。
クラス、名前、個性について簡単でいい」
最初に一歩前へ出たのは、砕条だった。
「普通科1年C組、砕条 拳志。個性は空気圧。
……体育祭の時のまんまだ。空気圧を身体に留める個性だ。
よろしく」
簡潔すぎる自己紹介に、わずかに空気が固まる。
その隣で、心操が軽く咳払いをした。
「普通科1年C組、心操 人使。個性は洗脳。…戦闘より、状況制御が得意だ」
短いが、覚悟の滲む声だった。
さて、ここからが例の6人の編入候補生だ。
「ふーん……」
次に、腕を組んだまま一歩踏み出したのは、鋭い三白眼の少女。
「普通科1年D組、
個性は
続いて、恐る恐る手を挙げたのは、マッチ棒を彷彿とさせる赤く丸い坊主頭の男子生徒。
「普通科1年D組、ひ、
個性はライターで、指から火を出せます。
その……頑張ります」
次に、ぐっと拳を握って前へ出た少女。
「普通科1年E組、
個性は水操作!多少無理しても動けるんで、力仕事任せてください!」
根性論がそのまま歩いてきたような雰囲気だ。
その隣で、欠伸を噛み殺しながら手を振った、マイペースそうな少女。
「普通科1年E組、
個性は
ここからは、本校初となる経営科からの編入希望者2名だ。
最初に動いたのは、ウェーブのかかった、いかにもインテリ系金持ち然とした長身の男子生徒。
「経営科1年
個性は
相手の視覚を自分、もしくは別の相手と共有できる。
以後お見知り置きを〜」
経営科はヒーロー科とは別の意味で癖が強いが、
こいつはその中でも異質だ。
続いて、静かに前へ出たのは、もう1人の経営科の女子。
「経営科1年I組、
個性は
右手で触れた物と左手で触れた物の位置を入れ替えられます。
……無駄な衝突は好みません。効率重視で」
小根とは違い、無駄なアピールをしない。
以上、8名。
鷹野と白河はヒーロー科入試を受け、不合格となり普通科へ進学。
火種はサポート科試験に落ち、普通科へ編入している。
白河は体内の水分を使いすぎると貧血を起こす。
入試試験では開始数秒で倒れ、ポイントは30止まりだった。
鷹野は心操同様、ロボット相手では個性が活かせず、
体育祭の障害物競走でも43位。運動能力自体は高い。
火種は申請していたサポートアイテムが体育祭直前に不具合を起こし、アイテム無しで出場して敗退。
鷹野、白河、火種は性格は違えど、体育祭では意欲を見せていた。
一方、九十九、小根、交野は――正直、ヒーロー志望には見えない。
だが、それを見極めるのが今回のテストだ。
「まずは現時点でのお前達の体力テストを行う。個性の使用は許可する」
「緑谷が言ってたヤツか」
砕条は俺のクラスと交流があるらしい。
「時間は限られている。始めろ」
最初の種目は50メートル走だ。
「順番に行け。個性使用可だが、やりすぎるな」
トップバッターは砕条。
スタートの瞬間、足元の空気が圧縮され、
地面を蹴る音が一段低く響く。
加速は爆発的ではないが、ブレがない。
無駄がなく、最後まで速度を落とさずゴール。
「タイムは4秒8……安定してるな」
体育祭2位の実力は伊達じゃない。
「次は私が行きます!」
次は白河が前に出た。
クラウチングスタートの構えから、
スタートした瞬間に手を後ろへ向け、水を噴射して加速する。
「5秒9」
「くぅ〜ダメだ、水の勢い出ない……」
そう言って、1リットルの水を飲み干す。
その後、心操、鷹野、交野、小根、九十九、火種の順となった。
砕条と白河以外は、個性無しでのタイムだ。
心操は身体能力が高くないと踏んでいたが、
思いの外トレーニングしていたのか、鷹野とほぼ同じ。
意外だったのは経営科だ。
基本的に体力は低いと想定していたが、
個性無しで7秒台は、なかなかのものだ。
以降の体力テストも、概ね同様の順位となった。
火種は女子生徒を含めても最下位だったことに、
目に見えて落ち込んでいる。
「うっ……自分の体力の無さに落ち込む……」
「どんまい! まだ他にもあるんだ、気合入れよう!」
白河は、このメンツの中では前向きだな。
「体力テストは終了だ。
10分休憩した後、4人1組でチームを組んで救助訓練を行う」
「救助訓練ですか?」
「そうだ。体力テストでは個々の個性把握が目的だったが、
ここからはサポート系の個性をどう活かすかを見る」
「というわけで――
砕条のチームは、心操、鷹野、交野。
白河のチームは、火種、九十九、小根だ。
休憩中に、それぞれチームメイトを把握しておけ」
このチーム分けの理由は以下だ。
① 体力テストで個性を使った砕条と白河を分ける
② サポートアイテム無しの火種、洗脳という扱いづらい個性の心操
③ 索敵・探索向きの鷹野と九十九
④ 個性を使わず平均点を出し、他者を観察していた交野と小根
経営科は分析に長ける傾向がある。
おそらく、各チームのブレインになるだろう。
さて――
即席の組み合わせで、どう救助するか。
見せてもらおう。