僕のヒーローアカデミア 空拳ヒーロー エアーマン 作:ダレ狐
職員会議 ヒーロー科編入組 総評 相澤視点
職員会議室には、俺、オールマイト、ブラドキング、プレゼント・マイク、根津校長らが集まっていた。
モニターには、編入試験を終えた8名の生徒のデータが映し出されている。
「じゃあ、編入候補8名の総評に入ろう」
俺が淡々と切り出す。
「まず、評価が最も高かったのは――砕条拳士だ」
「異論はないね」
オールマイトが即座に頷いた。
「戦闘能力が頭一つ抜けている。
近接戦闘、判断力、覚悟。どれもヒーロー科基準でも高水準だ」
「次点が白河だな」
ブラドが資料を指で叩く。
「彼女は俺の個性に似て体内の水分を操作して戦うスタイル、さらにプレゼント・マイクのヴォイスを水の障壁を作ることでチームを守っていた」
見せられた資料映像にはプレゼント・マイクのヴォイスを水の障壁を作っていた。 音が吸収するように3重にして作られていた。
「この二人は共通して、瞬間火力と対応力が高い。ただし、どちらもスタミナが課題だ」
「長期戦になると失速する傾向がはっきりしてる」
ブラドも同意する。
「逆に言えば、そこは訓練次第でどうとでもなる。才能としては十分すぎるほどだ」
次に話題は、救助訓練全体の指揮を執った二人へ移った。
「それから、経営科の二人――交野と小根」
この名前には、会議室の空気が少し変わった。
「正直、ここまでやるとは思ってなかったよ」
オールマイトが苦笑する。
「交野は、個性《チェンジ》を戦略レベルまで昇華させていた。
オールマイトを“追い込む”という結果を、理詰めで実行した」
「しかも、本人は前に出ず、全体を俯瞰して指示を出していた」
セメントスが付け加える。
「ヒーロー科に足りないタイプの“司令塔”だ。個性の負荷管理も含めて、非常に完成度が高い」
「で、問題児はこっちだな」
プレゼント・マイクが肩をすくめながら笑った。
「小根。アイツ、俺相手によくあそこまでやったよ」
モニターには、対プレゼント・マイク戦のログが映る。
「視界を奪った一瞬の隙を突いて、周囲のスプレー缶を九十九が操作。 そこに火種を重ねて、簡易的な火炎放射状の制圧」
「しかも、最終的には小麦粉工場に誘導して――」
ブラドが淡々と続ける。
「白河が小麦粉と水を霧状に散布。“粉塵爆発を起こせる”と示してギブアップを引き出した」
「実際には起こさず、脅しだけで終わらせたのも評価点だね」
根津校長が頷く。
「判断を一つ間違えれば大惨事。だが、制御できるギリギリの線を理解していた」
「戦闘力でねじ伏せるんじゃなく、状況を作って勝つタイプだな」
オールマイトが腕を組む。
「総合的に見て、8人ともヒーロー科編入に値する」
「問題は――」
エクトプラズムが言葉を区切った。
「こいつらが、ヒーロー科の既存メンバーにどう影響するか、だな」
会議室に、静かな緊張が走る。
「面白くなるぞ」
プレゼント・マイクがニヤリと笑った。
「体育祭から、思わぬ人材がごっそり来たってわけだ」
「確かに、戦闘面では2人しか目立たないけど、それらを指示し、作戦で格上相手の先生を追い詰める。 しかも、会って数分のメンバーで行える」
「プロヒーローでもこれだけの連携や指示が出来る人間は多くいません」
「何より、彼等が試験のために切磋琢磨に励む姿はご飯三杯は行けますね」
スナイプ、13号が評価をしていたのにミッドナイトが何か雰囲気をぶち壊した感じになったな…
「後は、心操·鷹野·火種·九十九の評価ですが…私としては目立つ所は少ないが、目立つ4人のフォローとしてはよく頑張ってると思います」
「おいおい、イレイザー!? もっと評価してやれよ 雄英高校の歴史でも8人同時に編入届が出るの初めてだぜ? 俺はそれだけでもガッツがあると思うぜ?」
プレゼント・マイクの言う通り、ヒーロー科編入希望者は数年に1度1人か2人が良い所、しかも体育祭後に8人 寧ろ体育祭後はヒーロー科の実力に心が折れて諦めるのが多い中は、評価に値する。
「そうですよ先輩! この4人は派手な印象が少なく見えますが
オールマイトが言うように、警戒されてる洗脳の個性をインカムのフェイクを混ぜって誘導したり、 それ以外でも交野さんのフォローも素晴らしいものです!」
13号の言う様に心操は個性が割れた中での試験に挑むのは確かに他の生徒の中でもハンデは大きい。
それでもチームの縁下として活躍はしていた。
「鷹野さんも乱暴な言動は目立つけど、この手の救助訓練で開始早々に要救助者の位置の索敵能力は大きな評価ですよ!」
ミッドナイトの言う通り、確かに爆豪のように言動が悪いのは目立つが、交野が焦った時にフォローが良かった。 個性だけじゃなく視野の広さは俺も感心していた。
「火種君は確かに個性としてはかなりハンデがある、しかも体力テストとしても赤点ギリギリのライン。 けど、救助訓練時では要救助者の声掛けや安心させるように言っていたのは素晴らしい。彼の行動は不安に感じる要救助者に寄り添っている」
スナイプは火種の救助訓練での対応に評価をしている。 確かに救助訓練でここまで要救助者に熱心なのは、俺のクラスで飯田と八百万ぐらい…いや、ぎこちない所はあるが火種は緑谷に似ている所があるかもな。
「ケッケッケッ、 九十九の個性は驚いたぜ、周囲のものを動物みたいに動かす、個性の扱いも甘い所はあるが訓練積めば救助ヒーローとしての活躍もいいんじゃねぇーか?」
パワーローダーも九十九の期待値として評価をした様だ。 彼女も見た目からは想像できないが要所要所、個性でフォローしていた。
「うん、皆からの評価は良さそうだね、では砕条君は個人で残りの7人は熊野君の所で職場訓練で良いかな?」
「マジか! あの熊野先輩の所かよ!」
「プレゼント・マイク、寧ろ彼の所が良いだろ? 雄英高校で最初にヒーロー科編入した生徒 熊野 吾郎 ヒーロー名 マウンテンベア 山岳救助主体のヒーローで救助ヒーローでも多くの伝説を残したヒーロー」
「懐かしいな、熊野先輩は私が入学した時にヒーロー科に編入したから、当時から話題だったよ」
皆が言う、熊野吾郎は 異形型でツキノワグマの個性で見た目通りの熊 入試の時、当時はロボットではなく バイトで雇われたヒーローがヴィラン役だったが、熊の力でヴィラン役を突き飛ばした勢いで近くに居た受験生が頭を強打する事故が発生。
その時、親御さんと揉めて、熊野先輩はヒーロー科の試験を不合格となり、普通科の試験で受けることになった。
余談だが今のロボット式の試験に変更になった理由になった話。
先輩は、故郷の森を保護活動の為にもヒーロー免許が必要のため、学校に直訴して、根津校長の采配で、体育祭の活躍でヒーロー科の編入を検討することになった。 そして、成果を残し2年時からヒーロー科に在籍する事になった。
先輩は自身の経験を後輩達の糧にするために職場体験やインターンでは編入希望の生徒をできる限り引き受けてくれている。
教員の立場からしたらありがたいOBだ。
「うん、それじゃ編入生徒の詳細な方針は職場体験後に改めて会議することにします」
『異議なし!』
会議が終わり、他の先生達は職員室の机に戻る中、オールマイトが私の所に来た。
「相澤くん、砕条少年のことで質問だけど良いかな?」
「何でしょうオールマイト?」
「彼の職場体験先が気になってね」
オールマイトが思ってた疑問点は他の教員も気になっていた様で聞き耳を立てていた。
「はぁ〜先程、リストを本人渡したばかりで確定はしてませんが…驚いてた事務所はありました」
「何処の事務所?」
「エンデヴァー事務所ですよ」
その事を聞いたオールマイトを初め、周囲が驚いていた。
エンデヴァー事務所の推薦は炎系の個性が主体、しかも今年は息子である轟焦凍に推薦している。 なのに、砕条にも推薦出している。
しかも、砕条とは直接面識は無いはずなのに…
時は数日前のエンデヴァー事務所に戻る エンデヴァー視点
「だから、焦凍君だけの推薦は辞めた方がいいですよ!」
サイドキックのバーニンの声が、事務所の会議室に響いた。
「……理由を言え、バーニン」
俺は書類から視線を外さず、低く返す。
「単純です。“身内贔屓”って言われます」
即答だった。
「雄英は、ただでさえ注目度が高い。今年は体育祭は普通科の生徒が決勝戦進出で話題ですよ」
バーニンはモニターを操作し、資料を映し出す。
「そこに《エンデヴァー事務所推薦:轟焦凍のみ》――これ、絶対に突かれます」
「事実だろう」
「ええ、事実です。でも“事実”と“納得されるか”は別です」
……チッ。
「焦凍は、実力で推薦に値する」
「それは誰も否定しません」
バーニンは一拍置いて、続けた。
「でも、雄英側も世間も見るのは“構図”です。エンデヴァーの息子だけを推薦した、という事実」
「……」
「ヒーロー育成の場で、“家庭内の事情が介入していないか”
そう疑われるのは、事務所としてもマイナスです」
俺は無言で腕を組む。確かに、雄英は教育機関だ。
政治や世論と無縁ではいられん。
「そこで提案です」
バーニンが一枚の資料を差し出した。
「もう一人、推薦枠を設けましょう」
「……誰だ」
「砕条拳士」
名前を聞いた瞬間、脳裏に体育祭決勝の映像が浮かぶ。
「何て言っても普通科で決勝戦進出は大きいですよ」
「偶然だ」
「いいや」
バーニンは首を振った。
「偶然で、あそこまで詰められません」
モニターに、砕条の試合ログが流れる。
「近接戦闘に特化した個性制御。瞬間判断、踏み込み、覚悟。
焦凍君と違う“方向性”の才能です」
「炎ではない。氷でもない」
「ええ。だからこそ意味があります」
バーニンは静かに言った。
「“息子だけを特別扱いしていない”という、分かりやすい証明になります」
「……」
「それに」
彼女は少し声を落とす。
「焦凍君にとっても、いい刺激になります」
俺は目を細めた。
「焦凍は、俺の背中だけを見ていれば良い」
「だからこそです」
バーニンは、真っ直ぐ俺を見た。
「父親でも、先生でもない“同世代の壁”が必要です」
砕条拳士――
あの拳に、迷いはなかった。 "奴と重なる"
「……砕条は、俺の事務所に向いているか?」
「はい」
即答だった。
「個性の出力制御、肉体管理、近接特化。
エンデヴァー事務所の訓練環境は、彼の伸び代を最大化できます」
「……」
書類に視線を落とす。
焦凍。砕条。 炎と拳。
「二人同時に見れば、比較も、競争も、逃げ場もない」
バーニンが、少しだけ笑った。
「そういうことです」
俺はペンを取り、推薦欄にもう一つ名前を書き加えた。
「……分かった」
「ありがとうございます」
「ただし」
バーニンの動きが止まる。
「甘やかす気はない」
「承知しています」
「焦凍も、砕条も」
俺は書類を閉じ、立ち上がった。
「“俺の事務所に来た”時点で、等しく鍛え上げる」
――誰が、次の壁になるか。
それは、本人たちが決めることだ。書類に署名を終え、俺はペンを置いた。
「……まったく」
思わず、独り言が漏れる。
「あいつの息子を見ることになるとはな……」
バーニンは何も聞かなかった。
聞かない、という選択ができるのも、長年の付き合いだ。
俺は無言で会議室を出て、事務所の奥――個室の執務室に入る。
ドアを閉め、明かりを落とすと、部屋は静まり返った。
机の前に立ち、引き出しを一つ開ける。
中にあるのは、今では誰にも見せていない――古い一枚の写真。
そこには、まだ若かった俺と、
隣に立つ、鋭い眼をした男が写っていた。
道場の土間。
胴着姿の少年二人。
――俺と、
「……」
写真を見つめる。
炎も、肩書きも、野心もない頃だ。
ただ、強くなりたくて拳を振るっていた時代。
「親父そっくりだな……拳の振り方も、目つきも」
思わず、鼻で息を吐いた。
「十文字師範も、よく言っていた」
――力は、背負うものだ。
――拳は、繋いでいくものだ。
「……約束、だったな」
写真を引き出しに戻し、静かに閉める。
「まぁいい」
立ち上がり、背を向ける。
「果たす時が来ただけだ」
あの男が残したもの。その息子が、ここに来るというのなら。
――鍛えるだけだ。
容赦なく、逃げ場なく。そうでなければ、
あいつの息子を預かる資格はない。
エンデヴァーは再び明かりを点け、推薦書の束を手に取った。物語は、次の舞台へ進む。
今年ラストの投稿になります。 早く職場体験編に行きたいです!