僕のヒーローアカデミア 空拳ヒーロー エアーマン   作:ダレ狐

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職場体験1日目

エンデヴァー事務所の最寄り駅へ向かう途中。 砕条視点

人通りの多い通路を並んで歩きながら、俺は横目で轟を見た。

 

「……」

 

無言。しかも、やけに機嫌が悪そうだ。

(……分かりやすいな)

眉間に寄ったシワ、歩幅の速さ。

体育祭の時とも、さっき爆豪と話してた時とも違う。

 

「……なぁ、轟」

 

「何だ」

短い。これは相当だ。

「事務所行くまで、まだ時間あるよな?」

 

「……あぁ」

 

「じゃあ、腹減ってないか?」

 

一瞬、轟の足が止まった。

「……少し」

 

「じゃあ決まりだ。駅そば行こうぜ」

 

「……駅そば?」

 

「そのまんまだ。駅にあるそば屋」

 

轟は少し考えてから、首を傾げた。

 

「……行ったことがない」

(マジか)

 

「中学の頃とか、学校帰りに寄ったりしなかったのか?」

 

「ない。食事は、家か、事務所か、指定された店だった」

……なるほど。そういう育ちか。

 

「まぁ、いい。俺がいるしな」

 

駅構内の立ち食いそば屋。

 

昼時を少し過ぎた時間帯で、客はまばらだ。

「まず、ここで食券を買う」

 

券売機を指さすと、轟はじっと画面を見つめた。

「……」

 

「……砕条」

 

「ん?」

 

「どれを注文したら良い?」

(マジかよ)

 

「いや、今ここに書いてあるだろ。そば、うどん、トッピング――」

 

「……金を入れるのは分かる、学食でもある」

 

「じゃあ何が分からねぇんだ…」

 

「どのそばを選んで押せばいいのかが分からない」

 

(選択肢多すぎて、ってタイプか……)

俺は思わず額を押さえた。

 

(こいつ、見た目の割には天然かよ!)

「いいか、轟。迷ったらシンプルのヤツだ」

 

「……なぜだ?」

 

「安牌だろ?」

 

「成程」

 

「後、駅そばに味の善し悪し求めるなよ 駅そばの良さは早さだからな」

 

「早さ…カップ麺でも出るのか?」

 

「そうそう、カップ麺と良い勝負"って"ちげぇーよ! まぁ見てれば分かるよ」

 

そう言って、轟は素直に一番上のボタンを押した。

ガコン、と音を立てて食券が出てくる。

 

「……蕎麦」

 

「おめでとう。人生初・駅そばだ」

 

「……妙な達成感があるな」

 

「そうかい〜因みにカウンター居る店員に冷たいヤツか温かいヤツ言うんだぞ」

 

「そうなのか、なら冷たいそばにしよう」

 

カウンターに食券を出し、出来上がりを待つ。

並んで立っていると、さっきまでの険しい空気が少し和らいだ。

 

「……砕条」

 

「ん?」

 

「さっき、俺が不機嫌なの、分かったのか」

 

「あぁ。顔に出てた」

 

「そうか……」

 

少し間を置いて、轟がぽつりと漏らす。

「エンデヴァー事務所に行くと思うと……どうしてもな」

 

「親父か…まぁ事情なだけにな」

 

「……あぁ」

それ以上、轟は語らなかった。 でも、それで十分だった。

 

「まぁ、今は腹満たそうぜ〜腹満たせば何とかなるぜ」

 

「……そうだな」

 

俺はカレーうどん 轟はざる蕎麦が、二人の前に置かれる。

 

「いただきます」

 

「いただきます」

一口すすると、出汁の味が広がった。

「……」

轟が目を瞬かせる。

 

「……悪くないな」

 

「だろ」

 

「駅の中で蕎麦が食えるのは良いな……落ち着く」

 

「それなら、良かった。 そう言えば体育祭の後、俺故郷に帰ったけど、ダチに会って腹パンされたけど…まぁ〜昔みたいに連絡出来たぜ」

 

「そうか、良かった。 俺の方は母さんと久しぶりに会った」

 

「そっか、良かったな」

 

「あぁ…」

 

「どうした?」

 

「母さんのお見舞いの時に話す事が思いつかなくてな」

 

最近まで父親の恨みで頑張ってた話はしたくないだろうから、

たぶん緑谷達の話をしたかもしれないが毎度行けばネタも無くなるわな

 

「まぁ、今日駅そばデビューしたとかで良いんじゃないか?」

 

「? それは面白いのか?」

 

「轟のお母さん、お前が学校生活楽しんでる事に嬉しそうにしてたんじゃないのか?」

 

「砕条、良くわかるな…もしかしてエスパーか?」

 

「いや、別にそういう訳じゃないけど…お前も辛い顔のお母さんよりも笑ってくれる方が良いだろ? 」

 

「…そうだな」

 

「そう言えば、砕条はヒーローネーム決めてるのか? 職場体験中は俺達はヒーローネームで呼び合うが」

 

「え、マジか?」

 

そう言えば相澤先生がそんな事言ってたな…後で良いやって特に考えてなかったな

 

「決めてなかったのか?」

 

「…因みに轟は何てヒーロー名なんだ?」

 

「ショートだ。 呼びやすく覚えやすいっと思ってな」

 

そこからA組のヒーローネームを参考に聞いた。 それを聞いても自分のヒーロー名が思いつかなった。

 

「皆、よく思いつくな…何が良いか〜俺も名前呼び? ケンジだと剣を使うって連想しそうだし ……そうだ、轟 参考までに俺のイメージに合うヒーロー名あるか?」

 

「俺が? 良いのかよ?」

 

「こういう時は外野からの一声で良い考えも浮かぶし」

 

「……砕条の特徴 、個性は空気圧…空気…エアー…エアーマン?」

 

 

「エアーマンか、良いかもなシンプルで」

 

「良いのか、俺が考えたヤツで? 」

 

「思いつかない事をグダグダ悩むのは苦手だ! 名前の善し悪しよりも、大事なのは"ソイツ"がどんな事をするかじゃーねのか?」

 

「そうかもな」

 

飯が食い終わり俺達はそろそろ店を出る準備していた。

 

「行くか」

 

「おう。そろそろ、“本番”だ」

 

二人並んで、店を後にした。

 

 

エンデヴァー事務所 砕条視点

 

駅から少し歩いた先、無駄に高ぇビルの一角。

飾り気もクソもねぇ、いかにも仕事場って面の事務所が見えてきた。

 

「……ここかよ、デケェーな」

 

「エンデヴァー事務所だ」

 

轟の声は相変わらず淡々としてるが、肩が僅かに固い。

自動ドアが開いた瞬間、熱気じゃねぇ、ピリついた空気が肌に刺さった。

「おっ、来た来た!」

 

やけに明るい声。現れたのは、炎みてぇな髪を束ねた女だった。

 

「私はバーニン! この事務所のサイドキック! 今日から職場体験の面倒見るから、よろしくな!」

 

「雄英高校ヒーロー科一年、轟焦凍。ヒーロー名はショートです」

 

「同じく編入の砕条です。ヒーロー名はエアーマン。よろしく」

 

「へぇ〜、エアーマンか。シンプルでいいじゃん、分かりやすい」

 

「で……クソ、エンデヴァーはどこだ?」

……今、クソ親父って言いかけたな、こいつ。

 

「エンデヴァーはさっき緊急出動。だから今日は私が案内役だ」

「緊急って……ヴィランか?」

 

「まぁな。USJだの保須市だので、最近は目に見えて増えてる。都内は特にヤバい」

 

「……」

 

「家庭じゃどうか知らねぇけどな、エンデヴァーは長年ランキング2位張ってるだけの仕事はしてる」

 

「……」

空気、重っ。

 

「で、俺達は何すりゃいいんです?」

 

「まずは事務所案内。そのあとヒーローの仕事の話だ」

 

施設を回りながら聞いた話は、思った以上に地味だった。

ヒーローは公務員。

ヴィラン捕まえて、報告書出して、やっと給料。

しかも一件ごとの報酬は雀の涙。

だからCMだのグッズだの副業OK。

――正義の味方も、金がなきゃ続かねぇってか。

 

「この一週間は、エンデヴァーと私の仕事を見学な」

 

更衣室でコスチュームに着替えて、オフィスへ。

 

「……普通の会社みてぇだな」

 

「なんだ? 秘密基地でも想像してた?」

 

「いや、仕事が多岐に渡る割に、事務仕事まで自分でやるのが意外で」

 

「そりゃそうだ。書類ミスったら、市役所にケチつけられて取り分減らされるからな」

 

「マジかよ」

 

「だから殆どのヒーローは自分で書類やる。現場知らねぇ奴に任せたら、金も評価も下がる」

 

……ヒーローも楽じゃねぇな。

 

「戻ったぞ」

扉が開いて、空気が一段重くなった。

No.2ヒーロー、エンデヴァー。

周りが頭下げる中、轟だけは睨みつけてる。

 

「おかえり〜」

 

「案内は終わったか」

 

「はい」

 

「遅れたな。焦凍、砕条……ようこそ、エンデヴァー事務所へ」

 

「……」

 

「推薦、ありがとうございます」

轟は黙ったまま。

殺意むき出しじゃねぇが、許してねぇのは一目で分かる。

 

「あの、一ついいですか」

 

「なんだ」

 

「出動ねぇ時はトレーニングするって話でしたけど、組手できる施設あります?」

 

「……何を言いたい」

 

「組手、申し込みに来ました」

 

「ほぉ。職場体験で、俺に組手を?」

 

「この機会、無駄にしたくない。トップ層とやれるなら、これ以上の経験はねぇ」

 

「度胸だけはあるな」

 

「救助訓練で、ハンデありとはいえオールマイトを吹っ飛ばしました。……今の自分が、どこまで通用するか知りたい」

 

「……オールマイトを?」

 

――来た!

「焦凍、本当か」

 

「本当だ。砕条一人で、個性使って吹き飛ばしてた」

 

「……」

 

「もちろん、手加減した相手じゃ実力は測れねぇ。だから、

No.2ヒーローに一発入るか……試したい」

 

「いいだろ」

 

「今日は施設空いてます」

 

「なら決まりだ。焦凍、よく見ておけ」

 

「おい砕条! やめろ! 軽く済まねぇぞ!」

 

震える手で掴まれる。

……クソ、そんな顔されたら余計に引けねぇ。

 

「悪いな。俺は引かねぇ」

 

「……気をつけろ」

こうして俺は、

職場体験初日から、エンデヴァーと殴り合う羽目になった。

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