僕のヒーローアカデミア 空拳ヒーロー エアーマン   作:ダレ狐

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彼らのサポートアイテムはオリキャラ紹介で詳細に記載します。


編入組 職場体験 1日目

砕条たちが職場体験で激闘を繰り広げている中、

心操人使を含む七人は、雄英高校のOBである熊野吾郎――ヒーロー名《マウンテンベア》のもと、

長野県と岐阜県の県境、奥穂高岳で職場体験を行っていた。

心操たちの職場体験が始まるまでの二週間、

USJでの救助訓練において、砕条を除く七人は別枠でイレイザーヘッドとブラドキングの指導を受けることになった。

 

彼ら七人が主に行っていたのは、

〇 ヒーロー活動に必要な基礎体力トレーニング

〇 個性に見合ったヒーローコスチュームおよびサポートアイテムの相談

〇 個性による活動範囲を広げるためのトレーニング

のこれらだった。

 

コスチュームやサポートアイテムの開発は、

サポート科で唯一体育祭本戦に進出した発目明が七人の担当となった。

 

彼らは砕条と違い、個々の実力評価がまだ定まっていないため、

職場体験まではジャージ着用となり、サポートアイテムの開発が先行して行われていた。

 

――そして二週間後。

職場体験初日、編入組はバスに揺られて移動していた。

心操は、以前から行動を共にしていた鷹野と交野以外とは、

救助訓練で挨拶を交わした程度で、ほとんど会話をしていない。

二週間のトレーニングも、相澤の捕縛布を使った個別訓練が中心だったため、

周囲との距離感に悩んでいた。

 

「えっと……心操さんとは二週間前の救助訓練以来なので、

サポートアイテムの説明も兼ねて、改めて自己紹介したいと思います!」

 

心操の様子に気づいたのか、白河が手を挙げて切り出した。

 

※バスの席順(アニメ1期USJと同じ横並びタイプ)

 

 白河 九十九 火種 小根

前方

 交野 鷹野  心操

 

「改めて、私の名前は白河 操(しらかわ みさお)

水を操る個性だけど、

体内の水分を使うと脱水症状になりやすいので、

サポートアイテムは十五リットルの水が入るバッグと、

それをホースで繋ぐグローブです!

ヒーロー科は元々受験していたけど点数が足りずに落ちて、

リザルトを目指して体育祭を頑張りました。障害物競走で敗退はしましたけど、

今回の学園からのチャンスに全力を賭けています!」

 

「よろしく」

 

「じゃあ私も。九十九 丸子(つくも まるこ)です。

個性は物を動物のように操作することです。

サポートアイテムはこのロープと、フクロウのデザインの鞄。

ロープは蛇に、鞄はフクロウにして操ります。

それと練習中だけど、このチーター模様の靴は、

チーターをイメージすると三分間だけ速く走れるんですよ!

ヒーロー科を目指したのは、同じクラスの操ちゃんが一生懸命な姿に惹かれてです」

 

「そうか」

 

「あっ、僕は火種 弾(ひだね だん)です。

個性は指からライター程度の火を出す能力で、火力不足を補うために《ヒートチャージガン》を使っています。

安全性のため、火力は抑えられています。

サポート科を受けたのはメカが好きだったからだけど落ちて普通科へ……

でも、本当は小さい頃からヒーローに憧れていました」

 

「火種……」

 

「この個性じゃ無理だと諦めかけたけど、どうしても諦めきれなくて。雄英のリザルトシステムに、

最後のチャンスを賭けていました!」

 

「俺もだ、火種……」

 

「熱いね〜。俺は小根 鍊工斗(こね ねくと)

視覚変換の個性を外部に共有しやすくするため、AI搭載ヘルメットで情報処理をしている。

直接的な戦闘用サポートはないけど、アシスタントとして役立つつもりだ。

ヒーロー科を目指した理由?

経営科の机上の空論みたいな空気に嫌気が差してね。

将来有望なヒーローがいるなら、同じ目線で見たいと思っただけさ」

 

「そうか、割とはっきり言うんだな」

 

「心操さん、気をつけて。この男、性格かなり拗らせてるから」

 

「ははは、相変わらず手厳しいな、幼なじみの交野さん〜」

 

「“幼なじみ”を付ける意味がどこにあるのか分からないわね……」

 

「おい、交野、怖いぞ」

 

「ごめんなさいね、鷹野さん。

私はナルシストとヤンキーだけは無理なの」

 

冷静な交野の笑顔に、明らかな圧を感じ、

救助訓練でチームを組んだ鷹野と心操は思わず身構えた。

 

「酷いな〜。ナルシストだなんて、俺がモテるのは事実だろ?」

 

「……私のサポートアイテムを説明するわね」

 

「強引に話を逸らしたぞ」

 

「本当に小根のこと嫌いなんだな」

 

「スキャナーグラスは、私が触れた対象物の位置をマーキングして表示するの。

長距離移動用の補助として《ダーツ・フィン》、

緊急用に《マスキングボール》を使うわ。

詳しくは広い場所で見せるわ」

 

「自分の情報だけボカすよな〜。

まあいいや。私のは、このスタングローブ。

殴った衝撃でスタンガンと同じ電流が流れる。

それと捕縛用ネットだ」

一通り説明が終わり、視線が心操に集まる。

 

「……改めて、心操人使です。

俺の個性は洗脳。その補助として《ペルソナ・コード》を使って声色を変える。

複数のヴィランがいる場合、仲間の声を装って洗脳をかけるためだ。

それ以外の戦闘能力は低いから、相澤先生に捕縛布の訓練を受けている。

さらに補助として、《WPL(ウェットペイントランチャー)》を使う。

これは空気中の水分を吸収して、徐々に重くなる特殊なペイント弾だ」

 

「おぉ〜、みんなのサポートアイテム凄いっすね!

改めて、職場体験頑張りましょう!」

 

白河の一声で、バスの中の張り詰めた空気は少しだけ和らいだ。

 

数時間後

バスが止まり、ドアが開いた瞬間。

冷たく澄んだ空気が、一気に車内へ流れ込んできた。

 

「……うわ」

 

誰かが小さく声を漏らす。

目の前に広がっていたのは、街ではまず見られない、圧倒的な山の景色だった。

切り立った岩肌、雲に隠れた稜線、そして足元に広がる深い谷。

人工物の少なさが、逆にこの場所の“危険さ”を物語っている。

 

「ここが……奥穂高岳……」

白河が思わず呟く。

救助訓練で想定してきた“山”とは、スケールが違う。

ここでは一歩の判断ミスが、そのまま命取りになりかねない。

――その時。

 

「よう、来たな」

低く、腹に響く声。

視線を向けると、

そこには“山”と見紛うほどの大男――というより、喋るツキノワグマが立っていた。

熊のように大きな体躯。

分厚い腕と肩。

ヒーローコスチュームは実用一点張りで、飾り気は一切ない。

雄英高校OB。

プロヒーロー《マウンテンベア》。

本名、熊野吾郎。

 

「……でかい……」

火種が、思わず本音を漏らす。

 

「はは、よく言われる」

熊野吾郎は気にした様子もなく笑ったが、

その笑顔ですら、この山では“油断”に見える。

 

「俺の職場体験に来たってことは、

お前らは全員“生きて帰る覚悟”があるってことでいいな?」

 

一瞬、場が静まり返る。

心操は、喉がわずかに鳴るのを感じた。

ヒーローとしての覚悟を問われたことは何度もある。

だが――今回は違う。

ここでは、言葉じゃなく結果で示さなければならない。

 

「……はい」

 

最初に声を出したのは白河だった。

 

「全員、同じ気持ちです」

 

「そうか」

 

熊野は満足そうに頷くと、ぐっと拳を握り、地面に軽く叩きつけた。

 

ドン、と低い音。

それだけで、足元の小石が跳ねる。

 

「じゃあ、歓迎しよう。ここは“訓練場”じゃねぇ。

自然災害の最前線だ」

 

視線が、一人ひとりを順に捉える。

 

「泣いても喚いても、助けは来ない。

だが――仲間を信じられるなら、生き残れる」

 

心操は、その言葉を胸の奥で反芻した。

(信じる、か……)

 

洗脳という個性を持つ自分が、

“信頼”を前提にした現場に立つ。

だが、不思議と逃げたいとは思わなかった。

むしろ――

ここなら、自分の居場所を示せる気がした。

 

「……やるしかないな」

 

小さく呟いた心操の声は、山の風に紛れて消えていった。

だが、その決意だけは、確かにそこにあった。

 

「それじゃあ、自己紹介といこう。

俺はマウンテンベア。本名は熊野吾郎だ。雄英高校のOBだ」

 

「マウンテンベアさんって、確か雄英高校で初めて

普通科からヒーロー科に編入した生徒ですよね?」

 

小根が早速、熊野について質問を投げかけた。

 

「ハハハ。オールマイトよりも古い話なのに、よく調べたな」

 

「その、普通科からのリザルトの話は貴重なので」

 

「だろうな。普通科からヒーロー科への転入届自体は、

数年に一人か二人は出る。

だが、正式に認められる例は数年に一人出るか出ないかだ。

トータルで数えても、三十人もいないだろうな」

 

「そんなにも少ないんですね……」

 

「そんな中で八人もいる。

しかも一年の体育祭で準優勝した奴がいるって聞いた時は、正直驚いたぞ」

 

「その砕条さんは先日、

ハンデありとはいえ、オールマイトを吹き飛ばしました。

その結果もあって、彼はヒーロー科と同じ扱いで職場体験に行っています」

 

「なるほどな。つまりお前さん達は、

“砕条という生徒に負けても仕方ない”そう思ってるのか?」

 

その言葉に、誰もすぐには返せなかった。

そもそも心操、白河、鷹野、火種は、

体育祭でヒーロー科のリザルトを狙って奮闘していた。

だが、それ以外の面々は、

あの体育祭での砕条と心操の戦いに触発され、編入届を出している。

 

そして単純な戦闘能力では、

編入組の中でも砕条は頭一つ抜けた実力を持っている。

 

「確かに、お前さん達の個性は、ほとんどが直接的な戦闘向きじゃねぇ。だが本気でヒーローを目指すなら、

砕条をはじめ、他のヒーローと張り合う覚悟は必要だぞ?」

 

熊野は一人ひとりを見渡し、続ける。

 

「ヒーロー科編入は、スタートラインだ。ゴールじゃねぇ」

 

「……勿論です!」

 

白河が即座に答えた。

それを見た他の面々は、内心で悔しさを噛みしめていた。

白河は砕条を除けば体力テスト二位。

サポートアイテムの補助があれば、

ヒーロー科とも十分に渡り合える実力を持つ。

何より、バスの中でも真っ先に空気を和らげていた。

 

恐らく――

編入組七人の中で、最も評価が高いのは彼女だ。

 

「よし。じゃあ職場体験の説明に入るぞ」

 

マウンテンベアの職場体験内容は、以下の通りだった。

1.提出された登山計画書を基に、キャンプ地を巡回し安否確認

2.道中の危険確認およびゴミの回収

3.拠点となるログハウスでの食事作り

4.パトロールによる不審者の確認

 

「ま、こんな感じだ。

空き時間は、あそこの広い空き地なら個性トレーニングをしてもいい」

 

『よろしくお願いします!』

 

そして夜を迎えた。

夕食後、それぞれの寝床に就く。男子三人はまだ眠らず、今日のことについて話していた。

 

「はぁ〜……分かってはいたけど、山での作業は想像以上に体力削られるな」

 

「まぁ、そうだな」

 

「ねえ、みんなは憧れたヒーローとかいるの?」

 

「何だよ火種、急に?」

 

「いや、普通科の中だとタブーってわけじゃないけど、ヒーロー科贔屓みたいで話しづらくてさ」

 

「それは経営科も同じだな。スポンサーとしてどういうアプローチを取るか、みたいな話ばっかりだから」

 

「確かにな……」

心操は話題を探しながら考え、最近指導を受けている相澤の姿を思い浮かべた。

 

「昔は特に考えたことなかったけど……今はイレイザーヘッドかな」

 

「ほうほう、理由は?」

 

「ヒーローって、オールマイトみたいに目立つ奴の独壇場ってイメージだったけどさ。

相澤先生の指導を受けてから、メディアに出なくても裏から支えるヒーローがいてもいいって思えるようになったんだ」

 

「へぇ〜、いいね心操くん!」

 

「じゃあ、火種くんの理想のヒーローは?」

 

「僕は……エンデヴァーなんだ」

 

「え? エンデヴァー!? 意外だな。てっきりオールマイトかと思ってた」

 

「俺も。火種、緑谷に似てるからさ」

 

「理由は炎の個性ってのもあるけど……プロヒーローの中で、オールマイトを超えてNo.1を目指そうとしてるのは、エンデヴァーだけだと思うんだ」

 

「オールマイトを超えてのNo.1か……確かに、あの人の前でトップを目指すって、なかなか出来ないよな。口だけなら誰でも言えるけど」

 

「この前の救助訓練で、間近であのパワー見たけどさ……交野たちがいたから何とかなったけど、俺一人じゃ絶対勝てないって思った」

 

「確かに評判は悪いことも多いと思う。でも、周りが何を言おうと真っ直ぐ目標を目指す姿は尊敬できるよ」

 

「砕条にエンデヴァーのサイン頼んでみたら? 確か職場体験先がそこだったはずだし」

 

「そうなの? 火種、頼んでみたら?」

 

「……ううん、今はいい。

いつか自分の評価が認められた時に行くよ。今日のマウンテンベアの話を聞いて、そう思ったから」

 

「そうだな……で、俺か」

 

少し間を置いて、小根が苦笑する。

 

「好みの女性ヒーローなら即答できるけど……憧れって意味なら、交野だな」

「交野? 意外だな」

 

「幼なじみだから?」

「はは、それもあるけど……彼女には言うなよ。この手の話、嫌いだから」

 

「分かった」

 

「彼女は俺と同じで、古くから日本の企業を支えてきた財団の家の子なんだ。交野家は、超常黎明期よりもさらに古い時代から……江戸時代って言ってたかな」

 

「江戸時代?」

 

「ドラマみたいな話だな」

 

「でも交野家は、いわゆる“個性終末論”寄りの考えでさ。超常黎明期から、血縁関係者同士の結婚しか許さなかったらしい」

 

「……え」

 

「時代が進めば当然個性は発現する。だから彼女の家では、個性を前面に出すこと自体を“恥”だと考えてた」

 

「そんな家庭もあるんだな……」

 

「交野、思ったよりヘビーな環境だな」

 

「父親は仕事は出来るが女性関係が最悪でさ。正妻の子である彼女より、浮気相手との男の子に家督を継がせようとしたらしい」

 

「……え?」

 

「それが幼稚園の頃の話だ。彼女、川で入水自殺までしようとした」

空気が凍りつく。

 

「でも入院中、オールマイトのインタビュー特番を見てさ」

 

【個性というものは、親から子へと受け継がれていきます。しかし本当に大事なのは、その繋がりではなく“自分の血肉……自分自身である”と認識すること。そういう意味もあって、私はこう言うのさ。“私が来た!”】

 

「交野は、家を飛び出すために個性を伸ばす努力を始めた。

個性を否定する家庭の中で……戦闘向きじゃない個性でも、腐らずに」

 

心操は思った。自分と重なる部分がある、と。

 

「だから、彼女がヒーローになる姿を見たくて、俺はヒーロー科に来た」

 

その目は、いつものおちゃらけたものではなく、真剣そのものだった。

心操と火種は、茶化すことなく黙って聞いていた。

――当たり前だけど。

みんな、それぞれの思いでヒーローを目指している。

それを再確認できた、静かな夜だった。

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