僕のヒーローアカデミア 空拳ヒーロー エアーマン 作:ダレ狐
男子が夜に話をしている頃、
女子たちも同様に寝室で話をしていた。
「訓練で一緒になることはあるけど、こうやって一緒に泊まるのは初めてだよね〜。なんだか修学旅行みたいで楽しい〜」
「いや、九十九の体力おばけっぷりにはびっくりだよ」
「この7人の中では、九十九さんが一番スタミナあるわね」
「丸子はお姉さんの特訓で、スタミナおばけになったんだよ」
彼女たちがそう言うのも無理はない。
今日はトレーニングも兼ねて、**20kg相当のザック(※登山用バックパックの総称)**を背負い、標高およそ3000mの酸素が薄い環境を歩いた。
多くの者が想像以上に消耗する中、九十九は半日ほど平然と動き続けていたのだ。
のほほんとした見た目も相まって、余計に驚かされたメンバーだった。
「うん。中学の頃は私、まん丸な体型でさ。姉さんが受験終わってから、チャリで山を往復させられたよ〜」
「それであの体力なわけか……にしても、意外な一面だね」
「何? 鷹野さん」
「いや……交野が小根に対して感情的になるのが気になってさ。
小根の性格がどうであれ、もっと適当に捌けそうなイメージだったから」
「それ、私も思った!」
「確かに小根さんが胡散臭いのは同意だけど、救助訓練で一緒になった時も、そこまで毛嫌いする感じじゃなかったし、気になるよね」
「あなたたちね……はぁ。
まぁ、誤解されても仕方ないから正直に言うと――“嫉妬”ね」
『嫉妬!?』
「バスで言った通り、小根とは幼なじみなの。
家が近所ってわけじゃないけど、同じ幼稚園に通ってたし、親が招待されるパーティーでもよく顔を合わせてた。
彼の家は、ヒーロー事務所の経営を支援してる会社なのよ」
「やっぱり、お坊ちゃまなんだ〜」
「ヒーロー社会の土台作りに貢献した家よ。
自警団から公務員制度へ移行する時代、拠点整備や税制の管理が追いついてなかった。
その混乱の中で、それをビジネスとして成立させて成功したの。
雄英高校をはじめ、ヒーロー育成機関に経営科が導入されたのも、その名残ね」
「でも、金持ちの世界なんて、そういう家柄ばっかりじゃない?」
「ええ、鷹野さんの言う通り。
私が小根に嫉妬してるのは……私がテストで100点を取ってる間に、あいつはクラスの人たちを巻き込んで、色んなことをやってたからよ」
「ん? 色んなこと?」
「白河さん、今までのクラスに居た?
クラスの平均点を77点にするために、全員を巻き込む人なんて」
「え?」
「他にも、夏休みの自由研究でクラスの親を説得して、1クラス丸ごと東京から青森までヒッチハイクした旅とか」
「うわ、面白そう!」
「そう。
小根のやることは無茶苦茶なのに、最終的には誰も不幸にならなくて、結果的に“良いことをした”みたいになるのよ」
「なるほど……真面目な交野からしたら、いい加減なのに評価されてるのが気に食わないのか」
「鷹野さん、真面目なんかじゃないわ……。
私は人より劣ってるから……不器用だから、勉強も個性も必死に磨いてるだけ。
あなたも個性で苦労したなら、分かりますよね?」
「……ああ。
ヒーロー科と比べたら、私の個性も戦闘向きじゃない。
その気持ちは分かるよ」
「でも、編入の希望はある編入してプロ免許資格取れば結果は一緒だよ!」
「そうね、白河さんの言う通りね、プロ免許取る過程が重要じゃない、結果を出す事が大事よね 明日も早いは寝ましょう」
男女共に色んな思いを抱きながら時は過ぎる。
職場体験 4日目の朝
初日を終えてから3日目までは周囲のパトロールと空いた時間でのサポートアイテムの練習をしていたが、3日目の夜は東京保須市のヒーロー殺しの事件で話題を呼んだ。 特に彼ら編入組はその渦中の事件に砕条が関わってる事に驚いていた。
「砕条さん、脳無との戦闘に救助にヒーロー殺し……よく一日で巻き込まれるわね」
「交野の言い方もあれだが、コレで砕条のヒーロー科は確定だろうな」
「と言うよりそうせざる得なくなったのが正しいだろうな」
「どういう事だ、小根?」
今朝のニュースで砕条の活躍に呆れる交野を、唖然とする鷹野、その中で小根は別の視点の意見を述べた。それに疑問を感じた火種だった。
「マスコミはこのヒーロー殺しの事件の記事を書きたがる。エンデヴァーがヒーロー殺しの逮捕になってるが…ネットで掲載された動画ではヒーロー殺しと砕条君が問答してる映像がある以上知りたがってる様子、マスコミや普通科の人達に質問攻めにされてるだろう」
「そうなると普通科の先生の負担が増える…そうなるとヒーロー科に一括管理してほしいって流れになるわ」
「つまり、小根と交野は実力で評価よりもマスコミ対策で砕条がヒーロー科になると思ってるのか?」
「心操さんの言う通り半分はね、もう1つはヴィラン連合がこのヒーロー殺しと関わりがあるなら、彼にターゲット向けられる可能性もあるわ」
「えっ、幾らなんでも飛躍しすぎる気も…」
「九十九ちゃん、そうとも言えないよ、ヴィラン連合がUSJを1度襲ってる。 砕条君をターゲットに何らかの被害が出れば学校の責任になるからね…社会にダメージ与えるなら、プロヒーローよりも学生の方が格好の的だからね」
「怖いこと言うなよ 小根君」
だが、ヴィラン連合がUSJで生徒達に襲撃したのは事実である以上否定が出来ない。 その保護目的なのは間違い無いのは理解した面々だった。
「まぁ、この事は下山してからで、今の私達は目の前の職場体験をクリアする事を考えよう」
「そうだね、操ちゃん」
「そうね、ここで私達がとやかく言っても始まらないわね」
「だな」
白河の仕切り直しでメンバーは目の前の職場体験に取り込もうと気合いを入れていた。
午前中の仕事を終えた時にお昼から大雨の予報の為、安全の為にテントに泊まるお客様をログハウスに泊まるように呼び掛けをしていた。
けれど、大学生のグループが自分達は個性が有るから大丈夫とプロヒーローのマウントベアの警告を無視して頂上に登り始めた。
「全く、山の怖さを舐めとるな…とは言え無視もする訳にもいかん…仕方ない、心操·鷹野·交野·小根は雨具とサポートアイテム着用して俺と一緒に彼等を追って説得する。 白河·九十九·火種は待機だ。 通信用のトランシーバーを置いてるから誰か連絡取れる体制にしとくように」
「了解しました。」
心操達は指示通りにサポートアイテムと雨具着用し、先程の若者のグループの捜索をした。 通常なら追跡に掛かるが、鷹野の『鷹の目』の個性で半径1キロ前後なら人工衛星の様に捜索が出来る。
「アイツらは、岩場の所のスペースで雨宿りしてる…? 何か様子が変だぞ?」
「何を見たんだ、鷹野?」
「俺が視認します。 ナビ視認した映像を画像処理頼む」
【承知しました】
小根はヘッドギアを起動させて、個性を発動し、鷹野の指示した場所の対象者に意識を集中すると、見ている景色をリンクして見ることが出来る。
「…なぁ、ヤバいですよマウテンベアさん!」
彼は懐の小型タブレットを出してメンバーに見せた。
情報処理した画像はグループの1人がナイフを持って大学生グループに襲っていた。
「このナイフの男、彼等の登山計画にも昨日のテントの中に居なかったはず」
【犯罪者データベースで登録者あり、 泥水 操也 昨年度、コンビニで万引きし、逃走時に個性を使用し、個性無許可使用とコンビニの窃盗で逮捕されてます】
搭載のAIが犯罪者データベースで犯人の特定して、タブレット端末に表示された。
「はぁ? 何でこんな奴がわざわざこんな山奥に居るんだよ」
「個性無許可使用でも、初犯なら軽く見られる。 しかも怪我人とか居ないなら保釈金出せば釈放はされるからの…とは言え何故、山に?」
「消去法で考えるなら、例の大学生グループと関係あると思うわ。
小根!」
「勿論、調べてるよ!」
【ヒットしました。 一昨年の大学内のレクリエーション時の写真に犯人と周囲の人達は、同じ大学の同級生でした。 さらに当時の彼の犯行を示唆する彼等のSNSの投稿を発見】
#正義実行
今日同級生が、万引きをした。 止めようと声をかけたら個性を使われた。 彼がこんな事をしてショックでした。
そのコメントに動画が添付され、声を掛けられた泥水は手から水を出してカメラの投稿者に当てていた。
「これ、おかしくないか? 万引き止めるのに何で動画投稿しながら行ってるんだ?」
「みたいだね、 動画でもヤラセの指摘を受けて、投稿自身は数日後に消してるが 投稿がコピーされていて、面白半分に広がったんだろう」
「それじゃ、泥水は脅された可能性があるのか?」
「心操の言う通りだろうな、だが、今は彼が彼らに危害を咥えようとしてる事が問題だ」
マウントベアは周囲を警戒して見ていた。
「お前達はここで待機だ、 小根は警察に連絡を」
「そんな、私達も行かないと彼処の大学生グループが」
「犯人が怨恨で彼等に近づいてるなら下手に大人数だと返って彼等に危害を及ぶ可能性はある。 交野は念の為、入換用のペイントボールを俺に渡してくれ」
「……わかりました」
交野は右手で触れてボール6個をマウンテンベアは周囲を注意しながら彼等に近づいた。
生徒達は小根のヘッドギアの映像をタブレット端末で確認していた。
「なぁ、小根 音声は入らないのか?」
「心操、残念だけど 俺の個性は視覚の共有するだけで音声までは聞超えない…」
「小根、貴方そろそろキツいんじゃ無いの?」
「まさか、小根の個性も制限付きなのか?」
「鷹野さんの言う通り、僕の個性は視覚共有すると、脳の負担が大きくてね10分もすれば頭痛が酷くてね…特に距離が500m離れると使用時間が短くなる…」
小根の 個性:視覚共有
〇小根自身が認識した人物なら視覚を共有する事が出来る。
〇発動出来る範囲は半径500mが理想で、連続で視聴出来るのは10分
しかし、500m離れると、ラジオのチャンネル合わせの様に距離が500m事に視覚にノイズが入る上に使用時間が短くなる。
〇3分過ぎた辺りから頭痛が入り、10分頃になると視力自身にも負担が掛かる。
〇1度、共有を解除すると、同じ対象者は24時間のインターバルがいる。
〇対象者Aと対象者Bの視覚を入れ替えると使用時間は3分も持たない。インターバルも24時間に小根自身にも視力を一時的に低下する。
「んじゃ、一旦切った方が…」
「そうもいかないよ、ここで切ると次の対象者に繋げるのに数分は使えない…あのヴィランが何をするか分からない以上は」
「だったら尚更休め、私の【鷹の目】で向こうの様子は見れるからお前にはヴィランが動いた時に皆に見せろ! 肝心な時に使えなくなるよりかはマシだろ?」
「小根、鷹野さんの言う通りよ」
「…嫌だっと言いたいけど、ここで意地を張っても足手まとい増やす訳には行かない…すまない1度切るね」
小根は個性を閉じてヘルメットを外して深呼吸していた。
いつもの軽口叩く、小根が少し余裕が無い顔をしていた。
それだけ負担が掛かる事を心操は理解した。
「鷹野さん、マウントベアは彼等に」
「今、近づいた、背後に回った…すぐにあの大学生グループの間に入った。 おい、何だアイツ?」
「どうしたんだ鷹野?」
「アイツ、何か注射器みたいの取り出したぞ?」
「注射器? まさか、個性ブースト(トリガー)を?」
鷹野が見ていた景色は、マウントベアが回り込んでヴィランと大学生グループの間に割って入った。だが、ヴィランの彼はポケットから注射器を取り出し、太ももに突き刺していた。
交野はヴィラン犯罪で一時期頻繁に使われていた。
個性因子増幅剤 通称ブーストの存在だと懸念して叫んでいた。
「ナビ起動! マウントベアの視覚を共有!」
【了解 映像共有開始】
小根はすぐに個性を使い、AIにタブレット端末へ映像を映し出した。
「ナビ、解析モード限定起動。
音声補完……優先度:現場状況最優先」
【警告:解析モードはバッテリー消費が増大します。推定連続稼働可能時間:7分】
「……それでいい、やってくれ」
【了解。映像解析・口唇読取・状況予測補完を開始】
タブレットの映像に、わずかなノイズが走る。
直後、低く抑えた合成音声がスピーカーから流れ始めた。
【推定発話:『動くな……全員その場にいろ』】
「……喋った……?」
「いや、多分……AIの補完だ」
心操が低く呟く。
映像の中で、泥水は注射器を投げ捨て、荒く息を吐いていた。
腕の血管が浮き、皮膚の下を何かが流れるように脈打っている。
【個性因子活性化反応を検知。ブースト使用の可能性:高】
「クソ……やっぱりトリガーか……!」
次の瞬間、映像が大きく揺れた。
岩場の隙間から、泥水の足元に水が滲み出す。
それはただの水ではない。粘度を持ち、意思を持つように蠢いていた。
【個性発動を確認。周囲の水分を操作・増幅している可能性】
「雨……利用してるのか……!」
鷹野が歯を食いしばる。
映像の向こうで、マウントベアが一歩前に出た。
両腕の筋肉が膨れ上がり、地面を踏み締める。
【推定発話:『落ち着け。まだ戻れる。今なら——』】
その瞬間。
泥水の腕が振り上がる。
地面の水が刃の形に隆起し、マウントベアへ襲い掛かった。
「来る!」
心操が叫ぶ。
だが、マウントベアは避けない。
正面から腕を交差し、受け止めた。
水刃が砕け、霧散する。
【衝撃吸収成功。対象:無傷】
「……これがマウントベアのパワーなの?」
交野が小さく呟く。
しかし、泥水の動きは止まらない。
雨粒が、地面が、岩肌が——
すべてが泥水の武器に変わり始めていた。
【警告:対象の個性出力、急上昇】
【予測:周辺地形の広域利用の可能性】
小根の額に汗が滲む。
「……ナビ、トリガーの持続時間の表示……それと警察に応援要請を」
【警告:神経負荷増大】
「構わない……今、状況を逃したら……!」
その時。
映像の端に——
大学生の一人が、足を滑らせた。
背後は、切り立った崖。
「……マズい……!」
マウントベアは、懐に入れていた交野から渡されたペイントボールを1つ、足元に投げた。
それを見た交野は立ち上がり、拍手した。
「私が行くわ!」
「心操、念のため白河たち全員呼ぼう!」
「わかった!」
鷹野は、ここから先が困難になると予測し、心操に白河たちをここへ呼ぶよう指示した。
心操もすぐに対応した。
投げられたボールは交野と入れ替わり、彼女はサポートアイテムのダーツフィンを左右2つ射出し、即座に個性の入れ替えを発動。
大学生の元に近づき、左手で触れて拍手すると、大学生は消えた。
交野はマウントベアと視線が合った瞬間——
「マウントベア! ペイントボールを彼の前に!」
「!? まさか……」
「ふざけてるのか! 今のブーストした僕にペイントボールで——」
「ふん! 頼むぞ!」
マウントベアはペイントボールを投げた。
ヴィランの泥水は、視界妨害狙いだと判断し、水でガードした。
しかし、交野はマウントベアに呼びかける僅かな時間、ある口の動きをした。
「し・ん・そ・う」
マウントベアは彼女の小さな声も聞き取り、驚きながらもそれに従った。
そして、現在マウントベアと視覚共有している小根たちにも伝わっていた。
「あんた、ブースト使って恥ずかしくないの? だから大学辞めたんじゃないの?」
「!? うるさい! オレ……【身体が!?】」
ペイントボールは心操と入れ替わり、洗脳の個性を使い泥水の動きを止めた。
そして彼は、まだ荒削りながらも、相澤先生から教わった捕縛布を使い——
「今だ! イレイザーヘッド直伝、捕縛布!!」
泥水の上半身を拘束し、動けなくした。
「ナイスだ、心操」
心操人使は、初めて個性を使いヴィランの捕獲に成功した。
雨は、何事もなかったかのように降り続いていた。
だが、さっきまでとは違う。
ほんのわずかに、世界の見え方が変わっている。
守れた。
止められた。
それだけのこと。
それだけのことが、思っていたよりずっと重かった。
心操は――
自分がようやく一歩進めたのだと、
後になって、そう思うようになる。
次回かその次で心操達の職場体験編を終える予定にしてます