僕のヒーローアカデミア 空拳ヒーロー エアーマン 作:ダレ狐
救助訓練レース
教室 A組 ホームルーム 緑谷視点
朝の朝礼後に教室に行くと、机が増えていて、黒板には席順が貼られていた。
教壇
爆豪 瀬呂 砕条 尾白 青山
緑谷 鷹野 砂糖 上鳴 蛙吹
峰田 常闇 心操 切島 芦戸
八百万 轟 障子 口田 飯田
(空白) 葉隠 耳郎 交野 麗日
※編集の都合で空白を入れただけなので、そこに生徒は居ません。
「うぉ〜すげぇ〜! 机が増えてるぜ!!」
「なるほど。この為に朝イチで体育館に集合させたのか」
「げっ、俺の席は教壇の前かよ…」
職場体験の後だからなのか、皆のテンションは高めだった。
砕条君は教壇の前で複雑そうな顔をしていたけど、皆は編入組の所に集まっていた。
「改めてよろしくな! 俺は切島!」
「俺、上鳴! 今日放課後さ、皆とお茶しようぜ!!」
「皆、職場体験ですごい活躍したんだよね! 私は葉隠!」
「皆さん、落ち着いてください。一気に話しかけられたら、彼等も困惑してしまいますわ」
「そうだ、彼等も急に来られたら大変なんだ。静粛に!!」
「砕条、これがA組なのか…何というか、陽キャが多過ぎて…」
「心操、だいたいはこんな感じだ」
「砕条…」
「焦凍、どうした?」
『名前呼び!?』
轟君に呼びかけられて、砕条君が名前で返したことに、クラスの皆が驚いていた。
正直、その事はあの時の病院の時から、僕も飯田君も気になってはいたけど、聞くタイミングを逃していた。
やっぱり驚くよね。
「ハイハイ、砕条はどうして轟を名前呼びなの?」
「芦戸? あぁ、職場体験が同じで、ヒーロー名も名前だし、ご厚意で職場体験の間、焦凍の実家で泊まってたから、自然と名前呼びが定着したんだ。さすがに家族がいる所で苗字呼びは出来ないだろ?」
「轟の家泊まったんだ? すごい!!」
「砕条が初日に親父と組手して、軽い熱中症でヤバそうだったから家に泊めたんだ。事務所からウチが近かったから」
『エンデヴァーと組手? どういう事?』
「砕条ちゃん、貴方、また無茶なことをしたの?」
「いや、せっかくNo.2の事務所に行くなら最大限チャンスを使うべきだと思ったんだよ。ハンデ有りで顔面に一発殴れたけど…」
『殴った!?』
さっきから、砕条君の職場体験の内容が驚きの連続で、皆が食いついていた。
「ケロ、貴方、爆豪ちゃんと同じぐらい血の気が多いのね」
「んだと、誰がコイツと同じで血の気が多いだと!」
「そう言う所よ」
「それは無いぞ、なぁ焦凍?」
「ん。確かに砕条は、ウチに泊まってる時は礼儀正しかったし、お好み焼きやチャーハン、餃子とか教えてくれたりしたから」
『どんな流れで職場体験で料理作ることになってるんだ?』
「ひょっとしてSNSの写真のやつかな!」
葉隠さんがスマホを取り出してSNSを見せると、エンデヴァー事務所の公式ページで公開されていて、中華鍋を振るう轟君、餃子を作っている砕条君の写真があった。
しかも、コメントを見ると、轟君のチャーハンを振るう姿に感動した女性ファンが、ものすごい数のコメントをしていた。
「いや、轟と砕条達の職場体験で一番は、やっぱり保須市のヒーロー殺しだろ?」
上鳴君が保須の事件の事を取り上げて、僕と飯田君も思わず反応してしまった。
「そうそう、ヒーロー殺し!」
「命あって何よりだぜ。マジでさ」
「心配しましたわ」
「エンデヴァーが助けてくれたんだってな」
「すごいね、さすがNo.2ヒーロー!」
轟君はエンデヴァーの事を持ち上げられて複雑そうな顔をしたけど、僕達は警察との約束があるから、本当の事は言えない。
「そうだな…助けられた」
「俺、ニュースとかで見たけど、ヒーロー殺し、敵連合とも繋がってたんだろ? もし、あんな恐ろしい奴がUSJに来てたらと思うと…ぞっとするよ」
尾白君の言葉で、改めて思い返すと、正直…あのヒーロー殺しが、死柄木みたいに無差別に殺すタイプなら…僕達は死んでいた。
無事に生きてるのは、“運”が良いだけだ。
「でもさ〜、確かに怖ぇけどさ、尾白、動画見た?」
「動画ってヒーロー殺しの?」
「あれを見ると、一本気っつうか、執念っつうか、“かっこよくね?”とか思っちゃわね?」
「上鳴君!」
ドカ!
「うえ!?」
僕が上鳴君に注意した直後に、砕条君が背後から上鳴君のお尻に強烈な回し蹴りを当てた。
上鳴君は、痛みと驚きで倒れてしまった。
「お前の言うヒーロー殺しのした事はな。今みたいに、気に入らないヤツを話し合いもせずに“こんな事”をするんだ。それを、殺られた家族に同じ事言えるのか? あぁ?」
「!? えっと…ごめん」
「俺じゃねぇーよ。飯田に言え」
「飯田、ごめん!」
「いや、良いさ。確かに信念の男ではあった。クールだと思う人がいるのも分かる…ただ、奴は信念の果てに、粛清という手段を選んだ。
どんな考えを持とうとも、そこだけは間違いなんだ!」
飯田君、本当にすごい…
「俺のような者を、これ以上出さないためにも…
改めて、俺はヒーローへの道を歩む!」
カッコいいよ、飯田君!
「それと、砕条君も。奴の考えを否定するなら、暴力はイカン!
君は誰かの為に怒れる人なのだから」
「やめろ、そんな御大層な人間じゃねぇーよ」
不思議な感じだな。
砕条君も、他の編入組と同じように、ヒーロー科に入るのが今日からなのに、もう四月から僕達と同じ教室で過ごしたクラスメイトみたいだ。
そんな風に感じる始まりだった。
1時間目 ヒーロー基礎学 砕条視点
「はい、私が来た! ってな感じでやっていくわけだけどもね〜。はい、ヒーロー基礎学ね」
俺達編入組が、ヒーロー科で受ける最初の授業は、まさかのオールマイトの授業スタートになった。
「久しぶりだ〜少年少女、元気か?」
この前の救助訓練以来だけど、改めてNo.1ヒーローの授業を受けられるって、雄英高校すごいよな…
「さて、今回のヒーロー基礎学だが、職場体験直後って事で、遊びの要素を含めた救助訓練レースを行うことにする」
「救助訓練なら、USJでやるべきではないのですか?」
「あそこは災害時の訓練になるからなぁ〜。私は何て言ったかな?
そう、レース! ここは運動場γだ」
オールマイトの説明で、
・舞台は複雑に入り組んだ密集工業地帯
・6人4組に分かれて、1組ずつ訓練を行う
・オールマイトがどこかで救難信号を出したら、生徒は町外れから一斉スタートして、一番にオールマイトの所に駆け付けた人が勝利
そして、初めの組は
緑谷、飯田、瀬呂、芦戸、尾白、鷹野 だった。
「飯田、まだ怪我完治してないんだろ? 見学したら良いのに?」
「クラスでも機動力いいやつが固まったな」
「うーん、強いて言うなら緑谷さんが若干不利かしら?」
「確かに、ぶっちゃけ緑谷の評価、定まらないんだよね〜」
「何か成す度、大袈裟にしてますからね」
俺と心操と交野は、ヒーロー科達の普段のやり取りを見て、ヒーロー科は常にこんな訓練をしてるんだな〜っと、改めて普通科や経営科とはカリキュラムが違うことに感心していた。
「トップ予想な。俺、瀬呂が1位!」
「あぁ、なるほどなぁ〜。うーん、でも尾白もあるぜ」
「オイラは芦戸! あいつ運動神経すげぇぞ!」
「運動神経か…それなら鷹野も中々だぞ」
「そうなのか、心操?」
「砕条は俺達の訓練にいなかったからな。元々、親が自衛隊の影響か、格闘技や救助訓練でのロープ移動とか早かったんだ。スタミナだけはB組の九十九がダントツだったけどな」
「そうね、彼女は編入組の中でも、運動能力なら高いわ」
「デクが最下位!」
皆、何だかんだ予想つけるな…
「怪我のハンデはあっても、飯田君な気がするな」
「ケロ、私もそう思うわ。砕条ちゃんは誰だと思う?」
「そうだな。緑谷の新しいやつ、見てるのは飯田と焦凍だけだからな…番狂わせで緑谷で」
「新しいやつ? 何だよ」
「見れば分かるよ」
『演習開始!』
演習スタートの合図が鳴ると、スタートダッシュが早かったのは鷹野だった。
「鷹野の足、速い!?」
鷹野は腰部にマウントしていたムチを取り出して、工場内の配管に巻き付け、建物を飛び移る動作をしていた。
まるで映画のアクションシーンみたいに。
「鷹野、あんなに動けたのかよ。救助訓練の時は…」
俺の鷹野のイメージでは、運動神経が良い方なのは知ってはいたが、目立つイメージは無かった。
「砕条さん、貴方もあれから色々強くなったように、私達も強くなったのよ。それに鷹野さんは個性の都合で、チームでは索敵中心だから、自らは動けなかっただけよ」
「実際、俺の訓練で最もアドバイスしたのは鷹野なんだ」
「へぇ〜、それは楽しみだ」
俺は、編入組がどれだけ強さに磨きをかけたか、楽しみになってきた。
画面を見ると、鷹野の隣に瀬呂が個性を使って移動していた。
この時までは、2人がトップ争いをすると思われていたが…
『緑谷!?』
緑谷が、ピョンピョンと跳ねるように工場を飛んで移動していた。
「砕条が言っていた、緑谷の新しいヤツって…」
「そう。俺の陸式みたいに、全身に個性の力を回して身体能力を上げてるらしいぜ?」
「言われてみれば、あの時も凄かったな」
「焦凍、今頃かよ…まぁ、あの時はそれどころじゃ無かったからな」
映像で皆の頑張りを見ていたが、緑谷は脚を滑らせ落下。
そこで飯田がキャッチをして怪我は無かったが、その僅かな時間で、瀬呂がオールマイトを見つけた。
タッチの差で鷹野が2位という結果になった。
緑谷の変化と、鷹野の意外な活躍で盛り上がった1戦になった。
「さて、2戦目を行うメンバーは彼等だ!」
スクリーンに次のメンバーが紹介された。
爆豪、砂糖、葉隠、峰田、常闇、そして俺だった。
名前が表示された瞬間、
横から刺すみたいな殺気が飛んできた。
視線を向けなくても分かる。
爆豪だ。
「……チッ」
小さく舌打ちが聞こえる。
「思わぬ形でお前と競走出来るとはな。幸先良いぜ」
わざと軽く言った。
その瞬間――
ドン、と。
爆豪が一歩、前に出た。
「……あぁ?」
低い声。
明らかに機嫌が悪い時のトーンだ。
周りのA組が一瞬だけ静かになる。
「調子乗るな」
爆豪の目が、真正面から俺を射抜く。
「てめぇーは――」
掌から、小さく火花。
「完膚なきまでに、俺がぶっ潰す!!」
爆ぜる直前みたいな圧。
空気が、重い。
……いいな。
これだ。
俺は、ずっとこれを待ってた。
「はっ」
思わず笑いが漏れた。
「上等だ」
一歩、爆豪に近づく。
「俺も、手加減する気ねぇからな」
ほんの一瞬。
爆豪の口角が、ニヤッと上がった。
獲物を見つけた獣みたいに。
A組の誰かが、小さく息を呑む音がした。
A組に来てから、ずっとやりたかった事……
それは――
爆豪と、真正面からぶつかる事だ。
「負けねぇーぞ」
ここから期末試験までは日常パート入れつつ進行します。