僕のヒーローアカデミア 空拳ヒーロー エアーマン   作:ダレ狐

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期末試験試験勉強

6月末頃のある日――砕条視点。

 

「よし、授業はここまでにする。期末テストまで残すところ1週間だが……お前らちゃんと勉強してるだろうな? 当然知ってるだろうが、テストは筆記だけでなく演習もある。頭と体を同時に鍛えておけ。以上だ」

 

それは相澤先生からの通告。

俺は……いや、俺達は思った。

 

『まったく勉強してねぇ!! 体育祭やら職場体験やらで全然やってねー!!』

 

芦戸と上鳴が授業終わりに叫んでいた。

ちなみに、俺達編入組が入る前のA組の中間成績はこんな感じだ。

 

中間テスト順位

1位 八百万 百

2位 飯田 天哉

3位 爆豪 勝己

4位 緑谷 出久

5位 轟 焦凍

6位 蛙吹 梅雨

7位 耳郎 響香

8位 尾白 猿夫

9位 峰田 実

10位 障子 目蔵

11位 口田 甲司

12位 砂藤 力道

13位 麗日 お茶子

14位 常闇 踏陰

15位 切島 鋭児郎

16位 葉隠 透

17位 瀬呂 範太

18位 青山 優雅

19位 芦戸 三奈

20位 上鳴 電気

 

「期末試験は演習試験もあるのが辛いところだよな〜」

 

「中間9位!?」

 

「あんたは私らと同族だと思ったのに!」

 

「お前みたいな奴はバカで初めて愛嬌が出るだろうが〜。どこに需要があるんだよ!」

 

「“世界”かな?」

 

「マジかよ〜。爆豪が3位なのと峰田の9位に驚く……」

 

「んだと? テメーは中間何位だ?」

 

そして、俺達編入組のその時の成績は――

 

普通科C組

心操人使 10位

砕条拳士 18位

 

普通科D組

鷹野目々 8位

 

経営科I組

交野環奈 1位

 

「俺らバカトリオだな!」

 

「良かった〜砕条もバカで安心した!」

 

「けっ、モブどもがどんぐりの背比べしてるんじゃねぇよ」

 

クソが。上鳴と芦戸は悪気が無いが、あの爆豪は明らかに煽ってやがる……殴り飛ばしてぇ〜!!

 

「芦戸さん、上鳴君、砕条君、頑張ろうよ!! 皆で林間合宿行きたいもんね!」

 

「うむ、学級委員として皆の奮起に期待する!」

 

「普通に試験受けて赤点は無いだろ」

 

「言葉には気をつけろよ〜」

 

緑谷と飯田と焦凍はフォローしてるつもりなんだろうが、この時ばかりは上鳴の気持ちがよく分かる。

 

ちなみに林間合宿は、ヒーロー科の夏休みの行事で1週間行われる。以前、相澤先生が言っていたヒーロー仮免取得前の合宿も兼ねている。そして、期末試験で赤点を取った者は補講となり、林間合宿に行けない。

 

俺は林間合宿よりも、赤点だった場合の――

根津校長の補習地獄を思い出し、必死に頑張ろうとしていた。

雄英高校に編入してしばらくは、根津校長の講義だった。

点数が悪すぎると――

***回想***

「うーん、どうも勉強に身が入らないようだね……。仕方ない。君には僕が覚えた方法をやろうか」

「え?」

それは、“勉強”と言うにはあまりにもえげつない方法だった。

俺が失神し、目を覚ましたのは保健室。

リカバリーガールから聞いた話では、あれは根津校長が過去に受けた仕打ちだとか。

俺は人間の恐ろしさを身に染みて理解すると同時に、

二度と補講は受けないと固く誓った。

 

「3人とも、座学でしたら私、お力添えできると思いますわ」

 

「ヤオモモ! 良いの!?」

 

「助かるぜ〜!」

 

確かに八百万に教えてもらえるのは助かる。……けど、演習もあるんだよな。個性の特訓もしたい。遠距離攻撃への対応も――と考えていると…

 

「良いですとも!」

 

「? 八百万……おい、心操。八百万…急にどうしたんだ?」

 

「って、お前聞いてなかったのか? 耳郎と瀬呂、尾白も教えて欲しいって来てたんだよ。それが嬉しかったんだろ」

 

「そうなりますと、お母様に報告しませんと。講堂を空けてもらわないと」

 

『講堂!?』

 

「皆さんはご贔屓にしているお紅茶はありますか?」

 

『お紅茶!?』

 

「我が家はハロッズかウェッジウッドですが……」

 

ダメだ。世界観が違いすぎて落ち着かねぇ……。

 

「八百万、俺は大人数で大変そうだから遠慮しとく……」

 

俺は焦凍のところへ行った。

 

「という訳で、勉強教えてくれ! あと試験までに個性の特訓もしたい」

 

「すげぇな……図々しいぞ、砕条」

 

「ほっとけ!」

 

焦凍は少し考え

 

「分かった。姉さんに確認してみる」

 

『良いのか!?』

 

クラスに多少白い目で見られたが、校長の補講が避けられるならプライドなんて捨てる。

 

俺はそう決めた。

 

「心配するな、知り合いから明石の蛸を大量に貰ったから関西時込みのたこ焼き食わしてやるから」

 

「たこ焼きだと!?」

 

すると、普段は物静かな、障子が食いついてきた。 それには俺達も驚いた。

 

「おぉ、蛸大量に貰ってなさすがに一人暮らしで消費は難しいから…」

 

「障子、お前も食いたいのか…たこ焼き?」

 

「すまない、好物の話が出たから…つい」

 

「姐さんの確認いるが、1人2人増えても俺は問題無いぞ」

 

「そうだぜ、たこ焼きは大勢で食った方が美味いだろ?」

 

「そうか…ありがとう 問題なければ俺も行こう」

 

「…なぁ、さき図々しいって言ったけど、俺も試験勉強と個性伸ばしの特訓に参加して良いか?」

 

「あぁ、良いぞ」

 

こうやって冬美さんの許可も取り、障子と心操も参加する事になった。

 

その週の土曜日――轟家 砕条視点

「よし、お土産も持ってきたし……これで大丈夫だろ」

 

土曜日。

俺は轟家に泊まる約束をしていた。

さすがに勉強や泊まりで手ぶらはまずい。

 

デパートの物産展で地元・神戸の和菓子の饅頭と、たこ焼き器一式を抱えてきた。

 

「本当に大きい家だな」

 

「だな」

 

「まぁ、最初はそう思うよな」

 

焦凍の家の大きさに、心操と障子も菓子折りを持ちながら驚いていた。

以前泊まったことはあるが、改めて見るとやはり規模が違う。

ヒーローNo.2の家。

俺は一瞬だけ深呼吸をして、インターホン押す直前に

 

――その時。

 

ガシャーン!!

バシャァン!!!

 

家の中から、とんでもない音が響いた。

 

俺達三人は顔を見合わせ、すぐに駆け出す。

 

「皆、悪い……!」

 

「痛……っ」

 

音の元は台所だった。

駆けつけると、冬美さんが床に倒れている。

周囲は散乱し、蛇口から水が勢いよく噴き出していた。

一瞬驚いたが、ヒーロー科での日々のおかげか、体は自然に動いていた。

「俺は元栓閉める! 心操と障子は冬美さんを隣の部屋へ! 焦凍は救急箱!」

 

俺は流し台の下に潜り込み、元栓を閉める。

水の勢いが止まる。

障子が冬美さんを抱え、心操が容態を確認。

焦凍が持ってきた救急箱からテーピングを取り出し、捻挫と思われる箇所を固定していく。

その後、焦凍が近所のかかりつけ医を呼び、診察の結果は――

発熱と、手足の軽い捻挫だった。

冬美さんの話によると。

今朝から少し熱があったが、俺達が来るからと無理をして台所に立ったらしい。

上の棚の物を取ろうとして足台から滑り落ち、その拍子に蛇口にぶつかり、水が止まらなくなった。

転倒時に足を捻り、手も強く打ったとのことだった。

 

「皆、ごめんね……試験前なのに」

 

布団に横になったまま、冬美さんが申し訳なさそうに言う。

 

「姉さん、今は自分のことを優先しろ」

 

焦凍の声は静かだが、いつもより少し強い。

そして、ぽつりと付け足した。

 

「……姉さんは、昔から無理をする」

 

その言葉に、少しだけ空気が沈む。

俺は腕を組みながら考えた。

 

「とりあえず、この二日は俺達が泊まるから家事は回せる。料理も洗濯も何とかなる」

 

問題は――

風呂とトイレだ。

 

発熱して捻挫なら、一人で動くのはきつい。

だが、それを俺達が手伝うのは流石に無理がある。

焦凍に任せるにしても、姉弟とはいえ限度があるだろう。

……こういう時、家族の人数が少ない家は脆い。

俺は小声で言った。

 

「焦凍、二人ほど応援を呼んでもいいか?」

 

焦凍が俺を見る。

「誰を呼ぶんだ?」

 

「近所のアパート組。事情話せば来てくれると思う」

 

焦凍は一瞬考え、それから小さく頷いた。

 

「……頼む」

 

その声は、ほんの少しだけ柔らかかった。

 

数分後。

玄関のチャイムが鳴る。

 

「お邪魔します」

 

「ケロ、お手伝いに来たわ」

 

俺が呼んだのは、近所に住むアパート組の麗日と梅雨ちゃんだった。

 

「事情は聞いたよ。冬美さん、大丈夫?」

 

麗日が心配そうに靴を脱ぎながら言う。

(こんな時でもちゃんと人を頼れる砕条くん……)

 

梅雨ちゃんは家の中を静かに見渡した。

(轟ちゃんの家……静かすぎる。少し無理をしている匂いがするわね)

 

「ケロ。任せて。女性のケアは私たちがやるわ」

 

その言い方は落ち着いていて、妙に頼もしかった。

焦凍が小さく頭を下げる。

 

「助かる」

 

そのやり取りを見て、俺はようやく少しだけ肩の力を抜いた。

 

「悪いな、急に呼び出して。台所の方は心操と障子が片付けてる。二人は冬美さんを頼む」

 

「任せて」

 

「とにかく台所借りるわね。お粥の材料と果物買ってきてるから」

 

梅雨ちゃんに台所を案内する。

無駄のない動きで鍋に火をかける姿は、やけに落ち着いていた。

 

その間に麗日は冬美さんの着替えを手伝っている。

「ごめんね、こんなことになっちゃって……」

 

「気にせんでください。頼ってくれて嬉しいです」

 

麗日の声は、いつもより少し柔らかい。

居間に戻ると、心操と障子が床を拭き終えていた。

 

「水、止まった」

 

「大事にはならなかったな」

 

「助かった」

 

焦凍の短い言葉に、二人は軽く頷く。

俺達はそのまま昼食の準備に取り掛かった。

さすがに、たこ焼きを昼に出すわけにもいかない。

野菜炒めと豚汁を作り、居間へ運ぶ。

台所からは、梅雨ちゃんが作ったお粥の湯気が静かに立ち上っていた。

冬美さんは布団に横になりながら、それを見て小さく笑う。

 

「……なんだか、賑やかね」

 

その言葉に、焦凍がほんの少しだけ表情を緩めた。

この二日間は、居間の隣の客間に冬美さんと女子二人。

俺達男子三人は道場で雑魚寝。

 

「とりあえず、家事は午前中であらかた終わったし……昼飯にしようぜ」

俺が言うと、皆がようやく肩の力を抜いた。

 

昼食後は焦凍と梅雨ちゃんが先生の勉強会が始まった。

 

「なぁ、焦凍この公式じゃないのか?」

 

「そこはココをこんなふうにして展開する…」

 

「なるほどなぁ〜」

 

「梅雨ちゃんココわからんよ〜」

 

「ケロ? ここの化学式は〜」

 

「凄い! ありがとう」

 

15時頃。

俺と障子が持ってきたたこ焼き器を出し、たこ焼きパーティが始まった。

「明石の蛸か。気合入ってるな」

 

「せっかくだしな」

 

関西限定のソースをかけると、香りが一気に広がる。

蛸以外の具材は女子達が準備してくれた。

餅、チーズ、ウインナー。

 

「これ絶対うまいやつやん」

 

「えぇ、いい匂いだわ」

 

普段、ゼリー飲料やカロリーメイトで済ませている心操も——

 

「うまっ!」

思わず声を上げる。

 

「楽しいわ、たこ焼きパーティ」

麗日の笑い声に、居間の空気が完全に変わった。

冬美さんも、今朝よりずっと顔色がいい。

 

「……こんなに賑やかなの、久しぶり」

 

その言葉に、焦凍が静かに視線を落とす。

でも、その表情は少し柔らいでいた。

 

 

夕方に轟家の道場内で俺達は集まっていた。

 

当初はもう少し実践的な特訓を視野に入れていたが……病人がいる中でドタバタ暴れるのはまずいし、かと言って個性特訓をしなければ冬美さんが余計な気を遣う。そんな時に麗日が言った。

 

「なら、遊びの要素の特訓したらええんやないかな?」

 

「ケロ、遊び?」

 

「うん、例えば影鬼なら、鬼が個性を使って影を踏む。梅雨ちゃんなら舌で影に触れたら勝ち。障子君も個性で使った複製腕で――」

 

「なるほど、多数対一としてならヒーローの練習として最適だな」

 

「ケロ、遊びの要素があって良いわね」

 

「けど、俺の場合だと難しいぞ」

 

「そうやね〜」

 

「なら、心操は——」

 

俺は少し考えてから、にやっと笑った。

 

「お題当てゲームにしようぜ」

 

「……は?」

 

心操が眉をひそめる。

 

「心操の額にカード貼る。書かれたお題はお前だけ知らない。俺達は“直接その言葉を言わずに”会話する」

 

「それで?」

 

「お前が無意識にそのワードを口にした瞬間、洗脳が発動するかどうか試す」

 

道場の空気が、少しだけ真剣になる。

 

「今の個性だと洗脳は一対一が基本だろ?」

 

「……ああ」

 

「でも、きっかけは“返事”だ。なら、複数人が同時に誘導した場合どうなるか。そこを詰める」

 

焦凍が腕を組む。

 

「誘導の質も問われるな」

 

「そ。俺達は“ヒーロー側”。敵を自然に喋らせる訓練だ」

俺は心操を見る。

 

「どうだ? ただの鬼ごっこより、よっぽどお前向きだろ」

数秒沈黙。

心操が小さく笑う。

 

「……悪くない。俺に関しては、敵から情報を引き出す練習にもなるからな」

 

「ケロ、心理戦ね」

 

「なんや、面白そうやん!」

 

俺は肩をすくめた。

 

「遊びだ。けど、本番は命がかかる。なら今のうちに、いくらでもズル賢くなっとこうぜ」

 

こうして俺達は影鬼とお題当てゲームを始めた。

近くで見ている冬美さんも心配にならず、個性で派手に暴れることもない。

それなのに――俺達自身は個性を使っているのに、どこか妙な感覚だった。

まるで今だけ、幼少期に戻って遊んでいるような気分だった。

 

こうして試験勉強を終え、三日間の筆記試験も終わった。

だが、本番はここからだ。

演習試験が、俺達を待っていた。

 

 




改めると、ヒーロー科の生徒って幼少期にこんな風遊べてる子少なそうなので、どうしても描きたかったので書けて良かった。
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