僕のヒーローアカデミア 空拳ヒーロー エアーマン 作:ダレ狐
モニタールーム 緑谷視点
「まさか、三奈ちゃん達がリタイアするなんて……」
「ケロ。でも、冷静な判断だったわ」
「えぇ。上鳴さんと共に戦闘を続行するのは困難に見えましたから」
「それにしても、あれほど悔しそうな交野は初めて見たな」
女子達が先程の芦戸さん達の試合について話していた。
上鳴君が個性を使い過ぎるとショートするのは知っていたけど、芦戸さんにも使用制限があるなんて……。
個性とは身体機能の一つ。
無個性だった頃は、何でもできる超能力のようなものだと思っていた。
でも、ワン・フォー・オールを受け継いでから、個性と向き合うことがどれほど大変なのか思い知らされた。
「やっぱり皆の個性の使い方は参考になる……僕も頑張らないと!」
特に最近は、個性の使い方を工夫し始めた砕条君も、僕の目標の一人だ。
「あれ、砕条君は?」
「ん? アイツならトイレに行くって出て行ったぞ」
「そうなんだ。試験で見せた、あの時の姿のこととか聞きたかったのに」
「それより緑谷、オールマイトに対して何か作戦はあるのか?」
居なくなった砕条君のことを轟君から聞いていたところ、まさか心操君から試験について聞かれるとは思わず驚いた。
「前の救助訓練でオールマイトと遭遇して何とか合格したけど……正直、交野さんの作戦と鷹野さんが救助者を確保してくれたから助かっただけなんだ」
「それって……」
「つまり、救助訓練だったから切り抜けられただけだ。今回みたいな演習試験なら、俺達四人でも受かってなかっただろ?」
「鷹野さん……」
「鷹野の言う通りだ。直接戦った砕条も、オールマイトの直撃は受けていない。けど、お前達の試験では違う」
「直撃を受ける可能性もある……それなのに爆豪と連携を取れるのか? 他の試験を見ても、一対一で先生に勝ったチームは一つもないんだぞ?」
心操君の言う通りだ。
僕達の相手はオールマイト。
なのに、まだ作戦も思いついていない。
そんな状態で、かっちゃんと連携なんて……。
一方その頃 砕条視点
「そろそろ耳郎と口田の試験が始まるな」
トイレを済ませ、空腹が収まらなかった俺は、自販機で買ったカップ麺を食べていた。
そろそろ次の演習が始まると思い、モニタールームへ戻ろうとした時だった。
「おい」
「ん? 何だ、爆豪か」
振り返ると、いつも通り不機嫌そうな爆豪が立っていた。
「ちょっと来い」
「……あぁ」
普段なら文句の一つも言うところだが、今日は様子が違う。
俺はそのまま建屋の外へ出た。
「テメェはオールマイトと直接戦った数少ねぇ奴だ」
「……そうだな」
「そんなテメェから見てどう思う?」
「どうって……勝てるかどうかか?」
「それ以外に何がある!」
言葉は荒いが、コイツなりに不安なんだろう。
「俺とお前じゃ個性の性質が違い過ぎるから断言はできねぇ」
「あぁ?」
「ただ一つハッキリしてるのは、今の一年の俺達じゃ一対一でオールマイトには勝てない」
「……」
「オールマイトの個性は単純な身体強化だ。そのスーパーパワーは、俺達の最大火力をノーリスクで何度でも出せるようなものだ。俺達は反動で動けなくなるが、あの人にはそれがない」
「チッ」
実際、素振りの蹴りの風圧だけで俺の空気圧を軽く上回っていた。
蟻が象に挑むような実力差だ。
無策で勝てる相手じゃない。
「ここまでの試験でもカフスで拘束したチームはあるらしいが、真正面から勝ったチームはない。あの俊敏なオールマイトを拘束するのは無理ゲーだ」
「……」
爆豪は珍しく黙って聞いていた。
「勝つ道があるとすれば、一瞬だけ怯ませて、その隙にゴールまで駆け抜ける。それしかない」
「そうかよ……」
「その最大火力を当てるためにも、緑谷との連携は必要だって分かってるだろ?」
「あぁ!? アイツの力なんかいらねぇ!」
「試験を受けるのはお前らだ。どうするかは自由だけどな」
「うるせぇ!!」
爆豪は吐き捨てるように去って行った。
「大丈夫か、アイツら……」
その不安は、嫌な予感のまま現実になる。
数分後 最終演習 開始前 モニタールーム 砕条視点
あれから演習試験が進み遂に最後の緑谷と爆豪の演習が始まる。
「さて、いよいよ 難所の試験だね」
リカバリーガールの言う通り、今回の試験の1番の難所だ。
爆豪と別れた後も緑谷にも同じ内容を話したが……
作戦自体は納得してる様子だが
「あの2人で連携か」
「うーん、難しいよね」
飯田と麗日が不安そうになるのも納得だ。 4月の演習でも2人の仲の悪さが目立ってたらしいし……改善されることなく今に続いてるんだ
「えぇ、緑谷ちゃんも爆豪ちゃんに対して苦手意識が有りそうなのね」
「爆豪さんに対して、普通に接してるのって切島さん、瀬呂さんの印象ですね」
「まぁ、そう言っても今の2人でオールマイト相手に乗り切らないと無理なんだ。 何とかするしかねぇーだろ」
「砕条、緑谷と爆豪には伝えたんだろ? 俺達の時の救助訓練の事」
「伝えはしたが両方とも納得はしてない感じだぜ?」
全員の心配する中で……
『演習試験 爆豪·緑谷 開始!』
開始の合図になり、モニター見ると2人は真正面を歩き出していた。
開始数秒で言い合いになり爆豪が殴りだし 既にチームワークとして最悪な展開になっていた。
「やれやれ、チームワーク最悪だね。 相手が誰だか分かってるのかね?」
その直後に爆風が2人を襲い、周囲の建物のガラスが粉々に吹き飛んでいた。
「嘘だろ? あの規模の攻撃を拳1つでやるのかよ……
コレがNo.1ヒーロー」
俺の最大火力の技を軽く凌駕する破壊力……改めて映像で見ると……その差が広すぎる。
(ウラァァァ!!)
爆豪は速攻を仕掛けてオールマイトに向かったが、頭を掴まれてしまう。 しかし、振りほどかないでそのまま爆破の攻撃をしてきた。
「何、真っ向から仕掛けてるんだ?」
「でも、掴まれながら普通に攻撃してるぜ」
大抵の個性持ちなら今のこうげきでダメージはあるがオールマイトは気にせず爆豪を地面に叩きつけた。
緑谷はオールマイトのパワーの前に萎縮して動けずにいた。直ぐに回避行動来た時に爆豪とぶつかる。
「お互いに見えてねぇーな」
「これじゃとても……」
緑谷が爆豪に呼び掛けたが無視をして、爆破で間合いを詰めたがカウンターのボディブローを受けてリバースした爆豪は震えながらも立ち上がっていた。
「爆豪……このままだと負けるぞ?」
演習試験 爆豪視点
『ハッキリしてるのは、現時点の一年の俺達じゃ、一対一でオールマイトには勝てない』
クソ……あの野郎の言葉が頭をよぎる。
ビルを破壊できるパンチを、ここまで手加減してこの威力かよ……。
何とか立ち上がりながら、ゆっくりと歩いてくるオールマイトを睨みつける。
「君が苛立っている原因は分かるよ。緑谷少年の急成長だろう?」
「あぁ?」
「でもさ、レベル1とレベル50の力が成長速度が同じはず無いだろ? 勿体ないんだ 君は」
「うるせぇ……」
「分かっているだろう? 君だって、まだまだ成長できる。でも、それは力だけじゃない」
「黙れよ、オールマイト」
「ん?」
「あの
あの出来損ないを認めたら……俺が積み上げてきた全部を否定することになる。
「そうか。後悔だけはしないようにな」
「クソがぁ!」
ドン!!
顔面に衝撃が走った。
オールマイトじゃねぇ。
「負けた方がマシだなんて……君が言うなよ!!」
デクが……この俺を殴りやがった。
「一旦、退避しよう!」
デクは俺を背負い、そのまま街中へ走り出す。
オールマイトとの距離を取ったところで、俺は無理やり振りほどいた。
「降ろせ、クソナード!!」
「かっちゃん!」
「……クソ」
「かっちゃん。オールマイト相手に作戦は思いつかない。でも、勝つことを諦めないのが君じゃないか……!
どうせ負けるなら、僕を使ってからでも遅くないだろ?」
「くっ……」
『その最大火力を当てるためにも、緑谷との連携は必要だ』
どいつもこいつも……
ムカつく。
「いいか、一度しか言わねぇ。よく聞け」
「かっちゃん……」
「さっきので分かった。通常の爆破じゃ、あの男には効かねぇ」
アイツの策に乗るのは癪だ。
だが、他に方法もねぇ。
「逃げてもゴール前で待たれたら終わりだ。なら奇襲で俺の篭手の最大火力をぶち込む。その隙に二人でゴールまで走る」
「うん!」
「俺が奇襲を掛けたら、お前は反対側から攻撃しろ」
俺は篭手を一つ外し、デクへ投げ渡した。
「いいか。テメェと組むのはこの試験だけだ」
「……うん」
俺達は建物の陰へ隠れ、オールマイトを待ち伏せした。
ゴールへ向かって歩いてきた、その瞬間。
「俺はここだぞ!! オールマイト!!」
「何!? 背後だと!」
オールマイトが振り返る。
同時にデクが篭手を構えた。
「やれ!! デク!!」
「オールマイト!! ごめんなさい!!」
ドォォォン!!
最大火力の爆破。
オールマイトは後方へ吹き飛ばされる。
「今だ!」
俺達は一気にゴールへ走り出した。
「見えてきた! ゴールゲートだ!」
デクが嬉しそうに叫ぶ。
だが俺は周囲を見ていた。
道路沿いの窓ガラスが全部割れている。
つまり……
あの位置から、この辺りまで攻撃が届くってことだ。
しかも、ここまで十秒も掛かってねぇ。
なら……
「テメェはそのまま走れ!!」
「かっちゃん!?」
「振り返るな!! あの攻撃で倒れる奴がNo.1になれるか!!」
俺は腰部にマウントしてるの手榴弾をデクへ投げた。
「念のため持っとけ。お前のパンチより、まだ牽制になる」
「でも……!」
「行け!! 俺の気が変わる前にな!!」
残った手榴弾を後方へ投げる。
ドォン!!
もちろん当てる気なんかねぇ。
欲しいのは……
爆音。
奴が動くタイミングだ。
……ドーン! …………ズドーン!?
「音が変わった! 今だ!?」
「何! この瞬間を!?」
遠くの爆風が変わった瞬間に俺は篭手のピンを抜いた。 先の位置から最短に進むにはこの道路を通るしかねぇーんだ。 普通なら無理だが……アンタなら一気に来る……手榴弾の爆破テメェーの攻撃じゃねぇ……テメェの移動するタイミングを見るためだ。
「後、何分稼げば……」
「いやぁ、参ったよ。一気に追い詰めるつもりが、君の攻撃範囲に入っていたとはね」
「なっ!?」
オールマイトは数十メートル先に立っていた。
右腕の重りが焦げている。
「まさか……殴って相殺したのか!?」
「完全には相殺できなかったが、お陰で気絶は免れたかな。HAHAHA!」
クソが……
「まさか緑谷少年を逃がすために殿を務めるとは驚いたよ」
「デクはアンタと戦うことにビビってただけだ」
あと数秒。
それだけ稼げれば……
「そうか。何にせよ妥協点を見つけて対応したのは評価しよう」
「!?」
一瞬で間合いを詰められる。
「私相手に、一人で戦う以外はね」
篭手が砕ける。
次の瞬間。
拳が腹へめり込んだ。
「がっ!」
意識が飛びそうになる。
それでも俺は掌を向ける。
「No.1相手に……ノーリスクで勝てる訳ねぇだろ!!」
「何をする気だ、爆豪少年?」
「篭手はノーリスクで撃つための道具だ!!」
「篭手がなくても撃てねぇなんて、一言も言ってねぇ!!」
ドォォォン!!
至近距離で最大火力。
オールマイトが一瞬だけ止まる。
「ここで寝てろォォ!!」
「なんて無茶を!」
「ハウザー・インパクト!!」
一気に飛び込む。
しかし。
「なっ!?」
オールマイトは頭上へ。
拳を振り上げていた。
「悪いが、その破滅的な行動には先生もトラウマがある」
「これ以上、無茶はさせられない」
「クソがァァ!!」
これだけ差があるのかよ……
ドン!!
「爆発!?」
「オールマイト!! どいてください!!」
オールマイトが俺に攻撃を仕掛けるタイミングでオールマイトの背中に手榴弾が爆発した。
体勢が崩れた時にクソデクが拳で構えた体勢に間合いを詰めていた。
「緑谷少年!?」
「スマッシュ!!」
クソデクはオールマイトを殴り付けて俺の攻撃範囲の所まで殴りつけていた。
「緑谷少年!?」
「スマァァァッシュ!!」
拳がオールマイトを吹き飛ばす。
その先には俺。
「行けぇぇぇ!! かっちゃん!!」
「HAHAHA!! 見事だ、少年達!!」
「ハウザー・インパクト!!」
渾身の一撃。
オールマイトは大きく吹き飛んだ。
「礼は言わねぇぞ」
「……うん」
俺達はそのままゴールゲートをくぐる。
『爆豪・緑谷、ゴールゲート通過。演習試験終了』
こうして――
俺達の長い演習試験は終わった。