僕のヒーローアカデミア 空拳ヒーロー エアーマン   作:ダレ狐

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打ち上げ

演習試験終了後 近くの個人経営の洋食屋 砕条視点

 

「ここか」

 

「みたいだな」

 

俺達は激闘の演習試験を終えた帰り、元C組のメンバーから「来てほしい」と呼ばれ、商店街にある洋食屋へ入ると――

 

パーン! パーン!

 

『心操! 砕条! 誕生日おめでとう!!』

 

クラスのみんながクラッカーで盛大に迎えてくれた。

突然の出来事に、俺達は驚いて言葉も出なかった。

今日は七月三日、金曜日。 心操の誕生日は七月一日、俺は七月七日。

 

恐らく先生から聞いたのだろう。 俺達は自分の誕生日をあまり周囲に話さないタイプだから、なおさら驚いていた。

 

「てっきりヒーロー科への送別会みたいなものだと思ってた」

 

「俺もだ……。俺の場合、洗脳の個性の影響で距離を置かれることもあるからな」

 

「はぁ!? 雄英で個性くらいでビビるかよ! お前ら二人は普通科から体育祭で活躍して、そのまま短期間でヒーロー科へ編入したんだぞ! もっと自信持てよ!」

 

クラス一騒がしい男子・澤野が、俺と心操の肩を抱いて店の中央へ連れていく。

 

「ここは私の兄が経営している洋食屋だ。本日は貸し切りにしてもらった」

 

「白井先生!」

 

「まさか一学期のうちに編入になるとは、雄英始まって以来の出来事だ。二人とも、本当によく頑張ったな」

 

『ありがとうございます』

 

「はい! これ、クラスのみんなで書いた寄せ書き!」

 

C組のクラス委員、黒髪ボブの野村さんが、心操へ花束と寄せ書きを渡した。

俺の位置からでも、顔を真っ赤にしながら渡しているのが分かった。

……後で心操をからかおう。

 

「はい、あんたのも寄せ書き!」

 

俺には茶髪のサイドテールの草野が渡してくれた。

 

「おぉ、サンキュー」

 

「……別に」

 

相変わらず愛想はない。

まあ、悪い奴じゃないんだけどな。

 

「さて! 二人とも演習試験で疲れてるだろうし、早速料理を食べよう!」

 

「ラッキー! 演習試験で腹ペコだったんだよ!」

 

「砕条、お前さっきカップ麺食ってただろ……まだ食えるのか?」

 

「何言ってんだよ心操。ヒーローは身体が資本だぜ? いっぱい食って力をつけないとな!」

 

「……まあ、一理ある」

 

「それなら今日にして正解だったな。それじゃ改めて――二人とも、お誕生日おめでとう!」

 

『乾杯ー!!』

 

俺達は元C組のみんなに祝われるという予想外の出来事に驚いていた。

同じクラスだった期間は二か月にも満たない。

だけどUSJ事件や体育祭を経て、一緒に過ごした時間はそれ以上に濃かった。

俺は、このまま平穏な日々が続くものだと思っていた。

 

 

 

その頃 東京・とあるBAR

 

「あんたが死柄木弔か……」

 

「あんたか。先生からスカウトされたヴィランってのは」

 

「ようこそ、スライサー」

 

カウンターでは黒霧がバーテンダーとして立ち、死柄木弔の前には砕条の因縁のヴィラン《スライサー》が座っていた。

 

「あぁ。あの方には色々世話になってな」

 

「で? 俺達の仲間になるのか?」

 

「そうだな。今のヒーロー飽和社会を壊したいって目的は一致してる。よろしく頼むぜ」

 

「助かります。数日後には義爛殿が紹介する者も来ます。その時に改めて顔合わせをしましょう」

 

「分かった。連絡を待ってる」

 

そう言い残し、スライサーは店を後にした。

 

「アイツ、本当に信用できるのか? 今までの連中みたいに我が強くないのは楽だが……だからこそ余計に怪しいぜ」

 

「確かに不気味な雰囲気はあります。しかし今の我々には有能な仲間が必要です。 先生が推薦した人物です。実力は保証されているでしょう」

 

「あぁ……そうだな」

 

ヴィラン連合もまた、着実に戦力を集め始めていた。

 

 

 

数日後 ホームルーム前

 

『うっ……みんな、林間合宿のお土産話楽しみにしてるよ……』

 

週明け。

芦戸をはじめ、切島、砂藤、上鳴がお通夜のような空気を漂わせていた。

俺も少し申し訳ない気持ちはあるが、林間合宿は今まで以上に鍛えられる絶好の機会だ。

正直、楽しみだった。

 

「席に着け。ホームルームを始める」

 

相澤先生が入ってくると、騒いでいた上鳴達も大人しく席に着いた。

 

「今回の期末試験だが……残念ながら赤点者が出た。 従って林間合宿は――全員参加だ」

 

『どんでん返しだ!!』

 

「行っていいんですか俺ら!?」

 

「本当に!?」

 

「あぁ。ただし赤点は赤点だ。 筆記は全員ゼロ点。 実技で赤点だったのは芦戸、上鳴、切島、砂藤……それと瀬呂だ」

 

 

「やっぱり……。確かに『クリアしたら合格』とは言ってなかったもんな」

 

「今回の試験で俺達教師側は、生徒に勝ち筋を残した上で、どう課題と向き合うかを見るよう動いていた」

 

まさに、

どう連携するか。

どう逃げるか。

ヒーローとして生き残るための判断力を試す演習だった。

 

「でなきゃ課題以前に詰む試験ばっかだったしな」

 

「本気で叩き潰すって言ってたのは?」

 

「追い込むためさ。 林間合宿は強化合宿だ。 赤点を取った奴ほど鍛えなきゃならん。 合理的虚偽ってやつだ」

 

『合理的虚偽!?』

 

ドヤ顔の相澤先生を見て、俺は隣の尾白へ小声で聞いた。

 

「……なぁ、あのドヤ顔って前にもあったのか?」

 

「そうか、編入組は知らないのか。 入学初日に体力テストやらされて、ビリは除籍って脅されたんだよ」

 

「……なるほど」

 

妙に想像できた。

 

「またしてもやられた……! さすが雄英! しかし二度も虚偽を重ねられると、信頼に揺らぎが生じると思われます!」

 

「わぁ、水差すね飯田君」

 

体育祭でも発目に騙されてたしな……。

飯田はこういう"騙す"行為が本当に苦手なんだろう。

 

「確かにな。反省はする。 だが全部が嘘ってわけじゃない。 赤点は赤点だ。

お前らには別途補習を受けてもらう」

 

その一言で、赤点組は再び地獄へ突き落とされた。

 

「ぶっちゃけ、学校に残って補習受ける方がキツいからな」

 

 

放課後

 

「まあ何はともあれ、全員で行けて良かったね!」

 

「一週間の強化合宿か」

 

「荷物いっぱいになりそう」

 

「俺、水着とか持ってねぇし。色々買わないとな」

 

「暗視ゴーグル!」

 

「じゃあさ! 今週の土曜日、テストも終わったしA組みんなで買い物行こうよ!」

 

「おっ、いいね!」

 

「何気にそういうの初じゃね?」

 

「おい爆豪! お前も来いよ!」

 

「行くかボケ!」

 

「轟君は?」

 

「悪い。休日は見舞いだ」

 

「ノリ悪いなー! 空気読めよKYコンビ!」

 

「……これ、行く流れか?」

 

「多分な。雄英のノリなんだろ」

 

こうして俺と心操も参加することになり、当日。

大型ショッピングモールへやって来た。

普段は近所のスーパーかホームセンターくらいしか行かないから、妙に落ち着かない。

 

「おっ! 雄英生じゃん!」

 

「一年だ!」

 

「体育祭見たぞ!」

 

『うぇーい!!』

 

まさか覚えられているとは思わず驚いた。

その後は各自自由行動となった。

 

「俺はどうするかな」

 

「そういや砕条、キャンプ詳しかったよな! アウトドアショップ付き合ってくれ!」

 

「私も行くー!」

 

「あぁ、いいぞ」

 

こうして上鳴と葉隠と一緒にアウトドアショップへ。

 

「林間合宿なら、このくらいのスニーカーで十分だな。 セールだし値段も手頃だ」

 

「マジか! 助かる!」

 

「速乾だけでいいかな?」

 

「訓練中心だろうし、枚数持つなら速乾性重視でいいと思う」

 

「ありがとう!」

 

そんな二人にアドバイスしながら、俺は小型のコーヒーミルを眺めていた。

 

「あ、このメーカー新型出してるのか」

 

「砕条ってコーヒーこだわる系男子?」

 

「そこまでじゃないけど、朝日見ながら飲むコーヒーって最高なんだよ」

 

「うわー! 大人!」

 

「キャンプ飯とかも作るの?」

 

「基本炒め物だけだけどな」

 

父さんや雷導達とキャンプへ行った日々を思い出す。

修行の一環だったけど、今ではいい思い出だ。

 

 

『お客様へお知らせします。 ショッピングモール内に指名手配中のヴィランが侵入したとの情報が入りました。 速やかに避難してください』

 

 

『えっ!?』

 

後で知ったことだが、この時、緑谷がヴィラン連合の死柄木弔と遭遇していたらしい。

 

「なぜステインが評価されるのか」

 

そんな話をされたという。

その出来事は、これから始まる林間合宿への不安を、俺の中で少しずつ膨らませていった。




基本は本編で進めますが、個人的に映画編も書きたいと思います。
特別編枠で書く予定です。
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