僕のヒーローアカデミア 空拳ヒーロー エアーマン   作:ダレ狐

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今回は色んなキャラが出ます。


林間合宿編
群がる悪意


演習試験終了後 校長室 相澤視点

 

「……以上のことを踏まえて、林間合宿はこのプランで考えています」

 

「分かった。その方向で進めよう」

 

演習試験の結果を受け、林間合宿では個性の強化と体力面の底上げを中心に行い、赤点組には座学の補習を追加する形となった。

九月の仮免許試験を一年生のうちに合格させるには、今のうちから詰め込んでおかなければ厳しいことを改めて実感した。

 

「しかし、もう一学期も終わりだね。慌ただしかったせいか、あっという間だったよ」

 

「そうですね……それと、砕条の件ですが、警察から身元確認が完了したとの報告を受けました」

 

「うん。彼がシロだと正式に認められたことで、警察からの信頼も得られたのは大きいね」

 

「ええ。もっとも、例のヴィジランテに世話になっていたことが良かったのか悪かったのか……」

 

「君がプロヒーロー時代に活動拠点にしていた街だったね」

 

東京都・鳴羽田( なるはた)

 

雄英教師になる前、俺がプロヒーローとして活動していた頃の拠点だ。

 

そこで、あるヴィジランテと知り合うことになった。

彼らが関わった事件以降、数年間消息不明になっていたのだが──。

 

 

回想 体育祭後 喫茶店「Hopper Cafe」

 

「へい、いらっしゃい! ……おぉ、イレイザーヘッド! 久しぶりだな!」

 

「お前たちも元気そうだな」

 

堀田兄弟。

数年前の事件をきっかけに知り合い、俺がプロ時代には活動拠点代わりとして世話になっていた。

彼らも法的にはグレーな立場だが、あの事件に関わった個性持ちの社会復帰の場として、この店を提供している。

 

「体育祭見たぜ! お前のクラス、すげぇな!」

 

「まったくだ。俺たちの頃より、とんでもねぇ個性持ちが増えたよな」

 

「それよりも……」

 

「来てるぜ。奥の席だ」

 

案内されて奥へ向かうと──

 

「まさか、またあんたに会うとはな」

 

「それはお互い様だ、イレイザーヘッド」

 

砕条から事情聴取で名前を聞いた時は耳を疑った。

行方不明になっていた男。

 

かつて"ナックルダスター"としてヴィジランテ活動をしていた男だった。

 

もっとも、数年前の屈強な姿はなく、今では杖を突いた初老の男になっていた。

 

「内容については堀田兄弟から聞いたが……まだヴィジランテ活動を続けていたとはな」

 

「フッ。ヴィランを殴り飛ばせるからな」

 

「ヒーローの前で堂々と言うとはな」

 

「そんな話をしに来たわけじゃねぇだろ?」

 

「あんたが関西から砕条を連れてきて、ここで鍛えていた経緯を確認しに来た」

 

「疑う要素でもあるのか?」

 

「彼の身の潔白を証明するためにも、担任として知っておく必要がある」

 

ナックルダスターは小さく笑った。

 

「フッ、簡単な話さ。ある事件で俺は重傷を負ってな。その時、昔のツテを頼ってディバイドのところへ治療に向かった」

 

「砕条の育ての親のところか?」

 

「ああ。俺の格闘術も、元を辿ればアイツから教わった武術が基礎だからな」

 

まさか、あの事件の後も繋がりがあったとは。

 

「一年前、ディバイドの周辺で厄介なヴィランの噂を聞いて駆けつけたが……すでに逃げた後だった。その時に、あの坊主と出会った」

 

「砕条か……」

 

「ああ。恩人の息子だ。放ってはおけねぇ」

 

普段の素行を考えれば意外だった。

だが、あのヴィジランテ事件で見せた姿を思えば、嘘とも思えなかった。

 

「……少し意外だな」

 

「坊主には近接戦闘と立ち回りを教えただけだ。ヴィジランテ活動と言っても、ヴィランのアジトを探して警察へ情報を流していただけさ」

 

そう言って、ナックルダスターは懐からUSBメモリを取り出し、俺へ差し出した。

 

「これが証拠だ。警察に見せれば分かる」

 

俺はそれを受け取り、懐へしまう。

 

「預かる」

 

「坊主には伝えておけ。ヒーロー免許を取るまでは俺のところへ来るな、とな」

 

「分かった」

 

店を出ようとしたナックルダスターが、不意に足を止めた。

「最後に、一つだけだ」

 

「……何だ?」

 

「一年間音信不通だったスライサーが動き始めた」

 

「!?」

 

「最近ニュースになった東京湾の倉庫街でのヴィラン同士の抗争。警察が箝口令を敷いてるから世間には出てねぇが……」

 

「現場では五十人以上の個性持ちが、文字通り真っ二つになっていた」

 

 

「なぜ急に……?」

「さあな。だが一つだけ言える」

 

ナックルダスターは静かに振り返る。

 

「今の坊主じゃ、アイツには勝てねぇ」

 

そう言い残し、杖を突きながら店を後にした。

その後、俺は預かったUSBを警察へ提出し、砕条の身辺調査と裏付けが進められた。

 

 

そして、現在

 

 

 

「あれからスライサーに関する情報はありません。今の砕条にとっては良いことかもしれませんが……」

 

「出会った当初より無茶な行動は減ったように見える。それでも、まだ不安要素はあるからね」

 

「ええ。特に、自分よりも他者の危機を優先し、自身を投げ出すような行動が目立ちます」

 

保須での戦い、そして演習試験での立ち回り。

砕条には未だ、自分自身を軽んじる傾向が残っている。

 

「なので校長……提案があります。林間合宿の場所について、もう一度検討していただきたいのです」

 

「なるほど……具体的に聞かせてくれ」

 

そこから俺は、林間合宿について考えていた案を説明した。

万全を期すための作戦を考えていたが―― ヴィランの脅威がすぐそこまで迫っていることを、この時の俺はまだ知らなかった。

 

数日後 死柄木弔と緑谷と再会する数時間に遡る。

 

 

「どうも、義爛です。……おや、初めて見る顔ですね」

 

この日、ステインの思想に感化されたヴィランたちが、義爛の仲介によってこのBARへ集められていた。

カウンターには、すでに不機嫌そうな死柄木弔。

その隣ではウイスキーを飲むスライサー。

そして店のマスターである黒霧が待っていた。

 

「どうも、スライサーだ。ただのヴィランさ」

 

「へぇ……アンタが、東京湾の倉庫街で大量斬殺をやったって噂のヴィランか」

 

「そんなこともあったかな。それで、お連れさんは?」

 

義爛の後ろから入ってきたのは、一人の女子高生と、全身に火傷跡と継ぎ接ぎが目立つ青年だった。

 

「ワタシ、敵連合( ヴィラン)に入りたい! ステ様を殺したいです!!」

 

「アンタが敵連合( ヴィラン)のリーダーか? 写真で見るより気持ち悪いな」

 

「黒霧! こいつら飛ばせ! 俺の大嫌いなもんがセットで来やがった。ガキと礼儀知らずだ!」

 

「まぁまぁ。せっかくお越しいただいたのですから、話だけでも伺いましょう、死柄木弔」

 

「ここに来る連中は、品行方正かどうかじゃない。強いかどうかが大事だろ、死柄木」

 

「その通りです。それに、義爛殿の紹介です。戦力として間違いないでしょう」

 

「何でもいいが、手数料は頼むよ。黒霧さん」

 

「とりあえず紹介だけでも聞いときなよ」

 

タバコをふかした義爛は、女子高生へ視線を向けた。

 

「まずはこちらの可愛い女子高生。名前も顔もメディアに守られちゃってるが、連続失血事件の容疑者として追われている」

 

「トガです! トガヒミコ!」

トガは嬉しそうに話し始めた。

 

「生きにくいです。 生きやすい世の中になってほしいです。

ステ様になりたい。 ステ様を殺したい。

だから(ヴィラン)連合に入れてよ、弔君!」

 

「意味が分からん……破綻者か?」

 

「会話は一応成立する。きっと役には立つよ。 次はこっちの彼」

 

今度は継ぎ接ぎの青年へ視線を向ける。

 

「目立った罪は犯してないが、ヒーロー殺しの思想に異常なまでに固執している」

 

「不安だな、この組織。本当に大義はあるのか? まさか、このイカれ女を入れるんじゃねぇよな?」

 

「えぇ? ワタシですか?」

 

「おい。その破綻JKですら出来てることがお前は出来てねぇ。 まず名乗れ。大人だろ」

 

「……今は荼毘で通してる」

「通すな。本名を名乗れ」

荼毘に向けて苛立ちを向けたが隣のスライサーを睨み始めた死柄木に疑問な表情をするスライサー。

 

「そういえば、お前も聞いてなかったな。ついでに名乗れ」

 

「あれ? "あの人"から聞いてると思ったよ。改めて、

村正 刃(むらまさ じん)。ヴィラン名はスライサーだ」

 

「……本名を出す時が来たら出すさ。

とにかく、ヒーロー殺しの意志は俺が全うする」

 

「聞いてないことは言わなくていいんだ……。

まったく、どいつもこいつもステイン、ステインと……」

 

「死柄木……」

 

「あっ、いけない、死柄木!」

 

「よくないな……気分がよくない!」

 

その瞬間――

死柄木から凄まじい殺気が放たれた。

 

『!?』

 

トガと荼毘は反射的に臨戦態勢へ入る。

 

「ダメだ、お前ら!」

 

死柄木が崩壊の個性を発動しようとした、その時だった。

 

シュン――

パリーン!!

 

店内の照明が三人の間へ落ちる。

 

「落ち着けよ、三人とも。

こんな所でドンパチしても、無駄な死体が増えるだけだ」

 

「助かりました、スライサー。 ですが、店の照明を壊すのは勘弁していただきたい」

 

「悪い。

下手にあんたのワープゲートを出したら、彼らの個性がどう反応するか分からなかったからな。

特に刃物じゃなく、素手で放出系の個性を使う荼毘( かれ)は」

 

「チッ……」

 

「まぁ、照明くらい後で買ってやるさ」

 

「お願いします。

死柄木弔……あなたが望む未来を叶えるには、組織の拡大が必須です」

 

「……」

 

「奇しくも今は注目されている。

組織を拡大するには絶好の機会です」

 

黒霧は苛立つ死柄木へ静かに囁いた。

 

「排斥ではなく受容。利用しなければならない。

彼が残した思想も、そのすべても」

 

「うるさい」

 

「どこへ行く?」

 

怒った死柄木は義爛の制止を振り切り、そのまま店を出て行った。

 

「取引先にとやかく言いたくはないが……若いね。若すぎるよ」

 

「殺されるかと思いました」

 

「気色悪い……」

 

「返答は後日でもよろしいでしょうか。

彼も、自分がどうすべきか分かっているはずです」

 

「分かっているからこそ、何も言わず出て行った……そういうことか」

 

「その通りです、スライサー。

オールマイト。ヒーロー殺し。

二度も鼻を折られた彼なら、必ず答えを導き出すでしょう。

あなた方も、自分自身が納得できる返事を」

 

 

「彼の行動次第で鬼と出るか蛇と出るか……。

混乱を巻き起こすなら、俺は構わないさ」

 

この後、死柄木は緑谷と遭遇し、

『オールマイトがいる偽りの正義の世界を破壊する』

という明確な目的を見出す。

 

そして彼らとの決戦は、静かに、しかし確実に近づいていた。

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