僕のヒーローアカデミア 空拳ヒーロー エアーマン 作:ダレ狐
『オールマイト!』
雄英生・ヴィランも含め、伝説のNo.1ヒーローの登場に驚いていた。
シュンッ!
「なぁ?」
階段の方を見ていたら、いつの間にか死柄木と脳無から距離を離された場所に、俺と緑谷は移動させられていた。
「すまない、遅れてしまって。緑谷少年、それと君は?」
「俺は……」
「オールマイト! 彼は敵ではありません! 僕たちを助けてくれた!」
「そうか。君のことは後で聞く。ここから離れなさい」
これがオールマイト……生で見るのは初めてだけど、風格が違いすぎる。
俺と緑谷を退避させるだけでなく、ここに来るまでのヴィランも瞬殺で倒している。
レベルが違いすぎる……これがNo.1。
「オールマイト、気をつけてください! あの脳無というヴィランは、僕や彼の打撃の個性が効きません!
多分、打撃系の攻撃を無効にする個性だと思います!」
「そうか。どれほどのものか、試すぞ――カロライナ・スマッシュ!」
「脳無」
オールマイトは腕をクロスした手刀を構えてから攻撃を繰り出す。
爆風は凄かったが、脳無にはダメージがなかった。
「マジでダメージが無いな……」
「それはそうさ。脳無の個性はショック吸収さ。
こいつにダメージを与えるなら肉を削ぐとかしないと……まぁ、そんな攻撃をさせてくれたらだけどね」
「わざわざサンキュー。そういうことなら、やりやすい!」
死柄木はなぜか脳無の個性をバラした。
オールマイトは脳無の攻撃を避け、バックドロップを決める。
その攻撃でも、俺たちが後ろに下げられるほどの爆風だった。
緑谷の様子を見ると、なぜか不安そうな表情になっていた。
俺も気になって、オールマイトたちの方を見る。
バックドロップを決めている体勢のオールマイト。
だが、脳無の上半身だけがワープで移動し、下からオールマイトの横腹を爪で突き刺していた。
「まったく恐ろしいよ。脳無を突き刺して動きを封じようとするなんて……
でも、脳無はお前並のパワーだから無駄だけどね」
「くっ……」
「黒霧、ナイスアシスタントだ」
オールマイトは脳無の腕を引き剥がそうとするが、かなりの力なのか抜け出せない。
「黒霧」
「私の役目は、脳無で拘束し、貴方の身体をワープゲートで途中まで引き込んで、ワープゲートを閉じて引きちぎる!」
「オールマイト!!」
その言葉を聞いた緑谷は、有無を言わさずオールマイトの元へ駆けつけたが――
「馬鹿野郎! やみくもに突っ込むな!!」
俺も急いで駆けつけたが、緑谷の前に黒霧のワープゲートが……!
間に合わない!
「邪魔だ! クソデク!!」
突然、黒霧の前で爆発が起き、黒霧を捕まえた柄の悪い奴が現れた。
同時に、脳無の身体に氷結が広がる。
「氷結……轟少年か!」
「テメェらが、オールマイト殺しの主犯と聞いた」
氷結の個性のやつ――オールマイトに当たらないように調整している。
かなり優秀な奴だな。
その隙に、オールマイトは脳無から脱出した。
「助かったよ、轟少年」
「オラァァーッ!」
すると赤髪の少年が死柄木に手刀を繰り出すが、避けられて距離を取られる。
「あれ、逃がした!」
「No.1ヒーローをお前らごときに倒させはしない」
「ふっ。この霧野郎、思った通りだぜ。実体箇所がある。
それを隠すように普段は霧状で身体を覆うが、ワープゲートを出す時はどうしてもそこが剥き出しになる。
そこを掴めば俺の勝ちだ!」
あのガラの悪い奴……見た目に反してかなり頭が良いみたいだな。
「動くなよ! 怪しい動きをしたら、即座に爆破するぞ」
「ヒーローらしくない言動だな」
赤髪の奴と同意見だ。
「脳無……」
「グオォォォ……!」
凍らされた手足を無理やり砕いた。
しかも身体が再生を始めている。
「ショック吸収が個性ではないのか?」
「別にそれだけが脳無の個性とは言ってない。
脳無はオールマイトを倒すために改造された、超高性能サンドバッグ人間さ……」
「まずい! 逃げろ爆破人間!!」
俺はやつの狙いが黒霧の奪還だと予想して声を掛けたが、既に爆風が吹き荒れ、俺たちは身動きが取れなかった。
「!? かっちゃん! いつの間に移動したの?」
「ちげぇよ。黙れよカス」
「じゃ、どうやって?」
「まさか……オールマイトが庇ったのか?」
爆風の先には、ガードしたオールマイトがいた。
「全く……無茶苦茶だな」
「何言ってるんだ。仲間を助けるためなら手段は選ばないさ。
そこの地味男子と道着男子も守るために暴力振るって、俺たちに攻撃してたじゃん」
「そういえば今更だけど、お前誰だ!」
「切島君、今聞くんだ……」
「俺たちの敵なのか?」
「轟君、彼は……」
「俺は砕条拳志。あるヴィランを探すためにこいつらのところに潜入したけど、成り行きで緑谷たちのフォローしてるだけだ」
「俺のことは後でいいだろ。今は……」
「オールマイト、俺はお前に怒ってるんだぜ?
同じ暴力で、ヒーローとヴィランで善し悪しがカテゴライズされる“この世の中”に」
「主義者か?」
「何が平和の象徴だ。所詮、抑圧のための暴力装置だろ?
お前を殺して、暴力は暴力でしかないと証明するんだ!」
「そういう思想犯は静かに行うものだ。嘘つきめ」
「ふっ、バレるのは早いぜ」
「とにかく、こっちはオールマイトを含めて6人。
5人があの二人を抑えたら――」
「おう、轟の言う通りだ。俺たちがオールマイトのサポートをする」
「うん、黒霧はかっちゃんが暴いたからね」
「うるせぇ! 俺一人で充分だ」
「君ら、俺が騙そうとしてるとか1mmも疑わないの?」
「別に。それならそれで、お前も倒すだけだ。
先から攻撃仕掛けてこない辺り、心配はしてない」
「緑谷が信用してるなら大丈夫だ!」
「テメェが何しようが関係ねぇ。俺の邪魔する奴は全員ぶっ飛ばす」
……雄英高校試験を受かるだけあって、肝が据わってる。
「ダメだ、君たちは下がりなさい!」
「先は俺がサポートしないとダメだったろ?」
「それはそれ。ここからはプロの仕事だ。大丈夫だ」
オールマイトはサムズアップした。
「脳無、黒霧はオールマイト、俺はガキ共の――」
「ウルァァァ!」
俺たちも動こうとしたが、オールマイトの攻撃の衝撃波で更に後ろへ吹き飛ばされた。
そのまま、オールマイトと脳無の殴り合いが始まった。
だが、先ほどまでとは違う。パンチ一発の威力が凄すぎて、あの二人以外は衝撃波で身動きが取れない。
「真正面からの殴り合いで……」
「凄すぎる……!」
「君の個性が“ショック無効”でなく“ショック吸収”なら、限度があるんじゃないのか?
ヒーローとは常にピンチと隣り合わせ……そして、ヴィランよ、この言葉を知ってるか?
――“更に向こうへ、Plus Ultra!”」
オールマイトが脳無を吹き飛ばした。
「マジか……ショック吸収を無効にするほどのパワー……」
「これがプロの世界」
「No.1ヒーロー……」
「次元が違いすぎる」
個性の弱点どうのではなく、力そのものが桁違い――
プロヒーローの凄さを、俺は間近で見て驚いた。
「やはり衰えたな。全盛期なら5発で済んだのに……300発も打ってしまった」
「チートが……」
「どうした? 来ないのか?」
「くっ……くそ、ここまで来たのに」
「死柄木、これ以上は……」
「せめてガキを数人殺して――!」
その時、銃声が響いた。
死柄木が足に数発撃たれたようで、黒霧に隠され、そのまま霧の中に消える。
「今回は失敗だったけど……今度は殺すぞ、オールマイト!」
死柄木達は姿を消した。
とりあえず、この戦闘は終了した。
「やったぜ! 俺たちの勝ちだぜ!」
切島がその場の全員に声を掛けてはしゃいでいた。
俺はその隙に森の中に逃げていた。
俺もここでは侵入者だ。捕まると面倒だ……木の中に身を隠したが、脳無に受けたダメージの疲労で力が抜け始めた。
「……マジか。早くしないと、雄英高校の教師や警察が来るのに……」
スライサーの手がかり無しで、ここで捕まるわけには――
「ケロッ、ここにいたのね砕条ちゃん」
「蛙吹、彼がさっき言っていたのは?」
声のする方を見ると、蛙吹とタコのような触手の腕を持つ奴が俺の前にいた。
くそ……近くまで人が来ていたのに……
「よく俺がここにいたのが分かったな。
あそこにいたオールマイト達は気づかなかったのに」
「俺の個性“複腕”は、目と耳を複製できて探査能力が高い」
「しまったな……探査能力が高い奴がいる想定まではしてなかった」
「さっきより顔色悪いわ。リカバリーガールの元へ」
「俺は雄英高校の侵入者だぞ? このまま行けば警察に捕まる……今は捕まる訳にはいかないんだ」
無理して立つが……今、この二人を振り払って逃げ切れるか?
「それは後で聞く!」
俺の背後に妙な布が飛んできて、俺は後ろの木に括りつけられた。
「!? この布……イレイザーヘッドか?」
「あぁ、お前のおかげで少し休めたからな……鳩尾の分はチャラにしてやる」
「くそ……俺は、こんな所で捕まって……」
「今は何を言っても無駄だろうな。ミッドナイト、頼む」
すると背後から妙な煙が出て、意識が持っていかれた。
「全く、貴方が急に私や他の生徒を連れ出してどうするのかと思えば……彼をどうするの?」
「とにかく、警察に引き渡す前に色々聞きたい」
―――――
数時間後 雄英高校・保健室
意識がぼんやりしている中で、消毒液の匂いがしていた。
目が覚めると、見たことない部屋だった。
「保健室か?」
周囲を見渡すと、どこの学校にもある保健室だが、外の景色は夜になっていた。
身体の怪我は治されている。
「お目覚めのようだな……砕条拳志」
保健室の扉からイレイザーヘッドらしき人物が現れた。
ゴーグルを外した姿で、俺は戸惑っていた。
「ん? あぁ、素顔は初めてだな。俺はイレイザーヘッド、ここでは本名の相澤でいい」
「……はぁ。それで、聞きたいことがあるんだろ?」
「早速本題か。効率的で助かる。
生徒から大凡は聞いたが、詳細が分からないからな」
俺は、去年の春に育ての親がヴィランに殺されたこと。
そいつを追うために学校を中退し手がかりを探していたこと。
今回、大量のヴィランが集まると聞いて潜伏したが、結果は空振りに終わったこと――
それらを話した。
「これで全部だ」
「そうか。一言言えば、行動が浅はかだな」
「……」
「だが、お前の行動のおかげで助けられた俺からは何も言えないな」
「それで、俺はこのまま警察に引き渡されるのか?」
「ここで逃げ出すとは言わないのか?」
「個性を消せるアンタから逃げ切れるとは思えない……
それに俺の力は、強い奴らには通用しないのは、さっきの戦いで身に染みた」
「そうか。余計な手間がかからないのは助かる……ここからは校長たちの話を聞いてくれ」
すると、保健室の扉から大きい白いネズミと、しわくちゃなおばあちゃんが現れた。
「やぁ、君が砕条君だね」
「お前さんが十文字の子どもだね」
この二人は……俺に何を話す気だ?