僕のヒーローアカデミア 空拳ヒーロー エアーマン   作:ダレ狐

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思い

夕方、雄英高校の近くにある町。

 

「きつい〜。中学3年の勉強をやってないツケはデカイな……」

 

俺は放課後、根津校長の詰め込み勉強を終えて帰宅していた。

明日からの放課後はグラウンドで個性を使った特訓が許可されていると聞いた。

体育祭までは、俺もグラウンドで個性を伸ばす練習をするつもりだ。

 

「街中では使えないからな……とりあえずレトルト食品でも買い貯めるか」

 

雄英高校の生徒は全国から集まるせいか、麓の街でアパートを借りて暮らしている生徒も多いらしい。

そのおかげで、身寄りのない俺でもすぐにアパートを借りられた。

 

「さて、ドラッグストアは……」

 

「ケロ、砕条ちゃん? お買い物?」

 

「おぉ〜、砕条君じゃない」

 

「蛙吹に麗日か。お前らもアパート暮らしか?」

 

ドラッグストアに寄ろうとしたら、入口で蛙吹と麗日を見かけた。

 

「うん、私の実家は三重県だからね」

 

「私は愛知だから、この近くのアパートを借りてるの」

 

「なるほどな〜。さすが雄英高校だな、全国から集まってるのを実感するわ」

 

こう聞くと、ヒーローを本気で目指してる奴らの中に、俺みたいな奴は居ない方が良い気がする……

 

「砕条ちゃんは夕飯のお買い物?」

 

「あぁ、レトルトカレーを買い貯めるためにな。ドラッグストアの方が安いからな」

 

「えぇ! カレーだけって……」

 

「そう言えば、お昼もカレーだったわね」

 

「カレーは万物の料理だ」

 

「おっと、砕条君も癖が強い系なの?」

 

「悪いが、課題もあるから、ここでまたな」

 

「あっ、また学校でね〜」

 

「ケロ、野菜とか栄養も考えた方がいいわよ」

 

「へいへい」

 

俺はなんとか、彼女達の会話を切り上げてドラッグストアに向かった。

心操の言っていたことだが、俺には目的がある……馴れ合う気はない。

ヒーロー科になり、スライサーの手掛かりを追う。

 

 

 

翌日 放課後 演習場

 

「くそ……攻撃と違って、移動や防御は難しいな」

 

先日のUSJ襲撃事件で脳無と戦ったことで、防御と機動力の難点を解決しようと特訓を始めた。

攻撃手段も課題だが、俺は肉体強化系ではない。

かといって範囲攻撃が得意でもない以上、ある程度の防御と機動力を上げないと、こちらの攻撃が当たらない。

 

「防御は瞬間的なら腕や背中とかに空気圧を張れるが……防御と言えるかは微妙だな。結局、維持できないと戦闘も維持できない……」

 

脳無の攻撃を受けた時、咄嗟に空気圧を張ったが……完全には受けきれなかった。

連続で受けたら終わりだ。

 

「せめて、この空気圧が少しでも維持できたら強いんだがな」

 

俺の空気圧は基本的に数秒しか持たない。

だから今までも拳か足のサイズで放つことしかできない。

攻撃力としても高いとは言えない。

特にオールマイトや緑谷を見た後だとな……

 

「……しかも2週間でどこまで伸ばせるかだな」

 

「あれ、砕条君?」

 

「おぉ!? 緑谷か……びっくりした」

 

「な、なんで?!」

 

「いや、ちょうど個性のパワー不足で悩んでたところで、オールマイトや緑谷を見た後だとな〜って考えてたタイミングでな」

 

「なるほど」

 

「緑谷も特訓?」

 

「うん。といっても今日は予選のシミュレーションで、色んな運動場を見てただけだけど」

 

緑谷を見るとノートを持っていた。

 

「へぇー、分析内容をノートで書いてるんだ。すげぇな」

 

「いや、これは趣味みたいなもので、そんな大したことないんだよ!」

 

「落ち着けよ。別に問い詰めてるわけじゃないんだから」

 

「ご、ごめん。いつもの癖で……ヒーロー科目指してるんだね」

 

「ん……あぁ、一応な。ただ、ここ数日、雄英高校でヒーロー科やヒーロー科を目指す普通科の奴を見ると……俺は本当に良いのかなって思ってな」

 

「どうして? 個性も立派じゃないか」

 

「個性以前の問題……緑谷は俺が追ってるヴィランの話をしたよな」

 

「うん」

 

「俺はそいつに傷をつけられ……その怪我を治すために、育ての親が個性を使って命を落とした」

 

「え? そんなことが……」

 

「ヒーロー名はディバインドらしい。記録が古くて分からなかったが、リカバリーガールいわくオールマイトが活躍する前の時代らしい」

 

「知ってるよ、ヒーロー・ディバインド。治療系ヒーローは数が少ないから。でも、個性の酷使での引退とは聞いていたけど……まさか亡くなっていたなんて」

 

「それで、俺は復讐のつもりで学校を中退して奴の手掛かりを探してたのに……学校の計らいでヒーローになるチャンスをくれようとしてる。真剣にヒーローを目指す奴らに失礼な気がしてな」

 

相澤先生の話で合理的にヒーローを目指すと決めたけど……やっぱり納得できない気持ちがある。

 

「その"恵まれていいのかな"?って気持ち、分かるよ」

 

「緑谷?」

 

「僕も最近まで個性が出なくて……ヒーローになることなんて出来ないって周りに言われてた。でも突然、個性が現れて……雄英高校に進学するために、一生懸命に指導してくれたんだ」

 

「そんなことが……」

 

「だから体育祭も、最初はモチベーションが上がらなかったけど……皆のやる気とか、ヒーローを目指そうとした時の気持ちを思い出したら、急にやる気が出たんだ」

 

「ヒーローを目指そうとしたきっかけか……」

 

「僕は、早く個性を使いこなして、小さい頃に見てたヒーローみたいになるために頑張ろうって思ったんだ」

 

「そうか……俺は……」

 

「ねえ砕条君。ヒーローって、“気持ちが強い人”がなるものじゃないと思うんだ」

 

「?」

 

「怖かったり、迷ったり、後悔したり……そんなの、みんなあると思うよ。僕だって、ずっと“なれるわけない”って言われてきたし」

 

「……」

 

「復讐が最初の理由だったとしても、君は相澤先生を助けようとしたし、僕たちを助けようとした。それはヒーローとしての“自己犠牲の精神”だよ。

他者を助けようとした人が、ヒーローに向いてないわけない!!」

 

「……よく、堂々と言えるな……」

 

「いや、これは僕の言葉というより……僕も同じことを言われたから」

 

でも、なんでだろうな……不思議だ。

この緑谷の言葉で、モヤモヤが少しだけスッキリした。

スライサーのことを忘れたわけじゃない……でも今のこの生活を捨てる気もしない……

 

「緑谷……ありがとう。おかげで体育祭、やる気出た……俺も1位目指すから覚悟しろよ」

 

「うん、僕も負けない」

 

不思議と、俺たちは握手をした。

 

そして、ここから特訓で2週間が過ぎ……いよいよ体育祭が始まる。

 

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