生徒会戦線異常なし。〜初恋相手が「資本」と共に帰ってきた。俺の平穏は、攻撃ヘリと共に爆散した〜   作:全自動髭剃り

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 南国といえばビキニ、ビキニといえばバレー!


女の子たちのビキニと常夏

 そして、6時間近いフライトの末。

 俺たちは今、南国の島にたどり着いていた。

 

 乗ってきた夜白(やしろ)先輩のプライベート機の座席に置いてあった地図を見ている限りの情報だが。

 ここはフィジー諸島。

 俺たちが着陸した島は、トトヤ島。

 椰子(ヤシ)の木が海風で(なび)く常夏だ。

 

 もちろんだが、スマホ電波は届かない。

 

「ふむ、久々じゃな」

 

 傷心のままジェット機に乗り込み、そのまま爆睡をかまして大復活を遂げた夜白先輩は、あくびをしながら背伸びをしている。

 

「おおおおおお!! 夜白先輩、水着似合ってますね!」

 

 思わず歓声が声から出てきた。

 降りる前に機内で着替えたのか、真紅のビキニ姿で、流れるような体のラインが蠱惑的だ。

 もちろん前半の歓声は、南国の島を見たことへの感動であって、夜白先輩の危険な肉体ラインに食い込むビキニや、開放的すぎる肌面積に対する驚嘆ではない。ああ、なんといい景色だ……!

 

「数年ぶりと言ったところだが、悪くない景色だな」

 

 流石に空気を読んだのか、それとも暑かったからなのか会長も水着姿だ。

 海パン一丁姿の方が似合いそうなものだが、上半身もしっかり着込んでいる、競泳水着だ。

 

「南半球にきたのは初めての体験です」

 

 と、セーラー服姿のままの澄玲(すみれ)

 相変わらず表情筋は死んでいるが、……太陽に照らされてきらめく金糸のような髪は、去年の澄玲を思い出させるような雰囲気だ。

 思わず見惚れてしまいそうで……。

 そんな気分を紛らわせるように、メイドの夏美さんからもらったマンゴーサイダーをストローで吸い上げる。日本じゃガーターベルトメイドも様になってたけど、流石に暑くないのかなぁ……。

 

「ん? 澄玲、おぬし水着は持ってきてないのか?」

「はい。拠点には準備しておりますが、いわゆる"水泳用"ではなく、"行為用"のものしかありません」

「プフォ――ッ!」

 

 マンゴーサイダーが鼻に入った!

 ふざけんな!

 

「行為用? なんじゃそれは。持ってきてないのであれば、ついてくるのじゃ」

「はあ」

「全く、わざわざ用意してやったというのに着てこなかった奴がおるからのう」

 

 そう愚痴りながらジェット機の方へと去っていく二人。

 ……女性用水着をもう一着用意してたのか。もしかして夏美さんの分かな? あの人って勝手なイメージだけど、あり得ねえほどに布面積が少ない真っ黒なビキニ着てそうな……。これはもしかして期待していいのか……!?

 ――殺気ッ!?

 などと考えながら、二人の後ろ姿を呆然と見ていると、

 

「ふむ、貴公も青少年だ。ゆえにとやかく言いすぎる気はないが、あまり夜白の尻を見すぎるなよ?」

「見てねえよ! ……いや、若干は見てたけど、見えるものは仕方ないでしょ!」

「はは、全く羨ましい限りだ」

 

 なんて若干ズレた感想の楓会長。別にあんたも青少年なんだから、この光景を一緒に楽しめばいいものを。

 これまでの付き合いでもこういうことはそれなりにあったのだが、あのキザな外見と反して、楓先輩にはすけべ根性というものが見えない。健康な日本男児ならば、夜白先輩のパンチラの一つでも期待して生きていくものというのに。

 ただ、さすがはキザったい雰囲気を年中纏っているだけあって、常夏の島には似合う男だ。

 大かけらの氷が入ったメロンソーダを飲みながら、俺に話しかけてきた。

 

「しかし、珍しいこともあるものだな。あの夜白がこれほどにまで楠くんに心を許すとは」

「確かに……。まあ、6時間も一緒の飛行機で揺らされてたら、多少の蟠りは解けるもんじゃないですかね」

「ふむ。それはそうかも知れんが」

 

 と言いながら、パラソルの方へと歩き出す。

 その隣には特設のビーチバレーコートもあった。

 

 ……なんだかんだ急にこんなところまで飛ばされたのは予想外だったけど、女の子同士のビーチバレーが見られるのなら役得だと考えて納得するしかないだろう。

 たった一日で判明している澄玲の怪力ぶりから考えても、夜白先輩とはいい勝負をするだろう。

 俺と楓会長は離れたところでビーチチェアにでも寝転がりながら観戦しつつ、冷たい炭酸を喉に流し込んでいればいい。

 

 いや、そう考えると案外悪くないかも?

 赤備えビキニ姿の夜白先輩だけでも十分目の保養だ。子供体型だと言いながら、そこにはしっかりとしたメリハリのある女性らしい凹凸もあるわけで、スラリとのびた両手足は、ただ華奢なわけじゃなくて、あの暴力性を秘匿できるくらいにはしっかりと肉つきも良くて……。

 

春原(すのはら)書記? 涎が垂れているぞ?」

 

 それに、澄玲の水着姿も楽しみだ。なんてたって、中身は違えどもガワはあの澄玲だ。出るところはしっかり出ていて、引き締まっているところは引き締まっている理想のモデル体型。去年の夏、基本的にワンピースやらシャツにホットパンツと体のラインが否応に強調される軽装だった澄玲。そして今年……というか昨日遭遇したとてつもない量のボディタッチを含めて接触をしてしまった俺ならば断言できる。

 澄玲は、"澄玲"だったのだ……!

 

 そんな彼女たちが全身を駆使してビーチバレーショーをしてくれるのだ。

 これは期待せずにはいられない……!

 

「どうやら朕の言葉は聞こえていないようだが、妄想もほどほどにな?」

 

 ニヤケが止まらない口角をどうにかして抑えながら、ベンチに腰掛けていく。

 パラソルで直射日光が遮られた青空がどこまでも広い。

 つーんと冷たい潮風も心地よく、あっという間で眠気が襲ってきた……。

 ふぅ、と心を落ち着けながら隣にいる楓会長に話しかける。

 

「会長はどっちが勝つと思います?」

「む? ビーチボールのことか。どちらの勝敗だろうとも、大きな問題ではなかろう」

「……いや、一応会長が提案したイベントですよね」

 

 のっけらかんとした態度の会長につっこんだはいいのだが。

 俺としては夜白先輩に全力の応援をするつもりではいる。

 ただまあ、それとも澄玲の生徒会入りを拒否したところで、あの澄玲が簡単に諦めないだろうことも目に見えてはいる。

 

「まあ、美少女たちの水着姿が見られたってだけ、満足しろって言われても仕方ないんですけどね」

「……、そうか」

 

 楓会長もパラソルの影が心地いいのか、ゆったりと息を溜めながら答えてくれた。

 

「それは、……何だか勿体無いことをしたかも知れないな」

「? 勿体無い?」

「いや、何でもないさ。気にしないでくれたまえ」

 

 何やら含みのある口調の楓会長。

 珍しい態度に訝しみながら隣を見ると。

 

 ――いつもは髪留めでまとめていた金色の髪を下ろしていた会長がいて。

 その寂しそうな横顔が、一夏の始まりには似合わなさすぎて。

 

「楓会長!」

 

 だから俺は。

 何も考えてなさそうでも、ちゃんと会長として部活のみんなの声を聞こうとしたり。聞き流してる雰囲気でも、俺の口に付き合った上で聞き届けてくれる会長に。

 らしくもなくテンション高く呼びかけた。

 

「サプライズ、ありがとうございます! 俺、この生徒会に入って良かったと思います!」

「……。そうか、それならば貴公を誘った甲斐があるというものだな」

「はい! だから、思いっきり楽しみましょう! 今日だけは、何もかもを忘れて、羽瀬川楓として!」

 

 反射する海波を背景に。

 俺は、ニヤリと笑って見せた。

 

 久々に見えた会長の驚いたような、困ったような顔に。

 俺は勝ち誇った気分になった。

 

 そして瞼を閉じても感じる太陽の眩しさを腕で隠しながら。

 先ほどから続く抗いがたい眠気に身を任せた。

 

 

  †

 

 

「のう、楠澄玲」

「はい、何でしょうか」

 

 ジェット機内にある部屋。

 夜白や楓が頻繁に使うために、半ば二人のための日用品倉庫となっている場所だ。

 その中から、適当に棚やら引き出しやらを開けていく。

 

「面倒ゆえに、単刀直入に尋ねる」

「はあ」

「おぬし、太一を籠絡して、どうするつもりじゃ?」

 

 ただ、どうも目当てのものは見当たらない。

 ……楓のやつ、何を思ってか奥の方に隠したな。

 そう思いながら、服やら下着やらを積み上げ続ける。

 

「……予定では、太一さんと十分と認められる親交が結ぶことが目標です」

「あっけからんと言ってくれるのう……。多少は渋られると思っておったがな」

「この任務には情報制限がかけられていません」

 

 お、と目標物を探し当てたらしい夜白は声を上げた。

 澄玲(すみれ)に対して特に警戒もしていないのか、無防備で裸の背中を見せている。

 

「制限すらかけられていない任務に駆り出されておるのか」

「はい。私自身の機密閲覧権(Допуск)は、最低等級(Форма №5)なので」

「じゃあおぬし、自分が何のために動いてるかも知らんのか?」

「……、それは……。それは任務遂行に必要ない情報、です」

「はぁ……。どうやら、おぬしも悪意を持っているわけではないということか」

 

 振り返りながら、手に持った水着を広げて見せる夜白。

 

「よぉし! おぬしが太一と親しくなりたいのならば、これは欠かせまい!」

「水着、ですか? ですが、ビーチバレーに必要な装備とは思えません」

「わかっておらんのう。これは、太一攻略のための装備、じゃ! 男というものは、意中の女子(おなご)の水着姿には否応無しに心惹かれるものじゃ!」

 

 水着を投げつけ、腰に手をやりながらカラカラと笑って見せる夜白。

 

「意中の、……確かにデータベースにはそのような情報はありますが」

「そうじゃろ? それに楓の水着じゃが、おぬしでも問題なく着れるじゃろ。全く、贅沢な乳をしやがって」

「……サイズは問題ないかと思われます」

「ああ、イライラしてきたぞ」

 

 先ほどの笑顔はどこやら、ぷんすかしながら、部屋から出ていく夜白の背中を。

 呆然と見る澄玲だった。

 

 

 ♤

 

 

「おーい……」

 

 ……ん? 何だよ、うるさいなぁ……。

 

「おーい、起きたまえ」

 

 あー、はいはい……。

 楓会長の声に、目をこすりながら上半身を起こしていく。

 視界が掠れて前がまともに見えないけど、……えーとどこだっけここ?

 

「何じゃ、澄玲が水着に着替えてくるというのに、おぬしは爆睡しておったのか?」

 

 声のする方に振り向くと。

 赤備えのビキニ姿の夜白先輩がやれやれとばかりにこちらを見ていた。

 確か、俺……ビーチバレーのために南国の島に……。

 澄玲のことを待ってるうちに、眠ってしまってて……。

 

 徐々に意識がはっきりしてきて。

 色々と頭の中の整理がついていく中……。

 

「おはようございます」

「おは――うおっ!?」

 

 声のする前方へと振り向き直すと、そこには俺のいるビーチベンチに跨っている水着美少女が……!

 思わずのけぞってしまう。

 

「ち、近いって……!」

「誓い? 確かに愛の誓いであれば、十分軽装である今が最も効率的で」

「違う、そっちじゃねえよ! 近えって! ちょっと離れろ……!」

 

 この距離感は精神衛生に悪い……! こちとら思春期妄想はプロ級でも、実践経験はねえってんだ……!

 服越しでのスキンシップとは訳が違う、今の俺と澄玲はほとんど裸に近い状態で……ッ。

 その体温がうぶ毛越しに伝わってくるような距離にいる澄玲を押し退ける。

 

「あのな! お前今は水着なんだから……!」

「あっ……」

 

 変な場所を触らないようにして、肩をできるだけ少ない面積で押しながら。

 その湿った呼吸すら鼻腔に入ってくるような距離。

 

「……やはりこの水着では、ダメだったのでしょうか」

「ああ、そうだよ!」

「そうですか……。やはり予定と違っていては……」

 

 なんて言いながら、素直に引き下がる澄玲。

 あれ……? 今回は聞き分けがいいぞ……?

 この殊勝さはありがたいのだが……。

 

「しばらくお待ちください、今すぐ元の装備に変更してきます」

「え? 元の装備……?」

御喜家森(みやもり)学園の制服です」

 

 言いながら、その表情にどこか影を落としている澄玲。

 ……いやいや、わざわざ着替えたのにセーラー服に戻すのかよ!

 その背中に急いで声をかける。

 

「ちょっと待てって! わざわざ着替えたんだろ? そのままでいいじゃねえかよ!」

「……先ほどの反応から、この服装はあなたの好みではないと判断しました」

「いや、誰がそんなこと言ったし! そうじゃなくて、あんまその格好で男に近づきすぎるなってことだよ!」

「ですが、……。私たちの関係性は十分に発展していなかったと判断します。ゆえに、あなたが私の水着姿に何も感じないのは仕方ありません」

「……あのなぁ。関係性とか置いておいてだな、お前みたいな可愛い女の子の水着姿に何も感じない男は存在しねえよ」

 

 ため息をつきながら、腕を組んで澄玲の方を見てみる。

 ……いきなりのことで頭が追いついていなかったが、白百合の柄の水着を着ていた。

 スラリと温かい色合いの水着ショーツから伸びる夏の雰囲気が似合う元気な太ももを見ながら思う。流石はプロポーション抜群な美少女、水着のブラから見える健康な双丘は視線を無理やり奪ってくるような魔法を持っていて……。

 けど、何よりも、その若干の困惑を含んだ表情で初めての夏を体験している女の子のウブさを、白百合が包みあげている雰囲気が……。

 

「おい! おぬしら、何をしておる! さっさとビーチバレーを始めるぞ!」

 

 そんな妄想している俺を知ってかしらずか。

 もう待てないとばかりに、ビーチでストレッチしていた夜白先輩が呼びかけてきた。

 

「あ、はい!」

 

 言いながら立ち上がる。わざわざ今じっくり楽しむこともあるまい。これから、二人のあはんでむふふなバトルが始まるんだから。

 あ、もちろん楽しむのは試合の行方ね? それ以外何があるってんだ。

 

「……?」

 

 振り返ると。

 なぜかいまだに微妙な表情のままの澄玲が、どうすればいいのかわからないように立ち尽くしていた。

 

「ほら、行くぞ! 夜白先輩に勝って生徒会に入りたいんだろ!」

 

 呼び寄せながら、忘れていた一言をかけることにした。

 

「その水着、似合ってるぞ」

「え? ……」

 

 去年の夏は、ワンピースの裾を風に押さえて笑っていた。

 今は、白百合の水着を指でぎゅっと摘んで、うつむいている。

 

 動かない彼女の手をとって。

 俺たちは足底から感じる熱い砂浜へと、一歩を踏み出した。

 




 機密閲覧権(Допуск)最低等級(Форма №5)らしいですが、高いと何か都合が悪いんですかね?
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