生徒会戦線異常なし。〜初恋相手が「資本」と共に帰ってきた。俺の平穏は、攻撃ヘリと共に爆散した〜   作:全自動髭剃り

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 あ、言い忘れていたのですが、♤と†は違いますよ!


死闘、南国のビーチバレー

「チーム分けじゃ!」

「くじ引きで決めようではないか」

 

 という楓会長の提案で、気づけば俺たちは南国の島の特設コートに立っていた。

 ……俺たち、だ。夜白(やしろ)先輩と澄玲(すみれ)だけじゃなく、野郎2人含めた4人。

 

「む? わしは赤チームじゃな」

「赤チームであることを確認しました」

「朕は白か。よろしく頼むぞ、春原(すのはら)書記」

 

 ちょっと待て。

 聞いてねえぞ、おい。

 眉間に皺を寄せながら、楓会長に詰め寄る。

 

「なんで、2対2になってんすか……!」

「? なんじゃ、おぬしわしと楓を除け者にしようとしておったのか?」

「違いますよ! これって澄玲を生徒会に入れるかどうかの勝負ですよね!? だったら、夜白先輩と澄玲が戦うんじゃないんですか!?」

 

 と、俺の渾身のツッコミだったが。

 何言ってんだこいつとばかりの顔で見る夜白先輩と楓会長。

 あれ? 俺なんかおかしいこと言ってる?

 

「百歩譲って、俺VS澄玲ならまだ納得しますよ。だって俺も澄玲阻止派なので。でも、なんで夜白先輩と澄玲が組むんですか!?」

「なんじゃおぬし、そんなにわしと一緒のチームになりたかったのか?」

「そうじゃねえよ! これ、どっちが勝ったら澄玲の生徒会編入阻止になるんですか!」

「む? そういえばそんな話もあったのう」

 

 忘れてやがる……!

 楓会長にしろ、夜白先輩にしろ、ここまできた理由忘れてねえか。

 

「ならば、それはおぬしが勝手に決めておくがいい。いずれにせよ、わしは負ける気はないぞ?」

「どっから湧いてくるんだよ、そのやる気!」

 

 やたらと長い犬歯をキラリと光らせてくる夜白先輩。

 ……てか、これ勝ち目なくね?

 夜白先輩言わずもがな、あのぺったんこにはおそらく核融合炉が内蔵されてんじゃねえかってくらいにはパワー型だし。澄玲も澄玲で、ステゴロで藤原組を壊滅させたやべえやつで。

 楓会長の戦力が未知数なだけに、断言はできないが。

 

「覚悟してください。生徒会に入るためなら、いかなる手段も捨てません」

「足を引っ張るでないぞ、新入り!」

「任せてください。ビーチバレーは初めてですが、遅れはとりません」

 

 なぜか知らないが、阿吽の呼吸の二人。いつの間にそんな関係性になってるんだ、お前ら……! 

 カーボンファイバーの特製バレボールを握る真っ赤なビキニ姿の夜白先輩。

 そして、その隣には夜白先輩から借りた花柄の水着を身につけた澄玲。

 

「……くそ、やるしかねえのか!」

「なんだ、春原書記? 流石に目のやり場に困るといったところか?」

「ちげーよ!」

 

 性急にもすでにボールを投げ上げている夜白先輩。

 あ、脇が見えた。

 

「――ゆくぞ! 何がぺったんこじゃ、死に晒せェェエエエ!」

 

 だが、一瞬緩んでいた俺の意識は、生命の危機によって強制的に覚醒させられた。

 衝撃波を纏ったバレーボールが、砂場を抉えぐっていったからだ。

 

「こ、殺す気か……!」

 

 声が溢れてしまった。

 ……いや、そもそもこのロリっ娘も掛け声……。

 

「流石の球威だ、夜白」

「何冷静に分析してんすか、会長! 夜白先輩、リミッター外してますよ!」

「勝負とはそうでなければ楽しくないだろう? さあ、次はしっかり頼むぞ、春原書記!」

 

 などと言いながら、ボールを拾い上げて向こうに投げ返す楓会長。

 ……あの、ボールから煙が出てません?

 

「いやいや! レシーブで腕折れますって! 夜白先輩、なんでか知らないけど笑顔でブチギレてるし!」

「ふむ。それは自業自得というものではないのかい、春原書記。女の子とはそういったことに敏感なものだぞ」

 

 敏感……? まさか、ぺったんこって思ったことなのか!?

 いやいや、思ってただけで口には出してねえぞ! てか、夜白先輩も自覚あるだろ! もし僅かにでも胸があったらそんな布面積のビキニじゃ胸が余裕で溢れて……。

 

「……春原書記。どうやらおぬし、本当に死に晒したいようじゃな」

「夜白先輩!?」

「――ゆくぞ」

 

 空には赤備えの鬼がいた。

 

 

 ♤

 

 

「――ッ!?」

 

 紫電一閃。

 見えたのは線――、だが!

 

「ふん――ッ!」

 

 舐めないでもらいたいな!

 最小限の、腕の動きで。

 衝撃波とともに迫り来る、ボールを受け上げる……!

 

 ドン――ッ!!

 

 まるで腕の関節が逆向きに折られるような衝撃だが。

 

「会長!」

「ああ、任せたまえ!」

 

 跳躍して、ボールに狙いを定める会長。

 太陽と重なった瞬間。

 

 強烈なスパイクが相手コートに突き刺さった。

 拳を振るい上げる!

 

「よしっ! さすがです、会長!」

「そう簡単に遅れをとるつもりはないさ!」

「やってくれたのう、楓ェ!」

「想定外の戦力です。上方修正ののち、戦略を再構築します」

 

 夜白先輩や澄玲達も感嘆の声を上げている。

 ボールを拾い上げながら、構えを取り始める澄玲。

 来たる一撃に集中力を上げていると、

 

「知っておるか、澄玲。男というものは、意中の女子を相手にするとドキドキするものじゃ」

「はい。予定にもありますので知っています」

「ならば、逆にこう考えられるじゃろう。ドキドキすれば、意中の女になれると……!」

 

 などと、悪戯顔の夜白先輩。

 何を企んでるのやら……。

 

「はっ!? 盲点でした!」

 

 と、呼応する澄玲。盲点というか、そんな事実存在しねえけどな。

 

「ゆえにのう、おぬしが狙いを定めるべき点は――」

「――心臓、ですね」

「おい、お前ら何を考えて……!」

 

 振り上げられたボール。

 

「安心してください、応急措置の講習は受けています」

 

 超絶な打撃音と共に。

 

「――ッ!!」

 

 ギリギリで体勢を変え、急所を避ける!

 同時に上腕でボールを弾く。本来なら腕に当てないと安定して弾き上げられないのだが、もはやそんな常識の通じるレベルの球速ではない。

 

「ふん――ッ!」

 

 打ち上げられたボールに対して、大跳躍でスパイクを叩き込む会長。

 ドン! という夜白先輩顔負けレベルのスパイクは容赦なく澄玲の方に向かい。

 

「はっ!」

 

 そのボールを安易(やすやす)と対応させて見せたのだ。

 

「よくやった、楠! あとはわしに任せておけ!」

 

 赤備のビキニの姿が太陽と重なり。

 とてつもない滞空時間を誇る一撃がくる。

 身構える――!

 

「穿つは心臓、狙いは必中じゃ……」

「夜白、あの技を解放する気だな……!」

 

 何か詠唱し出した夜白先輩に対して、警告を出す会長。

 

「因果逆転の呪い、故に避ければ心臓を貫くだろう。あの一撃は正面から受け止めるしかないぞ!」

「どんなやべえ技を使おうとしやがるんだ、あのちびっこ……!」

 

 天が割れ、地が裂ける。

 青空を真紅に染め上げながら、夜白先輩は叫んだ。

 

「誰がちびっこじゃ! 刺し穿つ死棘の鞠(ゲイボール)!!」

「うおおおお――ッッッ!!!」

 

 衝突は続く。

 

 

 ♤

 

 

 度重なる拮抗ののち、ビーチバレーの勝者は無事夜白澄玲組の勝利に終わった。

 当然の結果だ。まさに満身創痍というレベルの負傷兵となった俺は、今パラソルで休んでいる。

 まだまだその身にエネルギーが溢れているのか、夜白先輩と澄玲は3度目のビーチバレータイマンに突入していて。たまにドキュメンタリーで見るベトナム戦争で起きたとかいうソ連軍の無停止砲撃とアメリカ軍の絨毯爆撃みたいな様相と化している。

 クレーターができてるんだぞ、ビーチバレーで……。

 

「……よく生き残ったよな、俺」

 

 ちなみに隣に楓会長の姿はない。

 あの激闘を繰り広げたというのに、ピンピンな姿でペンションの方に行ってしまっていた。

 

「やるではないか、澄玲ェ! 簡単にはくたばるなや、ゴラァ!」

「受けて立ちます! あらゆる障害は、闘争と火力によって……!」

 

 すっかり意気投合したのか、超次元ビーチボールを続けている夜白先輩と澄玲。

 ……なんだかんだ気が合いそうな二人ではある。片方は暴力と威嚇で成り上がった組長で、もう片方は金と贈賄で成り上がっている女子校生。最悪なコンビだが、付き合っていて退屈はしない。

 ただまあ、俺にまで厄介ごとを持ってくるのは勘弁したいものだが。

 

「ふははは! 楽しいか、澄玲! わしは楽しいぞ!」

「……一応、肯定と返答します。おそらくこれが、楽しいという感情だと推定します!」

「忘れるでないぞ!」

 

 澄玲の四六時中俺に付き纏っているような姿よりも、今の姿の方が俺としては嬉しいものだ。

 ただ……。

 

 

 †

 

 

 その姿は、俺の知っている"澄玲"とはどんどん遠ざかっていく。

 いや、そもそも最初から別人だと思うほどだったけど、俺や夜白先輩たちとの関わりでどんどんと……"人間らしく"なっていく彼女の姿は。

 俺の知っている"澄玲"とは違うんだなと実感してしまうばかりで。

 

「ふははは! わしの1点じゃ!」

「負けません! はっ!」

「なぬ!?」

 

 ここで楽しくビーチバレーをしている澄玲の所作も性格も。

 あの"澄玲"にはないものばかりなのだ。

 それがいいことなのか、悪いことなのかはわからない。

 

 

 ♤

 

 

 だが、もうそろそろいい時間だろう。

 夕日もそろそろ沈みかけているし、うっすらと月も見えている。

 

 いい感じの区切りで、声をかけることにした。

 

「おーい! 夜白先輩に澄玲、もう帰ろうぜ!」

「む? もうそんな時間か。少々興が乗り過ぎてしまっていたようじゃな。今日はこれまでじゃ、楠報道官」

「了解しました、夜白副会長」

「……、楠報道官?」

 

 ボールを片手に抱えながら、夜白先輩が言った言葉を反芻する。

 ……まさか。まさかだよな。

 いや、確かに俺がビーチバレーに負けたのは、認める。だけど、澄玲が生徒会に入ること、……それ以上にすでに役職まで決まっていることは話が違うぞ。

 

「? なんじゃ?」

「なんじゃ、じゃないですよ! 報道官ってなんすか!?」

「新入りの役職じゃが、何か問題があったか? 全校生徒の前で立とうとも物怖じしない楠にはぴったりな役職じゃろ?」

「……、それはそうかもしれないんですが……」

 

 それでも食い下がる理由を探そうとしていた俺に対して。

 諭すかのような口調で夜白先輩が話しかけた。

 

「おぬしも許してやってもいいじゃろ。ごねたところで、素直に楠報道官が引き下がると思うか?」

「……」

 

 ……その通りである。

 ここでの抵抗は、長期的な解決にはつながらない。

 そんなのは俺が一番知っている。

 

「では、わしらはひと足先に風呂に向かうぞ。おぬしは楓を呼んでおいてくれ」

 

 去っていく赤ビキニと花柄の尻を見ながら。

 パラソルの後片付けをし始めた。

 

 

 †

 

 

「くッ! 何故ここが……」

「太平洋戦争の最後の戦場、この島が破棄されてから80年以上過ぎた。正直に言って、戦間期にしかその価値を発揮しない小さな島だ」

 

 手に握られた、刃渡り1メートルを越す刀。

 月光が差し込む熱帯林、南国の鳥の囀りはなく。地面を這う虫のケタケタとした音だけが耳にこびりつく。

 

「貴公らがここで何をしているのか」

 

 振り返ると、そこには奥に続く洞窟。

 すでに崩落を防ぐための鉄筋がいくつも張り巡らされており、ところどころにコンクリートによる補強もされている。

 錆び始めている表面から漂う赤錆の匂いが鼻腔の奥にまで刺してくる。

 

「それをどのように尋ねようとも、貴公らは決して口を割らないのだろうな」

「……我々のことに随分と詳しいようだな」

「ああ。こう見えても慎重に生きてきたつもりではある」

 

 水捌けの悪い赤土を踏みしめながら。

 一切の警戒を外さずに進み続ける。

 

「ソビエト連邦軍|国家超能力理論研究所《Институт теории сверхспофсобностей》 通称ITS。我々にも声がかけられたことがあったな」

「ほう、ならば君も我が同志(товарищ)というわけか?」

「ふむ、貴公らと体質と似ているというのであれば、それはその通りだが。ただ、貴公らの思想は一切受け入れられないという意味では、同志ではあり得ない」

「……|これだから極東の猿は《Вот уж эти дальневосточные обезьяны》」

 

 ロシア語で吐き捨てる男。

 剃り上げられている額には特徴的なイニシャル、E(イプシロン)が刻み込まれている。

 

「……ふむ。しかし流石の資金力といったところか。誰一人に察知されず、こんな場所にこれだけの規模の基地を作り上げるとはね」

「……」

「そして、貴公らの処置を考えると、頭が痛くなってくるよ」

 

 そして再び、刀を構え直す金髪の男。

 羽瀬川楓、生徒会会長としての顔はすでにない。

 

「私を殺すのかね?」

「……君の持つ肉体の一つ、という意味ではそうだろうね」

「……お前たちにこんなトリックは意味がなかったということか」

 

 諦めるようにして肩をすくめる男。

 最低限の抵抗はすでにしている。地面に転がる無惨に斬り離されたサプレッサー付きのピストルがその証。

 代わりなどいくらでもいる。それは双方にとって共通した認識である。

 

「貴公が"澄玲"のような存在であれば、と思うことが多々あるよ」

「ふん、それで剣筋が鈍るような人間でもあるまい」

「……そうだな」

 

 もしそのような必要に迫られたのであれば。

 想定する。

 自分は――一体どうするのか。

 

 そしてその思考には一瞬、見慣れた後輩の影が現れる。

 すぐに首を振って掻き消す。……この一瞬、彼の顔を思い出すのは精神上悪影響である。

 顔を上げ、目の前の肉塊人形を消す。

 決心して――。

 

「ッ!? 体が――!?」

 

 その一瞬に過ぎないはずの思索が。

 致命的すぎた。

 体が一切動かず、込めた力が霧散する。

 カタカタと軍靴を鳴らす男。

 

「油断とは、らしくないな」

「……俺に何をした」

「それは、我が同志たる君が一番知っているのでは?」

「……、暗示か。流石の強度だ」

「君に認められるとは光栄なものだ」

 

 言いながら、壊れたピストルを拾い上げる。

 数度スライドを動かし、シリンダーを確認する。撃鉄を上げて、トリガーを引いてみるが。

 カチッと音はするものの、弾丸は飛び出さない。

 

「形勢逆転、というわけだ。さっさと斬り捨てればよかったものを」

「……いや、それはどうかな? 貴公の拳銃は使い物にならない。貴公の力では、この肉体に傷をつけることも難しいだろう?」

「確かにその通りかもしれないな。君の持つ野蛮な体質だったか」

 

 男はそう言いながら、ゆっくりと歩み進む。

 対して楓は何もできないもどかしさを我慢しながら、何か事態を解決できる方法がないかと高速で思考を巡らせていた。

 だが何も答えは出ない……。

 ついには目の前まで迫ってきた男は、楓の手に握られていた銀に煌めく刀に手をかける。

 

「何のつもりだ」

「ふふ、なに、この刀さえあれば、君一人くらいならなんとでもなると思ってね」

「諦めた方がいい。素人に扱えるものではない。力任せに振るったところで、刃が折れるだけだ」

「だろうね。だけど――」

 

 と静かな声で囁きながら。

 男は一切の容赦なく。

 刀の鋒を楓の腹に突き立てる――!

 

「ぐっ!!」

「やりようはいくらでもあるのだ」

 

 苦痛のあまり声が出てしまう。

 傷が浅いおかげか、臓器には問題がなさそうだが。

 それでも額には脂汗が出始める。

 

「ふむ、君の言った通り、素人が扱うと、刺し貫くことすら難しいようだね」

「……ああ。だから諦めることだな」

「いいや。何も硬いところを狙わなければいいだけの話」

 

 不吉そうな笑みを浮かべながら。

 男は血に染まった刀を握り直す。

 

「――眼球なら、私にも」

 

 そしてその銀色に煌めく鋒は。

 真っ直ぐに視界のど真ん中に。

 脊髄反射で瞼が閉じられ。

 

 心拍数は一瞬にして極限にまで上昇し。

 脊髄は急速に冷えていく。

 そして、来たる痛みに奥歯を握りしめ……!

 

 ――――ッッッッッ!!!!

 

 

 

 

 

 だが。

 いつまで経っても痛みはやって来ず。

 

「誰だ、貴様……!」

 

 鼓動でうるさい聴覚には、男の驚愕した声と。

 開けられてようやく開けた視界には、飛び散る鮮血。

 

 楓の前には少年が立っていて。

 

「何、してんすか……!」

 

 切り裂かれた掌から止まらぬ流血をしながらも。

 冷たい刀身を歪めるほどの力で握り込む、後輩の姿があった。

 

「――楓会長!」

 

 鋭利な刃が肉に食い込み、骨を削るような嫌な音が響く。

 普通なら悲鳴を上げて指を離すはずだ。

 だが、少年は眉をしかめるだけで、その万力のような握力を緩めようとはしなかった。

 

「――ッ!」

 

 一瞬にして自由になった身体。

 太一との攻防ゆえに、かの男の術は解けたのだろう。

 全身を硬直させるほどの暗示を一瞬で使役したことも驚くべきものだが、その維持をするだけの集中力は途切れたのだ。

 

 これ以上後輩に迷惑をかけるわけにはいかない。

 一瞬にして太一の前へと躍り出ると。

 

「なんだと――ッ!?」

 

 有無を言わさず、蹴りを叩き込む。

 そして崩れたその体に向けて――

 

「はァアアッ!!」

 

 容赦無く拳を振り落とす――!

 気絶、……いやもはや絶命を狙ってもおかしくない一撃だ。

 

「なっ!? 会長、何を――!?」

 

 だが同時に。

 振り返りざまに後輩の腹に向けて拳を叩き込む。

 

 もちろん、先ほどの制圧と目的を同じとしたものではない。

 悪夢のような現実から逃避させるため。

 

「ぐふッ!?」

 

 優しい眠りに誘うための。

 だが一撃のみでは不足だったのか。

 念の為のもう一撃で。

 

「……」

 

 その意識を刈り取った。




 太平洋戦争の最後の戦場……? この世界の歴史は随分とおかしいようです
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