生徒会戦線異常なし。〜初恋相手が「資本」と共に帰ってきた。俺の平穏は、攻撃ヘリと共に爆散した〜   作:全自動髭剃り

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生徒会事変

 ペンションで仲良く寝泊まりして、朝を海鳥の鳴き声で目を覚ました。

 ちなみに俺は一人部屋になっていた。

 予定では楓会長と二人部屋で、ベッドも二つ置いてあったのだけど、

 

「夜白ぉ! これは流石に無理だ……。ち、朕を助けてくれ……!」

 

 などという意味のわからない会長の懇願により、無事この広々とした部屋を独占できるようになったわけだ。

 まあ、野郎二人で寝たいってわけでもないから、俺としては何も問題はないのだけど。

 

「おはようごぜえます、太一さん! お嬢たちが広間で待っておられます!」

 

 というお手伝いさんの工藤さんの呼びかけもあって、広間の方に顔を出すと。

 すでに俺を除いた3人がテーブルを囲っていた。

 

「おはようございます〜」

「おはよう、じゃ」

「おはようございます」

「いい天気だな、春原書記」

 

 挨拶を適当に済ませながら、テーブルにつく。

 数枚のトーストとバナナ、あとは牛乳が置いてある。ストローを刺すタイプのやつが3つ、そして1Lパックが一つ。

 えーと、おそらくこれは……。

 

「なんじゃ? 何か文句があるのか?」

「い、いえ……」

 

 うん、カルシウムは成長に役に立つ元素だしな。どことは言わないが。

 と、戦々恐々としながら、俺も朝食に加わり始めていると。

 

「諸君。実は学園から報告があるのだ」

 

 昨日の態度は何処へやら、けろっとした会長が話題を切り出した。

 

「我が生徒会に対するクーデターが実行されたと」

「クーデター? なんすかそれ?」

「新・生徒会と名乗る集団に、生徒会室が占拠された」

「は?」

 

 なんだそれ?

 いきなりすぎる割には、意味のわからなさすぎる報告だった。

 ……ここって紛争の最前線でも、再熱した冷戦の戦場でもねえはずなんだが。

 

「昨日深夜に守備室から鍵を強奪し、送電線を切断。セキュリティがダウンしたタイミングで生徒会室を占拠し、統合制御機(メインフレーム)をハッキング。現状休日に出席している生徒にプロパガンダを配布しているとのことだ」

「用意周到っすね……。プロの犯行というかなんというか」

「学園に組のものを置くわけにもいかないからのう。ある程度突破されるのは仕方あるまい」

 

 若干の常識人アピールを欠かさない夜白先輩。

 藤原組組長の噂話なんて学校中が知っていそうなレベルだってのに、よくもまあ喧嘩を売ろうと考える奴らが現れるものだ。

 そういう意味ではあっぱれというべきか。

 

「ちなみにその話ってどういう経路で知ったんですか?」

「生徒会顧問の千恵(ちえ)先生から夜白の家に連絡があってね」

「ああー」

 

 川上千恵。我らが生徒会の顧問をしている、若い先生だ。飄々としてて、気づいたら失踪していて、って感じの人。

 果たして放任主義なのか、それとも関心がないのか、生徒会には最低限しか顔を出さないのだ。の割には、よくわからないときに急に出しゃばったりするし。

 けど、流石に生徒会が乗っ取られてるとなったら連絡はしてくれるのか。

 そう思っていると、楓会長はスマホを取り出した。

 

『これは我ら新・生徒会の声明である。我々の力はもう十分わかったはずだ。この学園の秩序を破壊するのが目的ではない。学園を救いたければ無駄な抵抗はするな。我々は全員死を覚悟している!』

 

 ……なんか数日前に聞いたぞその台詞。

 流行ってるのか……?

 

『お前らは様々な部活動の意見を黙殺したんだ。少なくない部活動が廃部に追い込まれた。そしてお前らは我々を、学園の足手纏いだとしているゥ! だが今、迫害された者の手に、敵に反逆するための強力な意志が与えられた。よく聞け、旧・生徒会よ。学園は明け渡してもらうぞ!』

 

 学園を明け渡すって……。

 そんな戦後時代の城攻めみたいなこと言ってるけど、要するに予算に文句があるってだけなんだろ?

 その処理については昨日楓会長たちとある程度の譲歩案を固めたところだってのに。

 

「それに、こんな音声も添付されていた」

 

 続けるようにして再生を始める会長。

 

『たすけてー。わたしー、ひとじちにされてるのー』

 

 ……なんだこの間延びした声は。

 まあ、おそらく千恵先生だろうけど。

 

『ち、違いますよ! 先生が勝手に入り込んで……!』

『りょうてあししばられてうごけないのー』

『何もしてないでしょうが!』

『はやくたすけにきてー』

 

 ……何してんだ、先生。

 もはやツッコミ入れてる生徒の方に共感を覚えるレベルだったんだけど……。

 

「今のところ手に入った情報は以上だ。我々の現状はどういうものか、わかるかね楠報道官」

「はい」

 

 と、もはや当たり前に生徒会の一員になってしまった澄玲が答え始めた。

 

「反体制勢力の非正規部隊によって生徒会の本営が占拠され、司令官が拿捕されています。無政府状態の学園では不安や恐怖が広まり、まもなく人心荒廃による暴動や略奪が開始されるでしょう」

「そうだ」

「ねえよ」

 

 大きく頷く会長にすかさず訂正を入れる。

 てか今日は日曜日なんだから、学校にあまり人いねえぞ。

 

「彼らのプロパガンダがミームとして学園に定着する前に、我々は行動を起こさねばなるまい。どうだね、夜白?」

「あ? 七面倒な御託は知らぬが、要するに身の程をわきまえぬ奴らにカチコミをかければいいのじゃろ?」

「概ねそうだ。春原書記ももちろん賛成するだろう」

「おい、確認とれよ。俺そんな物騒な提案に死んでも賛成しませんよ」

 

 カチコミってあれだろ? 昨日澄玲がやってたあれ。

 すまんが、俺みてえなパンピーには無理だ。手も痛むし。……どんな魔法使ったのか知らないけど、朝には包帯も外せるくらいには治ってたけど。今は絆創膏で抑えてるだけの手よりも、謎に痛む鳩尾(みぞおち)の方が重症だ。

 

「では楠報道官、現状生徒会室奪還に最も適した作戦はなんだと思うかね?」

「はい。野戦砲による大規模爆撃ののち、機甲戦力による突破を狙い、突破口と共に随伴歩兵による包囲殲滅を狙うのが最も良いかと」

「陸軍じゃねえんだから、俺らにできるわけねえだろ。つーか、相手は学園の生徒だぞ、やりすぎにも程があるわ」

「ですが反逆者には譲歩をしないというのが国際法の常識です」

「まずは校則の基本から頭に入れてくれ……」

 

 やたらと大規模な話をし出した澄玲に頭が痛くなる。

 なんかこう、心情の機微に疎い割には、こういう知識はたっぷり詰まってるのな。

 なんだかよくわからない澄玲の一面を見つけてしまった。

 

「ふむ、ここは残念だが春原書記の言う通り、学園では校則に基づいた行動が必要だ。我々は生徒会ゆえに、火力による制圧をしては正当性を問われる事態になりかねない」

「はあ。面倒ですね」

「だが、この枷こそが我々の想像力を育てるのだ」

 

 言いながら、テーブルに学校の地図を広げる会長。

 運動場側と校舎側が南北で区切られていて、体育館の隣に生徒会室の存在する部室棟がある。

 その部室等に向けて、雑に赤色の矢印が描かれている。

 会長は校門から運動場の方へと指をなぞっていく。

 ……昨日背中を書いてもらった時の記憶がふと蘇る。これがあの華奢な手か……、などと思っていると、

 

「正門からの突入はリスクが高すぎる」

「敵対勢力による地雷埋設やブービートラップの可能性が……」

「ねえよ!」

「だが、待ち伏せをされている可能性は高い。残念ながら朕たちの戦力は少数精鋭、数の暴力には覆されるだろう」

「……」

 

 横目で夜白先輩を覗き見る。

 果たしてこのパワフルなお子様ボディに数の暴力が効くのだろうか。

 ……なんか灼眼が光ったぞ。くわばらくわばら。

 

「裏門についても同じくリスクが高い。ゆえに校舎の壁をよじ登ることも考えたが時間がかかる上に、歩哨に察知されては意味がない」

「なぜよじ登らねばならん。壊してしまえばよかろう」

「その補修費は、生徒会の出費になるのだ。残念ながらその案も難しい」

 

 長い黒髪の後ろで腕を組みながら、話に混じる夜白先輩。

 白色のタンクトップからヘソが丸見えなのだが、気にしている様子はない。

 

「ゆえに、空挺降下による強襲を作戦として採択した」

「は?」

 

 自信満々な会長。ちなみにいつ新調したのかわからないが、制服である。

 てか、空挺降下?

 

「どうやってやるんすか、そんなの」

「ああ、疑問にあがると思っていたので、資料を用意しておいた」

 

 そう言いながら、数枚の写真を取り出す会長。

 えーと、Ми-24と書かれた型番の……ヘリ?

 にしてはなんか色々と刺々しいものがつきまくっているんだが……。

 

「えーと、……え?」

「故あってこちらのヘリコプターを入手してな。せっかくなので実地試験の代わりに運用しようと思っている」

「ソビエト軍主力攻撃ヘリコプター、ミル-24。これならば十分な威圧効果が期待できます」

「は? ミル? 攻撃へり!?!?」

「そうか、昨日のあれか。おぬしも考えたの、楓」

 

 などと同調している夜白先輩。

 いやいや、攻撃ヘリってあれだよな! あの映画でよく見るやつ!

 てか、この突起物、よくよく見たら機関銃だったりミサイルだったりじゃねえか!

 

「こんなの学校に乗りつける気なんですか!? やめた方がいいですよ!」

「別に校則は違反してなかろう?」

「いや、違反とかじゃなくて! 人間には常識っていう名のラインがあるんですよ!」

「ははは、そういえばそうであったな」

 

 と会長は常識を一笑に付しやがった。

 型に囚われるなとかいう言葉があるが、この男にとって型とは踏み躙るものにあるらしい。

 

「では時間も切迫している。ジェット機で帰国後、14:30(ヒトヨンサンマル)に本機に乗り換え、14:40(ヒトヨンヨンマル)に降下作戦を実行する。名付けて"学号作戦"だ」

 

 そして、俺たちは夏の南国を十分に楽しむ間もなく。

 学園へと蜻蛉返りすることとなったのだった。

 

 

 これが、俺が澄玲と再開し、攻撃ヘリで生徒会室奪還に向かうまでの話であった。

 

 

 †

 

 

 楠澄玲の任務達成記録ノート

 

 7月3日土曜日

 

 ✔︎ 生徒会への配属

 ✔︎ 対象の学校における支配権の拡張

 ✗ 対象との身体的接触を増やす(対象からの拒絶反応により、頻度を調整中)

 ✗ 対象の部屋へと夜這いなる行為をする(絶好の機会に恵まれていたが、対象が気絶していたため失敗)

 ✗ 対象の好意を勝ち取る(現状予測親密度:中……程度、と思われる)

 

 備考

 

 藤原組の買収は中止となったが、生徒会の配属が決まったため大きな問題はないとした。

 生徒会での役職は報道官となった。

 予定外の水着を着用し、対象から声をかけられた際、心拍数と体温の上昇を確認。念の為に、記録。

 

 追記

 

 ビーチバレー、楽しかった、……です。




 ハインドとかどこで見つけたんですかね
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