がんば麗羽さん!リターン!?エターナルストーリー   作:髪様

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なんか、ルビが若干おかしくなっていたので、メモ帳で訂正して差し替えしました。
でもなぜか、可笑しなところが変わらないという現象が出ましたが、少しと気をおいてちゃんと表示されるようになったところを確認。


ランを知る

 そして何顒と出会ってから少し時を進ませる。

 

 昨今の国の乱れは著しいものであったが、さらなる混乱が漢の時代を襲う。後の世に言う、黄巾の乱であり、黄巾賊という呼称は三国志演義での呼び名である。

 

「みんなー!今日はてんほー」

「ちーほう」

「れんほうの」

 

 

 黄色の巾?を頭部に装着した集団が南皮付近で大量に目撃された、その噂を聞き袁紹は幾人かの配下を連れ様子を見に来ていた。今はまだ冀州牧である韓馥の治める地であるが、既に袁氏についた田豊の策によりある程度は民の掌握に成功している。

 

 

「「「土天舞台に集まってくれて!」」」

 

「「「本当にありがとっ!」」」

 

「愛してるぜぇー!」

「てんほーちゃんのためなら死ねるぅ!」

「いつもく〜るなれんほうちゃーーんっ!」

 

 集まった人間が彼女たちに思い思いに言葉を放つが、何故か内容は聞き取れる。なんと不気味なことか、他者の発言を邪魔しないように譲り合いながら叫んでいるみたい。

 

 

「「「ほぁぁぁぁぁぁ−ー!ほぁぁぁぁー!」」」

 

 

「……何ですの、あの集まりは?」

 

 

 そしてそれを唖然として見つめる袁紹、黄巾が元々はただのフォンクラブ?だったと記憶のなかで知っていた為、今はまだ黄巾党として各地を荒らし回る前に見学に来たのだ。

 

 正直唖然、アイドル系に興味もなく生きるための不自由のなかった前世、どちらかと言えば乱世の世の一歩手前まできている世界であっても、非常に裕福に育った彼女は蝶よ花よと育てられてきた今世、歌に救いを求める彼らの声を理解するには少し足りない。自分が行なってきたモノの正しさも分からず、未だ迷い続ける彼女。何をすればいいのか、何をしてはいけないのか、目標すら立てること叶わず。それを少しばかり変えたきっかけは?FB○……何顒のとある発言からである。

 

「なさぬ悪と、なす偽善。どちらが正しいかは誰にもわかりませぬ。なせねば民草は死に耐え(誤字にあらず)、なせば諸氏には指指されましょうぞ。本初殿、張孟卓ほどの慈愛をもてとは申しませぬ。ですがこの何伯求、いえ、真名を……真名で想智(ショウチ)とお呼びくだされ。わたくしめの願いは貴公が仁君へと成長することでございます。世を治めるは曹孟徳殿かもしれませぬ、なれどその過程での被害は計り知れぬものでしょう。あの者が剣を掲げ振り下ろすだけで、民草は望んで死へと向かいまする。何故、あなたが周知を偽るか問いませぬが、民への三考を得られよ、一つ公、一つ幸、一つ功。自ずと行く末は決まりましょうぞ」

 

 いつもの如く、近頃の課となった何顒邸訪問。そして袁紹が彼女とこれまたいつもの如く他愛ない会話をしようと向かい合ってのこの言であるが。彼女は、いつもの崩した座りではなく、両膝を付け待ち構えていた、とりあえず正座であるな。

 

 「……何を言っているのか、解らないといっても無駄なのでしょうね。想智殿の言い回しはくどく分かりづらいですが、心に留めておきましょう。今後私のことは麗羽とお呼びください」

 

 少々呆気にとられた、なにせ自分でも満足行くほど上手い具合にアホな袁紹っぽい発言や行動が出来ていると思っていたのだ。そして今まで誰にも、あれ以来洛陽で度々会うようになった曹孟徳にすらバレていないのだ。

 

 呉しかり、許しかり、張しかり、知に優れるモノをもってしてもたどり着けていない。彼女たちは袁紹と奔走の友となるに至ったが、それは彼女の成した事に対してで、彼女自身の評価は一番袁紹へ好印象を抱いてある張バクにおいてもそこまで高くない。確かにやっていることは素晴らしいと感じてはいるが、袁紹自身の気まぐれ的ものだと知り落胆したのだ。

 

 

 「麗羽殿、それがあなたの素でありますか。ご安心を、私しか知らぬはなしであり、此度の話はは慈協との間でも解することはありませぬ」

 

「ひとつ聞かせて欲しいのですが、どこでお気づきに?」

 

「貴方の成すこと全てに筋があります。

 貴方の為すこと全てに結果があります。

 貴方の生すこと全てに人がおります。

 貴方の為すこと全てに笑者がおります。

 それに気づけばそこでわかります。

 名を惜しむものは貴方の本懐には気づきませぬ」

 

「……そうですか、私にはあまり意味がわかりませんが。しかし、勝者ですか?」

 

「いえ、恐らく貴方の言っているものは違うという前提で言いますが、笑う者でしょうしゃです。慈協は貴方の心根は良いものと知っておりますが、あなたの自己愛発言に気落ちしておりました。されど、慈協は知るべきです、彼女がやっていることもまた結局は自己愛(じこまんぞく)の結果に過ぎないことを。貴方はうつけの振りのまま仁君となるがよいでしょう、であれば漢の世はまだ続けることができる。十常侍……、中常侍しかり濁流に潜む宦官に清流は勝てませぬ。まずは王佐の才を手に入れられよ、南皮を拠点に北方の雄となり、力を蓄えなされ」

 

 

これで彼女にもやることができた。ここからは何時もの袁紹、わがままを言う様に遠まわし?に付き合いのある役人へと根回し?をする。

 

「張再さん、わたくし暑い領地はいりませんの、できれば……そうですわね、冀州などがいいかと思いますわ」

「本初殿、それは冀州牧にとのお言葉ですかな?」

 「ワタクシ、そんなことは言っておりませんわ。ただ、冀州、特に南皮なんかワタクシにお似合い、そうは想いませんこと?」

 

 これぐらいなら周囲の人間も「何時ものわがまま」か、どうせすぐに忘れるだろうとすれば良かった。しかし、袁紹自ら冀州へ向かうお決まりな言い訳として、遠縁の親族に会いに行くと称し、馬に乗って向かうほどである。更に事あるごとに冀州、冀州と呟くものだから流石に何かしらの対策を建てねばと、周りは奔走することとなった。

 

 「何をのろのろとしているのですかっ劉慶さん!早く行きますわよ!」

 「はぁ〜、……分かっております」

 

以前のお付は交代、また新しいお付へと変更されていた。最近は暇さえあれば馬車と私兵を用立て、冀州の豪族、有力者の邸を訪問し彼らの懐に金銭を落とした。そんな中である。

 

「お待ちをっ!」

 

 一人の将兵が駆け込んでくる。袁家とも元々仲が良く、洛陽の守備を任されている一人である。今は珍しくそこそこ真面目で義理堅い、男であった。

 

「なんですの、徐双さん?ワタクシ今から、」

 

 「それどころではありませぬ!黄巾を身につけた賊徒の手によって中常侍の封諝、徐奉が内応!幸い、蜂起計画は内輪揉めで潰えたようですが、1000人余りが処刑されるようです!本初殿も虎賁中郎将としての役目が下されることになりますぞ」

 

「なるほど、最近都が騒がしく華麗でなかったのはそういうことでしたのね?ええ、気づいてましたとも、この袁本初に知らないことなどなくってよっ!おーほっほっほっほっ!」

 

((……ホントかよ))

 

 

 態とらしい、でも逆にそれが今では効果的である。

 

 

「えんしょぉーほんしょぉー、貴ぃ様ぁの役目ぇーはー洛陽近辺の守護であ〜るぅ。励むようーにぃ」

 

 十(中)常侍の一人、12人 張讓、趙忠、夏惲、郭勝、孫璋、畢嵐、栗嵩、段珪、高望、張恭、韓悝、宋典。その中の一人、夏惲がこの言葉である。

一応勅命としての命令だが、ここに霊帝の意思は一切入っていない。袁紹と関わりのある低位宦官の計らい、というよりもイランお世話で一番守備を厚く、つまり兵を置くことのできる洛陽の守護を任されたのだ。その他にも討伐に行っても大して役に立たないだろうとの判断で十常侍も納得している。正直黄巾がその大兵力で襲来し、もし万が一洛陽を落とされたりしたら確実に霊帝と宦官連中は残さず殺される、そして搾取するため人間を奪う目の上のタンコブであるからして早々の討伐を望んでいるのだ。金づるが死ぬのもアレだし、大きな力を持たせてアホに好き勝手させるのも馬鹿らしいというわけである。

 

 「想智さん、お願いがございますわ。私が金を出すので商人経由でとある方々を援助して欲しいのですわ」

「はて、どういった経緯でそのようなことを?麗羽殿の周囲に曹操殿以外にそのような援助をする程の勇を持つ御仁は……面識の無い方ですか?」

 「そうですわね、琢郡にいるとだけ申しておきますわ。想智さんの信用置ける商家の方にお願いして、装備と馬を援助してくださいな。それと曹操さんには既に騎兵2000と歩兵3000を渡しておりますわ。使い潰しても、数を減らしてもいい、その代わり袁家にふさわしい華麗で精強な兵士にして返してくださいな、そう言っておきましたわ。まぁあとは、彼らが曹操さんから離れたくないと言わないよう望むだけですわ」

 

 ちなみに曹操であるが袁紹と違い、黄巾討伐の役目をおい官軍5000、袁紹の私兵5000を持って陳留へ出向いていいる。宦官に嫌われて、様々なことをやらかしてきた曹操は確かに少数軍勢の場合もあるが、ほとんどが大きく固まって行動する黄巾を相手にするには、少々心もとない兵数しか与えられず、都を出発した。それに恩を売ることも含め、少々心配だった袁紹は彼女に兵糧と兵を自らの私財で融通したのだ。

 

 「その件に関しては問題ない程度に曹操殿なら抑えてくれると思いますが、彼女の野心のことを考慮すればどう行動するか判断付きませんね。義に従うか、大義をなす前の小義と割り切るか 話を戻しますが、それだけでは誰を援助すればいいのかわからないのですが……」

 「見れば分かります、とだけ言っておいてくださいな。私の考えている通りの人物なら直感に従えば簡単だと思いますわ。なんせ、ワタクシが援助を考えている方は生粋の人たらしですわよ?もしそれでも見つけられない、そうなるのであればワタクシの期待が間違っていた。その商人に全て差し上げてくださいな」

 「態と見つけないということもありうるかもしれませんが?」

 

 いつもより目を細め何顒は袁紹を見る。何かを試すような、何かを考えそこに上がった疑問を除くための質問である。

 

「またまた、ご冗談を。想智さんのことも想智さんが選ぶ商人のことも間違いがあるとは思いませんわ。もしそうなったとしたなら、そうですわねぇ〜想智さんをワタクシの侍女にでもさせてもらいますわ」

 

 何顒にとってはある意味正解、ある意味予想通りの回答が袁紹より得られる。ため息をつきながら「やはりか」と納得し頭を下ろすが、すぐに袁紹の方を向き直し、その目を見つめる。そして袁紹はいつも他の人間に見せる何かぼっけっとした雰囲気の顔や、態とらしいニコニコ顔ではない本当の笑顔で何顒を見ていた。

 

 「信頼は嬉しく思います。ですが、気をつけてください。今は乱世、何が起こるかわかりませんし、もちろん私も人間、失敗もあります。あなたは本当の身内には気づかない内に甘やかすくせがあります。残念ながら甘やかす方も甘やかされる方も貴方があまりに自然に振舞うために気づきませんが。いつか、気づかないものがあなたに恩を返すことはなく、情も義理も感じることはありません。そのような意図はなくとも、貴方は貴方の首を自分で絞める事になるやもしれない。何もするなというわけではありませんが、一応心に留めておいてください」

 

 本来より潤沢な装備を持って参戦した劉備、本来より多勢をもって参戦した曹操。彼女が知る外史の道筋より大きく離れたところにはまだない。官軍も順調に負けたり勝ったりを繰り返しながら黄巾の弱体に成功している。そのような中ひとつの占い、噂が世間に流れた。

 

 「天の御使い?」

 「はい、管路の予言です。なんでも流星にのって乱世を鎮めるために漢土に降りるそうです」

 「……そうですか」

 「……意外です、“天”その言葉にもう少し反応があるかと思いました」

 「何も思うことがない、と言えば嘘になりますわね。ですが、“やはり来たか”という気持ちの方が遥かに大きい。天の御使いは誰のもとへと行くのでしょうか?その程度の疑問しかないですわ」

 「誰のもとへですか……、旗揚げすることも十分考えられるのでは?」

 「それこそ、天のみぞ知ることでしょう?漢という国のみを救う天なのか、」

 「民含め漢土の全てを救う天なのか」

 「まさしく見ものです」

 「貴女は人ごとですわね」

 

 

 2月も経たずに黄巾敗北の知らせが都へと届く。

 

 『曹孟徳、黄巾本隊を降す』

 

 その際、張角、張宝、張梁は首を討たれたらしい。なんでも三兄弟()は一間三尺程の大男で腕が六本とか手に持つ竹簡を振るうだけで落石を起こすとか、非常識なことばかりが書かれた手配書と全く同じような人間だったらしい。正直馬鹿らしいが、兄弟それぞれ三枚の手配書の顔と同じ首が送られてきたのである。その確認のために、以前張角たちを見たことがあると漏らした袁紹は宦官共に呼ばれている。

 

 「ええ、このような顔でしたわねぇ。汚らしい顔(……)が雁首揃えて吠えていましたもの、よく覚えていますわ」

 

 珍しく、いつもの金ぴかな服装ではない、質素な官衣を纏い宮へと向かう。知る人が見ていればおそらく驚くであろう。

 

 

 「ふむ、袁本初よ、なぜその時にこ奴らを討たなかった。そこでこ奴らの首を落としていれば、これほどの被害は出なかったのではないかっ!」

 

 

 冕冠をじゃらじゃらと鳴らし立ち上がる男。そしてそれを囲む十常侍含める宦官連中。

 

 「その通りでございますわ、この袁本初言い訳のしようもございません。あまんじて罰を受ける所存でございます」

 「陛下、お言葉ですが此度、袁本初殿はそれを補って余りある功を立てておりまする。洛陽の守護はもちろんのこと、此度の第一勲である曹孟徳へ兵の貸渡、そのほか風の噂では大勲を挙げた義勇軍にも援助をしていたとか。ご存知の通り兵法の基本は敵より多くの兵を集めることです。あの場で陛下のために袁本初殿があやつらに斬りかかっても多勢に無勢、討ち取られた挙句火に油を注ぐだけとなっておりましたでしょう」

「……良い、袁本初よ此度は見逃す。次はないと思うがよい」

 

 

 その後すぐに漢土を揺るがす報が知らされる。

 

 『霊帝崩御』

 

 黄巾、治まって半月後のことであった。もとより長くはないとされていた霊帝、黄巾の乱が治まり気が緩んだせいであろう。袁紹に向け次はないとし吠えたが、先に舞台を降りたのは霊帝であった。

 

 

 さて、話は張角たちのことに移るが、もちろん彼女は曹操の送ってきた首か違うことがわかっていたし、事前の知識で張角たちが曹操のもとへ身を寄せていることを知っていた。そして宦官の一人が袁紹にあの時あの場で行なった質問はこうである。

 

 「この者たちが黄巾(・・)で間違いないか?」

 

 その宦官は張角たちが首謀者であるから、天を現すは皇帝と同じように彼らを現す黄巾という言葉で張角達のことを尋ねた。三つの首は確かに黄巾の者である、だが、張角たちではない。あの場にこの三つの首が居たのも本当であるし、汚らしい格好のものが多かったのも確かである。それ故に彼女は聞かれたことに嘘はついていないが、言わなければならない本当のことも言っていない。何人かは気づいていたかもしれないが、黄巾の乱はこれにて一応の治まりを見せることとなる。

 

 

 袁紹はある程度の未来を、英雄たちが女性に変わった世界のことをこの世界に来る前から知っている。そこまで思い入れがあるわけでもなく、ある程度の流れと人物を知っているという利点だけであったが、それでも十分すぎるアドバンテージであった。彼女は潤沢な袁家の資金と農業改革、職人の抱え込み攻城兵器の開発などを片手間に対処できる程度の黄巾賊を相手にしながらおのが領地(既に韓馥は手回しにより左遷されている)に半ば引きこもるように行なっていた。

 

 

 ある日のことである、曹孟徳と共に黄巾の乱での功績として中級宦官たちの手回しで西園八校・中軍校尉に任じられた袁紹は何進に領地より呼ばれていた。

 

 「久しいな袁本初、どうだ私のものにならんか?」

 「お戯れを、それより洛陽に呼び出す程のことです、何か大事でもございますのですか?」

 「……宦官を討つ、でなければ我が首が危ない。何か案は無いものか、そう考えヌシを呼んだ」

 

 

 この発言、袁紹が無能と思っている者には本来出せない質問である。ではなぜ、何進は袁紹にこの質問をしたのであろうか?答えは単純、たんに袁紹のそのたわわな胸と黙っていれば美人な袁紹にベタ惚れであるからだ。袁紹としては鳥肌ものであったっが、お金お金と言いながら寄ってこない人間は久しぶりであったし、彼女に気に入られようと何進は彼女へよく気配りをしてくれた。この何進将軍、確かに俗物であったし、小太りの中年のおっさんでもあった。洛陽という地はまさに魔窟であった。己が望もうと望まないとも周囲の人間は、彼女の持つ資金迷声をあわよくば手に入れようと寄ってきたのだ。別にお金が惜しいわけでも地位が惜しいわけでもなかったが、目が銭の輩に付き合うのは非常に億劫であった。そして人間不信になりかけた時に、それを対処してくれたのが何進であったのだ。

 

 「安心しろ、人払いは済んでおる。おヌシが嬌声をあげようとも何をつぶやこうとも漏れることはない」

 「……まず洛陽の守護には董卓殿はどうでしょうか?異民族との戦を続け精強であると聞いておりますわ」

 「そうか、では早速その様にしよう!」

 

 誰かが聞いていれば確実に早っ!と思うほどの即断即決である。しかも、あからさま過ぎる話題のすり替えすらも成功している気がある。

 

 「各地に散らばる諸侯にも呼びかけるべきでしょうが、あまり多くは。丁原殿辺りが一騎当千の勇将を抱えているとのお話も聞いておりますわ」

 「では、董卓と丁原だけでかまわぬのか?」

 「あまりに派手に諸侯を動かせば変に思われますわ。幸いその二名だけであれば言い訳が聞きますわ。今陳留にいる曹操さんや、ワタクシが抜けた穴を埋めるとでも言っておけばよろしいかと」

 

 

 ここまでペラペラ案を出していれば袁紹アホの子じゃないとバレてしまうかもれない。でも実際にはそんなことはなかった。将軍としては中途半端に無能、人心には機敏、思い切りがかけ常に人に対し疑心暗鬼であるという、それが何進の評価であるが、袁紹の言葉にだけは何故かハイハイと従うほどにベタ惚れであるらしい。もちろん中身元男であった袁紹は生理的に受け付けないとこもあったが、性的なことを除けば袁紹にとって何進は話の分かるおっちゃん、それだけだ。

 

 

 その後、何進の呼びかけに応じ丁原が2000騎の騎馬を従えてやってくる。だがしかし、丁原が都に呼ばれてすぐ、何進と丁原は十常侍の手によって宮中で暗殺される。すぐさま董卓軍がと丁原軍の後続であった呂布軍1000騎が到着して治安維持に努めていなければ洛陽は再び荒れていたかもしれない。そして何進たちが暗殺されたのは、ちょうど袁紹が一区切り付け、南皮へと戻っている時であった。袁紹はすぐさま500の兵をつれ南皮を発ち、都へと向かう。もとより彼女は何進に宦官からの呼び出しに安易に応じないように言い含めていたのだが、共には丁原もいるからと安心して宮へと向かってしまった何進。結局もろとも討たれてしまい、彼が殺されたと聞き彼女はまず驚いた、そして知っていながらと自分にも宦官にも憤怒した。呂布も当初激怒していたのだが、董卓の説得で丁原のあとを継ぎ洛陽に駐屯することとなったのだ。ちなみに曹操に貸与していた兵はすり減った分も補充、更には1000名程追加されて袁紹へと返還されている。先の件、曹操はこのままで行くと借りを作ったままになり、後に大変なことになると考え、少々財政は厳しかったが全てを袁紹へと返したのだ。

 

 

 その場は自らの権に物を言わせ、宮に兵を進める。

 

 

 彼女が高々と掲げ振り下ろした剣に従い、兵が門に取り付く。まず、近衛の兵を問答無用で切り捨て中へと押し入る。途中出会う者は全てがなで斬りとなった。もちろん宦官の中にそこそこ親しくしていた者もいたのだが、その者たちは袁紹が洛陽に到着してすぐに自らの屋敷に引きこもっている。

 

 

 

「袁本初よ、ここを何処と心得る!宮中であるぞ!

 剣を引け!そして今その己が首を自らの剣で掻ききれば一族は見逃そうぞ!」

 

 

 一人の宦官が叫ぶ。そちらに目を向ける袁紹、一旦血に濡れた剣をを降ろし、男を見つめる。他の兵はすぐさま宮の中に二人一組となり散開し宦官の殲滅をはじめる。近衛もそこそこの精鋭を揃え袁紹配下の兵を迎え撃つが、いかんせ今この地に連れてきている兵は田豊の手によって育てられ、冀州で黄巾と戦い続けてきた兵の中でも更に腕が確かなものたちである。ましてや実戦を行う事がない、宮中剣技の近衛兵では少々話にならなかった、精々いないよりマシ程度なのだ。剣を下ろした袁紹が宦官側の話を聞く気があると見るやすぐに叫ぶ。

 

 「なぜ、何進ごときに、なぜそう忠を誓うのだ!」

 

 「確かに彼は俗物で、ワタクシを目で犯すような下卑た男でございましたわ、ですが彼に救われたのも事実。この袁本初、受けた恩は返すと決めておりますの。

 

 お世辞といえども、我が救われたのは事実!

 だた人より財を喰らう獣である貴公等には理解できまい!

 少しの恩も返せずうちに恩人を失う空虚さを!

 かまわん、我が全て責を背負う、殺すのだ!

 宮に巣食う悪鬼どもを討ち取れ討ち取るのだ、この袁本初がさらなる大乱の引き金となろうとも!」

 

 

 目の前にいた宦官を切り捨てる。それが片付くとすぐさま奥へと押し入り、彼ら兵士の目に映った宦官全てを善悪問わずに切り捨てさせる。だがそれも終わりに近づく。

 

 「都を騒がす逆賊よ!すぐに剣を置くがいい!さもなくばこの董仲穎が配下、華雄が討ち取ってやろう!」

 

 董卓配下の兵を引き連れた華雄が、宮へと到着したことがきっかけである。すぐさま未だ兵が回っていない場所、もしくは少ない場所を突破し袁紹は逃げ出す。

 

 「厄介なのが来ましたわね、目的は果たせませんでしたが、ここは引いておきましょう」

 「はっ!上東門より駆け抜ける。よいな!誰一人捕まるなよ!」

 

 

 彼女はそのまま連れていた手勢を引き連れ洛陽を出る、田豊の手によって手に入れることができた冀州の本拠に飛び込んだのだ。




ルビが意味のわからないところについている現象。
何回かやり直したが、訂正されず。
……なぜに?

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