ソビエト連邦 モスクワ 広場
2人の少女がいた。両者共に美女、美少女と評される容姿を持つ者たちである。ふと美女が呟いた。
「赤の広場と呼ばれる場所に一人の少女がいた。銀髪碧眼の美少女である。所違えば傾城傾国とうたわれるほどの世に二つとない妖精のような美貌を誇る少女である。それもそのはず、彼女はソビエト連邦に生まれた三人目の神殺し精霊姫アナスタシアと呼ばれる者のであれば」
「サーシャ!!そのモノローグを口に出すのはやめてくれないの?私の容貌を褒めてくれるのは嬉しいけど、極東では過ぎたるは及ばざるが如しなんていうのよ?」
少女は不満そうにサーシャと呼ばれた女性に呟いた。しかしそれに対してもサーシャは喜色満面の笑みを浮かべ微笑み返した。
「しかしですねアナスタシア様、あなた様の要望には応えるのが難しいことをお許しください。アナスタシア様の容貌は天におられる神々にすら匹敵する妖精の如き美貌でございますれば、私は自分の心に嘘をつかなくてはいけなくなってしまいます」
「そうかしら?でも言い過ぎよ」
アナスタシアと呼ばれた少女は美女にそう告げるが、美女はそれに対し反論する。
「いいえ。言い過ぎではございません。この世を守られる偉大なる神殺しの戦士にはどれほどの美辞麗句を捧げても足りないのです。お分かりください」
「ふふ……わかったわサーシャ、あなたに免じて今回は褒められてあげるわ」
アナスタシアは嬉しそうに笑みを浮かべサーシャと呼ばれた女性に体を近付けていく。
「それで?今回はどのような用事なのかしら?神獣がでたといった報告は聞いていないわ、それ以外の幽霊ならば正教会などが動くでしょうし私が動かなくてはいけないことなんてあったかしら?」
サーシャと呼ばれた女性は理由を告げる。神を殺した怪物を招聘した理由を。王が動かなくてはいけない難事であることを
「ええ……今回モスクワまでご足労いただいたのは他でもありません。まだ調査中ではございますが、スペインで新たなる神殺しが誕生されたという噂が流れておりまして、もしそれが本当であればアナスタシア様に続いて四人目の神殺しが生まれたことになります。である以上この話はアナスタシア様に届けられるべきと判断いたしました」
そうだったの。驚いたわでも本当に四人目の神殺しが生まれたのかしら?アナスタシアは思い出す。
「確か冷戦が始まってから20年くらい経った時に出雲といったかしら?そんな名前の方がスペインで神を殺したなんて話がありましたけど、蓋を開けてみれば神を一人で封印した話が広がって神殺しだなんて騒いでいた覚えがあります。今回の神殺しもスペインで起きたそうですし本当に新しい神殺しが生まれたのかしら?」
アナスタシアはそう語り疑いの目を向ける。彼女が知る神殺しの中で現存しない神殺しはかつてドイツで出会った彼一人だけだから。
西側と東側では情報に差がございますからとサーシャは語る。西側諸国で起きたことは西側の方が詳しく。逆に東側諸国で起きたことは東側の方が情報が多いのは確かであると裏どりをするにも難しいですしね。ですが今回は違うようでして報告書を取り出しながら。
「イギリスの天文台が公式に四人目の神殺しの存在を公表しましたので、本当に新たな神殺しが誕生したのではないかと、実際の報告書もこちらにございます」
見せてちょうだい。もし生まれていたのだとしたらどのような神を殺害したのかしらと思考を巡らせながら。ふと思う。
「ファティマやミカエルみたいな戦闘狂じゃないと良いのだけれど、彼らは私と出会ってすぐ殺し合いになってしまったから、友好関係を築けそうなら築いておくべきだわ。ただでさえ世界を変える神殺しは少ないのだから」
「神殺しは先の大戦で多くが死亡したのでしたね」
サーシャは前任者から聞いたことを呟く。
かつてナチス・ドイツが保有していた聖槍ロンギヌスを巡って第二次世界大戦後のドイツで当時の神殺したち6名が全員顔を揃え殺し合った第一次魔王大戦について。
だが、それに対しアナスタシアから訂正の言葉が告げられた。
「いいえ、当時出会った神殺しは7名よ。それに聖槍はブラフだったわ」
「そうですか!?では聖槍はどこにあるのでしょうか」
「さぁ、わからないわ。それよりもスペインの資料を頂戴」
少々お待ちくださいアナスタシア様。
「早く見つけてね。私も暇ではないのだから」
「わかっております。あぁ、ありました」
そんな言葉を耳にして、すぐサーシャから資料を奪い取り典礼団の資料を読み込む。
新しい神殺しはどんな神を弑逆したのか。トラロック、アステカ神話の神だ。雨と豊穣の神様、スペインに降臨したのは、神祖ウィシュトシワトルが儀式を主導しそれで降臨した神を弑逆した。
「へぇ……彼も私と同じ魔術師の家系出身なのね。それは知らなかったわ。それで無辜の民を逃すために戦ったの、興味深いわ。昔ドイツで出会った時と変わってない。いえ、私にとっては過去であり彼にとっては未来かしらね?因果が逆転しているのだから」
アナスタシアは笑みを深める。これだったら敵対関係にならなくてすむと、友好関係を築いていけると信じている。その傲慢さこそが彼女が神を殺した理由なのであろう。
「それと、新たな神殺しはまだ14歳らしいですよ。夏休みの旅行でスペインに来て神を殺したとか」
資料に書いてない部分についてサーシャが情報を補足する。
「14歳、若いわね。私が神殺しをしたのは20代の時だったのに、今まで人類史に現れた神殺しの中でも最年少に近いんじゃないかしら」
「かもしれないですね。最も魔術師名鑑を漁ったとしても神殺しに何歳でなったかなんてのは載っていないでしょうけど」
アナスタシアが肩を竦めながら微笑む。
「まあそうね。普通の神経をしていたら私たち神殺しに質問しに来る人はいないでしょうしね」
「歴史書をあさって調べれば大雑把な推定はできるかもですよ?何の役に立つかわからないですが」
「それこそ笑われるわ。何してるんだってね」
そうですか?適当な理由をでっち上げれば調べられはしそうですけどね。神殺しは何歳くらいのどのような性格をした人間が行いやすいのかとかというサーシャ。
それに対してアナスタシアは語る。そんなことを行ったって意味はないと神を殺すような人たちは千差万別で十人十色なのだからと。
「共通点くらいは見つけられる気がしますよ。負けず嫌いで派手好きなお調子者とか」
「あら私のことがそんな風に見えていたのかしら?それだったらこれからの付き合いを考えなくてはいけないわ」
「ハハッ……冗談ですよ。それにちょっとでもミスをしたら神殺しの逆鱗に触れるようなことに予算が降りませんからね」
「もっと面白いものを持ってきたら私がポケットマネーを出してもいいわよ?」
例えば魔術師の才能は血統と教育どちらによって決まるのかとかねとアナスタシアはサーシャに問いかける。
「それは……とても面白そうですね。魔女などの血筋によるものもありますけど努力によって覆せるものもありますから、その研究なら予算が降りますよ。きっと」
そんな会話をしながらアナスタシアとサーシャは赤の広場を歩いていく。宗教が禁止された国であったとしても正教会への信仰があるのと同じように、世界から異端視された者であったとしても自らの王を信じさせる。他者を自らの思想に染め上げる少女であるからこそ
どのような時であっても自分の考えを押し付ける傲慢、だからこそ彼女は神殺しへと至ったのだ。
これこそがソビエト連邦の誇る神殺しにして精霊姫アナスタシア・クドリャフカとその部下サーシャの一幕であった。
素朴な疑問なのですが、原作カンピオーネ!読んだことあるよという方は、どのくらいいらっしゃいますか ?
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読んだことない 。
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ちょっと読んだことある 。
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全巻読んだことある 。
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全巻と神域とレルムズ読んだことある 。