この次の話からが、入学してから動機発表くらいまでの回想です。
朝。かなり早い時間に、5時に起きた。
二度寝しようとしても、寝れそうにない。どう暇を潰そうか。石丸辺りなら起きているかもしれない。桑田はさすがに起きていないだろう。苗木も、期待は出来なさそうだ。
さすがに8時(というよりは、ほぼ9時)に寝るのは早すぎた。もう少し、後1時間くらい、桑田や葉隠や、あと山田なんかと話しておけば良かった。
ああ、そうだ。せめてもう少し話しておけば、まだ良かったのに。
本当、俺ってバカだなあ。
制服に着替えて、顔を洗う。鏡を見ると、昨日のように奇跡的な寝癖はなさそうだ。何をしようか。学園や寄宿舎の探索でもしようか。外の世界がどうなっているかを知りたい。無事だとは思うけれど、皆が少しでも元気になれるようにしたい。
俺は頭が良い訳でも、優しい訳でも、強くもないけれど、それでも皆の役に立ちたかった。
とりあえず、適当に寄宿舎の中をまずは見て回ってみよう。
「む? 真城君ではないか。この時間に会うのは珍しいな」
石丸と会った。石丸は軽快に笑っている。
「目が覚めちまってな。石丸はどうしてこんな時間に起きているんだ?」
「体育館で、少し体を動かそうと思うのだ。外に居る学生に、差をつけられたくないからな。真城君も良かったら一緒にどうかね?」
「学園内、まずは寄宿舎を調べようとしているんだ。だからやめておく。ごめんな」
俺が言うと、石丸は歓喜の声、というよりは奇声を発する。
「真城君! 君が自発的にそんなことをすると、僕は思っていなかったよ。本当にすまない。良かったら僕も一緒にしてもいいか?」
何気に酷い評価を受けていた。「どうぞ」と反抗心を持って、出来るだけ投げやりに聞こえるように言うも、当の石丸は1人で感動に震えている。
そうして、俺と石丸は一緒に探索することになった。石丸は、どちらかというと俺の苦手な性格だが、所詮探索するのはせいぜい長くても2時間程だろう。朝食の準備もあるだろうから、もっと短いかもしれない。
まずはランドリーを調べた。家具の中や隙間まで隅々と。しかし何も見つからない。寄宿舎のシャッターによって封鎖された階段の近くに、アニメや漫画のように、隠し部屋やスイッチなんかも無かった。
自室も調べる。黒幕や外の世界についての手がかりは何一つもなかったが、寄宿舎の個室が本当に完全防音だということはわかった。
「食堂は朝食の準備するときに行くから後回し。ランドリー、個室、シャッター付近、後は何処だったっけな?」
「トラッシュルームだろう」
「ああ、ゴミ捨て場か。ごめん、俺って単純なことはすぐ忘れちゃうんだよな……」
「メモ帳でも持ち歩くのはどうかね?」
その手があったか。これからはそうしよう。しかし、その方法さえ朝食が終わるころには忘れてしまいそうだ。
適当に歩き、黒幕がドジして保健室の鍵を落としたりしていないか床を見たり、皆の精神状態について石丸と話したりして、ゴミ捨て場、もとい、トラッシュルームに着く。
衝撃的な風景だった。具体的には、石丸が「真城君、これは夢ではないのか?」と言うほどの。
死んでいた。同級生が、死んでいた。
時計を見ていないからわからないが、体感時間で現在7時くらいだろうか。起床時間に鳴る、不愉快なモノクマアナウンスの変わりに、さらに不愉快かつ絶望的なアナウンスが鳴る。
『死体が発見されました。一定の捜査時間の後、学級裁判を――――――』
とにかくショックだった。疲れた。助けて欲しい。外に出たい。家に帰りたい。普通の日常を送りたい。
ちょっと才能を持っている以外はごく普通の高校生の俺に、つい昨日まで普通に話していた友人が死んでいるなんて状況、耐えきれる訳ないじゃないか。
生暖かい涙が、頬を伝った。気持ち悪い。眩暈がする。念のため、口元に手を添える。
「真城君、大丈夫か!?」
自分も精神的にキツイだろうに、石丸が俺の顔を覗き込んでまで心配する。
2人で探索していて良かった。もし、たったの1人だったら、俺が遺体を発見したときのショックはもっともっと大きかっただろうから。
「なあ、石丸」
「何だ?」
「おやすみ」
「真城君? 何を言っているんだ?」
きっとこれは夢なんだ。
夢を見ているときは浅い眠りだから、夢の中で眠れば深い眠りになって、現実では夢の内容なんて忘れて、快眠出来た状態で起きれるんじゃないか?
そうだきっとそのはずなんだよ! 同級生が死んだなんて、確かにあの動機は絶望的だったけれど、本当に人を殺す奴が、居る訳ない!
先ほどまでの吐き気や眩暈、それから探索によっての疲れもあったのか壁にもたれかかっても安眠出来そうだ。石丸が何か言っているけれど無視しよう。"もしも"、これが現実で俺の行動がわざとなら怒られるかもしれない。けれど、これは夢なのだ。関係ない。
気持ち悪い。吐きたい。やたら生々しくリアリティのある、嫌な夢だ。起きたら、風邪をひいているかもしれない。保健室は開いていないから、体調管理には気を付けないと。
ボンヤリとする意識の中、薄目を開ける。アイツの遺体は、その見開いた目を、「どうして」とでも問うように、「殺してやる」と恨んでいるかのようにこっちに向けていた。
大丈夫。……大丈夫だ。お前だって、夢から覚めたら生きているから。それにしても、俺は対してコイツを嫌っていないはずなのに、むしろ仲はいいくらいなのに、何故、俺の内面を映したような夢の中でコイツは死んでいるのだろう。今度葉隠に夢占いでもしてもらおうか。
現実に戻ったら、絶対に、皆一緒に学園から出よう。そして黒幕を然るべき機関に訴えてやる。
……ハア。本当に、本当に。
「嫌な、夢、……だ」
「夢? 真城君。その気持ちは分かるが――――――」
アイツとか、コイツ、って一体誰のことなんでしょうね?(すっとぼけ)