隠居したわたしが訳あり少女に"幸せ"を教えようと思う   作:けーか

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どうも百合豚です。好きなきらら作品はは"スロースタート"です。


確かに言われてみると、みしろのようなかわいい娘がわたしと似たような服装というのはもったいない(1)

 そろそろ食べ終わるかな、というほどの頃。

 店主の爺さん――刀坂(とうさか)の祖父にあたる刀坂鋭二(えいじ)対星堕対策機関(Stelladusk Eradication Agency)の『元作戦局局長、現管理局職員』であるその人に少し話があると呼ばれたので、刀坂にみしろを任して少し外に出る。

 

 カチッ。

 

 爺さんが煙草の火をつけながら「火、いるか?」と問われるのでそれを断る。

 みしろはわたしの煙草の匂いを好きだと言ってくれたが、それでも気にかけてしまうのが……親心?

 

「んで、だ。捜索がさっき終わって、例の違法異能実験について少しわかったんでな。それの共有だ。あの子供を保護している以上、お前には知る義務がある」

 

 わたしの返事を聞く間も置かずに、わたしの携帯端末にデータが送られてくる。

 

 ――固有能力の併発(へいはつ)及び他者の固有能力の転用実験。

 

 開いて一番最初に書かれている一文に、眩暈(めまい)がする。

 それはかつてSEAの研究局が不可能だと判断した実験――否。

 正確には()()()()()()()()()()()()()()()()()()だと判断された実験だ。

 違法な実験である以上、その安全性が考慮(こうりょ)されているとは考え(がた)い。

 読み進めていく中で、やはり多くの違法薬物の投与や異能規制法違反(異能法)が確認されてる。

 

 ――被験者の実験状況。

 

 それぞれの子どもが、どのような実験を受けたかということを記した項目。

 被験者である子どもたちは全員が十二歳以下。

 実験内容は見出しにあった「固有能力の併発(へいはつ)及び他者の固有能力の転用実験」に加えて「エナジーの可視化」が多くみられる。

 目を通していく中で、昨日の夕方に出会った少女を見つける。

 ……みしろ。

 昨日わたしが拾い、目覚めてからとは、違う姿。

 ひどくやつれていて、消えかけの夜の街灯みたいな瞳。

 ――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 頭の中身がひっくり返るような頭痛。

 ……思い出したくないこと、というわけではない。

 決して風化させてはいけない記憶だが、今思い出すべきことではないので、フタをする。

 そんな言い訳を並べ、逃げるようにして情報に目を通すと、ほかの子どもでは見なかった「星片(stella dust)の投与」という実験が記されている。

 そのような違法異能実験は聞いたことがない。

 文字通りであれば、星堕が倒された際に散る星片(stella dust)をみしろへ投与したということだ。

 わたしがみしろにエナジーを流し込んだときの異物感は薬物のものだと思っていたが、これの影響でもあったのかもしれない。

 一通り目を通したが「星片(stella dust)の投与」についての詳細は不明としか書かれておらず、情報として得られたものはそう多くなかった。

 

 ――あれ。

 ちょっと待て。

 少し、まずいかもしれない。

 この「星片(stella dust)の投与」の実験を受けたのは、データに目を通した限り、みしろだけだった。

 そして昨日、わたしはそれを()()()()()()()()()()()()()()

 

「ごめん、爺さん」

 

 わたしが声が固くなるのをなるべく抑えつつ、告げる。

 

「このみしろに投与された星片(stella dust)、取り除いちゃったかも……」

 

 爺さんの顔が一瞬こわばるも、すぐにいつもの仏頂面に戻る。

 ああでも。

 (かす)かに諦観(ていかん)というか、納得というか。

 そんなものを感じる表情(かお)だ。

 

「まあ、お前ならそうするよな」

 

 ふっ、と。

 少し笑うようにして、爺さんが煙草の煙を吐く。

 刀坂にしろ爺さんにしろ、わたしが何かをするたびにこういったことを言う。

 追及しても、まともに答えてはくれないから、何か言うことはないので、データについてのお礼だけ言って戻ろうとすると声がかかる。

 

「おい、暮澄(くれすみ)

「……なに?」

「あの娘――みしろ、だったか。まだ小さいだろう。お前と同じような服装はやめてやれ。というかお前もだ。ほれ」

 

 そう言ってわたしに数枚の紙幣を握らせる。

 これで服を買いに行けということだろうか。

 

「お金はいいよ、わたしが十分持ってるのは知ってるでしょ」

 

 おそらく普通に暮らしていれば、人生を三周くらいはできてしまうほど。

 なので別に要らないと突き返すが、爺さんも引かない。

 

「それはおれもだよ。孫に小遣い上げるくらいわけないわ」

「孫じゃないし」

「おれからすりゃ似たようなもんだ」

 

 ――ぴた、と。

 コンクリートに埋められてしまったみたいに、腕が――(いや)、身体が固定される。

 こ、固有能力使ってる……!?

 爺さんの固有能力は触れたものを固定するというもの。

 不意打ちで使われると対処のしようがない。

 

「まあ楽しんで来いよ。あの娘もそうだが、お前にも必要なことだ」

 

 酷く、優しい声。

 そのようにして言われても、お金を受け取る気にはならない。

 しかしお金自体が手に固定されているので、テレキネシスで飛ばすこともできない。

 ……絶対いつか突き返す。

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