隠居したわたしが訳あり少女に"幸せ"を教えようと思う 作:けーか
そろそろ食べ終わるかな、というほどの頃。
店主の爺さん――
カチッ。
爺さんが煙草の火をつけながら「火、いるか?」と問われるのでそれを断る。
みしろはわたしの煙草の匂いを好きだと言ってくれたが、それでも気にかけてしまうのが……親心?
「んで、だ。捜索がさっき終わって、例の違法異能実験について少しわかったんでな。それの共有だ。あの子供を保護している以上、お前には知る義務がある」
わたしの返事を聞く間も置かずに、わたしの携帯端末にデータが送られてくる。
――固有能力の
開いて一番最初に書かれている一文に、
それはかつてSEAの研究局が不可能だと判断した実験――否。
正確には
違法な実験である以上、その安全性が
読み進めていく中で、やはり多くの違法薬物の投与や
――被験者の実験状況。
それぞれの子どもが、どのような実験を受けたかということを記した項目。
被験者である子どもたちは全員が十二歳以下。
実験内容は見出しにあった「固有能力の
目を通していく中で、昨日の夕方に出会った少女を見つける。
……みしろ。
昨日わたしが拾い、目覚めてからとは、違う姿。
ひどくやつれていて、消えかけの夜の街灯みたいな瞳。
――
頭の中身がひっくり返るような頭痛。
……思い出したくないこと、というわけではない。
決して風化させてはいけない記憶だが、今思い出すべきことではないので、フタをする。
そんな言い訳を並べ、逃げるようにして情報に目を通すと、ほかの子どもでは見なかった「
そのような違法異能実験は聞いたことがない。
文字通りであれば、星堕が倒された際に散る
わたしがみしろにエナジーを流し込んだときの異物感は薬物のものだと思っていたが、これの影響でもあったのかもしれない。
一通り目を通したが「
――あれ。
ちょっと待て。
少し、まずいかもしれない。
この「
そして昨日、わたしはそれを
「ごめん、爺さん」
わたしが声が固くなるのをなるべく抑えつつ、告げる。
「このみしろに投与された
爺さんの顔が一瞬こわばるも、すぐにいつもの仏頂面に戻る。
ああでも。
そんなものを感じる
「まあ、お前ならそうするよな」
ふっ、と。
少し笑うようにして、爺さんが煙草の煙を吐く。
刀坂にしろ爺さんにしろ、わたしが何かをするたびにこういったことを言う。
追及しても、まともに答えてはくれないから、何か言うことはないので、データについてのお礼だけ言って戻ろうとすると声がかかる。
「おい、
「……なに?」
「あの娘――みしろ、だったか。まだ小さいだろう。お前と同じような服装はやめてやれ。というかお前もだ。ほれ」
そう言ってわたしに数枚の紙幣を握らせる。
これで服を買いに行けということだろうか。
「お金はいいよ、わたしが十分持ってるのは知ってるでしょ」
おそらく普通に暮らしていれば、人生を三周くらいはできてしまうほど。
なので別に要らないと突き返すが、爺さんも引かない。
「それはおれもだよ。孫に小遣い上げるくらいわけないわ」
「孫じゃないし」
「おれからすりゃ似たようなもんだ」
――ぴた、と。
コンクリートに埋められてしまったみたいに、腕が――
こ、固有能力使ってる……!?
爺さんの固有能力は触れたものを固定するというもの。
不意打ちで使われると対処のしようがない。
「まあ楽しんで来いよ。あの娘もそうだが、お前にも必要なことだ」
酷く、優しい声。
そのようにして言われても、お金を受け取る気にはならない。
しかしお金自体が手に固定されているので、テレキネシスで飛ばすこともできない。
……絶対いつか突き返す。