隠居したわたしが訳あり少女に"幸せ"を教えようと思う 作:けーか
暮澄さんの知り合いで、SEAに所属している人。
切れ長の目と後ろでまとめられた灰の髪から、硬く鋭く研がれた刃物のような印象を受ける。
「や、みしろちゃん。少しいいかい?」
「は、はい……」
正直、まだ大人の人には苦手意識がある。
刀坂さん個人に対して悪い感情を持つようなことはないけど、暮澄さんに対しては抱かない警戒心を、意識しないままに向けてしまう。
「私のことが怖い?」
――自分でも、肩が震えるのが分かった。
考えていることが、ばれている。
「あー、すまない。怖がらせるつもりはないんだ。本当に。暮澄について、少し話しておこうと思ってさ」
「暮澄さんのこと……?」
暮澄さんの名前を出されて、自分が刀坂さんに抱いていた警戒心が、少し柔くなるのがわかる。
それと同時に、私の中でそれだけ暮澄さんが大きい存在になっていることも自覚する。
その名前を聞くだけで、あたたかい安心感が胸にこみあげてくるのと同時に、
きっとこれは、迷惑をかけてしまっていることに対して。
そして今の、暮澄さんと一緒にいるという状況が、迷惑をかけてしまっている状況が続いてほしいと願ってしまったことに対して。
「……暮澄は優しいだろう」
少しの間を置いて切り出された言葉に同意する。
私を見つけてくれたのが暮澄さんで、本当によかったと思っている。
「昔から不器用ながら、誰よりも優しくて、善性を人に向けずにはいられない子なんだよ」
「……あの。暮澄さんって今、おいくつなんですか?」
タバコを吸っているので、二十歳を超えているのはわかるけど。
自分でも何を聞いているんだと、知ってどうするんだと。
そう思いはするけど。
暮澄さんのことを、一つでも多く知りたいと思ってしまう。
「んっと、確か、二十一だったはずだ。見えないだろう?」
「にじゅういち……」
口に出してみても、信じられない。
刀坂さんの言う通りだ。
誰が見ても、暮澄さんのことを二十一歳だとは思えないだろう。
「私が初めて会った時――十年くらいかな。その頃からずっとあのまんまなんだよ、暮澄は」
「えっ?」
十年間、姿が変わらない。
そんなことが、あるのだろうか。
可能性としては、私や施設にいたほかの子たちのように、色々と身体に手を加えられていれば、そういうこともあるかもしれない。
もしくは固有能力による影響。
こちらの方が現実的だとは思うけど、仮に「不老」のような固有能力なのだとすれば、ERROR級の討伐ができるとは思えない。
――いや、違和感はそもそもあったのだ。
暮澄さんに拾われて目が覚めたとき、いつも最初に感じるはずのずぅーんという頭痛がなかった。
それを治してくれたのが暮澄さんなのだとすれば、治癒のような異能を使うことができるということにもなる。
13巻はこれ投稿したあとに読みます。